無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
長屋のある路地で繰り返される、日々の営み、季節のめぐり、育ってゆく若者といった現実の中で、ふと現れるふしぎな出来事。"ふしぎさ"が最初は見間違いかとも思える丸窓や薪能などちょっとしたことだったのに、次第に"あきらかに現実的でない"度合いを増していくのがドキドキ、ぞくぞくする。ゆっくりと心臓の鼓動が早くなってくる感じ。「?」という思いから、「何なのだろう、なぜなのだろう」と考えだす静かな加速感がとても心地よい読書体験。いつのまにか浩三や浩一と一緒に、トメさんや齣江の少ない言葉や一瞬の表情から答えを探そうとしていた。
遠野さんが現れてから加速感は増して、齣江がみせる"蒼く濡れた目"にこちらがほとんど泣きそうになった。会いたかった人、でももう時間軸がずれてしまって、会えば終わりが来てしまう人・・・。うう、せつない。
印象的なシーンや言葉はいくつもあった。
季節を見送るためにしゃんとしてその季節の着物を着るというトメさんの後ろ姿。
繊細に思い悩む浩三の気持ち。
「このところ、言葉や音が前にも増して複雑な意味を伴って聞こえる」
「誰かがなにかを信じて安心しきっている姿は尊いもののはずなのに、浩三はそこに緩慢な鈍さを感じてしまう。――みなの安息を支えているものが、そこまで強固には思えないのだった」
浩三の母親がみる天狗。
虫の標本が入っていた桐箱。
いろいろな人や物が現れたり消えたりする――自分の力では動かしようがなくても、手の届いたものひとつひとつをよく見て、愛おしみ大切にするという生き方を、齣江や浩三がみせてくれた。
Posted by ブクログ
この前に読んでいた本(『失われたものたちの本』)とは全く違う世界。
とまどいながら読み始めたが、この余白の多い物語にぐっと引き込まれる。
語りすぎず、語らなさすぎず。
想像しながら読む楽しさ。
最後までおもしろく読んだ。
読み進めるうちに、全く違うと思っていた『失われたものたちの本』と通ずるものを勝手に感じる。
異世界はすぐ隣にある。その異世界は、現実と全く違う世界ということではなく、心の世界とでもいうような、人が持っている潜在的な思いや積み重なった経験が具現化する世界。それは、意識しているかしていないかに関わらず、だれもが抱えている世界。
(巻末の対談でも出てくるけれど)この本では、此岸と彼岸であり、なんだかお彼岸の近いこの時期に読んだのも、偶然とはいえ必然だったのかしら。
収録している堀江敏幸と作者木内昇との対談もおもしろかった。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。