【感想・ネタバレ】よこまち余話のレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2020年05月07日

長屋のある路地で繰り返される、日々の営み、季節のめぐり、育ってゆく若者といった現実の中で、ふと現れるふしぎな出来事。"ふしぎさ"が最初は見間違いかとも思える丸窓や薪能などちょっとしたことだったのに、次第に"あきらかに現実的でない"度合いを増していくのがドキドキ...続きを読む、ぞくぞくする。ゆっくりと心臓の鼓動が早くなってくる感じ。「?」という思いから、「何なのだろう、なぜなのだろう」と考えだす静かな加速感がとても心地よい読書体験。いつのまにか浩三や浩一と一緒に、トメさんや齣江の少ない言葉や一瞬の表情から答えを探そうとしていた。
遠野さんが現れてから加速感は増して、齣江がみせる"蒼く濡れた目"にこちらがほとんど泣きそうになった。会いたかった人、でももう時間軸がずれてしまって、会えば終わりが来てしまう人・・・。うう、せつない。

印象的なシーンや言葉はいくつもあった。
季節を見送るためにしゃんとしてその季節の着物を着るというトメさんの後ろ姿。
繊細に思い悩む浩三の気持ち。
「このところ、言葉や音が前にも増して複雑な意味を伴って聞こえる」
「誰かがなにかを信じて安心しきっている姿は尊いもののはずなのに、浩三はそこに緩慢な鈍さを感じてしまう。――みなの安息を支えているものが、そこまで強固には思えないのだった」
浩三の母親がみる天狗。
虫の標本が入っていた桐箱。
いろいろな人や物が現れたり消えたりする――自分の力では動かしようがなくても、手の届いたものひとつひとつをよく見て、愛おしみ大切にするという生き方を、齣江や浩三がみせてくれた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年01月07日

年末年始のお供にTぬオススメのこの本。穏やかに静かに浸れそうだと手にとったが大正解。何とも沁みる。
最初のほうは中学に行きたいのに言い出せない浩三や、気づいているおかみさん、心優しい浩一などにじんわり。
特に月に一度の和菓子や、朝、桶に張った氷を楽しみにしている浩一がとても良い。
そのうち、少し不思...続きを読む議な感覚を覚えて、時間のつながりにはてとなり、なるほど過去と未來が入り交じっているのかと気づく。
トメさんと齣さんの人生がせつなく、でもただ悲しいということでもない、とにかく、沁みる。
何とも言えない余韻が残るお話。

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