あらすじ
罪を見つめて、人を憎まず――その男、服部惣十郎
浅草の薬種問屋で火事が起き、二体の骸があがった。定町廻同心の服部惣十郎は岡っ引の完治らを使い犯人を捕らえるが、医者らしき指示役の足取りは掴めない。一方、町医者の梨春は惣十郎の調べを手伝う傍ら、小児医療書を翻訳刊行せんと奔走していた。浮世を騒がす事件の数々を追ううちに、惣十郎がたどり着いた驚愕の真実とは。
一人のかすかな心の揺れが、大事を引き起こすこともある。
信じるもののため、それぞれの場であがく先に正義はあるのか――
【読売新聞好評連載】
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
面白かったーー!!!
木内昇さんの作品を読んだのはこれで3作目。今の所、どれも面白い。読後感も良い!
そして読んだ3作品ともドラマ化してほしい。
いつもながら、登場人物が魅力的。
シリーズ化してほしいなぁ。
Posted by ブクログ
分厚さにひるんだが、時間かかりながらも、楽しく読めた。
人が人を励さんとして発する言葉が、とても優しい。こんなふうに言える人間でありたい。
「誰もが大なり小なり枷を負いながら、どうにかこうにか生きながらえている」
残り時間がどれほどあるかわからないけど、生きよう。
Posted by ブクログ
木内昇さん二冊目。「捕物」とのことで、軽めの読み物なのかと思いきや、答えがすぐには出せそうもない重い問題や今に通ずる不条理が盛りだくさんで、なかなか社会派な意欲作だった。リズムに慣れるまで、やや時間がかかってしまったが。
一人一人の人物が深く描き出されており、それぞれを主役にした話が成り立ちそう。終わり方が完璧で、この一冊としてはしっかり完結しているのだが、ぜひまた登場人物たちに再会したいと思った。
Posted by ブクログ
面白かった。
人を過ちへ向かわせる理由や、心の揺らぎの原因は今の時代と変わらないもので、いつの時代も人は『他の評価』が気になり、自己評価との差分に振り回されてきたのだろうなあ。
時代劇の書き口だが、問うていることは現代の小説といった感じで共感したし、新鮮な読み心地だった。
シリーズ化しそう。
お雅がんばれ。
Posted by ブクログ
「この感想をご覧の方々、この本をそこいらの時代小説といっしょにされちゃあ困っちまうぜ。そう思わねぇか、完治」と、同意を求める主人公惣十郎。
「わっちも含めて個性豊かで人情味あふれる登場人物が読み手にとっちゃあ面白さこの上なしに仕上がってますぜ」完治もまたそれに従う。
そんな二人を横目に佐吉は「さっき書肆を覗いたんですがね、売り切れ御免入荷待ちってなぁ札が貼られて驚いたぁ次第で」
という感じで江戸の言葉で本作は綴られて、最後まで読み飽きさせない。
北町奉行所定町廻同心の服部惣十郎が、取り巻きの完治と与助、佐吉と共に巻き起こる怪事件を次々と解決に導く、いわばミステリー要素も含んだ捕物帖なのである。
またそれだけでなく、要所要所に旬の素材を使った料理の美味そうなこと請け合いなし。
惣十郎も通う湯屋の重蔵に垢すりしてもらいたいなぁ。
てことで江戸の文化も学べますよ。
Posted by ブクログ
お江戸人情捕物噺…鬼平犯科帳等あまたの傑作を生んだジャンルで、最早出尽くしていると毎度毎度思いつつ、このジャンルからまたしてもとんでもない傑作が生まれた。
まずキャラクター設定が、とにかく絶妙に上手い。シリーズ物で何作も出てきたような個性の味付けを最初からきっちり纏わせるのは相当な力量だと思うのだが、主要登場人物だけでなく結構な端役にまで、その個性を間とさせているのだからすごい。
と書くと、キャラの魅力で読ませる小説かのようだが、それだけではない、ストーリー構成も抜群に上手いのだ
薬問屋の火事に始まる物語は、霊感商法詐欺事件などいくつかの事件を解決していく描写を追いかけていくうちに、当時では絶望的な大病「疱瘡(天然痘)」の治療法や予防法を巡るミステリーとなり、水野忠邦の改革で居心地が悪くなる江戸世相に相まって歴史社会小説と化していく、その化けようが実に巧く築きあげられていて、読み進んでいくときの高揚感というか中毒性がすごいのだ。
疫病、不景気に失政、あらぬ噂に踊らされ小さな失敗で世間に疎まれていく人々、介護問題、…コロナとSNSと無能政治に苦しんでいる今の俺たちにとって他人ごとではないという親近感もあるから余計にのめり込む。
550Pと分厚く、活字も小さめで物量的には読み応えがあるが、文章が上手くて波に乗れたら読みやすいし、考えさせられる言葉や挿話も盛りだくさん。
彼らの活躍をもっと読みたいし、片付いてない恋物語もあるし、是非と続編を読みたいぞ!
Posted by ブクログ
これはもうしみじみと旨いと言える。瑕瑾といえば、惣十郎を、もうちょい女ごころが分かるようにしてやってくれれば。
話の落ち着く先は、決して無理はなく。ミステリーのランキングなんかには入れては欲しくないくらいの、心の移ろい。
Posted by ブクログ
これも新聞小説だと知って驚いた。
新聞小説「かたばみ」が書籍として発行されたばかりなのに、次の新聞小説を執筆していたとは。
一体どれだけの引き出しとパワーをもっているのか。恐るべし木内昇。
苦手な時代小説ではあるが、木内昇ならきっと面白いに違いないと思った。
予想通り。
続きが気になって、ほんの少しの隙間時間にも没頭した。
これはテレビドラマになるに違いない。NHKですよね、きっと笑
ところどころに披露される人間観、なるほどね、と納得することばかり。木内昇だから、鋭くイヤミがない。そして右往左往する人を肯定する懐の大きさ。それが上から目線でないところがまたいい。
江戸が舞台でも、現代社会の人間たちと心性は同じ。私たちの周りに起こっていることとなんら変わらない。(そういう描き方をしているのだよねとわかった上で)どの時代も人間って同じなんだよねと思う。
Posted by ブクログ
良い本を読んだ。
木内さんの捕物帳どんな物語かとワクワクして読んだ。
期待は裏切られることなく、すいすいと読めて夢中になってしまった。
最初の火事からつるつると繋がり、そこに繋がるのかーと圧巻。
登場人物もそれぞれ味がありら読み応えあり。
続編出て欲しいなぁ。
最近の小説では秀逸です。
登場人物の描写が素晴しいです。惣十郎の飄々とした態度の中で、先を読む力は素敵です。 岡っ引きの完治は、鬼平犯科帳の密偵ようで、素晴しい働きです。 お雅と惣十郎の母・お多津のやりとりはほのぼのします。 お雅が魅力的です。 映像になったら、誰がやるのか関心があります。
ストーリーは、意外な展開の繰り返しで、とても良かったです。最近の時代小説では秀逸です。 新聞連載小説とは思えない出来映えです。 価格に偽りはありませんでした。
Posted by ブクログ
浅草の薬種問屋で起きた火事の現場に残された二つの遺体。北町奉行所定町廻同心・服部惣十郎が犯人を捕らえるが、指示役の足取りは掴めない。
小者の佐吉、岡っ引きの完治らと共に事件を追い続け、惣十郎がたどり着いたのは驚くべき真相とは……。
いや〜面白かった!
間に偽祈祷師の捕物や、湯屋の三助の母の死の謎などを挟みながら、薬種問屋の火事の真相が少しずつ明らかになっていくワクワク感。
医は仁術を体現したかのような若き町医者・口鳥梨春の清廉さは物語に清涼感を与え、「正義」は人の数だけあり、その正体は実に曖昧で多様であると考える惣十郎の正義への向き合い方も共感しかない。
捕物帖でありながらそれだけにとどまらず、惣十郎、梨春、史享、崎岡、完治、重蔵らの仕事への矜持、さらには多津、郁、お雅らが抱えた憂いなど、登場人物それぞれの胸の内が丁寧に描かれる。
「組織の中で己のままに生きるには、どうすればよかったのかのう」
正しいと信ずることをなすことが必ずしも実を結ばない現実に打ちのめされた史享の姿にやるせなさを覚え、その義父に惣十郎がかけた言葉には思わず落涙。
ミステリであり、お仕事小説でもあり、家族の物語でもあり、500ページ超があっという間の味わい深く、去りがたい物語でした。
このメンバーでまた次作が読めるといいなぁ〜。
Posted by ブクログ
時代小説は宮部みゆき作品ばかり読んでいたから、このキャラクターたちのべらんべぃ口調に慣れるまで、少し時間がかかった。内容は、母の老いに関してや正義の見方などの価値観について考えさせてくれて、良かった。他の方の感想にもあったが、片思いのキャラクターが多く、それらの心情に関しては切なく、やるせない気持ちになる。どう着地させるのか、続編が待ち遠しい。
Posted by ブクログ
疫病、介護、など医療問題をからめた捕物帳。
作者の作品に通底する、仕事とは何か、世間と自分、家族との関係など濃い内容。
登場人物の造形も様々で魅力的。手下の佐吉と完治のコントラストもよかった。
お雅も魅力的で恋の行方もはらはらした。
が、惣十郎、あんなに淡々として自分を律するのに人妻の冬羽に懸想するかな?自分の妻を蔑ろにするほどに?冬羽の魅力がそこまで感じられず、その辺りの心情があまり飲み込めなかった。
Posted by ブクログ
HKさんのおすすめ。
下手人をあげることよりも、手柄を立てる事よりも、
自分がひっかかった何かを追い続ける同心惣十郎。
薬問屋での火事で死んだ二人のうち、
番頭は火事の前に殺されており、主人は別人の疑いがあり、
挙動のおかしい手代に目をつける。
怖がりで人を疑うことを知らない小者と、
元巾着切りで人を見る目のある岡っ引きの二人を使って、
ひとつづつ謎を解いていく。
惣十郎の妻が病死したことは、
あくまでも主人公のサイドストーリーであり、
本筋の薬問屋の殺しや種痘に関わってくるとは思っていなかったので、
もっと面白いと思ってもよいはずなのだがどうもすっきりしない。
それは登場人物の輪郭線がちょっとぼんやりしているせいかとも思ったが、
老いが進んでいく惣十郎の母、
惣十郎にひそかに思いを寄せている出戻りの下女、
家族をみな流行り病で亡くした蘭方医、
惣十郎の義理の父親、そして惣十郎自身と
登場人物が誰も幸せになっていないからだと思う。
能天気なハッピーエンドを望んでいるわけではないが、
誰かは幸せになってほしかった。
浮世とはそういうものだと言われてしまえばそれまでなのだが。
Posted by ブクログ
▼木内昇さんが「捕物帳」を書いたらしい、ということで店頭で衝動買い。木内さんらしい捕物帳。地味と言えば地味。でも大いに楽しみました。
▼相当に江戸時代の警察組織については木内さんなりに調べはったんだろうなあ、という内容で、原則的には、お仕事リアリズムに基づいて書かれています。主人公の惣十郎さんは、内勤の書類仕事も多いし、いつでもなんでも浪人に変装して単身現場に乗り込むような長谷川平蔵現象は起こさないし、そもそも毎度毎度白刃を振り回して生死の境をくぐるような生活ではありません。捜査実際のほとんどは、部下のいわゆる「目明し」、十手持ちがきちんと上意下達で行います。(「密偵」ではありません)
▼エンタメ読み物としては、そういうリアリズムを愉しんでね、という一方で、以下の持ち味かと。
・惣十郎さんが、安楽椅子探偵的に「想像」と「人間観察」に長けた名探偵である。
・なんだけど「字が下手」。これは今で言うと「パソコンがからきしである」くらいのハンデで、書類仕事が下手なので出世からは遠い。
・惣十郎さんは、男やもめである。一度結婚したが子をなす前に奥さんが若死した。そのことを引きずりながら生きている。惣十郎に恋慕する女性がいる。
▼全体に連作短編のようでいて、はじめに起こった事件がずっと解決しきらぬまま尾を引いて、最終回で真犯人が分かる。世界観としては池波正太郎的な、「善人と悪人は紙一重、人間みんな業がある」みたいな感触です。
▼何より池波正太郎さんと違うのは、女性の描き方ですね。池波さんの女性観は今で言うと耐え難いまでに女性嫌悪、女性蔑視そのものなんですが(笑)、そこは木内さんは全く違います。このあたりが、設定が時代劇で女性の活躍幅は広くないので、言えば「何が起こっているか」はほぼ変わらないのだけど、筆致が変わればこうも味わいが変わるかな、という印象でした。
Posted by ブクログ
同心服部惣十郎の生一本で融通が効かない性格で上役には阿らない。でも、事件の見立てなどはなかなかの物。薬種屋の火事で出た死体から始まった探索が思わぬ所へ着地する。
口鳥先生や岡っ引きの完治や手下の佐吉など面白い人物が登場し、そのやり取りも楽しい。
Posted by ブクログ
水野忠邦による天保の改革の只中、北町奉行所定町廻同心を務める服部惣十郎。
浅草の薬種問屋興済堂で起きた放火殺人事件を追う中で遭遇する数々の事件。
先入観や出世欲に捕らわれず、納得がいくまでひたすら筋読みをする惣十郎。
ばらばらに見えたそれぞれの事件から、興済堂事件や自らの若妻の死の全貌が明らかになる。
当時流行した疱瘡も絡み、探索の矛先は意外にも惣十郎の身辺にも迫る。
惣十郎、佐吉、お雅、梨春、完治、冬羽らの造形がいい。
謎解きの醍醐味と惣十郎らの身辺事情が絡み合う中に漂うほのかな諧謔味。
続編を期待する。
Posted by ブクログ
ますます冴え渡る木内昇の江戸小説。
あっという間に江戸時代に引き込まれる筆致。江戸時代の黄表紙などを読んでいるような気持ちになっていたら、捕物が始まった。推理が苦手な私は、しばし迷路にハマる。
薬種問屋での火事、疱瘡をお札で直そうとするイカサマ師、蘭方医と漢方医、種痘のこと。
同心の服部惣十郎は、事件を安易に決めつけず、細かく証拠を探しては立証していく。その手先となって働く十手持ちの完治は、察しがよく、粘り強く、知恵が周る江戸っ子で、カッコいい。
Posted by ブクログ
2025.4 面白い小説だった。主人公の憎めない実直な人柄、恋愛心を抱く女中さん(?)、登場人物も犯人も人間味のあるお話でした。続編出ないかな。
Posted by ブクログ
主人公は、北町奉行所定廻同心服部惣十郎。彼の手下は小者の佐吉と岡っ引きの完治。
今ひとつ頼りない佐吉に対し、完治はその慧眼と機転を見込んで惣十郎が岡っ引きに引き抜いたもとは名代の巾着切り。
彼らを使い分けながら、惣十郎が放火殺人犯を追う。
事件の裏に疱瘡治療を巡る不正な行為が見え隠れし、危険な治験を行う医師が浮かび上がる。惣十郎の亡くなった妻・郁の死因も関わり合うのではと、探索に拍車がかかる。
他殺と判る死体の発見も相次ぎ、冤罪も絡み、次第にミステリー性を帯びてくる。
この惣十郎、同役が罪人の数を挙げることに躍起となるのに対し、「犯罪の芽を先に見付けて摘み取ることに重きを置く」という信条の持ち主。
さらにユニークなのが、惣十郎に請われ、遺体の検視も行う医師の口鳥梨春。
「ただ淡々と己の仕事をしているだけ」で、「人から崇められ信を置かれている」人物。
この梨春が己の医療に対する言葉。
「私は、救ってなぞおりません。医者の立場で申し上げることではないかもしれませんが、誰かを救おうと力むと、かえってうまくいかぬのです。ですから、ただ引き受けることにしております」
医療に携わる者の理想の姿勢だろう。
妻が亡くなった服部家では、母親の世話を下女のお雅が面倒を見ている。捕り物となると才気走った推量をする惣十郎も色恋には疎く、このお雅の彼に対する思慕には、とんと気付かぬ。
惣十郎を中心に多彩な人物が繰り広げるこの小説、シリーズ化が望まれる。
彼とお雅が今後どうなるのか、その行く末も見届けたいし。
Posted by ブクログ
久しぶりに読んだ木内昇作品。
相変わらず、読みやすくてわかりやすくてストーリーテリングが巧み。530ページを超える大作にもかかわらず、ほぼ一気読み。
人情あふれるキャラクター達の魅力も相まって、とても楽しくすいすい読めたのだけれども、いかんせん、そこまでの語りがとても丁寧だっただけに、オチがやや消化不良。納得感に不満が残るかなあ。
でもシリーズ化してもよさそうなくらい、各キャラクターに魅力があって、引き込まれたのは確か。
木内作品はいつも裏切らない。
Posted by ブクログ
天保の改革の頃、放火殺人事件の謎を解く同心の話。
江戸の風俗、仕事、疫病、種痘などがかなり細かく描かれている。長いので読んでも読んでも終わらない感。
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去年ハマったNHKのドラマ『大奥シーズン2』を思い出しながらの読書となった。
疫病が蔓延する江戸後期を舞台にした物語。
ドラマでも赤面疱瘡を撲滅しようと、男女逆転した江戸幕府が懸命にもがいていたっけ。
人痘種痘はこの時代から試行錯誤されていたんだと思うと、先人たちの苦労には頭が下がる。
木内さんのお江戸の捕物帳。思った通り義理人情にアツくカッコいい漢たちの物語でワクワクした。
特に主人公・服部惣十郎を手助けする町医者・口鳥梨春、岡っ引・完治が良かった。
あと惣十郎を密かに慕うお雅の美味しそうな手料理の数々には、読んでいてお腹が減ってきた。
「正義とは聞こえのよい言葉ですが、さようなものは実はこの世のどこにもないと、私は常々思うております」
人の数だけ存在する義。その曖昧な定義に苦悩する惣十郎は、時にはヘマもする未完成な人で、だからこそ周囲の人たちから支えられ慕われる魅力があってとても好ましい。
「俺たちゃそもそも、恥をかくために生きてンだってことにさ。そいつが、人に与えられた一番の仕事だってのを思い出したのだ。完璧なんてもんは幻想でしかないからな。生きて、恥かいて、また生きてってのを死ぬまで繰り返すのが本来の役目なんだと気付いたら、俺の歩んできた道もあながち間違っちゃいねぇと思えてな」
お雅がヘマをした時、惣十郎からこんなセリフを目の前で言われて、怪我した手を手拭いで優しく拭き取られたら、お雅じゃなくてもそりゃ惚れるよ。
このほかの登場人物たちのキャラもいいし、続編に期待してます。
Posted by ブクログ
惣十郎の妻の「夫と父の役に立つ事であれば」と願い種痘の治療実験台に自ら名乗り出た行為、そのものが事件を起こす。「人を思う」人間味溢れる行動など、方や疱瘡に対する医術を何とかしたいと願った事が裏目に、事件に繋がる複雑且つ物語の巧みさに感動する。現代は政治の世界でも人の為というより「自己主義」が旺盛で「目先の利潤に眼が眩む」行動になってしまうのは寂しい限りだ。「人間関係の道徳」が薄らいでいる事だろうか。
Posted by ブクログ
キャラが良い。お雅のこじらせ具合がかわいい。惣十郎が愛妻家でなかったのが意外。それぞれ良かれと思っての行いが裏目に出たり的外れだったりなストーリーだった。
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人情味あふれる時代小説ミステリ?浅草の薬種問屋放火事件を軸に話が展開する連作短編。
おもしろかったですけどね。ところどころ不快な人物が割と出てくるのでなんとも厭な気持にはなりました。それ以外がしっかりとした善人が多いのでその落差がまた。話の展開はまあ王道な人情時代ミステリって感じで気持ちよく読めました。真犯人はあからさまに怪しい人物が・・・まあその辺を推理して楽しむような作品でもないか。
いろんな物事がなんとなく片付いたような感じで終わりましたが、あれ?お雅さんは・・・?
Posted by ブクログ
新刊紹介の評判がよくて購入したのが昨年7月。少し読んで擱いてしまった。話の流れについていけなかったのと、町医者・口鳥梨春がありえないぐらいの善人だったからだろう。興ざめしてしまいそのままにしたように思う。
今回、急に入院することになってしまい、いくつかの本を持ってきた。気になっていたこの本もその一つ。コロナ禍で大変だった世情を反映してか江戸末期の天然痘が主題として取り上げられているが、蘭学医と漢方医の攻防などが描かれていておもしろかった。また、今でいう認知症の症状をあらわす登場人物もあり時代小説もその時代の影響を大きくうける現代小説なんだなとあらためて思った。
木内昇の小説を読むのはたしか初めてだが美しい文章がちりばめられており今後も読みたいと思う。
小説そのものはNHK連続ドラマの原作に最適でそれ以上でもそれ以下でもなかった。
Posted by ブクログ
定町廻り同心の惣十郎は
義理の父・史享の教えを手本とし見廻りをする。
P134
〈火種に敏く気付いてとっとと消すのが、
本来は俺たち同心の腕の見せ所なのだ〉
ただ、正義を貫くだけでは救える人も救えない。
P494
〈完璧なんてもんは幻想でしかないからな〉
町医の梨春、完治、佐吉がいい味を出している。
読み応えありなのだが
少々詰め込み過ぎかな、と。
Posted by ブクログ
社会や組織に息苦しさを感じるものとして、共感がもてた。
黙っていても自分の仕事をみていてもらえると思うのは甘い、というのはドキッとした。自分の「功績」を仲間内に伝える手間を惜しむのは、単なるめんどくさがりやの怠慢かも…
小説としては先が読めてしまうところもあるが、楽しめる。「モブ」がモブでしかないのは残念。