【感想・ネタバレ】かたばみのレビュー

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Posted by ブクログ 2024年05月01日

戦中から戦後へ、ある家族の物語。命の危険に怯える日々も、平和が戻ってきた日々も、それぞれ悩みはつきないけど生きるっていいなって思えた。
『球道恋々』と重なる場面もあり。

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Posted by ブクログ 2024年04月28日

戦中、戦後という時代背景のためか、始めはやや読みにくさを感じたのものの、すぐに惹き込まれて夢中で読み進めた。

戦争の苦しさは経験した人にしかわからないものなのだろうけれど、私達が経験したコロナ禍もまるで戦中の様な息苦しさを伴っていたな…と思う。
爆弾は落ちてこないし、食べ物に困ることはないけれど、...続きを読む大人も子どもも言論や思想の自由を奪われ分断させられていたのは戦争そのものだったと思う。

その中でも悌子や権蔵が悩みながら必死に生き、我が子だけでなく、親戚や教え子の命を守り育てていく姿に心打たれた。

登場人物すべての言葉がなんとも心に染みる…
どんな家族であれ、絆は丁寧に紡ぐことが大切なのだと教えられた気がする。

カタバミの花言葉が「母の優しさ」「輝く心」なのだそうだ。本の内容そのものなのがとても心地よく、いつも傍らで見守ってくれている大好きな野草がますます好きになった。

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Posted by ブクログ 2024年04月27日

槍投げ選手として挫折し、幼馴染との結婚の夢にも破れ、教師となった女性が主人公。時代に翻弄されながらも、真摯に生きていく主人公と家族を描いた感動の長編。お勧めの一冊。タイトル(かたばみ)は、生命力があり、身近に見られる花の名前から。
前半も良かったですが、清太が登場してからの後半が素晴らしかったです。...続きを読むまた、表紙と裏表紙のイラストが気になっていましたが、途中でわかったような気がしました。

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Posted by ブクログ 2024年04月15日

ひさびさに木内昇ワールド満喫しました。チェックしている作家なので読みたいリストには入れていたのですが去年の年末の新聞書評欄の今年の3冊に複数選ばれていて、選書の人々にも木内昇ファンがいるんだなとうれしくなりました。本作は「笑い三年、泣き三月」の家族形成ものと、「球道恋々」の野球沼ものとのミックスで、...続きを読むまさに著者の得意とする領域の掛け合わせ、まさに木内昇風カツカレーの味わいでお腹いっぱいになりました。でもそもそもが新聞の連載小説なのからか、テンポ良くさくさく読めるのと、登場する人物の性格がこの上も無く性善説で設定されているので、ボリュームの割に胃もたれせず読み終えることができました。この週末の土日、また残っている桜の下で一気読みです。心に中に富士山が見えたような気分になりました。主人公のキャラもいい…NHKドラマの「作りたい女と食べたい女」の春日さんか、いやいや、そのまんま女子槍投げの北口榛花選手か、もし映像化するなら。でも映像化してほしくないけど。悌子だけでなく権蔵含め、よくよく考えると出てくる人みんなトリッキーな設定だけど、その組み合わせで描かれる物語は普遍性のあるものなのです。なにかを信じたくなる小説。

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Posted by ブクログ 2024年04月10日

教員となった悌子の下宿先の家族とやむ終えない事情で引き取った子と、血は繋がっていない家族が泣いたり笑ったりしながら共に生きていくなんとも清々しく小説でした。
とても分厚い本だったので、読み切れるか?と思いましたがそんな心配は必要ありませんでした。
いい家族です。
どうして『かたばみ』なのかもよくわか...続きを読むりました。

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Posted by ブクログ 2024年04月06日

長編を感じさせないほどにのめり込み夢中になってしまった。
読み終わったあとは、この家族と同じように青空を見上げて微笑みたい…一緒にそんな気持ちに浸りたいと感じた。

太平洋戦争直前、故郷の岐阜から上京した山岡悌子は国民学校の代用教員として働き始め、幼馴染の早稲田大学野球部の神代清一と結婚するつもりで...続きを読むいたが、彼には決まった人がいて戦地に行く前に結婚したことを聞く。
恋に破れたが下宿先の家族に見守られながら生徒と向き合っていく。
下宿先の家族と親しくしているうちに富枝とも仲良くなり、その息子の権蔵と根っこの部分が似ているところや自分をごまかさないところが相性いいんじゃないかと…。
結婚する気もなかったが、結婚は物語だと言われて。
そのうち清一が亡くなったことを知り、清一の息子を養子にと…。

どんなかたちであれ、家族というのは血の繋がりだけではないことを感じた。
この夫婦の愛情が半端でないことにただただ凄いとしか言えない。
胸に響く感動長編だった。


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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年04月01日

槍投げにうちこむ真面目でひたむきな女学生が、戦争に巻き込まれて代用教員になり、子どもたちの指導に生き甲斐を見出しつつ、様々な困難に直面し生き抜いていく。
主人公の悌子をはじめ、下宿先の家族のキャラが皆愛おしい。女性の自立が難しかった時代に、疑似家族に支えられ成長していく姿は羨ましくもある。

最初は...続きを読む頼りなかった権蔵も、清一を育てる中で父親らしく成長していくのも見どころ。

期待はあらゆる苦悩のもと、
この格言が所々に生きてます。

続編出てほしい。

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Posted by ブクログ 2024年03月23日

いい小説を読んだなと感動でいっぱい。どの登場人物も、いいキャラをしている。ひねくれたケイ婆さんも。六助も。加恵も。茂生も。
なぜこの小説が、本屋大賞の候補にならなかったのか不思議。著者の本では『櫛挽道守』が大好きだったが、それに負けず劣らず好きな小説となった。著者がスポーツをしていた人なので、スポー...続きを読むツについての記述も説得力がある。
そして、ところどころ、クスッと笑える。

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Posted by ブクログ 2024年03月11日

 長い良質の朝ドラを、最後まで夢中で観たような感動をもらいました。老若男女問わず、どの世代にも読んでほしい、そんなとてもいい話でした。戦中戦後の苦難の時代を生きた家族の物語です。

 主人公は山岡悌子25歳、昭和18年の戦争が色濃くなっていく頃の描写から始まります。悌子の波乱万丈の人生の詳細は伏せま...続きを読むすが、戦争に翻弄され、抱いた夢や希望を何度も打ち砕かれます。それでも、先の見えない暮しの中で、真っ直ぐに懸命に毎日を生きる悌子たちの姿に胸を打たれます。

 戦争が背景にあり、非日常や不条理さが描かれて辛くはあるのですが、不思議と重い感覚がありません。悌子の前向きな性格、周囲の人の温かさを上手く描く著者の筆力の為せる技だろうと思います。

 「かたばみ」は、クローバーに似て非なる道端などに自生する植物で、ハート形の3葉が寄り添い、黄色い花をつける繁茂力の強い野草だそう。物語を読み進めるほど、妻・夫・子の絆、複数の家族が寄り添う絆が眩しく映り、この象徴としての本書タイトルが胸に沁みます。

 ウクライナやガザ地区の戦争には終息の兆しも見えず、元日の能登半島地震や13年前の3.11の傷も癒えません。そして79年前 (終戦の年)の3.10は、10万人が犠牲になった東京大空襲の日でした。
 戦争を知らずに今を生きる、多くの人たちに読んでほしい物語でした。小さなことを皆で共有する幸せ、温かさをシンプルに伝えてくれる傑作長編でした。

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Posted by ブクログ 2024年02月29日

本の雑誌・年末ランキングからのチョイス。著者初体験かと思ったけど、”光炎の人”の人でした。同作は、主人公のキャラが受け入れられず、サイコーとまでは思えなかったんだけど、本作は主人公(の家族)が素敵で、もう言うことなし。やっぱ好きだな~、家族小説。って言いつつ、実は似たような結構の作品が多いし、ある程...続きを読む度以上の感慨が味わえるものを繰り返し読んで、その度留飲を下げているだけ、って思う冷静な自分もいるんだけど、それでいいんです。北上さんの好物ジャンルだし、これからも本の雑誌では高評価を集めるんだろうけど、きっと自分も読み続けるんだろうな。

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Posted by ブクログ 2024年02月25日

すごく厚かったけど読んでるあいだずっと物語にしっかり向き合って読めました。読み応えありました。悌子の心持ちの素直さがとても好ましかったです。清太はいい子だし、権蔵さんの泣き言も人を癒すし、富枝さんの気遣いもこうありたいなと思わされました。周りの人達も一癖あるけどみんな暖かい。六助さんの「儚げな女は蔓...続きを読む植物みたいに旦那に巻きついて締め上げる」は言い得て妙でした。雪子にはほらわたが煮えくり返ったが。太平洋戦争の時代の話で悲しい出来事がたくさんあるんだけど、人生にちゃんと向き合っていて読後感も良かったです。いつもはイラッとする子供の言動が今日は愛おしさを感じました。

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Posted by ブクログ 2024年02月25日

昭和18年、山岡悌子は日本女子体育専門学校で
指導研修生として槍投げを教える。
自身は肩の故障で現役を続けるのは無理だった。
いずれ許嫁と結婚し家庭を持つ。
それまでは国民学校の代用教員として過ごす。
悌子が思い描くこの先のこと。
それを戦争が奪った。それぞれの人生を変えてしまった。

下宿先の家族...続きを読むはちょっと癖のある人ばかり。
苦しくても歯を食いしばり、雑草のように強く生きる。
ここに登場するすべての人が人生を嘆くことなく
「一所懸命」「正直に」生きている。
読み終えたあと、ぽっかりと穴が空いたように寂しくて。
こういう読書体験ができるのは稀なこと。
『かたばみ』は長く心に残る作品になった。

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Posted by ブクログ 2024年02月22日

なぜ『かたばみ』が本屋大賞にノミネートされなかったんだろうと、不思議に思っていたら、四国の名物書店員さんの個人的文学賞の山中賞に選ばれていた。

戦中戦後の混沌とした世の中で、オリンピック選手になることを夢見ていた山岡悌子の半生。

幼馴染への淡い恋心、戦中戦後の貧しさ、軍事教育への疑問、ひょんなこ...続きを読むとから始まる結婚生活、親子愛。まるで朝ドラを半年間見続けたような感覚だった。

560ページもの分厚さに読むのにどれくらいかかるかと心配していたが、あっという間に終わってしまった。

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Posted by ブクログ 2024年02月01日

それぞれの人生哲学が所々に語られて、生きていく意味が散りばめられている。血がつながらない親子でも親子の情があれば親子なのだ。戦争の時代の中で悩みながら成長していく悌子の生き様に惹きつけられてあっという間に読んでしまった。

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Posted by ブクログ 2024年01月28日

戦時中の生きづらさ、食糧難、招集され出征した人、残された人。その日を生きていくことの大変さ。
そんな中で子供の教育に苦悩する悌子。そして、悌子を取り巻く人間味溢れる登場人物たち。
それぞれが個性豊かで、苦悩しながらも真っ直ぐに正直に生きる大人たちと、世情や集団生活の中で必死に自分を見つけていく子供た...続きを読むち。
とにかく一生懸命に生きる姿に、ほろっときたり、クスッと笑えたり。
食べ物、物資が足りない、何も無かった戦時中。豊かになり過ぎた今の時代よりも豊かだったものがある様に思えた。
そして、日本が戦争をしない国になってくれたことの意味を考えさせられた。
そう言う意味でとても深い本だと思う。
木内さんの本は初めてだったので、他の本や、この本の参考文献なども読んでみたい。

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Posted by ブクログ 2024年01月26日

新聞連載で感動した話。
ごく最初の部分を読んでなかったので、単行本化されたのを再読し、感動再び。

戦争、家族、働く女性…
どれも重要なテーマであり、考えさせられることも多いですが、重過ぎずユーモアもあります。

何度も読み返したい本です。

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Posted by ブクログ 2024年01月14日

太平洋戦争直前、岐阜から上京し、日本女子体育専門学校でやり投げ選手として活躍していた悌子だが肩を壊し引退。
国民学校の代用教員となった。
同郷の幼なじみで、早稲田大学野球部のエース、清一と結婚するつもりでいたが一方的な恋は叶わず、正式な教員となり、小金井の下宿先の家族に見守られ過ごしていたが、偶然か...続きを読む必然か、結婚とほぼ同時に血のつながらない子供を引き取ることになり、新しい家族として歩み始める。
その背景には、戦後の混乱と高度成長期の中で、まだまだ立場の弱い女性の生きにくさがあり、やはり戦争という爪痕がいつまでも残るのである。

いや~久しぶりに小説を読んで泣きました。
家族という在り方がその当時とは大きく変わってしまった現代ですが、私の年代ではまだまだよく理解できますし、心に染み入るものがあります。
両親がいて、お祖母ちゃんがいて、叔父さんがいて、悌子のような下宿人がいたり、時には行き場のない生徒が寝起きしていたり、そんな中で子供たちは、いろんな大人に囲まれていろんなことをいつの間にか身につけ大きくなっていくというそんな時代が確かにありました。
また登場人物がどの人も良く描写されていて、頭の中ですぐに映像化されて、読んでいるんだけどドラマを見ている気分でした。

〈かたばみ〉
クローバーのような葉を持ち非常に繁殖力が強く「家が絶えない」に通じることから、江戸時代には家紋にも用いられた。
花言葉は「母のやさしさ」「輝く心」とあります。

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Posted by ブクログ 2024年01月10日

 木内昇さんの力作、そして556頁の大作「かたばみ」(2023.8)、読み応えがあり、存分に堪能しました。槍投げが得意だった5尺7寸、20貫の大きな女性、山岡悌子25歳の昭和18年から33年までの15年間を描いた作品。代用教員として当時の世相に巻き込まれながらも自分の信念で生き抜く。常に、正しい教育...続きを読むとは何かを問いつつ。思い人、神代清一は同級生の女性雪代と結婚したが、清一は戦死。夫中津川権蔵と清一の息子清太を養子として育てることに。「かたばみ」はハート形の葉っぱ。花言葉は、母の優しさ、輝く心。

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Posted by ブクログ 2023年12月24日

めっちゃ良い!厚いから読んでも読んでも終わらなかったけど、最後らへんは泣いたわー。権蔵さん、矢部太郎風を想像したけど背は高かったみたいだね。個人的に茂生が良いね。読んで良かった。

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Posted by ブクログ 2023年12月17日

それぞれが個性的で人にやさしく、どこかユーモラスに支え合っている家族と周囲の人たち。とても温かく前向きな気持ちになれた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年12月03日

一本の映画を観ている感覚だった。読んでいて映像が何度も浮かんできた。
木内さんの作品は主役はもちろん、脇役も味のあって魅力的な人物が多くて、読んでいて飽きがこないから好き。ボリュームのある作品だったけれど夢中になれた。

戦前・戦中・戦後。目まぐるしく変化する時代に翻弄される家族の物語。
肩を壊した...続きを読むことがきっかけで国民学校の代用教員となった、元槍投げ選手の悌子。一本筋の通った子供思いの先生で、こんな素晴らしい先生に出会えた子供たちは幸せだ。こんな理不尽な時代でなければ学校生活ももっと楽しめただろうに。

「楽しいもなにも、生まれてきたんだから生きるんだよ。それが生命ってもんだよ」
「ごちゃごちゃ考えてねぇで、どんどん生きりゃいいんだよ。七面倒くせぇ」

とにかく生きることに必死。けれどユーモアも忘れない。久々に笑って泣けた物語だった。

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Posted by ブクログ 2023年12月02日

戦中戦後の辛く切ない話かと思っていたら、
かたばみの花言葉通りの、母心、親父心、姑心、いろんな人たちの思いやり溢れた小説でした。
野球好きにとってもたまらない話でした。

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Posted by ブクログ 2023年11月03日

かたばみという言葉も、木内昇さんの作品もはじめましてでした。

 かたばみとは、よくその辺に茂っている、クローバーに似た葉をしていて、黄色い小さな花をつける多年草の名前だそう。よく目にするのに知りませんでした。

 今年一番の一冊になりそうです。
戦中、そして、占領下の戦後に、教師の悌子をはじめとし...続きを読むて、懸命に自分なりの正しさを貫いて生き抜こうとする人々が描かれています。血のつながらない親子の絆の物語でもあります。

 この本の一番の魅力は、登場人物が、自分が好きなこと、こだわりたい事にはひたすら一生懸命に向かい合う、その生き様にあると感じました。特に悌子のその執拗なまでの一生懸命さは、仕事に対しても家族のことにしても、常に軸がぶれません。

○教師も親も、子供の手本になろうとする。でも、それは間違いだと思うのです。人は、どこまでいっても未熟で不完全です。ですから、ただ一生懸命生きている正直な姿を、子供たちに見せるほかないように思うのです。

○ (悌子の夫の言葉)「多少の挫折があっても乗り越えられるよ。」
 (悌子)挫折なんてしないわよ、きっと大丈夫よ、と言ってしまうところだった。以前、安易に励まして傷つけたことがあるのに。権蔵は決してそういう言い方をしない。生きていれば、誰にでも望まないことは起こるけど、乗り越えていけるはずだよ、という言い方を常にする。

 本当に子供にとって良い教育とは…と考え実行する教員の姿も心に残りました。

○もちろん、過剰な折檻はいけません。ただ中津川先生(悌子)が申しましたように、痛みを知らないと、加減ができない子になる。それがどんな恐ろしいことを引き起こすか、殺伐とした世の中を作るか。その点も、私たち教員は考えていかなければなりません。

 体格は、槍投げをしていて大柄な悌子とかなり違いますが、途中から私の脳内では、悌子が女優の江口のりこさんの顔と声になっていました(笑)

 そして、556ページもあるこの長作品で、一番好きだったのは、終盤の533ページ、権蔵の脳裏に、小さかった頃の清太が浮かんだ場面でした。

 苦しんだり喜んだりしながらの、人間の長きに渡る歩みの愛おしさ、確かさを強く感じさせてくれる感動作でした。

〜〜〜〜〜
好きだった他の文章

○他人の事はどうでもいい。それ以上に、自分のことがどうでもよかった。これまでを顧みる。無関心は、多分権蔵にとって、相容れない世の中から完璧に防禦してくれる。最強の盾だったのだ。

○私は、人生は競技だと思うんです。いかに有望な選手でも、良い監督につかなければ花開きません。監督の指摘を受けて、自らの足りない部分に気づき、修正していくことが必要なんです。そうやって、客観的な視点を得て、力をつけていくんです。つまり、私が教師としてやっていくには権蔵さんのような、真っ正直な人がそばにいたほうがいいと思うんです。

○年寄りって厄介でしょ。いたわってもらってありがたいとは思うの。でも一方でね、いたわられちゃった、ってちょっとしょんぼりするの。なんだか思春期みたいよね。歳をとったら、その分、知恵も経験もつくから、揺らぐことがなくなると思ってたけど、年寄りには年寄りの揺らぎがあるのよ。だって、自分が初めて体験する年齢なんですもの、当然よね。だけど、周りに対しては、年長者だから自制もしないとならないでしょ。結構しんどいのよ。若い人は感情爆発させても格好がつくんだけどね。

○生徒が、他の誰かに怪我をさせたり、ひどい言葉で傷つけたりしたら、私を叱ります。ぶたれたら痛いんです。石を投げれば怪我をします。そのことを感覚的に知らない子が増えるのも、また危ういと思うんです。共同生活の中で加減というものを学ぶことも、私は必要だと考えています。

○教員への苦情はいつでも承ります。教育現場を良くするためにも、常に風通しの良い環境を作るつもりです。ただ、私どもに任せていただく部分も頂戴したいのです。大事なのは、子供に健やかな環境を与えること。それから、二度と子どもたちを戦争の犠牲にしないことです。

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Posted by ブクログ 2024年04月23日

一気に読んでしまいました。
まず、戦争はほんとに起こしてはいけないということ。
そして、そんな極限状態のときに、人は試され、色んな人達に出会い影響を受けて成長できたり、落ちていったりするんだろうなと思った。

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Posted by ブクログ 2024年04月03日

読み終わった後、青空を見上げたくなるような清々しい話でした。

戦中戦後から高度成長期の生活を、悌子と権蔵たち家族の目線を通し当時の社会状況と心理面もまじえて丁寧に描写されています。
その時代を知らない私にも情景を容易に思い浮かべることができるほどリアルです。
かなり綿密に取材と文献の読み込みをして...続きを読む書かれたのだと作者の本気が見て取れて感動します。

家族っていいなって、そんな素敵なあたたかい気持ちを思い出させてくれるホームドラマ指折りの一冊となりました。

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Posted by ブクログ 2024年03月12日

戦中、戦後を生き抜く2つの家族を中心にしたお話。
他の方の感想にもあったが朝ドラを読んでいるような感じ。
すごく面白いといった感じではなく、じんわり来る感じでした。

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Posted by ブクログ 2024年02月23日

昭和18年から始まる“家族”の物語だ。
元槍投げ選手で国民学校の代用教員となった悌子と、彼女の下宿先である惣菜店を営む朝子一家との関わりから始まり、それが次第に広がっていく。太平洋戦争と終戦、そして戦後復興と時代を進みながら家族の成長が描かれる。
だが、中心となる悌子の周りに血の繋がった人は誰もいな...続きを読むい。本当の家族となるのに、それは重要なことではないのだ。
戦中戦後という不幸な時代を舞台にした小説なのに、なぜこんなにも読後感がよいのだろう?

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Posted by ブクログ 2024年02月12日

どの登場人物にも感情移入でき、読後感もとてもよい作品だった。セリフに同感できるものが多く、それを数行で表現していてなるほど〜と感心する点が多々あった。権蔵は話の中でダメ人間という評価だったが、言うことが的を得ていてどれもとても心に響いた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年01月25日

 戦中戦後、ひとりの女性を軸に、夫婦関係、親子関係を通じ、家族の在り方を描いた物語。

 主人公は、岐阜から上京してきた山岡悌子。恵まれた体躯の持ち主で、日本代表を狙えるかもという槍投げの選手だが、肩を壊し引退、教員として戦中戦後を送る。やがて、下宿先の家主の兄である権蔵と所帯を持つが、戦死した幼馴...続きを読む染みの遺児・清太を引取ることになる。
 学校での教育方針のみならず、戦後、考え方や価値観等あらゆるものが更新され、変化していく中で、変わらぬ家族の在り方を模索するような作品となっている。

 木内昇は、近年、よく読む作家さんだ。どの作品も読み応えがあり、本作も500頁を超す鈍器本に近い文量に圧倒される。
 最初に読んだ著者作品は『光炎の人』。大正昭和と富国強兵、軍拡を続ける中で翻弄される一人の技術者の人生を描いたもの。『万波を翔る』も、明治維新前後の時代の変革期に、幕僚としての使命を全うせんと奮闘する実在の人物をモデルに描いた。
 それらと較べると、時代背景は厳しい戦中戦後のお話ではあるが、武蔵野の地に住む、穏やかな家庭環境の中の、いち家族の成り立ちと変遷を描いた本作は、ややもすると、生温い朝ドラを見ているかのような気にさせられた序盤。

 が、そこは、さすが木内昇。終盤にかけては怒涛の展開、家族の危機、そして大団円を見事に描き切った。
 途中から、血のつながらない母子であること、その子が、初恋の相手の遺児であり、類まれない才能を有した故郷の英雄の血を引き、長ずるにつれ、その片鱗を見せることで、本人はもちろん、家族の中にも違和感が生じ、やがてこれが火種になるものと、当然、予想され、その通りにコトは進む。

 でも、どこか安心して見ていられるのは、主人公悌子および、夫権蔵、そして子の清太の、誰もが素晴らしい人間性を持っているから。そのことを、多くの紙面を割いて、そこまでの前段で丁寧に描いていたからこそ、悌子ら家族の周囲の人も含めた戦後日本国民全員の物語となっている。
 下宿の家主朝子、復員してくる夫茂樹、その母ケイ婆さん、権蔵と朝子の母富枝、みんな、いい。皮肉屋でひがみ節のケイ婆さんですら、「挫折」しかけた家族の窮地を救う貴重な助言を清太に与えるという周到さ。アッパレだ。

 長期にわたる新聞連載だった本作。書き始めたころは(2021/8)、今の世界情勢ほどキナ臭くなっていなかったろうし、情報統制が懸念されるでもなかったはずだが、先の大戦前後の、日本の空気を背景に、現代人の我々にも響くメッセージも折に触れ織り込んである。

「苦手なことを苦手と言うのは、勇気がいります。あなたはそれを事も無げに為した。むしろ立派な発言だったと私は思います」
「おかしいな、と自分で感じたものからは、いくらだって逃げていいんです」

 大勢に流されることなく、勇気をもって異を唱えろということだ。
 あるいは、男女同権が叫ばれて久しく、もはや片意地張って頑張る男も、もう肩の荷を下ろしていいよとも訴える。

「君のさ、『泣き言読本』だっけ、日々の憂さを独白するあのスタイル、案外受けると思うよ。これまで、男は強くあれ、国のために命を差し出せ、って唱えられてきたからね。改めて口にすると馬鹿らしい理念だけど」

 ひ弱な権蔵は、戦前戦中、まわりから馬鹿にされるが、戦後ラジオ放送の番組制作で頭角を現す。
 フィンランド映画『サウナのあるところ』を思い出す。サウナの中で裸の付き合いを通じ、男が本音、弱音を吐露する意外な内容のドキュメント作品だが、原題の意味するところの、「今度は男の順番ですよ」というのは、もう男だけが頑張ってる時代じゃない、男も「泣き言」を言っていいはず、というものだった。それに通じる、権蔵にまつわるエピソードだ。

 戦後、変わりゆく世相を例に、そんな今の世にも通用するメッセージを送ってくるのも著者の巧いところだ。
 戦後の放送界や、芸能の世界は、おそらく『笑い三年、泣き三月』あたりでの取材や執筆準備などで蓄えた知見、アイディアも活かされてのことだろう。

 さぁ、最後は大団円だ。家族関係、人間関係、登場人物のヒトトナリを見ていれば、家族崩壊、一家離散の哀しい結末を迎えるわけがない。どのようにオトシマエをつけていくかだけを楽しみに、残りの100頁は読み進められるはず。
 そして、「男女(おとこおんな)」と呼ばれ、多大なコンプレックスを抱えてここまで生きてきた悌子の見せ場もちゃんとある。槍投げの優等生だった悌子。戦中の竹槍教練の場で、軍人の指導教官を前に、槍の使い方はそうじゃないと、大きな放物線を描くべく、「んぬぅやぁっ!」と奇声一発、竹槍を遠投してみせる(もちろん、大目玉だ)。この前フリが、いい感じで活きてくる。

 涙なくして読めない大きな大きな家族愛の物語。最後にまた、この大音声を、読者は聞くことができる。
 お楽しみに!

 タイトルの「かたばみ」は、カタバミ科の多年草のこと。花言葉は、「母の優しさ」だ。

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Posted by ブクログ 2024年03月08日

戦時中、戦後の日本で、強い意志を持ち暮らしている人たち。
いろんな子供への接し方があるものだ。

連続テレビ小説を観ているような感じ。

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