木内昇のレビュー一覧
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鈴木保奈美さん曰く「読む朝ドラ」
戦中戦後の日本。市井の人々を描く。
元槍投げ選手でガタイの良い母、悌子。
ちょっと頼りないけど
優しい父、権蔵。
真っ直ぐに育った清太。
この三人を取り巻く人々が、
また個性的で優しい。
親なら誰でも
悩みながら、正解のない子育てをしていく。育て方に100%の自信なんてないけど、
子を思う気持ちさえあれば、
きっと愛情として届くはず。
我が子にも届いていたら良いな。
かたばみ、変なタイトルだと思ったけど、
読後には
「最高のタイトルじゃん!」って思った。
登場人物のみんなが
相手を思い遣り、
前向きに生きている。
それを木内昇さんが
上手く描いてくれ -
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主人公は、和歌山の本草学者、畔田翠山。
植物だけでなく、自然の姿そのものに惹かれ、研究する、博物学者といったほうがいいかもしれない。人付き合いが苦手であったと伝わる。そこで、人ではないものと通じる、という設定になっている。中島京子さんの『かたづの』はカモシカと言葉を交わす設定であったが、これも大好物な世界観だった。
舞台は紀ノ國。赴くのは白山や高野山、師である小原桃洞や、京都の本草家山本亡洋は実在の人物だし、植物採集に赴く地も現実である。
そこで交わす植物や、自然の象徴でもある天狗との交流が、翠山の研究理念に関わる、重要な部分を担っている。
百姓娘、お妙との交流も切ない。
ここに出てくる植物 -
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ネタバレ表紙からしてちょっと不思議風味
人と交わるのが苦手で、草木と語らう方が好きな十兵衛が
山で出会ったのは天狗だった。
畔田翠山という実在の人物を基にした物語
作中の画は実際彼の描いたもの
こーゆー丁寧にしっかり見て描けるっていいよなーーっと思う
亡くなった父が蔓をつたって降りてきて
語らったりとか、ちょっと梨木さんの掛け軸から現る友人とか思い出した。
こーゆーするりと現にそうじゃないものが入り込んでくるところめっっちゃ好きー
結構自己評価低めな割に結局一度も自分を曲げてない感のある十兵衛、いいわー
折々に、ちょっとずつ草木だけじゃなくていろんなものが見えてきてなんとゆーか心がレベルアップ?してく -
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ネタバレ以前、文庫版で読んだけれど、単行本で再版になったのでまた読みたくなって。
文化・文政、あるいは天保あたりの、ある一年間の主婦の日記である。
江戸の行事や風物詩が細かに描かれ、江戸庶民の暮らしが偲ばれる。
日記の書き手は、お葛(かつ)27歳。亭主・辰三(たつぞう)と、神田で小間物屋を営む。十歳の長男・辰吉(たつきち)、七歳の長女・お延(おのぶ)、住み込みの使用人・清(せい)さん(30歳?)との五人暮らし。
・よく登場するお恒(つね)さんは、大店の扇子屋のお内儀で、地主。差配は大家に任せている。
・大家さんはおおらかで頼りになるいい人だが、お内儀さんのお佳(よし)さんは、憎まれ口と眉間のシワがす -
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太平洋戦争が始まった時ペルリによって武力的に開国を迫られた我が国の、これこそ最初にして最大の苛烈極まる返答であり復讐 維新以来我ら祖先の抱いた無念の思いを、一挙にして晴すべきときが来たと喜ぶ者もいた。実に執念深いと思うが、昭和初期の人々からすれば、幕末の出来事などまだ身近だった。
さて、その不平等条約の数々は、どのようにして結ばれたのか。長らく続けていた鎖国を外圧により開かされ、急遽幕府は外交を司る新たな部局を設けた。しかし何分経験者が少なく、これまた鎖国の影響で、どの国とどの国の仲が悪いのか、など基本的な外国事情がさっぱりわからない。下手をすると貿易をしている薩摩の方が通じているくらいだ -
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ネタバレ戦前戦後、苦い経験をたくさん重ねて、どんどん家族の絆が強くなっていく。清太の球威を増したボールをへっぴり腰でキャッチする権蔵がいい。たまらなくいい。権蔵と秘密特訓する悌子ももちろんいい。
権蔵が清太を子ども扱いせずに大人の言葉で話しかける。わからない言葉は辞書でひけと。言葉は自分を支えることがあるからと。どんどん子煩悩になっていく権蔵に感情移入しながら読んでいった。
悌子の先輩、吉川先生の「少国民である前に、すでにひとりの立派な人間です。」という考え。あの時勢で何人の教師がもっていたんだろう。終戦前は政府の、終戦後はGHQの言いなりになった教頭のような大人が多かったにちがいない。「黙って従って -
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ぜひともNHKの朝ドラにしてほしい。
キャストは誰がいいかなと考えるのだが、どうにも主人公・山岡悌子のイメージの女優さんを思いつかない。いや、松下由樹さんがピッタリだと思うのだが、少し年齢が合わないか。他にガタイのいい女優さん、いたっけ?
演技ができれば、オリンピック選手の北口榛花さんがいいかもな。
第二次世界大戦前後の混乱の中の話。
後から考えると、主人公・悌子は、意志の強いしっかり者のようでいて、大事な決めごとを決める時には流れに身を任せていることに気づく。この時代においては仕方ないというか、大方の人がそうせざるを得なかったのかもしれない。
それでも悌子は良い人に囲まれていて、いろいろな -
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野球の創成期、「野蛮」だの「時間のムダで有害」だのといわれていた時代のお話。主人公は正選手ではなく、現役時代に正選手になれなかったコーチです。
なにかとモヤモヤ悩んでる主人公、一筋縄ではいかない登場人物たち、家族や職場の人々、派手な展開はないのに読めば読むほどみんな輝いて見えるのです。行間に一人ひとりの人生がにじんでくるかんじ。他の作家ではなかなか味わえない気がします。
人はどの時代も悩んで成長して挫折して精一杯生きてるんだなとしみじみ思わせてくれる木内作品が大好きです。
奇しくも「高校野球の弊害」がネットで叫ばれる2025年夏。様々な価値観を飲み込んで、素晴らしいスポーツであり続けてほ -
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紀伊国(きのくに)の本草学者・畔田翠山(くろだ すいざん)を初めて知った。
「研究する人」の集中力には、本当に尊敬しかない。
翠山の幼名は十兵衛。
人と話すことが苦手で、小さな頃から野山を駆け巡り、草や木を愛でてきた。
小原桃洞(おはら とうどう)は紀州の藩医。藩の本草局(ほんぞうきょく)に籍を置き、自宅の離れでも塾を開いて本草学を教えている。十兵衛も塾生の一人となり、生涯の師と仰いだ。
元服の前の年、岩橋(いわせ)の里山にこっそり入って天狗に遭って以来、十兵衛の周りでは不思議なことばかり起きるようになる。
いや、それはいつでもどこにでも、大昔から普通に存在しているものなのだけれど、十兵衛