木内昇のレビュー一覧
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ネタバレ☆4.5
時追町の卜い家(12月1日)
>>伊助にとっての桐子が桐子にとっての占いだったのだろう。ともすると依存と化す危うい拠り所。
キッパリ終わるでもなくまた繰り返してしまいそうなオチが生々しくて良い。また、占いとは何かの捉え方が私の辿り着いたところととても似ていて共感を覚えた。
山伏村の千里眼(12月2日)
>>占いに携わる者への教訓のような苦い話だった。
嘘をついて適当にあしらった杣子にも、自分の心や杣子の言葉と向き合わず弱い心を庇うのみだった女にも、そして家庭内暴力に走った夫にとっても元々小狡い人格だったのが人間の屑にまで堕ちて、皆に罰が下ったような結末であっ -
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「この感想をご覧の方々、この本をそこいらの時代小説といっしょにされちゃあ困っちまうぜ。そう思わねぇか、完治」と、同意を求める主人公惣十郎。
「わっちも含めて個性豊かで人情味あふれる登場人物が読み手にとっちゃあ面白さこの上なしに仕上がってますぜ」完治もまたそれに従う。
そんな二人を横目に佐吉は「さっき書肆を覗いたんですがね、売り切れ御免入荷待ちってなぁ札が貼られて驚いたぁ次第で」
という感じで江戸の言葉で本作は綴られて、最後まで読み飽きさせない。
北町奉行所定町廻同心の服部惣十郎が、取り巻きの完治と与助、佐吉と共に巻き起こる怪事件を次々と解決に導く、いわばミステリー要素も含んだ捕物帖なのである -
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ネタバレお江戸人情捕物噺…鬼平犯科帳等あまたの傑作を生んだジャンルで、最早出尽くしていると毎度毎度思いつつ、このジャンルからまたしてもとんでもない傑作が生まれた。
まずキャラクター設定が、とにかく絶妙に上手い。シリーズ物で何作も出てきたような個性の味付けを最初からきっちり纏わせるのは相当な力量だと思うのだが、主要登場人物だけでなく結構な端役にまで、その個性を間とさせているのだからすごい。
と書くと、キャラの魅力で読ませる小説かのようだが、それだけではない、ストーリー構成も抜群に上手いのだ
薬問屋の火事に始まる物語は、霊感商法詐欺事件などいくつかの事件を解決していく描写を追いかけていくうちに、当時で -
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初めての木内昇さんの作品。なんと静謐な文章でしょう。読後、じんわりと世界観に浸ってしまいました。
物語は、幕末の木曽路薮原宿。木曽路では奈良井宿が有名ですが、奈良井宿の隣の「お六櫛」の生産で有名な宿です。主人公はそのお六櫛を代々作る家に生まれた少女の登瀬。登瀬の父は神業の技術を持つ、超寡黙な櫛引職人。でも、その技を引き継ぐのは男子のみ。木曽路の山中で、ずっと男子が継いできた技なのです。
が、登瀬は女でありながら、父の神業の技術を継ぎたいと精進を重ねていく話です。
当然、周囲の村人はもちろん、家族の母も妹からも理解を得ることは難しい。そんな中で、父ちゃんが寡黙な中で登瀬を守るんです。もう父ちゃ -
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物語は蔦屋重三郎の死後、山東京伝や曲亭馬琴などの戯作者が活躍している江戸後期時期。京伝は押しも押されぬ人気作家であり、馬琴は『南総里見八犬伝』の執筆を始めようかという時期。
当時の新潟といえば、江戸からしてみれば未知の国。豪雪地帯での暮らしなど想像もつかない。さらに鈴木牧之が物語ではない、現(うつつ)であると語っている奇譚。送られてくる物語に惹かれた京伝は、出版を試みるが、実績のない書き手であるので、伝手のある出版社は何色を示すばかり。京伝の死後は、馬琴が引き受けたかに見えたが・・・。
内容についてはここで書けないが、いやもう、読んでいて儀三治(鈴木牧之)の胸の内を図ると、如何ともし難い心 -
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ネタバレ占いをテーマに大正時代を舞台にした女性特有の悩みや苦しみ、欲求を描いた7編。
女性心理の描写がうますぎて読みながら色んな感情が巡りました。たまにそれぞれのお話が繋がったりもしていてとても面白い。どのお話も重暗すぎる悩みのお話では無いところが個人的には良かったです。
・時追町のトい家
自立した女性が恋に悩み占いにハマる話。
占いにハマっていくさまがリアル。占ってもらった結果をまとめて統計しようとしてるところが桐子さんの人柄が出てて面白い。ただ、そんな男早く切ってしまえばいいのにと何度も思ってしまうくらい、桐子さんが惹かれて、縁を切れなくなった男性に一切魅力を感じなかった…
・山伏村の千里眼