木内昇のレビュー一覧
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ネタバレ戦前戦後、苦い経験をたくさん重ねて、どんどん家族の絆が強くなっていく。清太の球威を増したボールをへっぴり腰でキャッチする権蔵がいい。たまらなくいい。権蔵と秘密特訓する悌子ももちろんいい。
権蔵が清太を子ども扱いせずに大人の言葉で話しかける。わからない言葉は辞書でひけと。言葉は自分を支えることがあるからと。どんどん子煩悩になっていく権蔵に感情移入しながら読んでいった。
悌子の先輩、吉川先生の「少国民である前に、すでにひとりの立派な人間です。」という考え。あの時勢で何人の教師がもっていたんだろう。終戦前は政府の、終戦後はGHQの言いなりになった教頭のような大人が多かったにちがいない。「黙って従って -
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ぜひともNHKの朝ドラにしてほしい。
キャストは誰がいいかなと考えるのだが、どうにも主人公・山岡悌子のイメージの女優さんを思いつかない。いや、松下由樹さんがピッタリだと思うのだが、少し年齢が合わないか。他にガタイのいい女優さん、いたっけ?
演技ができれば、オリンピック選手の北口榛花さんがいいかもな。
第二次世界大戦前後の混乱の中の話。
後から考えると、主人公・悌子は、意志の強いしっかり者のようでいて、大事な決めごとを決める時には流れに身を任せていることに気づく。この時代においては仕方ないというか、大方の人がそうせざるを得なかったのかもしれない。
それでも悌子は良い人に囲まれていて、いろいろな -
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野球の創成期、「野蛮」だの「時間のムダで有害」だのといわれていた時代のお話。主人公は正選手ではなく、現役時代に正選手になれなかったコーチです。
なにかとモヤモヤ悩んでる主人公、一筋縄ではいかない登場人物たち、家族や職場の人々、派手な展開はないのに読めば読むほどみんな輝いて見えるのです。行間に一人ひとりの人生がにじんでくるかんじ。他の作家ではなかなか味わえない気がします。
人はどの時代も悩んで成長して挫折して精一杯生きてるんだなとしみじみ思わせてくれる木内作品が大好きです。
奇しくも「高校野球の弊害」がネットで叫ばれる2025年夏。様々な価値観を飲み込んで、素晴らしいスポーツであり続けてほ -
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紀伊国(きのくに)の本草学者・畔田翠山(くろだ すいざん)を初めて知った。
「研究する人」の集中力には、本当に尊敬しかない。
翠山の幼名は十兵衛。
人と話すことが苦手で、小さな頃から野山を駆け巡り、草や木を愛でてきた。
小原桃洞(おはら とうどう)は紀州の藩医。藩の本草局(ほんぞうきょく)に籍を置き、自宅の離れでも塾を開いて本草学を教えている。十兵衛も塾生の一人となり、生涯の師と仰いだ。
元服の前の年、岩橋(いわせ)の里山にこっそり入って天狗に遭って以来、十兵衛の周りでは不思議なことばかり起きるようになる。
いや、それはいつでもどこにでも、大昔から普通に存在しているものなのだけれど、十兵衛 -
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ネタバレ幾度も象徴的に出てくる言葉「美っついのう」。
まだ訪れたことのない土地(紀州)なのに、幻想的な美しい光景が目の前に現れてくる。
木内さんの文章の端々から、声を出さない草木たちの語り合う声が聴こえてくるようだった。
「この世に在ることは、もうそれだけで意味のあることなんや。大きな役目を負うておることなんや」
「草木には越えぬほうがよい境があるように思います。生育に合う合わんゆうだけでなしに、まわりの草木と話し合うて、そこにおろうと決めた種も、中にはあるんやと思うのです」
草木も花も魚も獣も鳥も、姿や暮らしぶりは異なっても互いに関わり合って生きているのだ、と改めて思う。
同じ土地に生きる人間は -
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ネタバレ江戸時代の後期、越後国の生活風俗を描いた「北越雪譜」という本が鈴木牧之(儀三治)という作家によって書かれ刊行されているという史実に基づき、刊行までの紆余曲折を描いた小説。
鈴木牧之という作家や北越雪譜という本は全く知らなかったが、刊行に至るまでの紆余曲折には山東京伝や曲亭馬琴、京伝の弟京山、十返舎一九や二代目の蔦屋など、そうそうたるメンバー(タイムリーなことに大河ドラマの直後あたり)が関わっていて、谷津矢車の「蔦屋」をこないだ読んだことも重なり、意外な縁を感じて読むことができた。
京伝が刊行を約束してから40年…雪国の人は粘り強いと聞くが、それにしてもよく辛抱したものだ。丁寧に根気よく気持 -
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最高でした!ハズレのない木内昇さんの作品の中でも優勝です!
幕末は殆ど覚えてなくて苦手意識がありましたが、読んでいてわかりにくい箇所は全くなく、おもしろくておもしろくて、とてもたのしめました。
本書は登場人物はやたら多いうえに、なんと章ごとに43回も語り手が代わります。
だけどそれぞれが短いので読みやすく、語り手が自身の内面や、新撰組メンバーの印象を説明してくれるので人物像がよく理解できるし、時系列に沿って起こった事柄も簡潔に書かれていてほんとうにわかりやすい。
離れていても、共に戦わなくてもつながっている仲間同士の絆や、会津藩への恩義、武士としての生き様などにグッときてボロボロ泣きました。
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読み進めていくにしたがって敬虔な心持ちになり、自然の神秘につつまれていく感覚を覚え、生きとし生けるものの心が目に見えるようでした。そして、現実と幻想の世界を行き来する小説の構成に引き込まれました。登場する植物の描写も、これまた美しく、木内昇さんの力量に圧倒されました。
本草学(薬用とする植物などを研究する学問)を志す畔田十兵衛(学者名、翠山)が主人公。草木と語らうことができても、人付き合いを苦手とする青年です。本草学の師である小原桃洞やその孫、良直たちとの関わりの中で、十兵衛の心は少しずつ雪解けしていきます。
心でものを観ることができる桃洞先生と十兵衛の発する言葉は、人生の真理をついており