木内昇のレビュー一覧

  • 奇のくに風土記

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    ネタバレ

    幾度も象徴的に出てくる言葉「美っついのう」。
    まだ訪れたことのない土地(紀州)なのに、幻想的な美しい光景が目の前に現れてくる。
    木内さんの文章の端々から、声を出さない草木たちの語り合う声が聴こえてくるようだった。

    「この世に在ることは、もうそれだけで意味のあることなんや。大きな役目を負うておることなんや」
    「草木には越えぬほうがよい境があるように思います。生育に合う合わんゆうだけでなしに、まわりの草木と話し合うて、そこにおろうと決めた種も、中にはあるんやと思うのです」

    草木も花も魚も獣も鳥も、姿や暮らしぶりは異なっても互いに関わり合って生きているのだ、と改めて思う。
    同じ土地に生きる人間は

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    2025年08月02日
  • 雪夢往来

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    ネタバレ

    江戸時代の後期、越後国の生活風俗を描いた「北越雪譜」という本が鈴木牧之(儀三治)という作家によって書かれ刊行されているという史実に基づき、刊行までの紆余曲折を描いた小説。

    鈴木牧之という作家や北越雪譜という本は全く知らなかったが、刊行に至るまでの紆余曲折には山東京伝や曲亭馬琴、京伝の弟京山、十返舎一九や二代目の蔦屋など、そうそうたるメンバー(タイムリーなことに大河ドラマの直後あたり)が関わっていて、谷津矢車の「蔦屋」をこないだ読んだことも重なり、意外な縁を感じて読むことができた。

    京伝が刊行を約束してから40年…雪国の人は粘り強いと聞くが、それにしてもよく辛抱したものだ。丁寧に根気よく気持

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    2025年08月02日
  • 奇のくに風土記

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    ネタバレ

    なんとまあ!清々しく静謐で気持ちのよい本だった。自然のマイナスイオンで浄化された気持ち。江戸時代の和歌山で植物を研究する学者のお話。梨木香歩さんの『家守綺譚』と少し似た味わいもあり、こういう世界が好きな私の心にしっくり馴染んだ。

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    2025年07月21日
  • 奇のくに風土記

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    尽きせぬ想像力、感性が漲っている。人物造形が素晴らしく、一人ひとり(草木や天狗らも)丁寧に活写。奇のくに(紀伊国)の方言もまた純朴で心地良い。十兵衛の成長が感慨深く、彼が描いたとされる挿絵に思わず見入った。

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    2025年07月09日
  • かたばみ

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    面白かった〜!

    「登場人物みんな良い人」みたいな小説好きじゃないけど、これはみんな良い人でみんな好き。特に権蔵と茂生が好き。

    戦争の時代って、ほんとコロナ禍と一緒だなと思いながら読んだ。コロナの時に感じていたこと、抱いていた不信感。
    共感出来る部分が沢山あった。
    戦争から一体何を学んだのかな?同じことを繰り返しているんだな。

    朝ドラになってほしいけど、NHK好きじゃないしな。


    ちなみに悌子は浜口京子、権蔵は佐藤健で脳内キャスティングされた。

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    2025年07月04日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    最高でした!ハズレのない木内昇さんの作品の中でも優勝です!
    幕末は殆ど覚えてなくて苦手意識がありましたが、読んでいてわかりにくい箇所は全くなく、おもしろくておもしろくて、とてもたのしめました。
    本書は登場人物はやたら多いうえに、なんと章ごとに43回も語り手が代わります。
    だけどそれぞれが短いので読みやすく、語り手が自身の内面や、新撰組メンバーの印象を説明してくれるので人物像がよく理解できるし、時系列に沿って起こった事柄も簡潔に書かれていてほんとうにわかりやすい。
    離れていても、共に戦わなくてもつながっている仲間同士の絆や、会津藩への恩義、武士としての生き様などにグッときてボロボロ泣きました。

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    2025年06月30日
  • 奇のくに風土記

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    読み進めていくにしたがって敬虔な心持ちになり、自然の神秘につつまれていく感覚を覚え、生きとし生けるものの心が目に見えるようでした。そして、現実と幻想の世界を行き来する小説の構成に引き込まれました。登場する植物の描写もこれまた美しく、木内昇さんの力量に圧倒されました。

    本草学(薬用とする植物などを研究する学問)を志す畔田十兵衛(学者名、翠山)が主人公。草木と語らうことができても、人付き合いを苦手とする青年です。本草学の師である小原桃洞やその孫、良直たちとの関わりの中で、十兵衛の心は少しずつ雪解けしていきます。

    心でものを観ることができる桃洞先生と十兵衛の発する言葉は、人生の真理をついており、

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    2025年06月22日
  • かたばみ

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    良い本だったなあとしみじみ振り返っている。人と人との縁、家族の形、主人公、悌子の誠実さや権蔵、清太の真っすぐさに感動しっぱなし。心が温かくなる読書時間になりました。

    ※何があっても夫の悪口は言わないのが信条。子どもが人生の途中でくじけそうになった時、どうせ自分はしょうもない人間の子だからと、あっさり崩れていく。
    ※期待はあらゆる苦悩のもと(シェイクスピアの言葉)
    ※苦労があっても少し離れたところから自分を観察してみると案外面白いことが見えてくる。

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    2025年06月17日
  • 櫛挽道守

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    途中から、止まらなくなった

    それぞれの人生の道程と、掛け違いや和合が、多くの言葉の積み重ねで紡ぎ出されている。
    途中からバラバラになった家族の拍子が、相容れないと思っていた夫の拍子とそろっていって収束する。

    喜和が切ないなぁ
    登勢が訪ねた時に世話を焼くところとか、やっぱり姉妹で母だよね…と

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    2025年06月17日
  • 雪夢往来

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    本当にこの人の本は毎度毎度、心深く揺さぶられる

    一生をかけて励んだものが実を結んだことではなく、一生をかけて夢中になれるものがあったこと

    雪国の深みに思いを馳せる

    地に足をつけながらも、一生をかけて夢に向き合ってきたこと

    各々が各々なりの道に実直に向き合う姿
    どんな人物であれ、木内昇さんの話に出てくる人たちはとても大切な同胞のように感じられる

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    2025年06月05日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    はじめての幕末ものということでこちらを選んでみました。新選組とその時代を初めから終わりまで粛々と。切なくて苦しくて清々しい物語でした。

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    2025年05月27日
  • かたばみ

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    ちょうど朝ドラあんぱんも見ていて、脳内で描きやすかったです。
    戦争がいかに人間を愚かにさせたか、その中でも悩みながらそれに流されない人もいた。
    色んな人の生活と心が描かれてきて、とても勉強になるじんわりと心にくる本でした。
    実写化のぞみます!(脳内では江口のりこさん、高良健吾さんでした笑)

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    2025年05月19日
  • かたばみ

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    戦争に翻弄されたある家族の物語。分厚さの割にグッと引き込まれて一気読み。出てくる人全員キャラが立ってて読後感もスッキリ。良質な朝ドラ一本観たみたいだったー。

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    2025年05月18日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    先日、燃えよ剣を読んで、なんとなぁ〜く新選組の時代背景や、人の名前が分かりました。

    出来ればこの記憶があまり薄れていないうちに、もう一冊読んでみたいなぁと思っており、みんみんさんやひま師匠が最近よく読んでおられていた木内昇さんの作品を読んでみました。

    木内昇さんは、「かたばみ」がとても読みやすく、良い本だったので。
    女性作家さんということもあるのか?
    想像通り大変読みやすかったです。

    物語は、土方歳三、佐藤彦五郎、沖田総司、清河八郎、近藤勇、鵜殿鳩翁、山南敬助、山岡鉄太郎、芹沢鴨、斎藤一、井上源三郎、永倉新八、原田左之助、武田観柳斎、藤堂平助、伊藤甲子太郎、それぞれに焦点をあてながら、時

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    2025年05月11日
  • よこまち余話

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    摩訶不思議な時間や存在が
    手触り感をもって
    通り過ぎていく小説。

    この世ならぬ世界とこの世を
    結ぶ、能の力も描かれ
    とても魅力的な世界観

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    2025年05月05日
  • かたばみ

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    分厚くて読むのに時間がかかってしまったが、とても面白かった。
    市井の人たちが戦争などによってそれぞれ苦難を経験し、それを乗り越えようとたくましく生きていく姿がいきいきと描かれる。登場人物はそれぞれ苦悩を抱えていて、読者は誰かに感情移入してしまうのではないかなあ。自分の場合は権蔵。

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    2025年05月05日
  • 櫛挽道守

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    はい木内昇さん3作目は『櫛引道守』です
    またしても幕末が舞台です

    と、その前に…本作は第8回親鸞賞受賞作とのことです

    Σ(゚Д゚)

    なんや!親鸞賞て!そんなんあったんか!と気になってちょっと調べてみました

    親鸞を記念した一般財団法人本願寺文化興隆財団主催の文学賞
    日本人の精神文化(宗教、思想、倫理等)に根ざしたフィクション文学(詩歌、句、戯曲、小説)の最も優れた作品に与えられる
    過去にはあの瀬戸内寂聴さんが選考委員を務めていたことも

    って寂聴さん宗派違うけど良かったんか?!さすが親鸞聖人懐深いな
    (親鸞は浄土真宗、寂聴さんは天台宗)

    しかしそんな文学賞があったなんてぜんぜん知らんか

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    2025年05月01日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    人気の新選組ものではあるが、史実である討ち入りや合戦の場面をドラマティックに描くのではなく、それぞれの隊員の目線や感情を綴り、それを紡いでいきながら時間の経過も自然に描いていく構成は新鮮で、作品世界に引き込まれました。

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    2025年05月01日
  • かたばみ

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    戦争によってみんな辛く悲しい経験をし、それでも「いっしょけんめい」生きている。登場人物全員を応援したくなるあたたかな物語。

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    2025年04月25日
  • 雪夢往来

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    昔、どういうきっかけで手に取ったのか「北越雪譜」を読んだことがあって、原野に燃える火の話は覚えていました。新潟は石油(臭水)が出るので、夏に原油が自然発火するのでしょう。猫又がなぜ出るかはわかりませんが⋯w

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    2025年04月20日