木内昇のレビュー一覧

  • きみがなきあと

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    木内さんの得意?な幕末設定で、比較的マイナーな野村望東尼の半生に焦点をあて、高杉晋作との出会いと別れをクライマックスに、裏切られていった勤王の志士たちの運命を素晴らしい文章で語りきった長編小説。何よりも労咳で倒れた高杉とのやりとりと別れの場面が素晴らしい内容で、歌にこめられた思いにも感動。フィクションとはいいつつも歴史の流れもしっかり追える。志士をかくまった勤王派の女性の受け身の流され物語かと最初は流してたけど、勘違いも甚だしかった。やはり木内さんの小説は素敵だ。

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    2026年06月05日
  • 火影に咲く

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    幕末、勤王の志士たちや新選組藩士たちと、彼らとゆかりのあった女性。そのカップルの物語。

    きな臭くて血生臭い、歴史が動いた動乱の時期であっても、男と女の想い想われる恋慕の模様は変わらず(沖田総司は恋愛とはまた違った想いだったかもしれないが)…と書くと「男とか女とか旧態依然の価値観、老害タヒね」と言われるのかもだけど、すまん昭和40年代生まれの表現はどうしてもこうなってしまうんよ。

    政治や権力争いは大切な事かも知れないが、大切な人との事をないがしろにしてまで貫くほど価値観があるのかね?生き方としての優先順位的にも大切なこともあると思うで。はき違えるなよ、(現代の)維新の人も新選組の人も

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    2026年05月14日
  • 雪夢往来

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    いい本だったなぁ。しみじみと胸に沁みて読み終わるのが寂しいぐらいに。上手いなぁ木内さん。こんなにも多様な味わいのある言葉を駆使して豊かな物語を編むことができる作家さんなかなかいないんじゃないかな。毎日大した時間も労力もかけられてないようなろくでもない大量の新刊が次々出てすぐに返品されて廃版になるような現代において、これほどまでに誠心誠意、精魂こめて一冊の物語を紡ぎ、版元が確かな目でそれを見極めて社運と財力を賭けて刷って本にしてようやく世の中に出回り、その本を人々が楽しみに待ち、ありがたく手にして、辛いことも少なくないだろう日常の折々に楽しんだ時代に思いを馳せる。江戸時代の識字率や豊かな読書文化

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    2026年05月09日
  • 惣十郎浮世始末

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    捕物帖の新たな傑作誕生!という今回のオビ文句は本作にぴったりと感じた。読売新聞連載中から話題となった本作は、天保の改革末期のデフレスパイラル下において、種痘に関する人痘・牛痘の問題を背景に起きた殺し事件を追及する捕り物ストーリーに、亡くした妻への後悔と死の真実が絶妙に絡んでいく。木内さんの文章の巧さというか、惣十郎とその配下や想い人とのキャラも雄弁で、関係性もこまやかに描いているので、他の時代物量産作品とは明らかに別格さを感じる。現在続編が連載中でまさに佳境に入るところ。書籍化を楽しみにしている。

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    2026年04月27日
  • 雪夢往来

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    越後の縮仲買商人・鈴木牧之が、当地の風俗や雪国の生活を活写した「北越雪譜」を世に出すまでの歳月を描いた長編歴史小説。

    牧之を始め、戯作者の山東京伝、その弟・京山、滝沢馬琴、板元・耕書堂の二代目である蔦屋重三郎など実在した人物が登場し、それぞれが絡みあう人間ドラマを繰り広げる。

    物語の発端は、牧之が、行商で訪れた江戸で、人々の越後についてのあまりの無知さに落胆したことにあった。
    彼は故郷のことを知らしめたい思いに駆られ、越後の綺談と風俗を描いた本の出版を目指す。

    やがて、彼の執筆は人気偽作者・山東京伝の目に留まり、出版へと動き始めるが、板元・二代目蔦重からの五十両という多額の金銭要求に耐え

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    2026年03月05日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    新選組を題材とした本は何冊か読んだが、私の中ではこの本が1番好き。目線が変わっていくと同じ事件でもこの人はこういう風に考えていたのか、とその人が好きになる不思議。結果全員好きになる笑

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    2026年03月01日
  • 奇のくに風土記

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    作品紹介・あらすじ

    心震わせる生きもの賛歌。
    美(う)っついのう。
    紀州藩士の息子・十兵衛(後の本草学者・畔田翠山(くろだすいざん))は、幼いころから草花とは自在に語らうことができるのに、人と接するとうまく言葉を交わすことができずに育った。ある日、草花の採取に出かけた山中で天狗(てんぎゃん)と出会ってから、面妖な出来事が身の回りで次々と起こり……。若き本草学者の、生き物や家族、恩師との温かな交感と成長を描く、感動の時代幻想譚。

    第53回泉鏡花文学賞受賞

    *****

    「梨木香歩の『家守綺譚』のような小説を教えて」とAIに尋ねたところ、「こんなのどうでしょう」と推薦されたのが本書。いまだに

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    2026年02月13日
  • 櫛挽道守

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    とても素敵な小説。伝統工芸のお六櫛を題材に、受け継がれていく技術を家族の物語として昇華させている。幕末の木曽というと、藤村の夜明け前をイメージするが、藪原という中山道のマイナーな拠点を舞台に、地味といえば地味だけど、跡取りを亡くした家族の中で姉と妹の確執、女性としてのハンディ、突然やってきた有能な夫との関係など丁寧に描かれる。亡くした弟の絵巻のエピソードが最後で種明かしされるインパクトも十分。優しく強い物語を読んだ。

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    2026年02月12日
  • 雪夢往来

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    越後塩沢の縮や質屋で生計をたてている鈴木儀三治は、父の跡をとって商業を生業としている。ある時江戸に滞在し、雪の話をしたが江戸者には何の話をしているか伝わらず、嘘をついているとさえ思われてしまう。越後のことを江戸の者に知ってほしいと越後の話を書き溜めた。

    せっかく書いたものなので、出版までいかなくとも何かにして欲しいと人を介して山東京伝にお願いしたところ、手直しする形で出版できるかもという話になったが、出版元が見つからない。耕書堂も鶴屋さんも西村屋さんも二代目。板木代50両払うならという出版元を見つけたが、やはりそこまでの額は出せない。次に大阪の方での出版を試みるが、結局こちらもダメ。
    山東京

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    2026年02月05日
  • 雪夢往来

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    雪国越後魚沼の生活を記し、江戸時代後期に当時の大ベストセラーとなった『北越雪譜』
    本作はその『北越雪譜』に関わった四人の「もの書き」たちの物語である

    天賦の人、山東京伝
    執念の人、曲亭馬琴
    憧憬の人、山東京山
    夢中の人、鈴木牧之

    それぞれが「もの書き」としての譲れない矜持を持ち、それぞれが木内昇さんの分身だったんじゃないかな〜と思いました

    それにしても曲亭馬琴の描かれようが非道いw
    まぁ癖のある人だったのは間違いないようですが、なんていうか広げ様がえげつない
    小説家ってやっぱすごいな〜
    特に時代小説(歴史小説)は、なんとなくある人物像をどかんと覆してきたりして、しかもなんか納得させられた

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    2026年02月05日
  • 奇のくに風土記

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    ネタバレ

    本草学を志す十兵衛の成長と、その周りで起こる不思議な出来事が書かれた内容。
    薬にするための植物を探して育成したり、あるいは薬にする話などを中心に、その植物に関連した化生の類と遭遇する話が書かれる。
    他人との交流が下手な十兵衛が周囲の人々の影響を受けて段々と大人になっていく様や、風情ある野山の描写などが好み。
    見たことないジャンルの組み合わせだなと思ったが、どちらも好みなので全然よかった。

    個人的には、十兵衛一行がある山に植物採取をしに行った際、遭遇した山伏に山を荒らすのではと勘繰られたシーンで、空気を読まずに植物に関する熱い語りをした結果、ああこいつら本当に植物の事しか頭にないから荒らすわけ

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    2026年01月29日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    ネタバレ

    現在、大河ドラマ『新選組!』にハマっている私が、組!が好きなら是非この本も、とSNSのフォロワーさんからおすすめされて読んだ小説。

    タイトルにある「青嵐」とは、「初夏の青葉を揺すって吹き渡るやや強い風」のことだそう(コトバンク参照)
    なるほど、登場人物それぞれ青さがある……!

    永倉新八は自分は普通の人間、周りの人達のようになにかに秀でているわけではないと思い込み、序盤の土方歳三は定職に就けず家族から白い目で見られていて……
    アイデンティティの揺れや自己評価の低さに共感できる部分があると思った。
    そして、自己評価と他者から見た様子のギャップが面白いな……と感じた
    (例えば、沖田・斎藤は永倉新

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    2026年01月22日
  • 万波を翔る

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    幕末に外交を担った幕臣田辺太一の焦燥感がビリビリと伝わる。曲者上司水野に鍛えられる太一。さあ、どうなる⁈

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    2026年01月22日
  • 転がるように 地を這うように ――私の杖となった文学の言葉たち

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    文学作品の中から
    ある一単語を抜き出し、
    それを軸に文学作品と木内さんとのかかわりを語る。

    いわゆる“文豪”といわれる方々の作品は
    なかなか読み方がわからなかったり、
    現代人には難しい本も多いので、
    そこに一定の角度をつけてくれるのはありがたい。

    この本はそこでとどまらず。
    最後に収録されているのは竹内浩三「筑波日記」
    大正10年に生を受けた彼の
    簡単な生い立ちと作品について語られた後、
    軍隊入隊後の筑波での訓練に明け暮れた日々を綴った
    日記が紹介される。

    作らない 飾らない 騙らない
    いろいろと修飾できなくもないけれど、
    どれも相応しいとは思えない。

    いま、そこにある、戦争というもの

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    2026年01月06日
  • 奇のくに風土記

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    「生きとるものは、そう容易く括れんのよ」
    実在の本草学者、畔田翠山(幼名十兵衛)を主人公にした、少し幻想譚も混じった歴史小説。

    主人公は人との交わりが下手、自分の感情を表情や言葉にするのが苦手で、嫌いな言葉だが今ならコミュ障と揶揄されるタイプの人物。だが、その観察力や洞察力や粘り強さなど、本草を学ぶ素質に溢れており、師匠の桃洞先生はしっかりとそれを認めていて、導いていく様子はとても良い。

    桃洞先生の孫、良直がまたいい味出してるんよねぇ、要らんことばっかり言うし、しゃべり方はケンカ腰が常で否定から会話を始め寄るし、どっちか言うたら彼の方がコミュ障っ気があると思うんだが…。それでも、コメディリ

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    2026年01月02日
  • 雪夢往来

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    良かった。たいへん興味深く読んだ。

    以前より北越雪譜は興味があり、手に取った事もあるものでしたが、著した人物については全く知りませんでした。
    この本で知ることが出来て良かった。

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    2025年12月30日
  • 奇のくに風土記

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    本草家畔田翠山、幼名十兵衛。小原桃洞を師に仰ぐ。本草学好きの紀州10代藩主徳川治宝にお目見えし、本薬園の手入れを任される。
    ある日岩橋のお山に行き、天狗に会う。その時持ち帰った定家葛を家に植えておいたところ、さわさわと葛を下って亡くなった父が降りてきて、まるで生きている時のように話をすることができた。それ以降、いろいろな不思議と出会うようになった。

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    2025年12月25日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    私の初めて読んだ時代小説!
    歴史小説であるが故に、登場人物たちの最後の結末はすでに決まっているものだったから覚悟しつつ読み進めていってたが、しんどいものはしんどい。一人一人の内面に焦点を向けて書かれているせいで、知らず知らずのうちにそれぞれに感情移入していくものだから、一人倒れ、二人倒れ……としていくのがまぁ本当に辛いししんみりと悲しい。が、それこそが魅力的であり、好きになるんだろうなぁと。判官贔屓といいたまえよ。
    悲劇性を書きたいのではなく、どこにでもいる、それこそ現代にいる様な悩みを抱えた若い人たちが、時代の勝者にはなれずとも、目指したものに進んでいく様がかきたかったのかなぁと勝手に思った

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    2025年12月18日
  • 奇のくに風土記

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    主人公は、和歌山の本草学者、畔田翠山。
    植物だけでなく、自然の姿そのものに惹かれ、研究する、博物学者といったほうがいいかもしれない。人付き合いが苦手であったと伝わる。そこで、人ではないものと通じる、という設定になっている。中島京子さんの『かたづの』はカモシカと言葉を交わす設定であったが、これも大好物な世界観だった。

    舞台は紀ノ國。赴くのは白山や高野山、師である小原桃洞や、京都の本草家山本亡洋は実在の人物だし、植物採集に赴く地も現実である。
    そこで交わす植物や、自然の象徴でもある天狗との交流が、翠山の研究理念に関わる、重要な部分を担っている。
    百姓娘、お妙との交流も切ない。
    ここに出てくる植物

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    2025年11月17日
  • 奇のくに風土記

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    読み始めて、大好きな「家守奇譚」を思い出しました。ただひたむきに植物に向ける愛情に、不思議な現象もなんだか不自然ではなく、すーっと受け入れられて清浄な気持ちになりました。

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    2025年11月04日