木内昇のレビュー一覧
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数ある新選組を題材に扱った時代小説の中でも、最もおすすめの一冊。
近藤勇が試衛館(天然理心流道場)の4代目師範の時代から、土方歳三が戦死したと言われる箱館五稜郭の防衛戦(戊辰戦争の最後の戦場)までを描いた小説。
■本書のここがおもしろい!
時代小説では通例、主人公たる史人にフォーカスし、主人公目線でストーリー展開されていきますが、本書はその主人公が章ごとに変わっていきます。
ある時は近藤勇の視点、またある時は斎藤一・藤堂平助等の隊士、そして時には敵方であった清河八郎等々、様々な史人の視点で物語は進んでいきます。
これがかなりおもしろい。
片側だけでなく、やる側/やられる側、双方の視点が書 -
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幕末期、外交と経済の側からみた政をひとりの若者の一代記をもって記してある。
安政の大獄~戊辰戦争に至るまでの歴史を改めて読み直した。教科書などでは分からなかった幕臣たちの悩みやら、生の声も聞こえてくる。
主人公の田辺太一も大きな波に揺さぶられたその一人。幕末という未だ且つて武士達が経験した事の無い時勢の時、命ぜられるままではなく自分で考え怖いもの知らずに意見してゆくさまはむしろ、気持ちがいい。自分で江戸っ子気質と言っているとおり、その軸のぶれない生き方は現代の世界にも1人ぐらいはいて欲しい、破天荒な男だ。
丁寧に歴史を読み直すいいきっかけとなった。 -
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幕末時代の小さな山村での話。当時の村々は家族のつながりが強く、男子は親の仕事と家を継ぎ、女子は嫁いで家を離れる。そんな繰り返しが当たり前だった。
何代にも渡って櫛づくりの技術を守り続けながら、生計を立てていた家で長女として生まれたトセ。彼女は女でありながら、家の中でひたすら櫛づくりに打ち込む父の姿にあこがれを持っていた。そして、父の技を受け継ぐはずだった弟の死がトセと一家の運命を大きく変えていく。
名もなき人々の日常や苦悩を描きながら、生前の弟の行動や訳アリな弟子入り志願者の登場など、ミステリー要素も盛り込まれる。さらに幕末の激しい社会のうねりがトセたちを翻弄する。
そんな変化がもたらさ -
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「くしひきちもり」そうそう、これがあった!
いいに決まっているので、とっておいたのです。と思って読んだのがもう2年前。
今さらですが~おすすめなので、ご紹介しましょう。
幕末の中山道、宿場町。
木曽山中で、一心に櫛を作る名人の父親を手伝う娘の登勢。
父の腕に憧れ、あとを継ぎたいと願いますが、娘には他所へ嫁ぐ縁談が来るだけ。
外の世界へ出るのが夢の妹、周りを気にする母親、才能ある優しい弟。
やがて訪れる、いくつかの別れ。
弟の友人は、幕末の空気を吸って、村を出ていきます。
父の腕を慕って弟子入りしてきた男とは、登勢は気が合わないが…?
神業と言われる父親の仕事ぶり、一生懸命ついて行こうとする -
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貧しい百姓に生まれ、長男でもなかったので実家も継げず、自分探しに明け暮れていた若者たち。が、時代は幕末だった。幕府に代わって朝廷が支配する世の中が来るかもしれない。何でもアリの動乱の時代。ひょっとしたら武士になれるかもしれない。自分で自分の生き方を決めることができるかもしれない。若者たちはわずかに見える希望の光を頼りに、幕末の嵐の中へ飛び込んだ。
近藤勇、土方歳三、沖田総司など新選組の主要メンバーを主人公とした短編作品をつなぎながら、新選組の存在価値を追求していく連作小説。
新選組とは不思議な集団だ。個性の強すぎるメンツが思うままに行動し、入隊と脱退を繰り返し、組織内での抗争もあった。頼り -
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時代は幕末、女性の櫛挽職人である登瀬の物語。
時代物で櫛を題材にしている地味な内容かなと思って読み始めたけど、いい意味で期待を裏切られました!心に響く傑作。読み応えがあり、展開も面白く引き込まれ、色んな意味で深い物語でした。
江戸時代の木曽山中、中山道沿いの宿場町藪原に伝わる梳櫛「お六櫛」。父吾助は神業を持つ職人。その父を尊敬し、技を継承したいと願う登瀬。でも女は嫁いで子をなすことが当たり前とされていた時代に、女が職人になりたいと思ったところで道は険しい。登瀬の櫛作りにかけた一途な半生。そして家族の物語でもある。弟が急逝したことでバランスが崩れた一家の母や妹の思い。それでも登瀬には常に櫛に対す -
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ネタバレ待ちに待った、木内昇の長編歴史ドラマ。
幕末といえば勤皇だ攘夷だと表舞台にたつ人物のものが多いが、さすが木内昇は違う。今でいう「官僚」幕臣の立場からみた歴史だ。それを、幕臣の次男という立場だが、傑出した才能で城勤に抜擢された、田辺太一に語らせた。
幕府は長崎海軍伝習所に直参の次男、三男から優れたものを送り込んでいた。そこには薩摩や長州からも優秀な人材が集められており、勝海舟も咸臨丸で教えていた。ここで太一が日本中の優れた若者と対峙したが、攘夷思想に染まることはなかった。江戸に戻ると、新たに設けられた「外国方」として幕臣になる。亜國、英国、仏国などが日本に押し寄せようとしていた・・・。
上司 -
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長屋のある路地で繰り返される、日々の営み、季節のめぐり、育ってゆく若者といった現実の中で、ふと現れるふしぎな出来事。"ふしぎさ"が最初は見間違いかとも思える丸窓や薪能などちょっとしたことだったのに、次第に"あきらかに現実的でない"度合いを増していくのがドキドキ、ぞくぞくする。ゆっくりと心臓の鼓動が早くなってくる感じ。「?」という思いから、「何なのだろう、なぜなのだろう」と考えだす静かな加速感がとても心地よい読書体験。いつのまにか浩三や浩一と一緒に、トメさんや齣江の少ない言葉や一瞬の表情から答えを探そうとしていた。
遠野さんが現れてから加速感は増して、齣江 -
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歴史は人の営みが重なり合って築かれるもの。物理法則のように因果律がしかと定まっている訳ではない。もちろん、負けに不思議の負け無し、などと言うように定石めいたものはあるのだろう。天の時、地の利をよくよく図り戦えば勝つ確率は高くなるのかも知れない。しかし一方で、勝ちに不思議の勝ちあり、とも言う。孫子の説く五道を見誤っても尚勝敗の行方は思わぬ方へ転がってゆく。その裏で動いているのは、役目の定まった将棋の駒でも白黒旗幟鮮明な碁石でもなく、泣いたり嗤ったりする人だろう。木内昇の小説はいつもそれがよく描かれている。
例えば、本書は幕末の話であるのに例の有名人が出てこない。徳川方の幕臣が主人公なので敢えて