木内昇のレビュー一覧

  • 万波を翔る

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    幕末を扱う作家の中で、私の好きな作家の一人で、久しぶりに読んだ作品であったが、本作品も面白く読めた。明治維新という史実から見れば、負け組であるが、生き様では決して負けていないという者に焦点を当て、颯爽と描くところが著者の作風の一つであると考えるが、これが大いに発揮されている本作品と思う。

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    2023年02月12日
  • 化物蝋燭

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    江戸を舞台にした奇譚集だが、何だか一話完結の短編で終わらせるのがもったいないような、物語の魅力をぎゅっと濃縮した7篇が収録されている。
    例えばラストの「夜番」は、憑き物を見ることができるすっとぼけた感じの主人公の男と、一膳飯屋のお運びをする肝っ玉姐さんのキャラクターが印象的だ。掛け合い漫才のようなやり取りも楽しいし、どこか江戸っ子の人情を感じることができる展開もいい。この二人が様々な事件を解決していく形の連作短編にでもすれば、楽勝で一冊本ができそうなほど面白い設定なのに、惜しげもなく一本の短編でスパッと完結させているところが実に潔いと思った。
    個人的には読後の切なさが際立つ「蛼橋」が一番好きだ

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    2023年02月04日
  • 万波を翔る

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    攘夷の嵐が吹き荒れる中、欧米列強の開港圧力が高まる幕末に外交の礎を築いた幕臣たちの物語。
    主人公田辺太一は、鼻っ柱の強い若者。長崎の海軍伝習所から江戸に戻り、新設された外国局で、いつも機嫌が悪く、皮肉屋の奉行・水野忠徳の下、横浜開港事務に関ることになる。水野や岩瀬忠震、小栗中順、渋沢栄一といった傑出した家人と交わり、持ち前の波乱を厭わない推進力や主張力を生かしながら太一は成長していく。
    だが、腰が定まらない幕府、薩長のしたたかで、不穏な動きに翻弄され、受難の道を歩む。
    長崎海軍伝習所で西欧の航海術や兵学をじかに学んだ太一は、日本を豊かにするためには、国を開いて異国の知恵や技術を取り入れるべきだ

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    2022年11月09日
  • 化物蝋燭

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    江戸物短編集

    この世のものとあの世のものとどちらのものともわからない者たちのおはなし。
    木内さんの作品はいつも情景と人々が生き生きと描きかれていて、その景色、町の色やにおいまで細かに想像させてくれる。
    どのお話も心にしみる。

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    2022年11月06日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    数ある新選組を題材に扱った時代小説の中でも、最もおすすめの一冊。

    近藤勇が試衛館(天然理心流道場)の4代目師範の時代から、土方歳三が戦死したと言われる箱館五稜郭の防衛戦(戊辰戦争の最後の戦場)までを描いた小説。

    ■本書のここがおもしろい!
    時代小説では通例、主人公たる史人にフォーカスし、主人公目線でストーリー展開されていきますが、本書はその主人公が章ごとに変わっていきます。

    ある時は近藤勇の視点、またある時は斎藤一・藤堂平助等の隊士、そして時には敵方であった清河八郎等々、様々な史人の視点で物語は進んでいきます。
    これがかなりおもしろい。
    片側だけでなく、やる側/やられる側、双方の視点が書

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    2022年09月25日
  • 万波を翔る

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    この本を書店で見た時、その分厚さに、一瞬たじろいだが、なぜだか、これは読まなければいけないと思った。初めは、堅い話かと思ったけど、主人公と上役の水野との掛け合いは、漫才のようで、笑ってしまった。主人公の前向きな性格のせいで、非常に清々しい気持ちで読み終わった。

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    2022年09月12日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    章ごとに語り手が変わるのが、それぞれの考え方の違いが浮き彫りになる点や、それぞれの隊士の葛藤や他の隊士に対する感じ方が面白かったです。でも、話が結構飛びがちなので、この本はある程度、新撰組を知っている人でないと、楽しめないとも思いました。印象的なのが山南の描かれ方。他の本はもっと活躍してるのに、この本ではかなりの冷遇ぶり。でもやはり沖田と山南の最後のシーンは、しっとりとしていていいなぁと、思いました。最後の方の斉藤と土方の関係も良かったし、新撰組好きにはオススメの一冊です。

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    2022年07月03日
  • 化物蝋燭

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    ネタバレ

     江戸の怪奇譚。

     と、いいながら人が幽霊や化物が出てくるばかりではなく、一番怖かったのが、『幼馴染』だという(;^_^A

     そして、文体がいいのです。次の作品も楽しみ(*^^*)

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    2022年06月11日
  • 漂砂のうたう

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    作中常に漂う閉塞感、倦怠感、息苦しさ。とてつもなく気怠い空気がまとわりついてくる。
    加えて、ポン太が作り出す得も言われぬ奇妙で妖しいムード。

    アッと驚く何かが起こるでもない淡々とした進行なのだがページを捲る手が止まらない。まじないにでも罹ったように摩訶不思議な読み心地。

    御一新により、これまでの価値観・常識が覆った事でわかりやすく無気力に陥った定九郎の白けた様子がなんだかまるで現代人っぽくておかしくも共感出来る部分がある。

    癖になるなあ。


    1刷
    2022.4.5

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    2022年04月05日
  • 万波を翔る

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    幕末期、外交と経済の側からみた政をひとりの若者の一代記をもって記してある。

    安政の大獄~戊辰戦争に至るまでの歴史を改めて読み直した。教科書などでは分からなかった幕臣たちの悩みやら、生の声も聞こえてくる。
    主人公の田辺太一も大きな波に揺さぶられたその一人。幕末という未だ且つて武士達が経験した事の無い時勢の時、命ぜられるままではなく自分で考え怖いもの知らずに意見してゆくさまはむしろ、気持ちがいい。自分で江戸っ子気質と言っているとおり、その軸のぶれない生き方は現代の世界にも1人ぐらいはいて欲しい、破天荒な男だ。
    丁寧に歴史を読み直すいいきっかけとなった。

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    2022年02月26日
  • 櫛挽道守

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    お六櫛を挽く職人の娘とした生まれた登瀬が名人である父の技に惚れ込み、ひたすら櫛挽に打ち込んでいく姿を中心に、若くして死んだ跡取り息子だった弟が書いていた絵巻、その弟と親しくしていた出自の卑しい源次、自分に対抗意識を燃やして早くに嫁いでいったあまり幸せではない妹、櫛挽の才能を見せつけ婿にと一家に入ってきた実幸との心通わない生活などが語られる。不器用だし、考え方もやや硬直しているが、ひたむきな登瀬に心打たれる。

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    2022年02月22日
  • 櫛挽道守

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    幕末時代の小さな山村での話。当時の村々は家族のつながりが強く、男子は親の仕事と家を継ぎ、女子は嫁いで家を離れる。そんな繰り返しが当たり前だった。

    何代にも渡って櫛づくりの技術を守り続けながら、生計を立てていた家で長女として生まれたトセ。彼女は女でありながら、家の中でひたすら櫛づくりに打ち込む父の姿にあこがれを持っていた。そして、父の技を受け継ぐはずだった弟の死がトセと一家の運命を大きく変えていく。

    名もなき人々の日常や苦悩を描きながら、生前の弟の行動や訳アリな弟子入り志願者の登場など、ミステリー要素も盛り込まれる。さらに幕末の激しい社会のうねりがトセたちを翻弄する。

    そんな変化がもたらさ

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    2021年11月01日
  • よこまち余話

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    「長年着てる紋紗さ。糊をきかせてもらったからそう見えるだけだろう。もうすぐ季節がいっちまうからね、夏のものをしゃんと着て見送らないと。
    季節が移るときってのは大概、逝っちまう季節はくたびれきっているんだ。だからせめてあたしらがその季節の着物を粋に着て見送ってやらなきゃいけない。くたった単衣なんぞ着てちゃあ季節だって逝くに逝けないだろう。
     …なんで夏は、見送らないといけないの?
    だって、夏だけ引き取り手がないじゃない。春も秋も冬も次の季節がちゃんと引き取って移ろうのに、夏だけ『終わる』でしょ」

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    2021年09月07日
  • 漂砂のうたう

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    「自分は、まるで水底に溜まっている砂利粒だ。地上で起こっていることは見えないのに、風が吹いて水が動けばわけもなく揺さぶられる。地面に根を張る術もなく、意志と関わりなく流され続ける。一生そうして、過ごしていく。」

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    2021年09月07日
  • 漂砂のうたう

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    「さあ、徳川の時代は終わった。みんな自由だ」
    自由ってなんだ?何をしろと云うんだ。
    明治の新しい世に放り出された元武家の定九郎。
    焦燥感と諦めを抱えてもがく姿がよく描かれている。
    怪談調に導くポン太と凛とした小野菊とキャラクターも抜群に効いていて、直木賞受賞作品では久しぶりに夢中で読み耽った。読後感も爽やかでまさしく傑作である。

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    2021年03月17日
  • みちくさ道中

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    エッセイ。すごくまともな、というか、落ち着いた、真面目なエッセイだった。おそらく、彼女の生活自体も、落ち着いた慎ましいものなのだろう。

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    2021年02月05日
  • 櫛挽道守

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    「くしひきちもり」そうそう、これがあった!
    いいに決まっているので、とっておいたのです。と思って読んだのがもう2年前。
    今さらですが~おすすめなので、ご紹介しましょう。

    幕末の中山道、宿場町。
    木曽山中で、一心に櫛を作る名人の父親を手伝う娘の登勢。
    父の腕に憧れ、あとを継ぎたいと願いますが、娘には他所へ嫁ぐ縁談が来るだけ。
    外の世界へ出るのが夢の妹、周りを気にする母親、才能ある優しい弟。
    やがて訪れる、いくつかの別れ。
    弟の友人は、幕末の空気を吸って、村を出ていきます。
    父の腕を慕って弟子入りしてきた男とは、登勢は気が合わないが…?

    神業と言われる父親の仕事ぶり、一生懸命ついて行こうとする

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    2020年09月27日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    貧しい百姓に生まれ、長男でもなかったので実家も継げず、自分探しに明け暮れていた若者たち。が、時代は幕末だった。幕府に代わって朝廷が支配する世の中が来るかもしれない。何でもアリの動乱の時代。ひょっとしたら武士になれるかもしれない。自分で自分の生き方を決めることができるかもしれない。若者たちはわずかに見える希望の光を頼りに、幕末の嵐の中へ飛び込んだ。

    近藤勇、土方歳三、沖田総司など新選組の主要メンバーを主人公とした短編作品をつなぎながら、新選組の存在価値を追求していく連作小説。

    新選組とは不思議な集団だ。個性の強すぎるメンツが思うままに行動し、入隊と脱退を繰り返し、組織内での抗争もあった。頼り

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    2020年08月09日
  • 櫛挽道守

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    時代は幕末、女性の櫛挽職人である登瀬の物語。
    時代物で櫛を題材にしている地味な内容かなと思って読み始めたけど、いい意味で期待を裏切られました!心に響く傑作。読み応えがあり、展開も面白く引き込まれ、色んな意味で深い物語でした。
    江戸時代の木曽山中、中山道沿いの宿場町藪原に伝わる梳櫛「お六櫛」。父吾助は神業を持つ職人。その父を尊敬し、技を継承したいと願う登瀬。でも女は嫁いで子をなすことが当たり前とされていた時代に、女が職人になりたいと思ったところで道は険しい。登瀬の櫛作りにかけた一途な半生。そして家族の物語でもある。弟が急逝したことでバランスが崩れた一家の母や妹の思い。それでも登瀬には常に櫛に対す

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    2020年08月08日
  • 万波を翔る

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    ネタバレ

    待ちに待った、木内昇の長編歴史ドラマ。
    幕末といえば勤皇だ攘夷だと表舞台にたつ人物のものが多いが、さすが木内昇は違う。今でいう「官僚」幕臣の立場からみた歴史だ。それを、幕臣の次男という立場だが、傑出した才能で城勤に抜擢された、田辺太一に語らせた。

    幕府は長崎海軍伝習所に直参の次男、三男から優れたものを送り込んでいた。そこには薩摩や長州からも優秀な人材が集められており、勝海舟も咸臨丸で教えていた。ここで太一が日本中の優れた若者と対峙したが、攘夷思想に染まることはなかった。江戸に戻ると、新たに設けられた「外国方」として幕臣になる。亜國、英国、仏国などが日本に押し寄せようとしていた・・・。

    上司

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    2020年07月12日