木内昇のレビュー一覧

  • 漂砂のうたう

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    作中常に漂う閉塞感、倦怠感、息苦しさ。とてつもなく気怠い空気がまとわりついてくる。
    加えて、ポン太が作り出す得も言われぬ奇妙で妖しいムード。

    アッと驚く何かが起こるでもない淡々とした進行なのだがページを捲る手が止まらない。まじないにでも罹ったように摩訶不思議な読み心地。

    御一新により、これまでの価値観・常識が覆った事でわかりやすく無気力に陥った定九郎の白けた様子がなんだかまるで現代人っぽくておかしくも共感出来る部分がある。

    癖になるなあ。


    1刷
    2022.4.5

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    2022年04月05日
  • 万波を翔る

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    幕末期、外交と経済の側からみた政をひとりの若者の一代記をもって記してある。

    安政の大獄~戊辰戦争に至るまでの歴史を改めて読み直した。教科書などでは分からなかった幕臣たちの悩みやら、生の声も聞こえてくる。
    主人公の田辺太一も大きな波に揺さぶられたその一人。幕末という未だ且つて武士達が経験した事の無い時勢の時、命ぜられるままではなく自分で考え怖いもの知らずに意見してゆくさまはむしろ、気持ちがいい。自分で江戸っ子気質と言っているとおり、その軸のぶれない生き方は現代の世界にも1人ぐらいはいて欲しい、破天荒な男だ。
    丁寧に歴史を読み直すいいきっかけとなった。

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    2022年02月26日
  • 櫛挽道守

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    お六櫛を挽く職人の娘とした生まれた登瀬が名人である父の技に惚れ込み、ひたすら櫛挽に打ち込んでいく姿を中心に、若くして死んだ跡取り息子だった弟が書いていた絵巻、その弟と親しくしていた出自の卑しい源次、自分に対抗意識を燃やして早くに嫁いでいったあまり幸せではない妹、櫛挽の才能を見せつけ婿にと一家に入ってきた実幸との心通わない生活などが語られる。不器用だし、考え方もやや硬直しているが、ひたむきな登瀬に心打たれる。

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    2022年02月22日
  • 櫛挽道守

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    幕末時代の小さな山村での話。当時の村々は家族のつながりが強く、男子は親の仕事と家を継ぎ、女子は嫁いで家を離れる。そんな繰り返しが当たり前だった。

    何代にも渡って櫛づくりの技術を守り続けながら、生計を立てていた家で長女として生まれたトセ。彼女は女でありながら、家の中でひたすら櫛づくりに打ち込む父の姿にあこがれを持っていた。そして、父の技を受け継ぐはずだった弟の死がトセと一家の運命を大きく変えていく。

    名もなき人々の日常や苦悩を描きながら、生前の弟の行動や訳アリな弟子入り志願者の登場など、ミステリー要素も盛り込まれる。さらに幕末の激しい社会のうねりがトセたちを翻弄する。

    そんな変化がもたらさ

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    2021年11月01日
  • よこまち余話

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    「長年着てる紋紗さ。糊をきかせてもらったからそう見えるだけだろう。もうすぐ季節がいっちまうからね、夏のものをしゃんと着て見送らないと。
    季節が移るときってのは大概、逝っちまう季節はくたびれきっているんだ。だからせめてあたしらがその季節の着物を粋に着て見送ってやらなきゃいけない。くたった単衣なんぞ着てちゃあ季節だって逝くに逝けないだろう。
     …なんで夏は、見送らないといけないの?
    だって、夏だけ引き取り手がないじゃない。春も秋も冬も次の季節がちゃんと引き取って移ろうのに、夏だけ『終わる』でしょ」

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    2021年09月07日
  • 漂砂のうたう

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    「自分は、まるで水底に溜まっている砂利粒だ。地上で起こっていることは見えないのに、風が吹いて水が動けばわけもなく揺さぶられる。地面に根を張る術もなく、意志と関わりなく流され続ける。一生そうして、過ごしていく。」

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    2021年09月07日
  • 漂砂のうたう

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    「さあ、徳川の時代は終わった。みんな自由だ」
    自由ってなんだ?何をしろと云うんだ。
    明治の新しい世に放り出された元武家の定九郎。
    焦燥感と諦めを抱えてもがく姿がよく描かれている。
    怪談調に導くポン太と凛とした小野菊とキャラクターも抜群に効いていて、直木賞受賞作品では久しぶりに夢中で読み耽った。読後感も爽やかでまさしく傑作である。

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    2021年03月17日
  • みちくさ道中

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    エッセイ。すごくまともな、というか、落ち着いた、真面目なエッセイだった。おそらく、彼女の生活自体も、落ち着いた慎ましいものなのだろう。

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    2021年02月05日
  • 櫛挽道守

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    「くしひきちもり」そうそう、これがあった!
    いいに決まっているので、とっておいたのです。と思って読んだのがもう2年前。
    今さらですが~おすすめなので、ご紹介しましょう。

    幕末の中山道、宿場町。
    木曽山中で、一心に櫛を作る名人の父親を手伝う娘の登勢。
    父の腕に憧れ、あとを継ぎたいと願いますが、娘には他所へ嫁ぐ縁談が来るだけ。
    外の世界へ出るのが夢の妹、周りを気にする母親、才能ある優しい弟。
    やがて訪れる、いくつかの別れ。
    弟の友人は、幕末の空気を吸って、村を出ていきます。
    父の腕を慕って弟子入りしてきた男とは、登勢は気が合わないが…?

    神業と言われる父親の仕事ぶり、一生懸命ついて行こうとする

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    2020年09月27日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    貧しい百姓に生まれ、長男でもなかったので実家も継げず、自分探しに明け暮れていた若者たち。が、時代は幕末だった。幕府に代わって朝廷が支配する世の中が来るかもしれない。何でもアリの動乱の時代。ひょっとしたら武士になれるかもしれない。自分で自分の生き方を決めることができるかもしれない。若者たちはわずかに見える希望の光を頼りに、幕末の嵐の中へ飛び込んだ。

    近藤勇、土方歳三、沖田総司など新選組の主要メンバーを主人公とした短編作品をつなぎながら、新選組の存在価値を追求していく連作小説。

    新選組とは不思議な集団だ。個性の強すぎるメンツが思うままに行動し、入隊と脱退を繰り返し、組織内での抗争もあった。頼り

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    2020年08月09日
  • 櫛挽道守

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    時代は幕末、女性の櫛挽職人である登瀬の物語。
    時代物で櫛を題材にしている地味な内容かなと思って読み始めたけど、いい意味で期待を裏切られました!心に響く傑作。読み応えがあり、展開も面白く引き込まれ、色んな意味で深い物語でした。
    江戸時代の木曽山中、中山道沿いの宿場町藪原に伝わる梳櫛「お六櫛」。父吾助は神業を持つ職人。その父を尊敬し、技を継承したいと願う登瀬。でも女は嫁いで子をなすことが当たり前とされていた時代に、女が職人になりたいと思ったところで道は険しい。登瀬の櫛作りにかけた一途な半生。そして家族の物語でもある。弟が急逝したことでバランスが崩れた一家の母や妹の思い。それでも登瀬には常に櫛に対す

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    2020年08月08日
  • 万波を翔る

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    ネタバレ

    待ちに待った、木内昇の長編歴史ドラマ。
    幕末といえば勤皇だ攘夷だと表舞台にたつ人物のものが多いが、さすが木内昇は違う。今でいう「官僚」幕臣の立場からみた歴史だ。それを、幕臣の次男という立場だが、傑出した才能で城勤に抜擢された、田辺太一に語らせた。

    幕府は長崎海軍伝習所に直参の次男、三男から優れたものを送り込んでいた。そこには薩摩や長州からも優秀な人材が集められており、勝海舟も咸臨丸で教えていた。ここで太一が日本中の優れた若者と対峙したが、攘夷思想に染まることはなかった。江戸に戻ると、新たに設けられた「外国方」として幕臣になる。亜國、英国、仏国などが日本に押し寄せようとしていた・・・。

    上司

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    2020年07月12日
  • 球道恋々(新潮文庫)

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    野球が好きだ!
    好きで好きでたまらない!

    まだプロ野球も夏の甲子園もなかった頃。
    どんなに一生懸命野球をやっていても、将来役に立つわけでも、もちろんお金になるわけでもなかった。
    それでも若い情熱も若くない情熱も野球に込める。
    そんな登場人物たちの物語は、野球が好きすぎるあまりニヤニヤが止まらない。

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    2020年06月06日
  • よこまち余話

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    長屋のある路地で繰り返される、日々の営み、季節のめぐり、育ってゆく若者といった現実の中で、ふと現れるふしぎな出来事。"ふしぎさ"が最初は見間違いかとも思える丸窓や薪能などちょっとしたことだったのに、次第に"あきらかに現実的でない"度合いを増していくのがドキドキ、ぞくぞくする。ゆっくりと心臓の鼓動が早くなってくる感じ。「?」という思いから、「何なのだろう、なぜなのだろう」と考えだす静かな加速感がとても心地よい読書体験。いつのまにか浩三や浩一と一緒に、トメさんや齣江の少ない言葉や一瞬の表情から答えを探そうとしていた。
    遠野さんが現れてから加速感は増して、齣江

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    2020年05月07日
  • 櫛挽道守

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    ネタバレ

    初めて読む作家さん
    てっきり名前から男性だと思ってました。女性だと知って女心というか、まだこの時代、女性は子を産み家を守るのが当たり前の時代に頑なに自分の志を曲げない登瀬の心理描写が丁寧で、女性作家さんならではと感服。
    他の作品も必ず読みます

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    2020年02月16日
  • 万波を翔る

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    歴史は人の営みが重なり合って築かれるもの。物理法則のように因果律がしかと定まっている訳ではない。もちろん、負けに不思議の負け無し、などと言うように定石めいたものはあるのだろう。天の時、地の利をよくよく図り戦えば勝つ確率は高くなるのかも知れない。しかし一方で、勝ちに不思議の勝ちあり、とも言う。孫子の説く五道を見誤っても尚勝敗の行方は思わぬ方へ転がってゆく。その裏で動いているのは、役目の定まった将棋の駒でも白黒旗幟鮮明な碁石でもなく、泣いたり嗤ったりする人だろう。木内昇の小説はいつもそれがよく描かれている。

    例えば、本書は幕末の話であるのに例の有名人が出てこない。徳川方の幕臣が主人公なので敢えて

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    2020年02月10日
  • よこまち余話

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    ネタバレ

    年末年始のお供にTぬオススメのこの本。穏やかに静かに浸れそうだと手にとったが大正解。何とも沁みる。
    最初のほうは中学に行きたいのに言い出せない浩三や、気づいているおかみさん、心優しい浩一などにじんわり。
    特に月に一度の和菓子や、朝、桶に張った氷を楽しみにしている浩一がとても良い。
    そのうち、少し不思議な感覚を覚えて、時間のつながりにはてとなり、なるほど過去と未來が入り交じっているのかと気づく。
    トメさんと齣さんの人生がせつなく、でもただ悲しいということでもない、とにかく、沁みる。
    何とも言えない余韻が残るお話。

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    2020年01月07日
  • 光炎の人 下

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    そうか。最終的な着地点は、何と張作霖爆殺事件なんだ。途中からそんな気がしてきて、浅田次郎の件の作品が物凄く好きな自分としては、そういう点でも、本作がだんだんと面白く読めるようになってきた。主人公のキャラは、結局最後まで好きになれないものだったけど、だからこそこんなクライマックスが成り立つってもの。触るものみな傷つけて、ありとあらゆる人間関係を拒否してきたもんな~、って感慨もひとしお。手放しで好き!って感じでもないんだけど、小難しい機械の話とかも頻繁に出てきながらも、それでも頁を繰る手が止まらなかったのは、物語に引きつけられたからに違いない。力作。

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    2019年12月16日
  • 万波を翔る

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    木内昇の小説の主人公はいつも内側に熱い情熱を抱え純粋ゆえに不器用にもがき、そしてそのもがきの中で自分の使命を理解していく、という表舞台には決して登場しない市井の人々が多いと思います。そこが彼女の作品に惹かれる理由かも。日経新聞連載時から本作の主人公が江戸から明治への過渡期の外交という舞台で切歯扼腕している様子は感じていました。今回、したたかな欧米列強に対し、初心な江戸幕府が翻弄される細かい交渉を積み重ねて「太平の眠りを覚ます…」って歴史が生まれたことを単行本として一気に読んだことで理解しました。でも、この本、「歴史小説」というより「仕事小説」としての共感が高いです。偏屈な上司との付き合い方、自

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    2019年12月03日
  • 光炎の人 下

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    史実をもとにどこまでフィクションを盛り込むか、が作者の手腕が問われるところである。
    技術者が自分の夢をただ実現したいがために、実行したことが、戦争の中の事件に巻き込まれていく。
    冷静さを欠いた音三郎と冷静沈着に処断する利平の結末は、戦時中の狂気に誘われる人々を想像させる。

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    2019年10月24日