木内昇のレビュー一覧
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第9回中央公論文芸賞
第27回柴田錬三郎賞
第8回親鸞賞
じんわりと胸が熱くなって泣きました。
木内昇さんの作品は『かたばみ』に続く2作目で、同じようにストーリーの派手さはなく、積み重ねてきた日々の尊さや人の思いなどがじっくり心に沁みてきて感動をさそうところに同じものを感じました。
心理描写が素晴らしく、家族それぞれの想いが丁寧に描かれています。特に村の暮らししか知らず、変わり映えのない毎日に鬱々とする登瀬や喜和の心情は苦しくなるくらいに伝わってきました。
そして登瀬が櫛職人としてのめり込んでいく様子や、理解して肯定してくれる父親の姿がとても素敵です。
いけ好かない印象の実幸もまた登瀬を肯定 -
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これも新聞小説だと知って驚いた。
新聞小説「かたばみ」が書籍として発行されたばかりなのに、次の新聞小説を執筆していたとは。
一体どれだけの引き出しとパワーをもっているのか。恐るべし木内昇。
苦手な時代小説ではあるが、木内昇ならきっと面白いに違いないと思った。
予想通り。
続きが気になって、ほんの少しの隙間時間にも没頭した。
これはテレビドラマになるに違いない。NHKですよね、きっと笑
ところどころに披露される人間観、なるほどね、と納得することばかり。木内昇だから、鋭くイヤミがない。そして右往左往する人を肯定する懐の大きさ。それが上から目線でないところがまたいい。
江戸が舞台でも、現代社会 -
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翻訳家の桐子は大工の伊助と深い仲。だが、彼は生き別れた妹が命よりも大事だという。
ならば、私の存在はいったい何なのか。桐子は憤り、偶然行き着いた卜い屋で彼の本心を訪ねる(『時追町の卜い屋』)。
占いと女性をテーマに書かれた短編集です。
ある女性は恋しい相手の心を知るため手当たり次第に占い屋を訪ね歩き、ある女性は些細なきっかけから占い師として様々な人の相談を受けることになる。
ある短編に出ていた登場人物が、別の短編にも出ていたりしていて、それぞれ独立した話ではありますが、連作短編集のような雰囲気もあります。
自分や他人の気持ちに思い悩み、苦しみ、占いに縋る女性たち。時に間違い回り道をしても -
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浅草の薬種問屋で起きた火事の現場に残された二つの遺体。北町奉行所定町廻同心・服部惣十郎が犯人を捕らえるが、指示役の足取りは掴めない。
小者の佐吉、岡っ引きの完治らと共に事件を追い続け、惣十郎がたどり着いたのは驚くべき真相とは……。
いや〜面白かった!
間に偽祈祷師の捕物や、湯屋の三助の母の死の謎などを挟みながら、薬種問屋の火事の真相が少しずつ明らかになっていくワクワク感。
医は仁術を体現したかのような若き町医者・口鳥梨春の清廉さは物語に清涼感を与え、「正義」は人の数だけあり、その正体は実に曖昧で多様であると考える惣十郎の正義への向き合い方も共感しかない。
捕物帖でありながらそれだけにと -
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木内昇(きうちのぼり)さんの『櫛挽道守(くしひきちもり)』です。『かたばみ』に次ぐ2冊目に選んだのが本書。大正解でした!
なるほど10年前の、中央公論文芸賞・柴田錬三郎賞・親鸞賞の3冠作品なんですね。『かたばみ』の原点を見る感覚になったのは私だけでしょうか?
時は幕末の動乱期。物語の舞台は木曽薮原宿。主人公の少女・登瀬の16歳から33歳までが、丁寧に描かれています。彼女の闘いは、翻弄される時代の荒波だけではなく、周囲の無理解もありました。
物語の肝は、登瀬の父が神業と称えられる櫛挽職人、この櫛挽に魅入られたのが登瀬です。
そうなんです。お父さん、いい味出してるんです。実に寡黙で愚 -
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「新潮文庫の100冊」に入れて欲しいと思うくらい良かったです。たまに100冊を超えている年があるので、中の人がコッソリ追加してくれても良いのでは…などと思ってみたり。
内容は、“占い”にハマってしまった女性たちを描く全7話の短編集。とはいえ、以下にあらすじを書いておきますが、占いだけにあらず。人が何かにハマって行く過程の恐ろしさや、他人と比較して一喜一憂することの無益さがとてもよく描かれていて感心しました。
各短篇は一話完結ですが、別の話しに登場した人が再登場する話しもあります。以下が参考になれば幸いです。
1話.時追町の卜い家
家の修繕をきっかけに、翻訳家で独身の桐子が年下の伊助と半同 -
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“きうち のぼる”という男性かと思ったら、“きうち のぼり”という女性だった。
出版社で雑誌編集に携わった後、自分でもインタビュー雑誌を主宰し、その後、ひょんなことから小説を書くことになり、2011年「漂砂のうたう」で直木賞受賞。その前後の年に雑誌や新聞に掲載されたエッセイを集めたのが本書。この作家の小説は読んだことないが、本のタイトルと装丁に惹かれて手に取った。
1967年生まれ。私と歳が近いから価値観が合うというか、お姉さんと慕いたくなるタイプ。
一番共感したのは「世の中の成分」というエッセイの中で、仕事で上司の雷が落ちた時、
「それは言われていない」「その指示は聞いていない」とい