木内昇のレビュー一覧

  • 櫛挽道守

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    第9回中央公論文芸賞
    第27回柴田錬三郎賞
    第8回親鸞賞

    じんわりと胸が熱くなって泣きました。
    木内昇さんの作品は『かたばみ』に続く2作目で、同じようにストーリーの派手さはなく、積み重ねてきた日々の尊さや人の思いなどがじっくり心に沁みてきて感動をさそうところに同じものを感じました。
    心理描写が素晴らしく、家族それぞれの想いが丁寧に描かれています。特に村の暮らししか知らず、変わり映えのない毎日に鬱々とする登瀬や喜和の心情は苦しくなるくらいに伝わってきました。
    そして登瀬が櫛職人としてのめり込んでいく様子や、理解して肯定してくれる父親の姿がとても素敵です。
    いけ好かない印象の実幸もまた登瀬を肯定

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    2024年12月20日
  • かたばみ

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    Audibleで聴いた。

    かなりの長編だけれど、登場人物たちに愛着が湧いてきて、もっとこの人たちの暮らしを聴いていたいと思った。

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    2024年11月13日
  • 惣十郎浮世始末

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     これはもうしみじみと旨いと言える。瑕瑾といえば、惣十郎を、もうちょい女ごころが分かるようにしてやってくれれば。
     話の落ち着く先は、決して無理はなく。ミステリーのランキングなんかには入れては欲しくないくらいの、心の移ろい。

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    2024年11月06日
  • かたばみ

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    悌子の槍投げから始まる長い長い家族ドラマを読んでるようで、戦中戦後の厳しさや哀しみや犠牲に涙しながらも面白く有意義な読書時間だった。小国民として生きる子供たちが不憫でならない。それでも、悌子の明るさや逞しさやひたむきな心に救われたし、身体面も生活面も頼りない権蔵が清太を前にどんどん変わっていく姿、説く言葉が胸を打つこの家族の物語を読めてよかった。夢を持ち好きなことに打ち込めるって幸せなことなんだとつくづく思う。最初はわからなかったタイトルの意味を知るととても深い。心があったかくなる家族愛の物語に感涙。

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    2024年10月29日
  • かたばみ

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    上質なホームドラマを見終わったような満足感。
    途中、何度も笑って、何度も泣いた。
    登場人物がみんな好ましい。
    誰だって思い通りの人間じゃないし、挫折を乗り越えてる。
    そして、子どもはみんなで育てた方がいいな。羨ましいな。

    自分的には六助さんが推しだな。ちょい役のようで、妙な存在感。かっこいい。

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    2024年10月23日
  • 惣十郎浮世始末

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    これも新聞小説だと知って驚いた。
    新聞小説「かたばみ」が書籍として発行されたばかりなのに、次の新聞小説を執筆していたとは。
    一体どれだけの引き出しとパワーをもっているのか。恐るべし木内昇。

    苦手な時代小説ではあるが、木内昇ならきっと面白いに違いないと思った。
    予想通り。
    続きが気になって、ほんの少しの隙間時間にも没頭した。

    これはテレビドラマになるに違いない。NHKですよね、きっと笑

    ところどころに披露される人間観、なるほどね、と納得することばかり。木内昇だから、鋭くイヤミがない。そして右往左往する人を肯定する懐の大きさ。それが上から目線でないところがまたいい。
    江戸が舞台でも、現代社会

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    2024年10月02日
  • 万波を翔る

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    読み応えあり。
    鎖国と開国、怒涛の時代だったんだろうと思う。
    歴史物でもあるので、今の日本の礎になっているんだなと当時の人達の尽力に想いを馳せながら読みました。
    主人公が己の芯を貫き仕事にあたる姿勢は尊敬する。

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    2024年09月29日
  • 火影に咲く

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    火影に咲く、灯火そのものではなくて、その影で咲くというニュアンスのタイトルの通り、幕末に登場する偉人の影にいた人達の話し。

    最後の中村半次郎の話しなんかは胸が詰まって詰まって。生きたいように生きられれない、不器用さや辛さが痛いくらいに描かれていた。

    名作です。

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    2024年09月26日
  • 惣十郎浮世始末

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    良い本を読んだ。
    木内さんの捕物帳どんな物語かとワクワクして読んだ。
    期待は裏切られることなく、すいすいと読めて夢中になってしまった。
    最初の火事からつるつると繋がり、そこに繋がるのかーと圧巻。
    登場人物もそれぞれ味がありら読み応えあり。
    続編出て欲しいなぁ。

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    2024年09月25日
  • 惣十郎浮世始末

    購入済み

    最近の小説では秀逸です。

    登場人物の描写が素晴しいです。惣十郎の飄々とした態度の中で、先を読む力は素敵です。 岡っ引きの完治は、鬼平犯科帳の密偵ようで、素晴しい働きです。 お雅と惣十郎の母・お多津のやりとりはほのぼのします。 お雅が魅力的です。 映像になったら、誰がやるのか関心があります。 
    ストーリーは、意外な展開の繰り返しで、とても良かったです。最近の時代小説では秀逸です。 新聞連載小説とは思えない出来映えです。 価格に偽りはありませんでした。

    #カッコいい #ほのぼの

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    2024年09月01日
  • 万波を翔る

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    この人の小説はいつも深く深く、刺さる

    己の仕事の向き合い方
    向き合ってきた、見てきたことを、しかと次の世に繋ぐこと

    外国の技術ややり方を、すべてそのまま良きこととして受け入れてしまわぬこと

    外交の曙。手探りで築いてきた礎。
    いまの政府は、政治は、民のことをどれだけ本気で考えているのか

    一種盲目的であろうとも、保身ではなく本気で、その役目を考え、向き合っていた人がいた時代の、なんたる輝き。

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    2024年08月16日
  • 占(新潮文庫)

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    翻訳家の桐子は大工の伊助と深い仲。だが、彼は生き別れた妹が命よりも大事だという。
    ならば、私の存在はいったい何なのか。桐子は憤り、偶然行き着いた卜い屋で彼の本心を訪ねる(『時追町の卜い屋』)。


    占いと女性をテーマに書かれた短編集です。
    ある女性は恋しい相手の心を知るため手当たり次第に占い屋を訪ね歩き、ある女性は些細なきっかけから占い師として様々な人の相談を受けることになる。
    ある短編に出ていた登場人物が、別の短編にも出ていたりしていて、それぞれ独立した話ではありますが、連作短編集のような雰囲気もあります。

    自分や他人の気持ちに思い悩み、苦しみ、占いに縋る女性たち。時に間違い回り道をしても

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    2024年08月07日
  • 惣十郎浮世始末

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    浅草の薬種問屋で起きた火事の現場に残された二つの遺体。北町奉行所定町廻同心・服部惣十郎が犯人を捕らえるが、指示役の足取りは掴めない。
    小者の佐吉、岡っ引きの完治らと共に事件を追い続け、惣十郎がたどり着いたのは驚くべき真相とは……。


    いや〜面白かった!
    間に偽祈祷師の捕物や、湯屋の三助の母の死の謎などを挟みながら、薬種問屋の火事の真相が少しずつ明らかになっていくワクワク感。

    医は仁術を体現したかのような若き町医者・口鳥梨春の清廉さは物語に清涼感を与え、「正義」は人の数だけあり、その正体は実に曖昧で多様であると考える惣十郎の正義への向き合い方も共感しかない。

    捕物帖でありながらそれだけにと

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    2024年07月15日
  • 櫛挽道守

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     木内昇(きうちのぼり)さんの『櫛挽道守(くしひきちもり)』です。『かたばみ』に次ぐ2冊目に選んだのが本書。大正解でした!
     なるほど10年前の、中央公論文芸賞・柴田錬三郎賞・親鸞賞の3冠作品なんですね。『かたばみ』の原点を見る感覚になったのは私だけでしょうか?

     時は幕末の動乱期。物語の舞台は木曽薮原宿。主人公の少女・登瀬の16歳から33歳までが、丁寧に描かれています。彼女の闘いは、翻弄される時代の荒波だけではなく、周囲の無理解もありました。

     物語の肝は、登瀬の父が神業と称えられる櫛挽職人、この櫛挽に魅入られたのが登瀬です。
     そうなんです。お父さん、いい味出してるんです。実に寡黙で愚

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    2024年07月03日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    今まで読んだ新選組の小説の中でも、最も感動した中の一冊になった。
    新選組の隊士達が生きている、性格を感じる、一緒にその光景を見ていたような錯覚を覚えるくらい、文章が息づいていた。

    余談だが、作家ごとに人物像に差異はあるのに、武田観柳斎がクソ野郎ということだけは統一見解なのがツボる。よっぽど嫌なやつだったんだろうな。

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    2024年06月23日
  • 占(新潮文庫)

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    「新潮文庫の100冊」に入れて欲しいと思うくらい良かったです。たまに100冊を超えている年があるので、中の人がコッソリ追加してくれても良いのでは…などと思ってみたり。

    内容は、“占い”にハマってしまった女性たちを描く全7話の短編集。とはいえ、以下にあらすじを書いておきますが、占いだけにあらず。人が何かにハマって行く過程の恐ろしさや、他人と比較して一喜一憂することの無益さがとてもよく描かれていて感心しました。

    各短篇は一話完結ですが、別の話しに登場した人が再登場する話しもあります。以下が参考になれば幸いです。

    1話.時追町の卜い家
    家の修繕をきっかけに、翻訳家で独身の桐子が年下の伊助と半同

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    2024年05月06日
  • 櫛挽道守

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    ネタバレ

    akikobbさんにおすすめいただき、木内昇さん初読み。
    派手ではないが滋味溢れる作品で、読み終わった後よかった…と深い余韻を感じた。
    結構辛い出来事も多く、全てがハッピーエンドなわけではないのに、それも人生、と静かに肯定する強さのある作品だと思った。
    普段あまり読まない時代小説ではあるものの読みやすく、度々ぐっときながら一気読み。
    父が縁談を断り、登瀬の「櫛を挽きたい」という思いが溢れ出す場面、ラストの父の「われやん夫婦の拍子はとてもええ」の言葉に特に心動かされた。寡黙な男に弱いのかもしれない。

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    2024年04月06日
  • みちくさ道中

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     “きうち のぼる”という男性かと思ったら、“きうち のぼり”という女性だった。
     出版社で雑誌編集に携わった後、自分でもインタビュー雑誌を主宰し、その後、ひょんなことから小説を書くことになり、2011年「漂砂のうたう」で直木賞受賞。その前後の年に雑誌や新聞に掲載されたエッセイを集めたのが本書。この作家の小説は読んだことないが、本のタイトルと装丁に惹かれて手に取った。
     1967年生まれ。私と歳が近いから価値観が合うというか、お姉さんと慕いたくなるタイプ。
     一番共感したのは「世の中の成分」というエッセイの中で、仕事で上司の雷が落ちた時、
    「それは言われていない」「その指示は聞いていない」とい

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    2024年03月28日
  • 球道恋々(新潮文庫)

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    心震えしびれる野球小説。

    明治の野球創世期のお話。
    野球に魅せられ夢中になる選手たち、熱狂するOBたちは今も変わらず、たくさんの野球あるあるにクスッと笑ったり。
    主人公は高校時代は万年補欠で、その後母校のコーチとなる人。
    ちょうどこの4月から母校の高校野球部学生コーチになることが決まった息子と重なり、ぐっときました。
    この状況で部活動もできず、まだコーチデビューはできていないけれど、コーチを通してまたいろいろ悩んだり学んだりするのだろうな。

    野球ができること、応援できることはどんなに幸せなことだったのかと読みながらしみじみと。

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    2024年02月27日
  • 櫛挽道守

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    江戸時代に比べて、現代は女性の生き方が多様化し、良い時代になったのだと痛感しました。己の信念を突き通した登瀬を始め、それぞれの登場人物が様々なものを背負っていて、物語に深みを与えていました。己の運命を仕方ないと受け入れた母、己の技で運命に抗う夫、結局女というしがらみに囚われる妹、でもそれぞれの生き方に幸せがあるのかなと。

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    2023年11月05日