木内昇のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「この感想をご覧の方々、この本をそこいらの時代小説といっしょにされちゃあ困っちまうぜ。そう思わねぇか、完治」と、同意を求める主人公惣十郎。
「わっちも含めて個性豊かで人情味あふれる登場人物が読み手にとっちゃあ面白さこの上なしに仕上がってますぜ」完治もまたそれに従う。
そんな二人を横目に佐吉は「さっき書肆を覗いたんですがね、売り切れ御免入荷待ちってなぁ札が貼られて驚いたぁ次第で」
という感じで江戸の言葉で本作は綴られて、最後まで読み飽きさせない。
北町奉行所定町廻同心の服部惣十郎が、取り巻きの完治と与助、佐吉と共に巻き起こる怪事件を次々と解決に導く、いわばミステリー要素も含んだ捕物帖なのである -
Posted by ブクログ
ネタバレお江戸人情捕物噺…鬼平犯科帳等あまたの傑作を生んだジャンルで、最早出尽くしていると毎度毎度思いつつ、このジャンルからまたしてもとんでもない傑作が生まれた。
まずキャラクター設定が、とにかく絶妙に上手い。シリーズ物で何作も出てきたような個性の味付けを最初からきっちり纏わせるのは相当な力量だと思うのだが、主要登場人物だけでなく結構な端役にまで、その個性を間とさせているのだからすごい。
と書くと、キャラの魅力で読ませる小説かのようだが、それだけではない、ストーリー構成も抜群に上手いのだ
薬問屋の火事に始まる物語は、霊感商法詐欺事件などいくつかの事件を解決していく描写を追いかけていくうちに、当時で -
Posted by ブクログ
初めての木内昇さんの作品。なんと静謐な文章でしょう。読後、じんわりと世界観に浸ってしまいました。
物語は、幕末の木曽路薮原宿。木曽路では奈良井宿が有名ですが、奈良井宿の隣の「お六櫛」の生産で有名な宿です。主人公はそのお六櫛を代々作る家に生まれた少女の登瀬。登瀬の父は神業の技術を持つ、超寡黙な櫛引職人。でも、その技を引き継ぐのは男子のみ。木曽路の山中で、ずっと男子が継いできた技なのです。
が、登瀬は女でありながら、父の神業の技術を継ぎたいと精進を重ねていく話です。
当然、周囲の村人はもちろん、家族の母も妹からも理解を得ることは難しい。そんな中で、父ちゃんが寡黙な中で登瀬を守るんです。もう父ちゃ -
Posted by ブクログ
物語は蔦屋重三郎の死後、山東京伝や曲亭馬琴などの戯作者が活躍している江戸後期時期。京伝は押しも押されぬ人気作家であり、馬琴は『南総里見八犬伝』の執筆を始めようかという時期。
当時の新潟といえば、江戸からしてみれば未知の国。豪雪地帯での暮らしなど想像もつかない。さらに鈴木牧之が物語ではない、現(うつつ)であると語っている奇譚。送られてくる物語に惹かれた京伝は、出版を試みるが、実績のない書き手であるので、伝手のある出版社は何色を示すばかり。京伝の死後は、馬琴が引き受けたかに見えたが・・・。
内容についてはここで書けないが、いやもう、読んでいて儀三治(鈴木牧之)の胸の内を図ると、如何ともし難い心 -
Posted by ブクログ
ネタバレ占いをテーマに大正時代を舞台にした女性特有の悩みや苦しみ、欲求を描いた7編。
女性心理の描写がうますぎて読みながら色んな感情が巡りました。たまにそれぞれのお話が繋がったりもしていてとても面白い。どのお話も重暗すぎる悩みのお話では無いところが個人的には良かったです。
・時追町のトい家
自立した女性が恋に悩み占いにハマる話。
占いにハマっていくさまがリアル。占ってもらった結果をまとめて統計しようとしてるところが桐子さんの人柄が出てて面白い。ただ、そんな男早く切ってしまえばいいのにと何度も思ってしまうくらい、桐子さんが惹かれて、縁を切れなくなった男性に一切魅力を感じなかった…
・山伏村の千里眼 -
Posted by ブクログ
第9回中央公論文芸賞
第27回柴田錬三郎賞
第8回親鸞賞
じんわりと胸が熱くなって泣きました。
木内昇さんの作品は『かたばみ』に続く2作目で、同じようにストーリーの派手さはなく、積み重ねてきた日々の尊さや人の思いなどがじっくり心に沁みてきて感動をさそうところに同じものを感じました。
心理描写が素晴らしく、家族それぞれの想いが丁寧に描かれています。特に村の暮らししか知らず、変わり映えのない毎日に鬱々とする登瀬や喜和の心情は苦しくなるくらいに伝わってきました。
そして登瀬が櫛職人としてのめり込んでいく様子や、理解して肯定してくれる父親の姿がとても素敵です。
いけ好かない印象の実幸もまた登瀬を肯定 -
Posted by ブクログ
これも新聞小説だと知って驚いた。
新聞小説「かたばみ」が書籍として発行されたばかりなのに、次の新聞小説を執筆していたとは。
一体どれだけの引き出しとパワーをもっているのか。恐るべし木内昇。
苦手な時代小説ではあるが、木内昇ならきっと面白いに違いないと思った。
予想通り。
続きが気になって、ほんの少しの隙間時間にも没頭した。
これはテレビドラマになるに違いない。NHKですよね、きっと笑
ところどころに披露される人間観、なるほどね、と納得することばかり。木内昇だから、鋭くイヤミがない。そして右往左往する人を肯定する懐の大きさ。それが上から目線でないところがまたいい。
江戸が舞台でも、現代社会 -
Posted by ブクログ
翻訳家の桐子は大工の伊助と深い仲。だが、彼は生き別れた妹が命よりも大事だという。
ならば、私の存在はいったい何なのか。桐子は憤り、偶然行き着いた卜い屋で彼の本心を訪ねる(『時追町の卜い屋』)。
占いと女性をテーマに書かれた短編集です。
ある女性は恋しい相手の心を知るため手当たり次第に占い屋を訪ね歩き、ある女性は些細なきっかけから占い師として様々な人の相談を受けることになる。
ある短編に出ていた登場人物が、別の短編にも出ていたりしていて、それぞれ独立した話ではありますが、連作短編集のような雰囲気もあります。
自分や他人の気持ちに思い悩み、苦しみ、占いに縋る女性たち。時に間違い回り道をしても -
Posted by ブクログ
木内昇(きうちのぼり)さんの『櫛挽道守(くしひきちもり)』です。『かたばみ』に次ぐ2冊目に選んだのが本書。大正解でした!
なるほど10年前の、中央公論文芸賞・柴田錬三郎賞・親鸞賞の3冠作品なんですね。『かたばみ』の原点を見る感覚になったのは私だけでしょうか?
時は幕末の動乱期。物語の舞台は木曽薮原宿。主人公の少女・登瀬の16歳から33歳までが、丁寧に描かれています。彼女の闘いは、翻弄される時代の荒波だけではなく、周囲の無理解もありました。
物語の肝は、登瀬の父が神業と称えられる櫛挽職人、この櫛挽に魅入られたのが登瀬です。
そうなんです。お父さん、いい味出してるんです。実に寡黙で愚