木内昇のレビュー一覧

  • 万波を翔る

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    『交易がはじまるというのは、この国の景色が変わるということなのだ』
    幕末のこの時代に、英語も話せない太一が、外国局勤めとなり、外交を行なっていく。
    そして関わる人々がする助言が考えさせられます。

    『批難する暇があるならば、代案を考えることじゃ』
    堀が、文句を言う太一に言った言葉

    「他に認められたい、褒められたいと思うことは馬力にはなるが、そこを目指してはならぬ」
    「誰に認められずとも、己の信ずることをやり遂げた者こそが、最後は功成り名遂げるのだ」
    「みなまで言わぬとわからんような者は、結局、みなまで言ったところでわからんのじゃ」
    水野が太一に厳しく言うことも納得。

    「無理かもしれぬと思うても、これはとおもうことあれば行うほうがのちのち得することに相成る。」
    「しくじるかもしれぬと手を出さぬと、人は一生を、小さな輪の中を独楽鼠のようにくるくる回って終えねばならん」
    小野が、失敗を恐れるなと話す言葉。

    「異国の技術を容れることはいい。」「しかしそれを、異国の言いなりになることと引き換えにしちゃならねえのだ」と勝が異国との交渉の大事なことを話す。

    『今の幕府にとってなくてはならない逸材が早々に表舞台から消え、外交のがの字も知らぬ人物が外国奉行に安穏と据わっている。』
    仕事内容ではなく、有能な人材が井伊直弼から疎んじられたことで外される。

    そして彼なりに異国の人にも上の人にも、違うと思えば意見する。決して英雄ではない、この時代の一人の役人。彼がどうやっていろんな歴史的事件を乗り切っていったか、一緒に感じながら読めました。

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    2026年01月30日
  • 奇のくに風土記

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    第53回泉鏡花文学賞

    漢字表記の花の名前が目次になっているのが良い。
    実在した本草学者(今でいう植物学者)の畔田翠山が植物に魅せられ親しみながら徐々に成長していくお話。
    短編集とは書いていないけど、印象としては短編集。
    ストーリー性はあまりなく、本草学者の幻想譚で児童書のようだった。
    実際の畔田翠山は、実証的な観察者・学問者 として知られているようで、怪異体験の記録は史実にはないそう。
    どちらかと言うと、幻想譚でない話の方が読みたかったな。

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    2026年01月02日
  • 万波を翔る

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    ネタバレ

    外国局で働くことになった田辺太一の入局から、幕府解体までの話。
    歴史に疎かったが比較的読みやすかった。
    ※ただし、歴史を知っている方が楽しめると感じた

    印象に残ったことは3点
    ・仕事は言われたことをこなすだけではない。やりようによっては自分のために利用することもできる
    →意思に反した仕事をしに渡仏するシーン。自力だけでは絶対に手にできない機会を、意思を貫いて逃すのではなく、自分の糧とするための手段として利用していく。

    ・どんな仕事も一生懸命やれば、後々生きる
    →勘定や小笠原への渡航など、納得いかなかったものも、一生懸命こなすことで経験となり、後々役に立つ。失敗も然り。

    ・信念を貫き通すことの難しさと重要性
    →仕事をしていると、自分の意見が通るとも限らず、信念は次第に忘れ去られていくものだ。その中で、最後まで貫き通す太一に対して尊敬の念を抱いた。また、信念を貫き通したが故に掴んだチャンス(想定問答の仕事や小笠原・パリへの渡航)や、後悔の少ない(やりきったと思う)人生を送った姿を見ると、その重要性を感じざるを得ない。

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    2025年12月10日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    自分の中で評価が難しい作品となった。

    この小説は一冊の中で読み手が43回も変わる。そのため、一つの話が短いためちょっとした時間でも読める。
    また、歴史小説だと読んでいて難しく感じることもあるが、この小説は読みにくいと感じたことが全くなかった。
    こういった理由でとても読みやすく、新撰組の歴史も時系列的に理解しやすくてよかった。

    しかし、読み手が変わりすぎて感情移入しにくかったところが、個人的にはマイナスだった。

    様々な視点から語られるので、新撰組を深く知りたいと思う人にはオススメだ。

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    2025年10月26日
  • 奇のくに風土記

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    ダヴィンチ・プラチナ本から。”蟲師”とか梨木香歩とかが思い浮かんだ。突然の滝川一益登場とか、ちょっと面食らってしまい、いまひとつ焦点がぼやけてしまう印象あり。終始、夢うつつを往来する感のある作品だから、その一環と言われたらそれまでだけど、個人的にはちょっと。

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    2025年10月15日
  • 雪夢往来

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    曲亭馬琴の破綻者ぶりがすごかった。モラ、毒親、DV、才能はあるが性格が悪すぎてもはやサイコパス。そればかりに気を取られて、肝心の鈴木牧之の地道な生き様が入ってこなかった。笑
    ものを生み出す人たちの才能への憧憬、屈折、書くことの純粋な楽しさなどが立ち上ってくる後半はよかったが、
    前半の、頓挫からの頓挫は読んでいるこちらがヤキモキしてなかなかページが進まなかった。
    馬琴以外の人物が皆地味だったのもあり、才能のある兄としての山東京伝をもう少し見たかった。(すぐに逝ってしまったのは儀三治の無念に呪い殺されたのかと思った。笑)

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    2025年10月14日
  • 奇のくに風土記

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    紀伊の山々で草木を愛でるコミュ症な少年の成長譚。
    天狗や時折、テイカカズラの蔦を伝って彼岸から此岸に降りてくる父上に見守られて本草学を志すファンタジーな展開に不思議を感じます。
    また、白山や大峰山系に登る記述もありワクワクしました。白山へは美濃禅定道から登られたように感じますが私も何度も登っていてクロユリも見たことあるし、大峰山系も歩いたことあるしオオヤマレンゲも見たことあるので嬉しくなりました。人知れずひっそりと咲いている花たちはそこに自生しているからこそ美しく尊いものなんですよね。

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    2025年10月06日
  • 惣十郎浮世始末

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    惣十郎の妻の「夫と父の役に立つ事であれば」と願い種痘の治療実験台に自ら名乗り出た行為、そのものが事件を起こす。「人を思う」人間味溢れる行動など、方や疱瘡に対する医術を何とかしたいと願った事が裏目に、事件に繋がる複雑且つ物語の巧みさに感動する。現代は政治の世界でも人の為というより「自己主義」が旺盛で「目先の利潤に眼が眩む」行動になってしまうのは寂しい限りだ。「人間関係の道徳」が薄らいでいる事だろうか。

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    2025年09月02日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    ★3の中。

    みんな大好き新選組。その群像劇。

    それぞれ癖の強いキャラクターが魅力的で読まされた。
    新選組の話の流れはおぼろげに頭に入っているので、本の厚さのわりにはするすると読める。

    司馬遼太郎さんの「新選組血風録」も読んでみたくなった。

    「燃えよ剣」はどうかな~。
    今作も群像劇形式とはいいながら、土方歳三が家業の薬売りをしていたときから始まり、戊辰戦争後の佐藤彦五郎の元に土方歳三の写真が届くまでが描かれており、実質主人公は土方歳三であるともいえる。
    京極夏彦さんの「ヒトごろし」も土方歳三の生涯を描いた物語だったし、もう土方歳三はいいかな(笑)






    そうそう。
    関係ないけど久しぶりに映画館に行ってきた。

    「国宝」★2。
    途中までは予想通りのストーリー。それで半分。
    二人の歌舞伎役者の生涯。
    やっぱり歌舞伎はわからんし、残念ながら一度もキレイだと感じられなかった。
    爺さんの女形は迫力あった。

    「鬼滅の刃 無限城」★2
    まあ、マンガで筋は知ってたし。
    このペースならあと2回は上映しないとエンディングまでいかないんじゃないか。

    どっちの映画もほぼほぼ満員でびっくり。
    最前列で観たわ。

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    2025年07月28日
  • 惣十郎浮世始末

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    ネタバレ

    キャラが良い。お雅のこじらせ具合がかわいい。惣十郎が愛妻家でなかったのが意外。それぞれ良かれと思っての行いが裏目に出たり的外れだったりなストーリーだった。

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    2025年06月12日
  • 球道恋々(新潮文庫)

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    奇しくも、本作品を読んでいる最中に「Mr.プロ野球」こと長嶋茂雄さんがお亡くなりになったニュースがありました。

    球道恋々からの球道連綿
    各々の野球に対する思いひとつひとつが、絶えることなく連なって今に通じていると思うとなんだか心が安らかになります。

    「なりたい自分」が分からないまま生きている人、「なりたい自分」になれない人、銀平のような人間は世の中にはたくさんいるんだと思います。わたしもそんなひとりですが。
    そんな市井の人の物語です。

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    2025年06月11日
  • 雪夢往来

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    40年かけて世に出た鈴木牧之の「北越雪譜」

    江戸の人々に雪国・越後の風物や綺談を教えたい
    ただそれだけを思い、山東京伝・京山兄弟、馬琴、蔦重などと40年に亘り関わりながらも「北越雪譜」が誕生するまでの話

    江戸と越後の距離と、牧之自身の家業がなければ、40年も続けて来られなかったかもしれない
    とはいえ40年、ここまで続けられたことが凄い

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    2025年05月19日
  • 惣十郎浮世始末

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    人情味あふれる時代小説ミステリ?浅草の薬種問屋放火事件を軸に話が展開する連作短編。
    おもしろかったですけどね。ところどころ不快な人物が割と出てくるのでなんとも厭な気持にはなりました。それ以外がしっかりとした善人が多いのでその落差がまた。話の展開はまあ王道な人情時代ミステリって感じで気持ちよく読めました。真犯人はあからさまに怪しい人物が・・・まあその辺を推理して楽しむような作品でもないか。
    いろんな物事がなんとなく片付いたような感じで終わりましたが、あれ?お雅さんは・・・?

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    2025年04月07日
  • 雪夢往来

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    『北越雪譜』が刊行されるまでの四十年とそれを通して描かれる江戸の出版業界(特に山東京伝、京山と曲亭馬琴の確執)が面白かった。現代と比べて圧倒的に地方の情報が少なく、また伝わりづらいなか、知って欲しいという一心で綺談を集め、絵まで描いた鈴木牧之の執念と呼んで差し支えない郷里愛は読んでいて胸を打つ。と同時にだからこそ、遠く江戸や大阪で刊行の話が一方的に頓挫したり版元を盥回しにされた事実に悔しい思いがふつふつと湧きもする。馬琴のキャラクターが峻烈で誰よりも目立っていて印象的だった。

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    2025年03月06日
  • 惣十郎浮世始末

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    ネタバレ

    新刊紹介の評判がよくて購入したのが昨年7月。少し読んで擱いてしまった。話の流れについていけなかったのと、町医者・口鳥梨春がありえないぐらいの善人だったからだろう。興ざめしてしまいそのままにしたように思う。
    今回、急に入院することになってしまい、いくつかの本を持ってきた。気になっていたこの本もその一つ。コロナ禍で大変だった世情を反映してか江戸末期の天然痘が主題として取り上げられているが、蘭学医と漢方医の攻防などが描かれていておもしろかった。また、今でいう認知症の症状をあらわす登場人物もあり時代小説もその時代の影響を大きくうける現代小説なんだなとあらためて思った。
    木内昇の小説を読むのはたしか初めてだが美しい文章がちりばめられており今後も読みたいと思う。
    小説そのものはNHK連続ドラマの原作に最適でそれ以上でもそれ以下でもなかった。

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    2025年02月07日
  • 漂砂のうたう

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    明治10年吉原遊廓。武家の出であった主人公は出自を隠しながら見世で働く。過去と現在との葛藤、縁を切った家族、縁を得た知人。皆御一新を経て変わらなくてはいけない壁や諦めと闘っていた。
    木内氏の名もなき過去の人物の描写は、やはり、まるで見てきたかのような、それ以上にその時代に居た登場人物かのような繊細さと緻密さ。それによる時代の背景を味わえる。

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    2025年01月28日
  • 櫛挽道守

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    どうにも主人公に感情移入できずに最後まで行ってしまった。家族それぞれの気持ちや感情の行き違いがあって、それぞれに辛いんだけどちょっとイラっとするところも多くて、わたし的にはイマイチもう少し救いがあってもよかったような気がする。

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    2024年12月30日
  • 占(新潮文庫)

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    早く読み終えたいというようなねばねばと嫌な気持ちを描写している話があったり、
    なんだかすこし戒めや心の成長のようなはなしもあったり
    面白かったな
    特に喰い師の話が好き

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    2024年10月19日
  • 惣十郎浮世始末

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    定町廻り同心の惣十郎は
    義理の父・史享の教えを手本とし見廻りをする。
    P134
    〈火種に敏く気付いてとっとと消すのが、
    本来は俺たち同心の腕の見せ所なのだ〉

    ただ、正義を貫くだけでは救える人も救えない。
    P494
    〈完璧なんてもんは幻想でしかないからな〉
    町医の梨春、完治、佐吉がいい味を出している。

    読み応えありなのだが
    少々詰め込み過ぎかな、と。

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    2024年10月12日
  • 漂砂のうたう

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    明治10年。根津遊廓に生きた人々を描く長編
    ご一新から十年。御家人の次男坊だった定九郎は、出自を隠し根津遊郭で働いている。花魁、遣手、男衆たち…変わりゆく時代に翻弄されながら、谷底で生きる男と女を描く長編小説。第144回直木賞受賞作。木内さんは初読み。なんとなく乗り切れないまま読み終えてしまった。他の作品に期待したい。

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    2024年09月05日