木内昇のレビュー一覧
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大河ドラマ『青天を衝け』のパリ万博シーンで、見事薩摩藩に出し抜かれて悔しがっていた印象しかなかった外国奉行支配役・田辺太一を主人公に、幕末から明治を外交という目線で描く。
幕末ものなのに物騒な戦争シーンは殆ど出て来ない。しかしこれは紛れもなく外国との戦争の物語であり、しかも負け戦ばかりの物語でもあった。
何しろ日本はそれまで二百年以上、外国とまともな交渉などしてこなかったのだ。逆にアメリカ、イギリス、フランスなどの大国は強大な武力と強かな交渉術で日本を食い物にしようとしている。
なのに日本は公儀と天朝との足並みが揃わないだけでなく、攘夷派だの開国派だのの横槍に加え薩摩藩や長州藩が勝手に外国と -
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わたしはひどく歴史オンチで、誰が誰でなにしたのかさっぱりわからないので、驚くべきことを発見。
土方歳三と、坂本龍馬ってなんとなーく似たような印象でよくわからんけど、二人とも同じか似たような感じの人だろうなーと、思ってた。
この本読んで、全然違うやん!って自分に突っ込みいれそうになった。笑笑
あーそうだそうだ、函館の人だ!と思ったし、坂本龍馬は
なんじゃきー
とかの人かーあーそうかーそうかーって多分、あんまりわかってないけど、なんとなくわかりかけてきてた。
土方歳三よりの本だもんで、榎本武揚が出てきて!この人!わたし本郷新の銅像探してわかなと歩いてるときに、結構でくわした!この人の -
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ネタバレ著者作品3冊目。良く知る時代を、意外な人物の視点から描く新聞連載小説(2017年2月~2018年7月)。
同時期、朝刊の「ワカタケル」は毎日読んでいたが、こちらは見落としていた(気づいた時には話はずいぶん進んでいた)。
馴染みのある幕末が舞台。開国に踏み切り世が乱れていく渦中に、「外国方」という今でいう外交官・書記官に登用されるいち家人田辺太一の半生を通じ、幕末から明治に至る激動を外交という視点で幕府側から描いた、かつてない新鮮な内容の作品。
新鮮・・・。いや、外交という点を除けば、幕臣の立場から見た幕末、明治維新は手塚治虫著『陽だまりの樹』が思い出される。正直、本書を読んでいても -
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思わぬことに出版直後の新刊が借りられ、続けざまに幕末を舞台にした歴史小説を読むことになりました。
今度は木内昇さん、エンタメ寄りの佐藤さんよりはグッと重厚な感じです。
揺らぐ幕藩制度という内憂を抱え、圧倒的な技術力を持つ諸外国と言う外患に立ち向かわざるを得なかった幕末の外交の姿という珍しい視点から描かれた歴史小説です。
主人公は田辺太一という実在の徳川幕府の外交官僚です。攘夷を唱える諸藩の突き上げで揺れ動く幕府の政策、派閥的論理で次々に交代する外国奉行。そんな中で旗本の次男坊として生まれ、能力を買われて下位の見習いからスタートし、周りに振り回されながらもどこか一本筋が通った外交官僚・田辺太一 -
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ネタバレ女の生きる道が、嫁して子をなし家を守ることあたりまえだった時代、女の道を外れて櫛挽きの業を極める登勢。黙して語らず、櫛挽く姿ですべてを教える父吾助。古い伝統を守ることにとどまらず、広い視野で次の世を見据え櫛挽きの道に新しい風を入れる実幸。誰もが生き生きと描かれている。
数々の障壁をものともせず、櫛挽きの道を邁進する登勢の強さには恐れ入るが、実幸に対する醜いまでの反発心を見るにつけ、そうまで頑迷にならなくてもと辟易。さらに、源次への心の揺れまでも心にストンとは降りてこず、ますます実幸ひいきになりながら読み進める。
主人公の登勢に肩入れできなかったことが、この作品を読む上での敗因だった。
それでも -
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籠の鳥とは、身体のことか、心のことか。
明治維新の頃の根津遊廓が舞台。時代はわかるけど、根津の遊廓のことは全然知らなくて、もっといえば廓のことは雰囲気しか知らなかったので、最初はちょっと難しかった。でも、読みとおせた。主人公の定九郎は、かっこいいというより心の弱さを見ているみたいで見たくない、かっこよくない。ここから逃げたい、でも逃げられない、逃げられなくても心は自由とは、そんなテーマ。
泥の中に身を置きながら、美しい小野菊。小野菊の強さ、美しさは、どんな悪意に晒されていても揺るがない。出られないのは、龍造も同じで、彼もまた揺るがない人。神出鬼没のマイペース、噺家の弟子のポン太。最初はこの