木内昇のレビュー一覧

  • 櫛挽道守

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    同時期に執筆されたという「光炎の人」が物語・人物造形共に素晴らしかったので、時代も舞台も異なるけどある意味で仕事小説という共通の枠組みを持った本作に高い期待を持って読んだ。
    予定調和でなく読者を引き回してくれるストーリーテリングの巧みさは相変わらず素晴らしい。作者の真骨頂は、時に憎たらしく、イライラさせられ、きらいになってしまいそうになる人物造形だろう。
    時代の動きと主人公の生き方や仕事の変化みたいなものが「光炎の人」ほど強く感じられなかったところが少し残念だったが、傑作には変わりないだろう。4.0

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    2020年06月28日
  • 櫛挽道守

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    この時代(幕末の木曽街道)に
    「一人の職人」として生きることを
    貫いた一人の女性が描かれる

    少し前に観た
    16世紀のベネチアを舞台とする
    実在した高級娼婦「ベロニカ」をモデルとした映画の
    主人公に重ね合わせてしまった

    もちろん
    時代も、お国柄も、設定も
    なにもかも違うのだけれど
    一人の女性が一人の人間として
    生きていくことを選んだがゆえに
    その当時の社会通念と闘うことになり
    その当時としては革新的な生き方に
    なってしまうという共通点に
    思えてしまった

    もし映画で撮るなら
    モノクロの映像で
    今村昌平監督タッチが似合うのでしょう

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    2020年06月24日
  • 球道恋々(新潮文庫)

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    意外と言っては失礼になるのかもしれませんが、木内さんの既読作品と比べると終始明るめのトーンで物語が進むのが印象的でした。
    前半から中盤にかけては、弱体化した母校の野球部の再建に主人公が試行錯誤する様子が描かれます。チームと共に成長していく姿はよく描けていると思いますが、コーチという役割上一歩引いた視点が多く、一高vs三高の試合の場面も少しはしょった感があり、期待したほどの臨場感は無かったかなと。そんなわけで第四章までは少々盛り上がりに欠けた印象を受けました。むしろ柿田の出奔とその後の顛末や、塁を見失うといったいったサイドストーリーのほうが面白かったです。
    後半は「野球害毒論」を掲げる新聞社を相

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    2020年06月07日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    まるで筆者により新選組の人物に声を吹き込ませたような(拍手)

    司馬遼太郎『新選組血風録』もいま一度読みたくなった。

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    2020年05月25日
  • 万波を翔る

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    田辺太一という人物を初めて知った。
    日経新聞の連載になった作品だけに、読みごたえがあった。
    「家人」としての忠義と、一人の若者としての思いや情熱。
    幕府側の外国方の外交を描く。
    為替ルート、内政不干渉、国内経済安定など、
    現代の日本経済を彷彿させるようなストーリー感心した。
    また、薩摩藩がパリ万国博覧会に
    「日本薩摩琉球国太守政府」の名で出展し、
    丸に十字の勲章まで作っていたとは知らなかった。
    落語好きでべらんめいちょうの太一は
    薩摩人を「芋!」と呼ぶ。
    これまでのご維新物語にはない、江戸幕臣の痛快さがある。
    明治3年(1870年)外務省から要請されるところで終わる。

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    2020年03月23日
  • 櫛挽道守

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    第9回中央公論文芸賞、第27回柴田錬三郎賞、第8回親鸞賞を受賞作 評価の高い本がやっと来たので、読みかけのものを置いて読んでみた。
    まず作者が女性と言うのを知った。
    作品は、女性の生き方が主なストーリーになっている。

    中仙道、木曽の山中にある藪原宿の集落が舞台。名人といわれる櫛挽職人の父を持つお登瀬の、櫛作りにかけた一途な半生が感動的に描かれている。

    女の人生のが、より不自由に決められ、それに縛られていた幕末の頃、世間並みの生き方を捨ててでも、尊敬する父親の背を見て、櫛引の技を極めるために生ていくお登瀬の成長物語になっている。

    頼みの弟が早逝し、て家族の絆が破綻してくる。そんな中で、お

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    2020年01月21日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    登場人物がはっきりと描かれているので感情移入できた。時代の流れを様々な人物の視点で描き、視点が変わると見方も変わる。心情にも力を入れていて、だんだんと歴史の流れの中で燃え尽きて行く人の生命と残された者の切なさが心にズンと来る。この時代の武士の生き様というものはやるせないような、憧れのようなかっこいいという気持ちを抱く。

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    2020年01月02日
  • みちくさ道中

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    ネタバレ

     木内昇 著「みちくさ道中」、2017.7発行、エッセイ集です。「弁当三十六景」と「行いと姿勢」、印象に強く残りました。
     高校、大学はソフトボール部、四番で「叩きつけるバッティングがうまかった」そうです。編集者10年を経て作家に。木内昇「みちくさ道中」、初のエッセイ集(身辺雑記、自分を語ること)、2017.7文庫、2012.12刊行。まっすぐ働く、ひっそり暮らす、じわじわ読む、たんたんと書くの4部構成です。向田邦子さんのことが結構書かれています。意識されてるんだと思います。母校で高1、2年生を対象に講演をされたそうです。嬉しかったことでしょう! 年始(意気込み)より年末(一旦リセット)がお好

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    2019年12月21日
  • 光炎の人 上

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    杏の書評本から。主人公が熱くて良い奴、とも言えないのがポイントかな。歴史を変えんとする気概には目を見張るものがあるけど、マニアにありがちな、周りが見えない性質も見事に兼ね備えていて、家族をさっさと見捨てたり、婚約者を逆恨みしたり、結構やりたい放題。サブキャラとしての登場人物たちも、軒並みどこかおかしなところがあったりして。でも実際、こういうもんですよね。ひたすら正しくて、とにかくのし上がっていくだけの英雄譚も悪くないけど、現実感あふれるこういう物語も、なかなかに良いものだな、と。後半、どんな展開になっていくのかも見もの。

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    2019年11月18日
  • 櫛挽道守

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    生涯をかけて櫛を挽く、そのひとたち。櫛挽の板ノ間に響く、静かで穏やかな拍子に耳を傾けてみたい。

    父の背中を追って、女なのにと言われながら櫛挽職人を目指す登瀬。同じ場所に居続けながら、居場所としてのそこ、の概念が心境により変化する描き方がうまい。
    幕末という激変する世の中で、信じるものを曲げずにかじりついてきた櫛挽への道。
    一歩一歩が信じる道に通じたと気づけた時、大きく息をついた。言葉ではとても尽くせない。

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    2019年11月10日
  • みちくさ道中

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    作品の面白さと、作家さんのエッセイは必ずしもイコールじゃないしイコールじゃなくていいと思っている。
    木内昇さんの場合は、相乗効果で未読・既読問わず作品を読みたくなった。

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    2019年11月03日
  • 光炎の人 上

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    ネタバレ

    技術者として、技術さえあれば世の中を良くできる、というトザの思いは、確かに間違ってはいないかもしれないが、正しくもない。元工場の友達の信次郎や越増の越田に導かれ、思いは実現の方向へ。

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    2019年10月20日
  • 万波を翔る

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    開国を受けて、幕府に新設された「外国方」で、外交に携わる事になった、江戸っ子侍・田辺太一の生涯。

    攘夷の嵐吹き荒れる中、老獪な諸外国と折衝する事は本当に大変だったと思います。
    本書の主人公・太一も、毎回外国に(時には薩摩に)煮え湯を飲まされていますが、彼の真っ直ぐで熱い思いが伝わってくるので、応援したくなりました。
    それにしても、つくづく日本という国は外交が苦手ですよね。令和になってもまだ後手後手な印象ですし。
    日本という国家の永遠の課題かもしれないな。と、思いました。

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    2019年10月15日
  • 漂砂のうたう

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    ネタバレ

    今の今までずっとポン太や圓朝の噺を聴いていたかのような夢現な小説。
    どんどん引き込まれてお話と現実の境目が曖昧になっていった。

    小野菊さんのきっぷの良さ、大変素敵でした。
    こんな人に出会えることはお話の中でも現実でも、中々ないような…

    それに憧れはすれど、私にとっては定九郎さんの気持ちが大変わかるお話でした。

    1万円選書の一つ。

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    2018年06月22日
  • 漂砂のうたう

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    ずっと気になっていた。
    ようやく読めたが、思っていたのとは随分違っていた。

    不思議な読後感だった。
    重い、というのともちょっと違う。
    江戸から明治、この大変革の時代、人々はどんな暮らしをし、何を感じ、考えていたのか。
    幕末の歴史小説を読む度に、TVで歴史番組を見る度に、結構気になっていた。
    そこに一つの答えを示してくれたと思う。
    もちろん遊郭は、ごく普通の人とは少し違う。でも、だからこそ、そこに流れ着いているのは変革からはじき出された人だ。そこに渦巻く感情、漂う諦観が鋭い輪郭をもって立ち上ってきた。
    面白いというのとは違うが、興味深い作品だった。

    しかし、直木賞を取ったというのは、意外だ。

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    2017年08月10日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    新選組を試衛館組以外の立場から描いてみると、実際はこんな感じなんだろうけどちょっと切ない。夢見すぎですな。
    時代の変化に置き去りにされた悲哀と諸行無常を感じます。
    でもまぁやっぱりかっこいい人の生き様は誰から見てもかっこよかったってことだな。
    弱りゆく沖田総司の明るさとか、土方歳三の意志とかやっぱり泣けてしまう。
    斉藤一もかっこいいし、監察方の尾形俊太郎と山崎丞がとてもいい味出してた。

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    2017年05月18日
  • 櫛挽道守

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    ただただ凄い。凛とした清々しい物語でした。
    あらすじ(背表紙より)
    幕末の木曽山中。神業と呼ばれるほどの腕を持つ父に憧れ、櫛挽職人を目指す登瀬。しかし女は嫁して子をなし、家を守ることが当たり前の時代、世間は珍妙なものを見るように登瀬の一家と接していた。才がありながら早世した弟、その哀しみを抱えながら、周囲の目に振り回される母親、閉鎖的な土地や家から逃れたい妹、愚直すぎる父親。家族とは、幸せとは…。文学賞3冠の傑作がついに文庫化!

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    2017年04月07日
  • 漂砂のうたう

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    江戸から明治、時代の波に乗れず遊郭に取り残された人々の物語。文体はさらりとしているけど、ざらりとした鬱屈感漂う雰囲気。時勢に身をまかせ漂うように生きるしかなくても、器用に生きらなくても、水底を流れて削る砂粒のように誰もが跡を刻んでいるはず。生きることを後押しされる作品でした。

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    2017年01月15日
  • 櫛挽道守

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    木内昇『櫛挽道守』集英社文庫。第8回親鸞賞 、第27回柴田錬三郎賞 、第9回中央公論文芸賞の三冠受賞作。

    それほど素晴らしい小説とは思わなかったのは、エンターテイメントの要素が全く無い時代小説のためだろうか。時代に逆らいながらも自らの道を進む女性の姿を描いた小説に高田郁の『みをつくし料理帖』があるが、それに比べれば物足りなさを感じた。勿論、各種文学賞の受賞と面白さは決して比例するものではないということは承知しているのだが。

    幕末の木曽山中を舞台に描かれる家族の物語。寡黙で愚直な櫛挽職人の父親、古い習慣の奴隷であり続ける母親、才能を開花させる前に急逝した弟、古い習慣から逃れることを夢見る妹…

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    2016年12月30日
  • 漂砂のうたう

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    元武士の身分を隠し、遊郭の門番を勤める定九郎、看板花魁の小野菊。得体の知れない不気味な落語家ポン太。
    木内ワールド。

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    2016年07月21日