木内昇のレビュー一覧
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意外と言っては失礼になるのかもしれませんが、木内さんの既読作品と比べると終始明るめのトーンで物語が進むのが印象的でした。
前半から中盤にかけては、弱体化した母校の野球部の再建に主人公が試行錯誤する様子が描かれます。チームと共に成長していく姿はよく描けていると思いますが、コーチという役割上一歩引いた視点が多く、一高vs三高の試合の場面も少しはしょった感があり、期待したほどの臨場感は無かったかなと。そんなわけで第四章までは少々盛り上がりに欠けた印象を受けました。むしろ柿田の出奔とその後の顛末や、塁を見失うといったいったサイドストーリーのほうが面白かったです。
後半は「野球害毒論」を掲げる新聞社を相 -
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田辺太一という人物を初めて知った。
日経新聞の連載になった作品だけに、読みごたえがあった。
「家人」としての忠義と、一人の若者としての思いや情熱。
幕府側の外国方の外交を描く。
為替ルート、内政不干渉、国内経済安定など、
現代の日本経済を彷彿させるようなストーリー感心した。
また、薩摩藩がパリ万国博覧会に
「日本薩摩琉球国太守政府」の名で出展し、
丸に十字の勲章まで作っていたとは知らなかった。
落語好きでべらんめいちょうの太一は
薩摩人を「芋!」と呼ぶ。
これまでのご維新物語にはない、江戸幕臣の痛快さがある。
明治3年(1870年)外務省から要請されるところで終わる。 -
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第9回中央公論文芸賞、第27回柴田錬三郎賞、第8回親鸞賞を受賞作 評価の高い本がやっと来たので、読みかけのものを置いて読んでみた。
まず作者が女性と言うのを知った。
作品は、女性の生き方が主なストーリーになっている。
中仙道、木曽の山中にある藪原宿の集落が舞台。名人といわれる櫛挽職人の父を持つお登瀬の、櫛作りにかけた一途な半生が感動的に描かれている。
女の人生のが、より不自由に決められ、それに縛られていた幕末の頃、世間並みの生き方を捨ててでも、尊敬する父親の背を見て、櫛引の技を極めるために生ていくお登瀬の成長物語になっている。
頼みの弟が早逝し、て家族の絆が破綻してくる。そんな中で、お -
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ネタバレ木内昇 著「みちくさ道中」、2017.7発行、エッセイ集です。「弁当三十六景」と「行いと姿勢」、印象に強く残りました。
高校、大学はソフトボール部、四番で「叩きつけるバッティングがうまかった」そうです。編集者10年を経て作家に。木内昇「みちくさ道中」、初のエッセイ集(身辺雑記、自分を語ること)、2017.7文庫、2012.12刊行。まっすぐ働く、ひっそり暮らす、じわじわ読む、たんたんと書くの4部構成です。向田邦子さんのことが結構書かれています。意識されてるんだと思います。母校で高1、2年生を対象に講演をされたそうです。嬉しかったことでしょう! 年始(意気込み)より年末(一旦リセット)がお好 -
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ずっと気になっていた。
ようやく読めたが、思っていたのとは随分違っていた。
不思議な読後感だった。
重い、というのともちょっと違う。
江戸から明治、この大変革の時代、人々はどんな暮らしをし、何を感じ、考えていたのか。
幕末の歴史小説を読む度に、TVで歴史番組を見る度に、結構気になっていた。
そこに一つの答えを示してくれたと思う。
もちろん遊郭は、ごく普通の人とは少し違う。でも、だからこそ、そこに流れ着いているのは変革からはじき出された人だ。そこに渦巻く感情、漂う諦観が鋭い輪郭をもって立ち上ってきた。
面白いというのとは違うが、興味深い作品だった。
しかし、直木賞を取ったというのは、意外だ。 -
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木内昇『櫛挽道守』集英社文庫。第8回親鸞賞 、第27回柴田錬三郎賞 、第9回中央公論文芸賞の三冠受賞作。
それほど素晴らしい小説とは思わなかったのは、エンターテイメントの要素が全く無い時代小説のためだろうか。時代に逆らいながらも自らの道を進む女性の姿を描いた小説に高田郁の『みをつくし料理帖』があるが、それに比べれば物足りなさを感じた。勿論、各種文学賞の受賞と面白さは決して比例するものではないということは承知しているのだが。
幕末の木曽山中を舞台に描かれる家族の物語。寡黙で愚直な櫛挽職人の父親、古い習慣の奴隷であり続ける母親、才能を開花させる前に急逝した弟、古い習慣から逃れることを夢見る妹…