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Posted by ブクログ
いい本だったなぁ。しみじみと胸に沁みて読み終わるのが寂しいぐらいに。上手いなぁ木内さん。こんなにも多様な味わいのある言葉を駆使して豊かな物語を編むことができる作家さんなかなかいないんじゃないかな。毎日大した時間も労力もかけられてないようなろくでもない大量の新刊が次々出てすぐに返品されて廃版になるような現代において、これほどまでに誠心誠意、精魂こめて一冊の物語を紡ぎ、版元が確かな目でそれを見極めて社運と財力を賭けて刷って本にしてようやく世の中に出回り、その本を人々が楽しみに待ち、ありがたく手にして、辛いことも少なくないだろう日常の折々に楽しんだ時代に思いを馳せる。江戸時代の識字率や豊かな読書文化にも改めて驚く。
鉄道も電話も写真もない時代、雪深い越後の様子を江戸の人たちに知ってもらいたいという一心で日々の商いの傍ら郷土の細やかな風俗を絵や言葉で書き溜め、著名な戯作者に自ら売り込みの文を書いては飛脚に託して送り、時に自ら遠く江戸まで赴き、立ちはだかる幾多の障壁も乗り越えて40年という歳月ののちついに出版に辿り着き夢を叶えた主人公の儀三治。その家族や友人、出版に向けて関わることになる京伝や曲者の馬琴など著名な戯作者たち、そして何よりも兄の京伝の威容に翻弄されながらも実直な人柄で儀三治の本の出版に向けて決して諦めずに着実に歩を進める京山。地方に住む無名の人間が本を一冊出すことがこんなに大変だった時代。木内さんはそれぞれの生活や人生や心のひだを誠実に丁寧に描いていく。それでいて決して堅苦しくなく時に軽妙で可笑しく、妖怪じみた馬琴の執念深さや性悪さにはハラハラさせられ、でもあれだけの作品を残した巨星への深い敬意がそこには込められ、本に関わる全ての人への愛情が溢れていて読み終わってもう胸がいっぱいになった。世の中に出回っている本の数に比して、自分の人生で読める本の数なんて数冊と言ってもいいだろう。こんなにも自分が書きたい物語に真摯に取り組んでいた人々のことを決して忘れずに、いい本を探す嗅覚を磨き、作者の情熱を深く味わい、心を潤す読書を楽しんでいきたい。
Posted by ブクログ
越後塩沢の縮や質屋で生計をたてている鈴木儀三治は、父の跡をとって商業を生業としている。ある時江戸に滞在し、雪の話をしたが江戸者には何の話をしているか伝わらず、嘘をついているとさえ思われてしまう。越後のことを江戸の者に知ってほしいと越後の話を書き溜めた。
せっかく書いたものなので、出版までいかなくとも何かにして欲しいと人を介して山東京伝にお願いしたところ、手直しする形で出版できるかもという話になったが、出版元が見つからない。耕書堂も鶴屋さんも西村屋さんも二代目。板木代50両払うならという出版元を見つけたが、やはりそこまでの額は出せない。次に大阪の方での出版を試みるが、結局こちらもダメ。
山東京伝が亡くなった後に、曲亭馬琴が出してやると胸を張った。今は忙しいから4年後との話だったが、曲亭馬琴はいつだって忙しい。そこからさらに10年経ち、12年経った。
その頃山東京伝の弟京山が、兄の遺品の中から儀三治の草稿を見つける。あまりに話が進んでいないようなので、こちらでやりましょうかとひと噛みしたところ、曲亭馬琴が臍を曲げる。すでに儀三治はお爺さんである。出版は如何になるのか。
Posted by ブクログ
雪国越後魚沼の生活を記し、江戸時代後期に当時の大ベストセラーとなった『北越雪譜』
本作はその『北越雪譜』に関わった四人の「もの書き」たちの物語である
天賦の人、山東京伝
執念の人、曲亭馬琴
憧憬の人、山東京山
夢中の人、鈴木牧之
それぞれが「もの書き」としての譲れない矜持を持ち、それぞれが木内昇さんの分身だったんじゃないかな〜と思いました
それにしても曲亭馬琴の描かれようが非道いw
まぁ癖のある人だったのは間違いないようですが、なんていうか広げ様がえげつない
小説家ってやっぱすごいな〜
特に時代小説(歴史小説)は、なんとなくある人物像をどかんと覆してきたりして、しかもなんか納得させられたりっていうね
それも時代小説(歴史小説)の面白味だと思うので、必須とまでは言わないが、やはりある程度知っていた方がお得だと思います
当社比75倍!(お得過ぎるやろ!)
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