木内昇のレビュー一覧
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そうか。最終的な着地点は、何と張作霖爆殺事件なんだ。途中からそんな気がしてきて、浅田次郎の件の作品が物凄く好きな自分としては、そういう点でも、本作がだんだんと面白く読めるようになってきた。主人公のキャラは、結局最後まで好きになれないものだったけど、だからこそこんなクライマックスが成り立つってもの。触るものみな傷つけて、ありとあらゆる人間関係を拒否してきたもんな~、って感慨もひとしお。手放しで好き!って感じでもないんだけど、小難しい機械の話とかも頻繁に出てきながらも、それでも頁を繰る手が止まらなかったのは、物語に引きつけられたからに違いない。力作。
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木内昇の小説の主人公はいつも内側に熱い情熱を抱え純粋ゆえに不器用にもがき、そしてそのもがきの中で自分の使命を理解していく、という表舞台には決して登場しない市井の人々が多いと思います。そこが彼女の作品に惹かれる理由かも。日経新聞連載時から本作の主人公が江戸から明治への過渡期の外交という舞台で切歯扼腕している様子は感じていました。今回、したたかな欧米列強に対し、初心な江戸幕府が翻弄される細かい交渉を積み重ねて「太平の眠りを覚ます…」って歴史が生まれたことを単行本として一気に読んだことで理解しました。でも、この本、「歴史小説」というより「仕事小説」としての共感が高いです。偏屈な上司との付き合い方、自
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ネタバレ開国から4年、江戸幕府は異国との外交を担う外国局(外務省の先駆け)を新設する。
一筋縄ではいかない異国との折衝に加え、幕府への不信とともに高まる攘夷熱。
腕に覚えはないけれど、短気で鼻っ柱の強い江戸っ子・田辺太一の成長を通して、幕末における日本の行く末を追う。
日本に乗り込み次々に無理難題を押し付ける異国や、そんな異国へ勝手に戦を仕掛けたり幕府を通さずに直接取引しようとする諸藩に、ひたすら攘夷を要求する天朝。
そんな幾度も押し寄せる荒波に翻弄されながらも知恵を絞って果敢に立ち向かう太一。
幕末から明治へ激動の時代を懸命に翔け抜ける太一の姿は生き生きとして実に清々しい。
歴史上の事件名は知っ -
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タイトル「櫛挽道守」と書いて「くしひきちもり」と読む本作。幕末を舞台に、櫛職人を父に持つ主人公登瀬が、限られた自由の中で懸命に自身の生き方を模索する姿を丁寧に描いた作品です。
時代としてはペリーが浦賀に来航したあたりからになるので、日本史の一大転換期ともいえる頃にあたるのですが、源次を除いて登場人物の多くは不穏さを増す社会情勢から一歩引いたところで日々の生活を営んでおり、よくある波乱万丈の展開があるわけではないです。なので筋だけ読むと正直地味な小説の部類に含まれてしまうのですが、逆にそういった喧騒からの適度な距離感が、登瀬の素朴で純粋な姿を引き立たせているように感じられました。
実は私、読んで -
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ネタバレ志を持った男達の生きざま!すっかり虜になってしまった。
新選組のメンバーが順番に語り手となり、他のメンバーのことや時勢について語る。
同じ時勢のことも語り手が変わると違った印象になるのも面白い。
メンバーそれぞれの個性もよく分かりクスッとなったりニヤリとしたり、切なくなって泣けてきたり悔しくて憤ったり、と様々な感情が次々にわき上がる。
幕末の時代の波に翻弄された若者達。
初めは全員が揃って志を高く持ち、先へ、これよりももっと先へ…と突き進めると信じていたはず。
けれど思惑は人それぞれで、不器用な若者達の野心が手探りで交錯し絡まっていく。
「なにも持っていないということは、実に強い。こうした -
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ネタバレ新撰組ファンとして読んでよかったと心から思う小説だった。
”よくあそこまでやったという崇敬と、さぞ大変な仕事だったろうという痛みと、きっとあれでよかったのだという願いと。”これは小説の最終章、佐藤彦五郎によって語られる言葉である。『幕末の青嵐』を読み終わったあと、私はまさにこの言葉のように複雑で一言では言い表せない感情に襲われた。
それぞれの視点で描かれるこの小説では、近藤や土方を筆頭に新撰組に関わった人物達がとても色鮮やかに描かれている。視点の主によって人物への印象がことなり、それによって人物に深みを与えている。
始めはどこか心の距離があった試衛館のメンバーの間に、強い情が生まれていくのがよ -
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新撰組について書かれたものは多くあると思いますが、「地虫鳴く」は、阿部十郎の、実際の談話録のさわりを皮切りに、物語は始まります。阿部十郎、篠原泰之進、尾形俊太郎の3人が語り手です。
描かれている時期は、池田屋事件などで新撰組が有名になった後から始まっていて、鳥羽・伏見の戦いの前くらいまでなので、短い期間を、じっくり描いているという感じです。
他のレビューを見て、「幕末の青嵐」を先に読みましたが、正解でした。この順だと、すごく自然にしっくりきます。「地虫鳴く」は、「幕末の青嵐」を読んでもなお、新撰組のことを知りたい人向けです。
語り手3人の立場が全く異なる上、篠原視点では薩長側、尾形視点で