木内昇のレビュー一覧

  • 新選組 幕末の青嵐

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    ネタバレ

    新撰組ファンとして読んでよかったと心から思う小説だった。
    ”よくあそこまでやったという崇敬と、さぞ大変な仕事だったろうという痛みと、きっとあれでよかったのだという願いと。”これは小説の最終章、佐藤彦五郎によって語られる言葉である。『幕末の青嵐』を読み終わったあと、私はまさにこの言葉のように複雑で一言では言い表せない感情に襲われた。
    それぞれの視点で描かれるこの小説では、近藤や土方を筆頭に新撰組に関わった人物達がとても色鮮やかに描かれている。視点の主によって人物への印象がことなり、それによって人物に深みを与えている。
    始めはどこか心の距離があった試衛館のメンバーの間に、強い情が生まれていくのがよ

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    2017年10月17日
  • 漂砂のうたう

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    ネタバレ

    「自由」なんて聞こえはいいが、これほど「不自由」なものはない。

    御一新から10年の根津遊廓。
    武士の身分を失い遊廓の客引きとなった定九郎は、ただただやるせない日々を送っていた。
    新政府の造り出した「自由」という厄介な柵に縛られながら…。

    時折挟まれる落語や都々逸が物語の儚さをどんどん煽っていく。
    捨てたはずの過去の柵の中でもがき逃げてばかりの定九郎。
    それに対比するかのような花魁・小野菊の凛とした佇まいと華やかな笑顔が素敵!
    時代の波に翻弄されても自分を見失わずに生きていきたい!

    「自由」とは楽なようで、実はほんと難しい。

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    2017年08月17日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    十代から新撰組に興味を持っていました。きっかけは栗塚旭さんの「燃えよ剣」。司馬遼太郎さんの原作を読みました。続けざまに「新撰組血風録」「新撰組始末記」を読みました。テレビドラマの「新撰組始末記」大河ドラマの「新撰組」などなど。
    最近は少し飽きたなあと感じていたのですが、この作品は面白いです。切り口が斬新です。登場人物たちの主観でストーリーが展開して行きます。筆者が登場人物像を、しっかり持っており筆を進めています。当然、後半に進めば悲しくはなってくるんですが登場人物が、実際にその様に感じていたのではないかと思わせます。

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    2017年08月09日
  • 漂砂のうたう

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    定久郎は元武士、維新後家族捨て出奔。そして名を変え廓に身を潜めた。女は根津廓に売られてきた。どんなに美しくとも籠の鳥。小野菊花魁という名で生きている。彼女の情人、噺家ポン太。彼もまた名を捨て生きている。名を捨てた3人、カタチは違えど自由を求め行動をする。定久郎は翻弄されすぎて途中自由に負けそうになるが、小野菊とポン太がしかけた謎が明かされ全てに納得できた時、彼も彼なりの自由に出会えたのではないか。話に漂う面妖さは砂のよう。はらはらこぼれ心の片隅に塚を築いていく。塚が大きくなったその時、訪れるか私の自由よ。

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    2017年05月24日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    「燃えよ剣」とは違う土方歳三に会えました。
    歴史の勉強にもなるので、子供に読ませたい本です。

    新撰組という新しい組織を、前に進めよう確立させようと苦心している様子に、今の自分の仕事状況と重ねて大変共感でき、良い本に巡り会えたと思っています。

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    2017年05月02日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    ネタバレ

    斎藤さん、渋い。かっこいい。情にほだされる斎藤さんかっこいい。
    山崎さんと尾形さんの監察コンビがいい味わい。

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    2017年04月24日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    同じ人物でも事柄でも見る人が違えば立っている立場が違えば印象も評価も変わる。
    視点が次々に変わるのでとても立体的で解りやすい。
    新選組に限らずだけど、史実と史実をもとにした小説はまた別物と思っているので、数ある説のひとつをとっているというところに特に個人のこだわりはないから、たとえば池田屋で沖田総司が喀血してもしなくても、竜馬暗殺が誰の手によるものであっても、別にいいんだ。
    それよりも隊士たちがみんなあの時代を生きて生き抜いたってとこがとても泣ける。

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    2017年04月09日
  • 櫛挽道守

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    なんでこの人のかく話はこんなに心揺さぶられるんだろう

    時代も価値観も今と全く異なるようで
    でもどこか根底にあるような
    一番揺れ動く、揺さぶられる時代を
    なんでここまで鮮やかに描けるのか

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    2017年03月11日
  • 漂砂のうたう

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    ここ最近、読む本にハズレがなく充実した読書ライフを過ごしてます。

    面白かった。
    それほどページ数が多くもないのに、ボリュームがありました。
    いろいろな謎がラストで解決し、すっきりした読後感です。
    遊女達の暮らしも、暗い描き方ではありませんでした。

    題名の意味と、内容との関係が最後までよく分かりませんでした…。

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    2015年07月19日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    新撰組について書かれたものは多くあると思いますが、「地虫鳴く」は、阿部十郎の、実際の談話録のさわりを皮切りに、物語は始まります。阿部十郎、篠原泰之進、尾形俊太郎の3人が語り手です。

    描かれている時期は、池田屋事件などで新撰組が有名になった後から始まっていて、鳥羽・伏見の戦いの前くらいまでなので、短い期間を、じっくり描いているという感じです。

    他のレビューを見て、「幕末の青嵐」を先に読みましたが、正解でした。この順だと、すごく自然にしっくりきます。「地虫鳴く」は、「幕末の青嵐」を読んでもなお、新撰組のことを知りたい人向けです。

    語り手3人の立場が全く異なる上、篠原視点では薩長側、尾形視点で

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    2015年04月26日
  • 新選組 幕末の青嵐

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    新撰組の人物の視点を変えながら、物語を追っていく歴史・時代小説。

    ひとりひとりの心情が鮮やかに描かれ、登場人物に命が吹き込まれていくようだった。これが処女作なんてすごい!
    特に「覇者の風招きの項」山南の所、「油小路」永倉新八の所なんかは悲しかった。
    青嵐の如く若い隊士たちが駆け抜けていった爽やかさ・切なさを感じる。一番好きな新撰組小説かもしれない。
    普段は平行読みしてるけど、今回は1冊に集中して読んだ。新撰組小説はのめり込んで読むのが楽しい。

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    2015年02月05日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    新選組の話では当たり前の様に近藤、土方、沖田は中心人物として描かれるものだと思っていたから、本作で主人公に対局する立場として描かれているのは新鮮だった。
    後半へいくに連れ追い詰められていく主人公の心理描写に引き込まれた。
    著者の別の新選組作品には物足りなさを感じたけれど、こちらは夢中になって読み切った。

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    2014年10月19日
  • 漂砂のうたう

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    さすが木内さんと思える作品です。明治初期の世の中の急変と、そのなkでどこか江戸の雰囲気を残しながらも変わって行く遊郭の雰囲気がしっかり伝わってきます。ですが、好きかと言われれば左程でもなく。
    『漂砂のうたう』と言うのは妙なタイトルだと思っていたのですが、読んでみれば納得。まさしく時代の激変の中で漂砂の如く漂う主人公達。特に
    主人公の定九郎の諦念(というより逃避かも知れません)が精緻に描かれます。その姿が何とももどかしく。一方で時代に流されずしっかり根ざした妓夫の龍造や花魁の小野菊。むしろこ

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    2016年06月19日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    とても人間的に描かれています。
    読んでいて、端から少しずつ焼かれていくような苦しさ、切なさを覚えるような

    苛立ちや葛藤を覚えながら読みました。
    読み終わって、この人たちは形はどうであれ、生き抜いたのだなあと言う当たり前のようなことが思い浮かんだ。

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    2013年11月18日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    ネタバレ

     主人公は、阿部十郎、篠原泰之進、尾形俊太郎。
     新撰組のいわば負の部分が、彼らをとおして描かれていると思います。
     近藤、土方、沖田、斎藤あたりはこの作品では脇役なんですけど、それぞれの濃さがいい具合に出ています。尾形さんが監察方なだけに、山崎さんの出番がかなり多いです。ピリリとした美味しいところをもっていきます、山崎さん面白い人です。

     土方さんがやっぱりカッコいいです。そして、いいひとなんです。これは尾形目線の土方さんという描かれ方で「いいひと」なんですけど。鬼の副長の「苦労」をね、尾形さんと一緒に垣間見る感じです(笑)。伊東さん離脱の後、伊東さんについた隊士が案外少なかったことを指し

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    2013年07月05日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    歴史ではあまり語られることはない三人を中心とした新選組。
    篠原泰之進が好きなので読み始めたのですが、そのうち阿部十郎のふるまいや感情に共感してしまい、わずかな後ろめたさのようなものを持ちながら読んでいました。
    同じ作者の「幕末の青嵐」と合わせて読むと新選組が立体的に捉えられ、まるで自分がその場にいて見たかのような生々しさが味わえると思います。

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    2013年02月18日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    新撰組の中でも、英雄的な有名どころの面々を眩しく見つめるしかないいわば凡人隊士の視点から、時代の激動を、、、というよりは心の葛藤を描いた作品。面白かった。作者は、優しい人なんだろなあと思う。
    ある程度新撰組について知っていた方がきっと読みやすい。同じ作者の「幕末の青嵐」がおすすめ。

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    2012年12月29日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    解説にもあったけれど、新撰組の中でも「裏」や「脇」を描いた作品。
    更に、誰かひとりの隊士に主役を絞らず何人もが入れ替わり立ち替わりそれぞれの視点から描くから
    その雑多な感じが却って集団らしさを演出していて、とてもいい。

    かと言って描かれている事自体は決して「いい」などと悠長に言えない物悲しさと慌ただしさに塗れているのだけれど、
    幕末ものを読むとき、薩長土より新撰組や会津を選んでしまう。
    時代の上での勝ち負けではない何か琴線に来るものがあるんだろう。

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    2012年07月10日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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     同著者の「新選組 幕末の青嵐」と表裏を成す一冊。
     こちらは裏。

     伊東甲子太郎を中心に据え、阿部十郎、篠原泰之進、三木三郎、尾形俊太郎といった、新選組の中の名の知られぬ隊士たちの視点から、物語が書かれています。
     大志に向けて盲目的なまでに邁進する伊東や上層部に対し、さしたる意志も力も持たない彼らの劣等感や、中心からやや距離を置いて当時のものごとを観た、どこか冷めた感じが今までになく珍しく、とても面白かったです。
     伊東と三木の兄弟関係や阿部と浅野薫の友情、尾形と山崎のやりとりなどが印象に残ります。
     そして、山崎がこってこての大阪弁で常に飄々と冗談飛ばします。すごくわたしの理想の山崎で

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    2012年02月06日
  • 新選組裏表録 地虫鳴く

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    今まで読んだ新撰組小説の中で一番好きです。
    伊東さんが好きなので興味を持ったというのもあるのですがとても良かった。
    彼を支える篠原さん、阿部さん、そして弟の三木三郎から見た伊東さんの姿がただただ儚くて切ない。
    そして木内さんの書かれる斎藤さんがかっこよくて大好きです!

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    2011年11月19日