Posted by ブクログ
2016年06月28日
奇妙なもの音に目を覚ました場面から始まり、見慣れない箱が屋根裏に出現…という始まりだったから、何かオカルト的なオチがつくのかと思っていたら、
『男もすなる日記というものを…』的な、前置きというか、設定の紹介だったようだ。
時代設定は、文化文政から天保のあたり。
一文は約25円に換算。
どの年かは分...続きを読むからないけれど、一月一日から大晦日までの一年間を綴った、江戸時代の自営業(小間物屋)の主婦の日記形式になっている。
木内さんの作品で、今まで自分が読んだものは、少し重いというか、渋いというか、ピカピカに仕上がったものにさっとひとはけ柿渋を塗って汚し塗装をしたような…そういう雰囲気の物が多かった。
けれど、この「日記」は、ひじょうに軽妙洒脱。
現代のよその主婦のブログを、特に大事件が書かれていなくても、「何を食べた」とか「子供が熱を出した」「スイーツ食べ過ぎて体重計が怖い」「ダンナがどうしょうも無い」というような日常を読むだけで面白い…
そういう感じの本なのだ。
そういう日常を、江戸っ子のポンポン威勢のいい話言葉さながらに、会話のやり取りも生き生きとつづっている。
とても面白い。
「わ~、江戸時代の主婦も、今といっしょだな~」
などとつい思ってしまって、いや、これ本当は現代の作家が書いてるんだから、と現実に戻る。
丁寧な脚注付きで、江戸の暮らしの年中行事や一年間が良くわかる。