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日本がボイコットとしたモスクワ五輪が開催された1980年の新春早々、突如として漫才ブームが沸き起こる。朝起きたら漫才ブームだったそんな感じだった。
というのもフジテレビで毎日曜日21時の『花王名人劇場』の枠で漫才を放映してみれば高視聴率。エンタメ路線に舵を切ろうとしてたフジテレビにとっては新たなコ
...続きを読むンテンツ候補。早速ゴールデンタイムに『THE MANZAI』と銘打ち、放映すればまたもや高視聴率。
出演したのはB&B・ツービート・紳助竜介・ザぼんち・のりおよしお・サブローシロー…。以来しばらくはどのチャンネルも漫才、漫才。中でもアイドル的人気をほこったのがザぼんち。僕的には何が面白いの…と思ってたけど。そのブームも、漫才師のネタ切れと露出の多さから飽きられ、ザぼんちが武道館Live⁈をやる頃にはすっかり下火となり、82年にフェイドアウト。
当時の漫才って、島田洋七・ビートたけし・島田紳助らのボケが圧倒的に目立ち、ひたすら喋りまくりツッコミはあくまでも添え物然としてたたずむ、熱量あふれる高速漫才スタイル。
ツービートの漫才は『毒ガス漫才』と呼ばれ、社会風刺を放送禁止・差別用語キワキワでぶった斬る、今なら放送出来ないネタのオンパレード。それに比べるとウエストランドの毒舌漫才なんて可愛いもの。
一方、各々の相方 島田洋八・ビートきよし・松本竜介のツッコミ三銃士は『うなずきトリオ』を結成。竜介の『んなアホな!』・洋八の『なんでやねん!』・きよしの『よしなさい!』というお決まりの引き出しなきツッコミを逆手に取ったトリオは悪ノリし、レコードデビューまでしてしまい、なんと大瀧詠一が作詞作曲。それもこれも、漫才ブームは東京が主導したからスケール感もデカかった。
たけしや紳助ばかりが目立ち、ボケとツッコミが互いに機能しあう、所謂しゃべくり漫才に照らせば異端も異端。速射砲のごとく次々と繰り出す毒っけのあるボケそのものがニューウエーブで、漫才の形式を借りた『揶揄』と『風刺』の効いた漫談に近かった。それとたけしの場合は、明大工学部中退というインテリな経歴も一役買ってた。
それらをつぶさに見てた者として、M-1に見る漫才のレベルの高さはもちろんのこと、あれは漫才ではないと物議を醸す新型漫才が出現するぐらい発展を遂げている。
その先鞭を付けたのがダウンタウン。本書でもダウンタウンに影響を受けNSCに入学、M-1決勝での松ちゃんの評価に一喜一憂するエピソードが何度も登場する。
私見ながら、ダウンタウンと村上春樹の出現は、それ以降の漫才及び文学地図を大きく塗り替えたと思っている。ゆえに影響を受けた亜流を多産した。マイクの前でボソボソうだうだ喋る漫才、比喩を多用したすました文体には大いに鼻じらんだけど、こと漫才ではツッコミのバリエーションを生んだ。
浜ちゃんは漫才について多く語らないけど、ボケが作った笑いを『ツッコミが増幅』させる、その定型を作った第一人者である。
くりぃむしちゅー上田&フットボールアワー後藤の
例えツッコミ、さまぁ~ず三村の感情むき出しツッコミ、おぎやはぎ矢作のなだめツッコミ、千鳥ノブの嘆きツッコミ、ミルクボーイ内海の解説ツッコミ…といった具合に。
そんな日々刻々と進化する漫才を仕立て上げたのが『M-1グランプリ』。芸歴15年までの漫才師がその年の漫才の頂点を目指す、毎年数千組の芸人が挑むお笑い界最大のビッグコンテスト。覇者ととなれば一夜にして富と人気を約束されるシンデレラストーリーが待ち構える。
M-1の4分間はさながら格闘技に挑むアスリートのごとく…、本書は結成10年目にして頂点に立った笑い飯を軸にその戦譜を克明に刻む。
M-1草莽期の覇者 中川家、打倒吉本に燃えたおかだますだ、松本人志の低評価に懊悩したフットボールアワー、異能コンビ笑い飯に背を向け自分たちの目指す笑いで覇者となったノンスタイル、笑いを追い求めるあまり精神疾患になったブラックマヨネーズ吉田、決勝本番直前に相方に深い感謝を述べたスリムクラブ内間…。
本書は、漫才師が一夜にして寵児となるようにM-1自体が化け物イベントになっていく軌跡が綴られ、表紙をなぜ笑い飯が飾ったのかが理解できうる評伝でもある。
笑い飯のダブルツッコミボケという斬新な漫才スタイルのみならず、NSC出身でない傍流を歩みつつも、ふたりの根幹に根差す『ひとが面白いと思うより自分たちが面白いと思うもの』という迎合しないウケを狙わない断固とした姿勢を崇拝する芸人も多く、ふたりの醸す狂気と熱情を炙り出していく。
著者の取材も次第に漫才師たちの熱量が伝導したのか、取材を良しとしない芸人への食らいつく執念にも似た果敢さ、それを活写していく筆力にはただただ圧倒され、読後感はクタクタ。超力作。
Posted by ブクログ
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2001年から2010年まで開催された第一期M-1グランプリを笑い飯を中心に据える史観で振り返った一冊。予選や決勝を外から観戦しての分析・批評ではなく、実際に歴代チャンピオンはじめ漫才師たちにインタビューしているため当事者の声を通した(青春の思い出補正も含めて)大河ドラマのような物語性が凄まじい。ゼ
...続きを読むロ年代の大阪お笑い史の側面もあり、中でも笑い飯の歪な関係性は読んでいて背筋が凍るほど。個人的にはケンドーコバヤシやタイムマシーン3号といった必ずしもM-1とイメージが直結するわけではない芸人にも取材している網羅性には唸らされた。ちなみにナイツが歴史からすっぽり抜け落ちている件については著者が塙の著書の聞き手・構成を担当していることに留意。
Posted by ブクログ
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圧倒的に面白かった。素人に分かりやすく、けど、全く理解不能な漫才師という生き物。同じ人間でありながら全く別の生き物。殆どの芸人が不器用で純粋でかっこいいなぁって思った。けど、きっと一般人も同じ様に不器用で純粋なのだろうなと思った。
きっと2回、3回と読み直すんだろうなと思う。本当に読んで良かった。
Posted by ブクログ
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2000年代のM-1草創期の話がメインなんですが、この時ヒリヒリした会場の雰囲気を覚えている世代からすると、堪らない気持ちになる裏話がこれでもかと詰まってます!
これ読んでると過去のM-1を改めて観たくなって、02年と03年だけ観ましたが、近年のM-1と比較すると、やはり完全に別物です。
談志師
...続きを読む匠が全く笑わず終始微動だにせず審査してるし、今と違って松ちゃんも1〜2組だけフフッと笑うだけで仏頂面。他審査員みんな、つまらないコンビにはつまらないと言い切って、点数も70点以下とか平気で出してた時代。観客も点数低いと普通に「ええ、、、」って声を洩らして引いてるし、、、笑 そんな賞レース今ないです
幼心に審査員怖すぎだろと思ってましたが、この本を読むと、どうやら出演するコンビ同士でも裏でピリピリしていたようで、ああ、全てにおいて今と違うんだなと感慨深くなります。
個人的に印象的だった箇所は、昔ソフトバンクが携帯キャリアのPRでやっていたS-1グランプリの話です。
まず、そういえばそんなのあったな!と懐かしいのから始まって、なぜ面白くなかったのかの理由やすぐに話題をきかなくなってしまった当時の流れなどが、M-1との比較する形で芸人や関係者視点で語られています。本当に丁寧な取材で明らかにされていて、とても納得しました。
思いがけず、ものすごく人生の教訓とも言うべき学びがなり、ここが個人的にこの本のハイライトです。
Posted by ブクログ
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2022年史上一番読み応えがあって面白かった本。
甲子園が割れた日など甲子園を題材にしたノンフィクションで有名な中村計による本ということで期待していたが予想に違わない面白さでした。
笑い飯を中心に、2001年の第一回から2011年までの第10回までを取り扱ってます。
これみると、昔のM-1、特に
...続きを読む笑い飯のネタを見たくなる。
Posted by ブクログ
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