花村萬月の一覧
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ユーザーレビュー
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二段組で375ページ。なかなかの大作だと思います。にも拘わらず、ほぼ一気読みでした。初の花村萬月の作品。読み応えも大作のそれでした。
解離性同一性障害のヒロイン紫織と語り手である作家の菱沼逸郎。この逸郎にも「悪い逸郎」という別な自分がいる。
この逸郎は著者の花村萬月のことであろう、この作品じたい、
...続きを読む「露見しなかった犯罪事実に基づいて執筆されている。」「丹念に足で稼いだ取材の結果」など、ノンフィクションであるかのような体裁。それが「後書き」でさらにダメ押しされた感。
素直にこの「事実に基づい」ていることが受け入れられないのは、なぜだろうか、と。
「事実」があまりにも悲惨、量子論に関する部分が理解できない、後書きに記されている、著者に起こった変化も俄かに信じがたい……、だが。
後書きまで含めて、スゴい小説読んだな、という感想。
うかつに他の作品には手を出せない、そんな印象です。
Posted by ブクログ
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今月の二冊目は、花村満月氏の「弾正星」。
氏の小説はかなり読んでいるが、時代小説は初めてだ。
戦国大名にのし上がる松永弾正久秀の生き方から、花村氏の基本的テーマである「悪」、「神」が綴られる。
内容は省くが、相変わらずの激しい世界観が弾正を通じて描かれている。
茶道具の価値観を生み出す方法などは、現
...続きを読む代の仮想通貨、いや、通貨全体の危うい価値と相通づるところがあり、興味をそそられた。
Posted by ブクログ
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壮絶
最後に 「フィクションです」 とある通り、小説ではある。だけど、病気の部分は限りなく真実の壮絶な闘病記。気持ちの揺れの表現がさすがで、じわりと滲みてくる。
花村氏の未来の幸福幸運を祈らずにはいられない。
Q
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思わず吐き気を催しそうな表現に辟易しながらも読み進めてしまえる不思議な感覚。ふと思い出して再読しました。
他人の言動や行動にふと、謂れのない怒りを彷彿させ冒涜の限りを尽くす姿に何故か愛おしさとか、なんとも言えない感情が出てきます。
Posted by ブクログ
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実に久しぶりに読む花村萬月作品。花村さんは、ぼくより一つ年上の作家で、ほぼ同世代。最初にお会いしたのは歌舞伎町の文壇バーみたいな店。こちらは文芸評論家・関口苑生氏他とカウンター。花村先生は集英社の方とテーブル席。ハードボイルド作品『眠り猫』が出たばかりだった。
それを機にぼくは花村作品の虜と
...続きを読むなり、長年ずっと愛読してきたのだが、時代小説一辺倒となってからの近年は正直離れてしまっていました。今回、久々の現代小説、しかも題材が多重人格とあって、ダニエル・キース著『五番目のサリー』『24人のビリー・ミリガン』以来のこの難テーマに挑む国産天才作家の手腕を久々に堪能させて頂いた次第。
花村兄とは、数回お会いしたりパソコン通信(古い(^^;))でのメッセージ交換などもさせて頂き、札幌にマンションを買って一年ほど住んでいたが
京都に移転してしまった当時の経緯、北海道の貧乏旅のよもやま話、ブルースギターの話(花村さんはブルースギターの名手です)などなど、わずかだが共通趣味も多くて、何となくご縁があった。
その花村さんが、本書では架空の作家とは言え、札幌のマンション生活を送る売れっ子作家という一人称等身大の語り手を通しての作品、しかもこの生活体験を通して出会った一人の女性との交情を描く意欲作を出してくれた。
しかも多重人格という思いもかけぬテーマであり、実際の症例に向かい合う取材活動を基に描きあげた力作なのである。
一つの肉体が50人もの人格を擁することになる原因は、心の容量をはるかに超える暴力や凌辱にある。一人の人間が人間であることをやめてしまい、他の人格として何事もなかったかのような別人生をリスタートする。そんな救済システムが働き始める現象なのだ。いわば多重人格という難しいテーマ、またその発症のめくるめく側面を具体的な小説という技法で叙述したものが、本書なのである。
一方で、ダニエル・キースが人間の心の深さや神秘的な自己救済システムとしての多重人格を世に広めてから早や半世紀が経とうとしている現在、花村萬月は、改めて日本の札幌という街を舞台に、作家自身と、一人の傷だらけの女性との交情を通し、この世で最も不思議な恋愛小説を謳いあげているかに見える。
花村萬月と言えば性と暴力の作家、と思わず装飾したくなるが、本書もまた性と暴力そのものに真向から取り組んだ力作だと思う。ただ心の深淵を旅することで途轍もなくオリジナリティは深いものとなっている。
一人の女性をばらばらにし、現実を乖離させる中で、主人公の作家・菱沼の人生もまた私小説的に語られ続く。彼もまた自分の実人生を私小説的に振り返ることで、ただの観察者ではなく、共にある時期を過ごす50人の人格を持つ女性との最も不思議な日々を人生の万華鏡のように見つめなおす。
不可思議な人間科学と、暴力やエゴにいとも簡単に破壊されてしまう心の耐性の実験道具として、弱くても繋がり、他と結ぼうとする情の熱さが、溶鉱炉のように物語を溶かし、冷やし、凍りつかせる。
花村萬月との再会果たしたり!
そんな念が読後に強く感じられた。嬉しく、有難く、そしてあまりにも心の痛い物語に、どうしようもなく揺さぶられる自分を、少なからず、ずしりと感じさせられた久々に味わうタイプの花村人間小説であった。
Posted by ブクログ
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