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Posted by ブクログ
文庫本で1000ページを超えるボリュームだが、あっという間とは言えないが、じっくりとその世界観に浸りながら読んだ。読んでいる時は本当に面白く、終わりに近づくと、まだこのまま読んでいたい。この登場人物たちを見ていたいと願うようになった。
皆月もそうだが、この頃の花村萬月は本当に凄い。花村萬月というと、その物語を性と暴力と簡単に表現する人もいるが、決してそんな安直なものではないと、読めば絶対にわかるはず。確かにそういった描写はかなり多いが、それは、この登場人物がこの行動の後はこうなるだろうと、必然であると思えてくる。
それにしても、この作者は人間の根底にある狡さであったり、弱さであったりの心理描写が実に上手い。そして本当に魅力的な人物を描く。この物語の主人公は、おそらくは京都大を卒業し、大手出版社を退職した家庭教師の鷲津。おそらくというのは、このタイトルが表すのは鷲津の恋人の父親であるヤクザの乾ではないかと思うからだ。鷲津は乾や、乾の娘の倫子と出会い、今まで過ごしてきた道を大きく踏み外した人生を送っていくのだが、全然カッコつけたところがない。実に人間の脆さや狡さを素直に表現するというか、自分は狡く、情けない人間であると認めている。それはある意味潔い。まあ、私は鷲津ではなく乾の部下の中嶋であったり倫子の人間性に惚れたのだが。
こんなに長いレビューを書くつもりはなかったが、文句なしの作品だった。
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小説・文芸
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