【感想・ネタバレ】二進法の犬のレビュー

あらすじ

家庭教師・鷲津兵輔が、生徒として引き受けることになった女子高生の倫子(りんこ)。彼女の父は、武闘派乾組(いぬいぐみ)組長・乾十郎だった。鷲津は、乾組という組織、十郎の「白か黒か」を徹底する生き様、そして倫子の凛とした存在に、次第に自分の所在を見いだしていく。博打、抗争、性愛……激流のなか、鷲津が手にしたものは──! 全てのひとが心に抱える深い闇を重厚に切なく描く傑作巨編!

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Posted by ブクログ

文庫本で1000ページを超えるボリュームだが、あっという間とは言えないが、じっくりとその世界観に浸りながら読んだ。読んでいる時は本当に面白く、終わりに近づくと、まだこのまま読んでいたい。この登場人物たちを見ていたいと願うようになった。
皆月もそうだが、この頃の花村萬月は本当に凄い。花村萬月というと、その物語を性と暴力と簡単に表現する人もいるが、決してそんな安直なものではないと、読めば絶対にわかるはず。確かにそういった描写はかなり多いが、それは、この登場人物がこの行動の後はこうなるだろうと、必然であると思えてくる。
それにしても、この作者は人間の根底にある狡さであったり、弱さであったりの心理描写が実に上手い。そして本当に魅力的な人物を描く。この物語の主人公は、おそらくは京都大を卒業し、大手出版社を退職した家庭教師の鷲津。おそらくというのは、このタイトルが表すのは鷲津の恋人の父親であるヤクザの乾ではないかと思うからだ。鷲津は乾や、乾の娘の倫子と出会い、今まで過ごしてきた道を大きく踏み外した人生を送っていくのだが、全然カッコつけたところがない。実に人間の脆さや狡さを素直に表現するというか、自分は狡く、情けない人間であると認めている。それはある意味潔い。まあ、私は鷲津ではなく乾の部下の中嶋であったり倫子の人間性に惚れたのだが。
こんなに長いレビューを書くつもりはなかったが、文句なしの作品だった。

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2017年01月10日

Posted by ブクログ

えぐいシーンが強烈すぎて辛いんだけど、結局、泣かされた。小説で泣かされるのは滅多にないから、ものすっごい揺さぶられたんだなと思う。が、辛すぎる……。シーンごとに読み返したくなるところも沢山あるけど。中嶋、中嶋愛しいよーー!!!

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2013年09月28日

Posted by ブクログ

かなり面白い
ヤクザがよく出てくる話。
男の仁義がよく書かれていて、賭博のシーンも男なら熱くなって読んでしまう。
そして、中盤にかけてのヌルい恋愛小説が入ったと思ったら....
終盤は衝撃の連続
全体的に生臭い。そこが痺れる

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2012年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょっとエロが多いのが個人的には嫌なのですが、博徒の勝負の緊張感ですとか倫子が倒れてからの緊張感・スピード感は凄いです。読書苦手な私が読む手止まらず徹夜して読破してしまいました。今でもたまに読み直している、とても好きな作品です。

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2012年08月05日

Posted by ブクログ

いやー凄い本でした
俺はこの人の事確かに読まず嫌いでした
途中ある人を想い出して涙が止まらなくなりました。

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2012年05月26日

Posted by ブクログ

エロと暴力を織り交ぜながら、人間の虚無を描く花村萬月の真骨頂。これでもか、というくらいに人間の暗部をえぐってくる。

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2012年01月22日

Posted by ブクログ

一冊の文庫なのにその分量は1000頁超。なんだこの厚さは、てな具合に外形からまず読者を引き込む。で、そんなヴォリュームなのに休日一日で一息に読ませてしまうようなエンターテイメント性。初期花村作品の良さが存分に味わえるお腹いっぱいな作品。

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2010年04月18日

Posted by ブクログ

約1100ページ。
上下に分けろよとも思ったけど、
すごくおもしろくて読みやすくて、
一気に読んでしまった。

あいかわらず、
花村萬月さんの小説では、
あっさり人が死んだりする。
それもけっこう重要な人が。

最後の、
奈落の底に、ぱったぱった
とスキップで落ちていく。
というところがなんかすごい好きです。

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2009年12月11日

Posted by ブクログ

花村萬月は人間の本能と欲望のドロドロした部分を描かせるとピカ一の作家だと思っている。そんな中でも「ヤクザ」対「家庭教師」という図式を使ったこの作品は、その「ヤクザ」という小道具を非常に上手く使いより主張性の高い作品になっている。一つの高みに達した作品であると思っている。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

1か0、白か黒、上か下、右か左、両極端な所で交わす物語。ヤクザと家庭教師が織り成す、分厚いストーリーです

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2010年12月31日

Posted by ブクログ

いや~、長いっ!!
文庫本タイプで1000ページを超える厚さ。
本を持つ手が筋肉痛(笑)。

前半は花村萬月特有の様々な薀蓄話が飽きるぐらい続くんだけど、中盤から後半にかけてはスピード感たっぷりに様々な伏線が絡み合ってくる。
一気に読み進めた。

倫子を失って涙も出ないとつぶやいた鷲津のシーンは泣けた。
~2009年12月~

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2009年12月16日

Posted by ブクログ

分厚い本にやる気を出すタチですが、この本もかなりの厚さ。でもスラスラ読めてしまう。コンピュータやら賭博やらの蘊蓄もなんか良い。

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2015.6.28 再読

細かなストーリーは忘れてしまっていたけれど、2回めに読んでもやはり面白い。前回はあまり注目していなかった、乾組の若衆の中嶋の人となりの魅力が今回は心に残った。ヤクザとして組長の乾に心酔しつつ、そんな己の価値観と全く違うところにいるカタギのインテリ家庭教師の鷲津に素直に敬意を払える、その不思議なバランス感覚が魅力的な人物。中嶋が出所した乾組のその後の話とか読んでみたい。

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2015年06月28日

Posted by ブクログ

花村作品の花村作品たる部分が全部出たような本。

主人公は頭が良い。でも人間として馬鹿。他人の青臭さと自分の青臭さを近親憎悪していて、そのはけ口が「暴力とSEX」

その主人公を助ける女は必ず「美しく母親的であり聖母的で性に対して非常に積極的」

暴力とSEX、世界と自己の否定と肯定を繰り返して最後に女だけが唯一の光っつー救いの無い花村文学。

なんでこんな嫌いなのに読み続けてるんだろう。

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

著者の芥川賞受賞後の第一作ということで、文庫本で1000頁を越えるヴォリュームに、著者らしいエロスとヴァイオレンスの濃密な雰囲気が横溢する小説世界を堪能できる作品です。

大学卒業後に出版社に務めるも退職し、家庭教師として働いている27歳の鷲津兵輔という男は、暴力団乾組の組長の娘である乾倫子の勉強を見ることになります。彼は、組長の乾十郎の住んでいる世界を垣間見ることになり、その世界をつらぬいている掟に心を惹きつけられながらも、堅気の世界にとどまりつづけます。しかし、倫子から好意を寄せられ、やがて関係をもつにいたって、鷲津はしだいに乾たちの世界に入り込んでいくことになります。

登場人物たちの会話がやや平板に響いてしまう感があるものの、これだけの分量があるにもかかわらず、スピード感をもって読み通すことのできるエンターテインメント性をそなえた作品で、サスペンス小説としては秀逸だと感じました。

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2020年09月21日

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