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群像編集部の若手編集者羽田御名子のもとに、小説家志望の安良川王爾から持ち込まれた原稿<裂>。登場人物には御名子の名が使われ、穢されていた――。「群像」連載時から注目を集めた作品がついに単行本化。
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Posted by ブクログ
「文芸出版界の内実を曝す問題作」と帯のコピーにあり、興味を惹かれ、購入して即読んだ。 「群像」編集部の女性編集者を主人公に、作家志望の男達や作者花村萬月自身が登場し、文芸誌の新人賞の裏事情などが語られる。その点は興味深かったが、実際に作品を貫くモチーフのほとんどは「セックス」「ドラッグ」「暴力」で、...続きを読む女の読者であるわたしには耐え難いものがあった。 だが、それだけ嫌悪感を感じさせながらも、この小説は途中で読むのをやめさせない力がある。 文中、花村萬月が、「感性的に嫌悪を抱いても、なおかつ惹きよせられてしまうもの」、その「センス」を持つものが小説であり小説家であると語る。確かにこの作品にはその「センス」が内在しており、花村氏は「センス」を持つ限られた存在の小説家なのだろう。 この小説にはいくつもの瑕がある(例えば、女性を描けていないとか、ラストの処理が安易だとか)。 だが、そんなことは問題にならない。小説とは本来瑕を抱える性質のものなのであって、そんなちまちましたことを凌駕するダイナミズムがあることが重要なのだ。それがひしひしと伝わってくる。 全編汚物にまみれきったような作品でありながら、読み終えたあと、どこか清々しい。稀有だ。
群像編集者と才能に埋もれた青年の話。 編集担当の裏側が覗ける!と話題の作だったが、読破してみればそれほど頁が割かれているわけではなかった。 性描写が多いかな。 描写、会話、説明を学びたい作家志望者には一読の価値有り。
随分、久し振りの更新--; ある方から、 仮にもモノカキを目指す者であれば読んでおいてきっと損はない、 との勧めを受けて一気読みした。 端的なあらすじとしては、才能のある作家未満の物書き志望者が、編集者とねんごろになった末に、めでたく作家としてデビューするまでを、その女性編集者の視点から描いた、...続きを読む虚実併せ持った物語である。 実際今月末に応募〆切を迎える「群像新人文学賞」の選考過程、新人賞の舞台裏、出版業界の空気、編集者の仕事ぶりや思い、作家の生態、プロとアマチュアを隔てるものの正体、表現という行為及び才能についての考察等々、少々耳の痛い話も含め、示唆に富む内容が目白押し。 これまでに散々、出版業界や創作に関するあれこれは読んできているので、断片的に知っていることは多かったが、編集者の仕事を通してそれらが線になってすっきりしたような気がする。 もちろんあくまでフィクションであるし、著者の理想・希望的な部分もあるようにも思うので、鵜呑みにすることはできないが。 また、性描写が少々過剰な気もするが、嫌悪を抱くほどではないし、作品の主題に寄与こそすれ、いささかもこれを損なうものではない。 さて、語れるほど著者の作品郡をあれこれ読んでいるわけではないが、 これまで読んだ数冊に共通して抱く思いとして最も強いのは、 艶のある文章だな、 ということだ。 世界観は好みではない。 露悪趣味的だったり、人の汚い部分をあえて選んで描いてるのだろうと思う記述は、生理的に進んで読みたいと思うテーマではないことが多い。 それに、登場人物の気持ちの変化が落ち着かなくて、お尻の座りが悪い。 繊細と思えば大胆で粗雑、奔放と思えば小心、自虐的と思えば不遜。 なかなか正体がつかめないことに加え、時代錯誤的なヒロイズムが鼻につくことがあったりで、共感し感情移入することはほとんどない。 だが、どうしても途中で投げ出すことはできない。 なぜといえば、間違いなく「幸福な読書体験」を提供してくれるからだ。 嫌悪を抱きながらも、鮮やかに目の前に人物や風景が浮かびあがり、その背後には光さえ感じることができ、鼓膜には文中の会話や自然の息吹が踊り込み激しく跳びはね、生き生きとした汚物は鋭く鼻の粘膜を刺激し、風がほほに触れたかと思うと、口に甘かったり苦かったり酸っぱかったりする。まさに登場人物らの思考と知覚を追体験しているのだ。そしてそうした体験を通し、自分の生をあるいは性を実感することが出来る。 凡百の作家の作品にはないこの心地良さこそが、著者の言う「センス」「才能」のたまものであることに間違いはなく、文句なしに著者を、現代文学を代表する作家の一人たらしめている理由となるのだろう。
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