小説 - 新潮文庫作品一覧

  • 万葉十二ヵ月
    4.0
    約千三百年前の歌集「万葉集」は、今なお日本人の心の故里であり、その歌心は、空の雲、野の花、風のそよぎの中にも瑞々しく息づいている。飛鳥の里をはじめとして、瀬戸内、紀州の海、越中、九州対馬など、古代の面影を今も残す各地を、著者は訪ね歩く。美しい日本の四季おりおりの山川草木の移ろいの中で、いきいきと蘇る万葉びとの心に触れ、目に見えない世界を探る随想集。
  • 万葉のいぶき
    3.0
    千三百余年の歴史を超えてよみがえる、万葉のロマン。――〈万葉のこころ〉を愛し求め続ける著者が、読者をおおらかな古代人の世界へと誘う。万葉の歌を《愛》《旅》《四季》という角度から捉えた本書は、全国の万葉故地をくまなく訪れた著者ならではの語りかけで、風土のなかに生まれ、息づいた歌ごころを、もっとも古くて、もっとも新鮮な生のいぶきとして伝える。
  • 万葉の人びと
    4.0
    日本の揺籃期を生きた有間皇子、額田王、大海人皇子、大津皇子、柿本人麻呂、大伴家持、山上憶良など、万葉びとのみずみずしい心が、千三百年余もの時を超えて、いま新たによみがえり、わたしたち現代人の胸に共鳴する。「万葉集」に歌われた全国の故地を自らの足で歩く著者が、万葉の歌を生きた心の音楽として捉え、その風土と、そこに息づく人びとを生き生きと描き出している。
  • ミカドの淑女
    3.7
    その女の名は下田歌子。女官として宮廷に出仕するや、その才気によって皇后の寵愛を一身に集め、ついには華族子女憧れの的、学習院女学部長となった女。ところが平民新聞で、色恋沙汰を暴露する連載記事が始まり、突然の醜聞に襲われる。ここに登場するのは、伊藤博文、乃木希典、そして明治天皇……。明治の異様な宮廷風俗を描きつつ、その奇怪なスキャンダルの真相を暴く異色の長編。
  • 未完の告白
    3.4
    「どこを通るかはほとんど問題ではない。ただどこへ向って行くかが問題である」という信念をもって、人生に大胆にのりだしていく少女ジュヌヴィエーブの手記という形をとり、単に自由を希うだけではなく、積極的にそれを奪いとろうとする少女の姿を通して、虚偽的なもの、圧倒的なもの、因襲的なものに対する反抗を描いた作品。思想的激動期に書かれたため未完のままで発表された。
  • 岬にて―乃南アサ短編傑作選―
    3.6
    かつての恋人の故郷でその不在を想うキャリア・ウーマン。寒い土地への転居を境に狂い出す「じゃぱゆきさん」。整形して若い男と結婚し、離別した娘を従妹として引き取ろうとする母。夫の子を産むと決めた女のもとを訪ねる妻。次々と夫が死ぬ魔性の女。彼女たちはさまざまに熟れていく。女性の心理描写が際立つ短編を精選し、単行本未収録作品を追加したベスト・オブ・ベスト第二弾。
  • みすゞと雅輔(新潮文庫)
    4.2
    「みんなちがって、みんないい。」小さな命の輝きを詠った金子みすゞ。弟の雅輔(がすけ)は幼くして養子に出され、みすゞを姉と知らずに文学の友となる。新発見の雅輔の日記から浮かび上がる二人の文芸への情熱、青春の光と影、愛と嫉妬、みすゞの自死、永遠の別れ。大正デモクラシーに生まれた童謡詩が、戦争にむかう昭和に衰退する時代背景を描きながら、知られざるみすゞ像に迫る、画期的伝記小説。(解説・片山宏行)
  • ミステリー列車が消えた
    3.4
    行き先不明のブルートレイン「ミステリー号」が東京駅を出発したまま消息を絶ってしまった。ほどなく犯人から身代金10億円を要求する連絡が入る。速かに応じない場合は乗客の生命は保証できないという。全長250メートルに及ぶ列車を400名の乗客ごとに誘拐するという前代未聞の犯罪に、国鉄当局・警察は翻弄される。十津川警部の活躍は? 奇想天外なトリックの傑作鉄道ミステリー。
  • みずうみ
    4.3
    故郷を離れている間に友人と結婚した恋人に、美しい湖のほとりで再会したラインハルトは、過ぎ去った青春が戻らないことを知って去ってゆく。――若き日の恋人に寄せるはかない老人の思いを綴る『みずうみ』。併録の『ヴェローニカ』は、死の予感のはしる美しい人妻の痛ましい恋を、『大学時代』は、貧しい美貌の少女の可憐な反逆を描く。いずれも詩情あふれる美しい恋物語である。
  • みずうみ
    3.6
    美しい少女を見ると、憑かれたように後をつけてしまう男、桃井銀平。教え子と恋愛事件を起こして教職の座を失ってもなお、異常な執着は消えることを知らない。つけられることに快感を覚える女の魔性と、罪悪の意識のない男の欲望の交差――現代でいうストーカーを扱った異色の変態小説でありながら、ノーベル賞作家ならではの圧倒的筆力により共感すら呼び起こす不朽の名作である。

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  • 湖の女たち(新潮文庫)
    3.4
    湖畔の介護施設で暮らす寝たきりの男性が殺された。捜査にあたった刑事は施設で働く女性と出会うが、二人はいつしかインモラルな関係に溺れていく。一方、事件を取材する記者は死亡男性がかつて満州で人体実験にかかわっていたことを突きとめるが、なぜか取材の中止を命じられる。吸い寄せられるように湖に集まる男たち、女たち、そして――。読後、圧倒的な結末に言葉を失う極限の黙示録。(解説・諏訪敦)
  • 水の葬列
    -
    1巻550円 (税込)
    不貞ゆえに妻を殴殺した過去に追われるように、山奥のダム工事現場へ流れ込んだ男と、水没を目前にしながら無気味な沈黙を続ける幻想的な落人部落の人々との、微妙な心の響きあいを描く表題中編。他に、戦時下の勤労動員を背景に、青春の心の陰影を鮮やかに定着した『彩られた日々』等、戦中戦後“二つの精神的季節”を生きてきた作者自身の体験を結晶化した短編5編を併せ収める。

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  • 水の翼
    4.0
    木口木版画家・柚木のもとを訪れて弟子入りを志願した青年、東吾。柚木の歳若い妻・紗江は、どこか謎めいたこの青年に強く惹かれていく。ある日、柚木が急逝し、東吾は詩画集『水の翼』のための木版画制作を引き継ぐことに。同じ家で二人きりで過ごす紗江と東吾は、互いの想いの強さを偽れなくなっていく……。芸術と恋情のはざまで引き裂かれる男女の運命を描く、恋愛小説の白眉。
  • 水の肌
    3.4
    妻の実家の金で留学した男が旅先で資産家の娘と知り合い、妻の前から姿を消す。彼は妻に落ち度があれば離婚が成立すると、私立探偵を雇い、密かに動向を監視し続ける。ところが知らぬ間に、彼が軽蔑していたかつての同僚と妻が再婚していたのを知った時、男の心に理不尽な怒りが湧く…。表題作をはじめ計りがたい人間の愛憎と欲望をテーマに、現代社会の不確実な内面をえぐる傑作短篇5話を収録した推理小説集。

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  • 水を抱く
    3.8
    初対面で彼女は、ぼくの頬をなめた。29歳の営業マン・伊藤俊也は、ネットで知り合った「ナギ」と会う。5歳年上のナギは、奔放で謎めいた女性だった。雑居ビルの非常階段で、秘密のクラブで、デパートのトイレで、過激な行為を共にするが、決して俊也と寝ようとはしない。だがある日、ナギと別れろと差出人不明の手紙が届き……。石田衣良史上もっとも危険でもっとも淫らな純愛小説。
  • 未成年(上)
    4.2
    富豪となり、権力を得ることによって自由を求めようとする私生児アルカージイ・ドルゴルーキー、信仰と不信、西欧とロシア、地上的な恋情と天上的愛に引き裂かれ、そのような自我の分裂を、「万人のための世界苦」に悩まなければならないロシア知識人の宿命と見る、実父ヴェルシーロフ――この分裂した人間像に、アルカージイの戸籍上の父である巡礼マカール老人の神を信じる素朴な精神が対置される。ドストエフスキー後期五大長編の一作。
  • ミタカくんと私
    4.1
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 一見とっつきにくいけど、顔がいいから女の子にモテる。幼稚園から一緒だったという理由で、いろいろな人にミタカくんのことを聞かれたりする私の家に、ミタカは日常的にいついている。うちはママと中学生のミサオ、パパは家出中。だからいつも4人で、ごはんを食べたり、テレビを見たり、日々は平和に過ぎていき、これからも続いていく―ナミコとミタカのつれづれ恋愛小説。 ※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
  • 充たされた生活
    -
    身よりのない27歳の新劇女優朝倉じゅん子は、3年におよぶ結婚生活を清算する。死んだ兄の同級生である劇作家、アパートの隣室に住んでいる学生運動家、妻と死に別れた俳優など、さまざまな男性を遍歴するが、じゅん子は結局、右翼暴力団に襲われた劇作家に自分の全身をあずける……。60年安保闘争を背景に現代人にとっての充実した生とは何かを追求する書下ろし長編。
  • 三たびの海峡
    4.1
    「一度目」は戦時下の強制連行だった。朝鮮から九州の炭鉱に送られた私は、口では言えぬ暴力と辱めを受け続けた。「二度目」は愛する日本女性との祖国への旅。地獄を後にした二人はささやかな幸福を噛みしめたのだが……。戦後半世紀を経た今、私は「三度目の海峡」を越えねばならなかった。“海峡”を渡り、強く成長する男の姿と、日韓史の深部を誠実に重ねて描く山本賞作家の本格長編。
  • 道草(新潮文庫)
    NEW
    -
    海外留学から帰って大学の教師になった健三は、長い時間をかけて完成する目的で一大著作に取りかかっている。その彼の前に、十五、六年前に縁が切れたはずの養父島田が現われ、金をせびる。養父ばかりか、姉や兄、事業に失敗した妻お住の父までが、健三にまつわりつき、金銭問題で悩ませる。その上、夫婦はお互いを理解できずに暮している毎日。近代知識人の苦悩を描く漱石の自伝的小説。(解説・柄谷行人)
  • 満潮の時刻
    4.1
    突然の喀血により結核に冒されていることを知った明石。四十代の働き盛りで療養生活を余儀なくされ消沈する明石が入院先で出会ったのは、自分よりもさらに死に近い病人たちと、その儚い命の終焉だった。結核がまだ致命的な病であった時代、死の淵を彷徨い絶望と虚無に陥った男の心はどこへ向かったのか。生と死、信仰と救済。遠藤文学を貫くすべてのテーマが凝縮された感動の長編。

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  • 道・ローマの宿
    -
    1巻473円 (税込)
    孤独な足音を残して消えていった亡き父・母・祖父母・友人知己――人間存在の哀しみと謎と茫漠たる寂寥の世界を描く『道』『桃李記』『風』『雪の面』など。悠久の時を思わせる砂漠の遺跡や大河の流れ、その畔りに生きる人間の小さな営み――異国の旅で出会ったさまざまな風景や人の姿を深い詩心に捉えた『ローマの宿』『フライイング』『ローヌ川』など。清冽な気品の溢れる名編全12編。
  • 密会(新潮文庫)
    3.9
    ある夏の未明、突然やって来た救急車が妻を連れ去った。男は妻を捜して病院に辿りつくが、彼の行動は逐一盗聴マイクによって監視されている……。二本のペニスを持つ馬人間、出自が試験管の秘書、溶骨症の少女、〈仮面女〉など奇怪な人物とのかかわりに困惑する男の姿を通じて、巨大な病院の迷路に息づく絶望的な愛と快楽の光景を描き、野心的構成で出口のない現代人の地獄を浮き彫りにする。(解説・平岡篤頼)
  • ミッキーマウスの憂鬱
    3.6
    東京ディズニーランドでアルバイトすることになった21歳の若者。友情、トラブル、恋愛……。様々な出来事を通じ、裏方の意義や誇りに目覚めていく。秘密のベールに包まれた巨大テーマパークの〈バックステージ〉を描いた、史上初のディズニーランド青春成長小説。登場人物たちと一緒に働いている気分を味わってみて下さい。そこには、楽しく、爽快な青春のドラマがあるはずです。
  • ミッキーマウスの憂鬱ふたたび(新潮文庫)
    4.1
    東京ディズニーランドで清掃のアルバイトをしている、永江環奈。ある日、彼女はテーマパークの顔として活躍するアンバサダーになれることを知り、挑戦を決意する。不可能だと言われながらも、周囲の応援を受け、夢に向かって前進する環奈。迎えた選考会当日は雨、さらに園内で大騒動が発生して。知られざる〈バックステージ〉を舞台に、仕事、家族、恋、そして働く者の誇りを描く、最高の青春小説。(解説・藤田香織)
  • 蜜月
    3.5
    天才洋画家、辻堂環が死んだ。天衣無縫の彼の生涯は、無邪気に、奔放に、女たちの心と身体を求めることに費やされた。恭子、弥生、杳子、志保子、千里、美和子……かつては環との蜜月に溺れた、さまざまな境遇の女たち。訃報を聞いた彼女たちは、それぞれの記憶の襞に刻まれた、狂おしいまでの恋心を甦らせるのだった――。無垢な欲望に身をゆだねた、六人の女の六つの恋のかたち。
  • 蜜蜂乱舞
    4.5
    1巻440円 (税込)
    東京の大学を中退して行方知れずになっていた長男が、女を連れて戻ってきた。彼女とは、四日前に結婚したという。養蜂一筋に生きてきた伊八郎の心は、喜びと憤りで大きく揺れた。四月、春の訪れと共に、一家は花を追って、日本列島を北上するトラックの旅に出るが……。旅先で遭遇する事件や人間なるがゆえの葛藤を、雄大精妙な自然界の摂理を背景に捉えた力編。

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  • 南太平洋ひるね旅
    -
    1巻429円 (税込)
    南海――この言葉の中にある懐かしい響きといささかの幻想を追って、著者はふらりとジェット機に乗り込んで夜の東京を脱出した。ハワイを振り出しに、タヒチ、フィジー、ニューカレドニア、東西サモアと、風を吸い光を浴びて、訪ね歩く小さな島々。子供らと遊び、素朴なおとなと語らう、アオレレ(飛ぶ雲)のように爽やかで、ひっそりとしたどくとるマンボウの気ままな旅行記。
  • 見張り塔から ずっと
    3.6
    1巻539円 (税込)
    発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる……。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に侵食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語――。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。
  • みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子 訊く/村上春樹 語る―(新潮文庫)
    4.3
    ようこそ、村上さんの井戸へ――川上未映子はそう語り始める。少年期の記憶、意識と無意識、「地下二階」に降りること、フェミニズム、世界的名声、比喩や文体、日々の創作の秘密、そして死後のこと……。初期エッセイから最新長編まで、すべての作品と資料を精読し、「村上春樹」の最深部に鋭く迫る。十代から村上文学の愛読者だった作家の計13時間に及ぶ、比類なき超ロングインタビュー!
  • 宮島・伝説の愛と死
    2.7
    癌で余命三ヶ月と宣告された一乗寺多恵子が殺された。必死の捜査にもかかわらず、手掛かりは得られない。十津川警部は、多恵子が死に際して最期の旅行を計画していた宮島に事件解決の鍵が隠されていると睨んだ。そして、厳島神社の大鳥居をくぐる夜間の遊覧船で、偶然にも発生した転落事故。それが、多恵子の身に起きた21年前の忌わしい過去を呼び覚ました。十津川警部、渾身の捜査!
  • 未来いそっぷ
    4.1
    1巻605円 (税込)
    〈アリとキリギリス〉〈北風と太陽〉〈ウサギとカメ〉など、幼いころから誰もが親しんできた寓話の世界。長年語りつがれてきた物語も星新一の手にかかると、驚きの大革命! 時代が変われば価値観も変わるとはいえ、古典をこんなふうに改作してしまっていいものかどうか、ちょっぴり気にはなりますが――。愉しい笑いと痛烈な風刺で、あなたを新たな世界へとご案内するショートショート33編!
  • 見るまえに跳べ
    4.0
    処女作『奇妙な仕事』から3年後の『下降生活者』まで、時代の旗手としての名声と悪評の洪水の中、充実した歩みを始めた時期の秀作10編。“政治と性”の主題を初めて取り上げ、屈伏感と自己欺瞞の意識に苦悩する同時代の青年の内面を文学に定着させた表題作、政治における挫折の問題に挑んだ『後退青年研究所』ほか、『鳩』『ここより他の場所』『上機嫌』戯曲『動物倉庫』など。
  • みんな元気。
    3.8
    夜中に目覚めると、隣の姉が眠りながら浮かんでいた――。あの日から本当に色んなことが起きた。竜巻が私たちの町を襲い、妹の朝ちゃんは空飛ぶ一家に連れさられてしまう。彼らは家族の交換に来たのだった(表題作)。西暁町で繰り返される山火事と殺人の謎(「矢を止める五羽の梔鳥」)ほか、「Dead for Good」「我が家のトトロ」「スクールアタック・シンドローム」の全5編を収録。21世紀型作家による、〈愛と選択〉の短篇集。

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  • ミーツ・ガール(新潮文庫)
    3.0
    1巻572円 (税込)
    この肉女を、なんとかしてくれ! 大学一年のワタベは、巨体で激臭漂う熊堀サトミと隣の席に。すぐアパートに居座られ、コンビニのホットスナック「マンガ肉」を日夜買いに走らされる。そんな生活が三ヶ月続き、遂に熊堀を追い出したワタベ。だが十年後、彼女がバーの店長をしていると知り……。R-18文学賞大賞受賞作を含む、不器用な男女の激しく切ない恋愛小説集。『マンガ肉と僕』改題。(解説・杉野希妃)
  • 昔みたい
    4.5
    胸ときめかせて、煌めく恋の一瞬を、せいいっぱい着飾って過ごしていたあの頃。すこしだけ背伸びの恋、素敵な時間。でもそれは、遠い昔の思い出……。アッパー・ミドルの素敵な女たちの現在と過去、幸せと悲しみを、東京、芦屋、軽井沢、ヴェネチアなどを舞台に鮮やかに描く15の掌編。女の子と呼ぶには人生を少しだけ経験し過ぎ、女と呼ぶには、まだ早過ぎるあなたに贈る恋愛小説。
  • 無関係な死・時の崖(新潮文庫)
    4.0
    自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。(解説・清水徹)
  • 麦死なず
    -
    地方の教師五十嵐の妻アキは、まき起った共産主義運動にかぶれ、夫と三人の子供を残し、愛人の党員作家を追って上京してしまう。生活を破壊されながらも、赤子のような妻に対して毅然たる態度がとれず、思想と愛欲のあいだで翻弄される五十嵐。昭和の初期、知識人たちを捉えた左翼運動がはらんだ問題性を、私生活に密着した姿勢で批判、著者の作家的地位を確立した代表作である。
  • 無垢の領域
    3.9
    道東釧路で図書館長を務める林原を頼りに、25歳の妹純香が移住してきた。生活能力に欠ける彼女は、書道の天才だった。野心的な書道家秋津は、養護教諭の妻伶子に家計と母の介護を依存していた。彼は純香の才能に惚れ込み、書道教室の助手に雇う。その縁で林原と伶子の関係が深まり……無垢な存在が男と女の欲望と嫉妬を炙り出し、驚きの結末へと向かう。濃密な長編心理サスペンス。
  • 彗星の住人―無限カノン1―(新潮文庫)
    4.0
    1~3巻539~781円 (税込)
    一八九四年長崎、蝶々さんと呼ばれた芸者の悲恋から全てが始まった。息子JBは母の幻を追い、米国、満州、焼跡の日本を彷徨う。三代目蔵人はマッカーサーの愛人に魂を奪われる。そして、四代目カヲルは運命の女・麻川不二子と出会った刹那、禁断の恋に呪われ、歴史の闇に葬られる。恋の遺伝子に導かれ、血族四代の世紀を越えた欲望の行方を描き出す画期的力篇「無限カノン」第一部。
  • 無言歌
    4.3
    お姉ちゃんが結婚する日の朝、お父さんの携帯に1通のメールが届いた。“お元気ですか? 実は、私も今日結婚するんです。”それは、お父さんの昔の愛人からのメッセージ。でもその直後、花嫁は式場から忽然と姿を消してしまって……。この家族の中で、嘘をついているのは誰? 次々と起こる切ない秘密で塗りかためられた事件に、女子高生・亜矢が迷い込む。100%赤川ワールドのミステリー!

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  • 武蔵野夫人
    3.4
    貞淑で、古風で、武蔵野の精のようなやさしい魂を持った人妻道子と、ビルマから復員してきた従弟の勉との間に芽生えた悲劇的な愛。――欅や樫の樹の多い静かなたたずまいの武蔵野を舞台に、姦通・虚栄・欲望などをめぐる錯綜した心理模様を描く。スタンダールやラディゲなどに学んだフランス心理小説の手法を、日本の文学風土のなかで試みた、著者の初期代表作のひとつである。
  • 息子と恋人(上)
    -
    中産階級の出身で教養のあるガアトルウドは、性的に魅力のある炭鉱夫モレルと結婚した。いつしか夫への愛もさめたモレル夫人にとって、美しい息子たちが彼女の恋人的存在となっていた。長男ウィリアムの突然の死に打ちのめされた母親を慰めるのは、絵の上手な16歳の次男ポオルだった。
  • 息子と狩猟に(新潮文庫)
    4.1
    小学生の息子を連れて鹿を追う週末ハンターの倉内と、トラブルで死体を抱えた詐欺集団のリーダー加藤。獲物を狙う狩猟者と死体遺棄を図る犯罪者が山中で出くわしてしまった――。息もつかせぬ展開と圧倒的リアリティに痺れる表題作。世界最難関の雪山で飢えと寒さに蝕まれていく極限の状況下、人の倫理観の矛盾を鋭く問う短編「K2」。サバイバル登山家が実体験を基に描く唯一無二の犯罪小説。(解説・杉江松恋)
  • ムッシュ・クラタ
    4.0
    戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靱さを鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。
  • 夢魔の標的
    3.8
    1巻605円 (税込)
    異変はある日突然起った。腹話術師の人形クルコちゃんが、まるで生きた人間のように勝手に喋りはじめたのだ。人形の反逆!? 叱っても、ご機嫌をとっても一向に効き目はなく、彼女はますます横暴になるばかり。腹話術師の狂気が作り上げた妄想か? それとも、異次元の世界からの秘密の指令によって人形が何かを企んでいるのか? ショート・ショートの名手が贈る、異色の長編SF。
  • 無明長夜
    3.0
    “御本山”の黒い森をみつめて、白い闇の道を歩いた女の20年……。一種底の知れない、暗く混沌とした世界の中で、病める魂の咆哮を聞く芥川賞受賞作『無明長夜』。“捨てる”ことを根源に、自らの道を開こうとした著者の、戦後の出発を語る『豊原』。ほかに『寓話』『終りのない夜』など、新しい世代の世界とイメージを持って、多様な才能を遺憾なく発揮した作品群。ほか『静かな夏』『生きものたち』『わたしの恋の物語』全7編を収める。
  • 村田エフェンディ滞土録(新潮文庫)
    4.4
    19世紀末の土耳古(トルコ)、スタンブール。留学生の村田は、独逸(ドイツ)人のオットー、希臘(ギリシア)人のディミィトリスと共に英国婦人が営む下宿に住まう。朗誦の声が響き香辛料の薫る町で、人や人ならぬ者との豊かな出会いを重ねながら、異文化に触れ見聞を深める日々。しかし国同士の争いごとが、朋輩らを思いがけない運命に巻き込んでいく――。色褪せない友情と戻らない青春が刻まれた、愛おしく痛切なメモワール。
  • 室町無頼(上下)合本版(新潮文庫)
    -
    1巻1,342円 (税込)
    応仁の乱前夜。天涯孤独の少年、才蔵は骨皮道賢に見込まれる。道賢はならず者の頭目でありながら、幕府から市中警護役を任される素性の知れぬ男。やがて才蔵は、蓮田兵衛に預けられる。兵衛もまた、百姓の信頼を集め、秩序に縛られず生きる浮浪の徒。二人から世を教えられ、凄絶な棒術修業の果て、才蔵は生きる力を身に着けていく。史実を鮮やかに跳躍させ混沌の時代を描き切る、記念碑的歴史小説。 ※当電子版は新潮文庫版『室町無頼』上下巻をまとめた合本版です。
  • 室町妖異伝―あやかしの絵師奇譚―(新潮文庫)
    3.3
    妻を救うため、絵師は京の闇に踏み込んだ――。 異界が見える絵師土佐光信は、都の空に不気味なひび割れを見た。そんな折、妻が囚われの身に。光信は心優しき友箕面忠時や、不思議な女〈つづれ〉の力を得て、見えざる戦いに挑んでいく。幽鬼が群れ、地上に慟哭が満ちた時、謎の神獣が姿を現した。瓦解に瀕した都を守るため、光信が取った命がけの最終手段とは……。感動を呼ぶ傑作。(解説・末國善己)
  • ムーン・パレス(新潮文庫)
    4.4
    人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた……。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
  • 明暗(新潮文庫)
    NEW
    -
    勤め先の社長夫人の仲立ちで現在の妻お延と結婚し、平凡な毎日を送る津田には、お延と知り合う前に将来を誓い合った清子という女性がいた。ある日突然津田を捨て、自分の友人に嫁いでいった清子が、一人温泉場に滞在していることを知った津田は、秘かに彼女の元へと向かった……。濃密な人間ドラマの中にエゴイズムのゆくすえを描いて、日本近代小説の最高峰となった漱石未完の絶筆。(解説・柄谷行人)
  • 迷宮遡行
    3.3
    平凡な日常が裂ける――。突然、愛する妻・絢子が失踪した。残されたのは1通の置き手紙のみ。理由が分からない。失業中の迫水は、途切れそうな手がかりをたどり、妻の行方を追う。彼の前に立ちふさがる、暴力団組員。妻はどうして、姿を消したのか? いや、そもそも妻は何者だったのか? 絡み合う糸が、闇の迷宮をかたちづくる。『烙印』をもとに書き下ろされた、本格ミステリーの傑作。

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  • 迷宮の月(新潮文庫)
    4.4
    白村江の戦いで日本と唐の国交が断絶してから約四十年。時の権力者である藤原不比等は遣唐使船の復活を決断し、かつて長安で留学僧として学んだ粟田真人に執節使の任を命じる。真人に託された密命ともいうべき特別な任務。それは天皇家の覇権争いと帝の立場に関わるものだった――。失敗すれば命はない。揺るぎない信念と、任務に殉じる強い心で艱難を乗り越える遣唐使の姿を描く歴史巨編。(解説・大矢博子 )
  • 名人
    3.6
    悟達の本因坊秀哉名人に、勝負の鬼大竹七段が挑む……本因坊の引退碁は名人の病気のため再三中断、半年にわたって行われた。この対局を観戦した著者が、烏鷺の争いの緊迫した劇にうたれ、「一芸に執して、現実の多くを失った人の悲劇」を描く。盤上の一手一手が、終局に向って収斂されてゆくように、ひたすら“死”への傾斜を辿る痩躯の名人の姿を、冷徹な筆で綴る珠玉の名作。

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  • 迷走地図(上)
    -
    1~2巻715円 (税込)
    保守党派閥抗争の確執の中、若手議員・川村は色と金を求め、銀座の高級クラブのママ織部佐登子に眼をつけた。だが、彼女は財界人をパトロンに持ち、政・財界間の影の資金ルートをつないでいた。次期首相を約束される寺西議員のもとから、逆リベートを運ぶ途中、佐登子は若い男に金を強奪されてしまう――。秘書、運転手、院内紙記者、代筆屋など代議士の陰で蠢く永田町人種の生態。

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  • 名探偵のはらわた(新潮文庫)
    3.7
    「亘(わたる)君、君は真実を語るべきだ」農薬コーラ毒殺魔、局部切断女、そして恐怖の三十人殺し! 昭和史に残る極悪犯罪者たちが地獄の淵から甦(よみがえ)り、現代日本で殺戮の限りを尽くす。空前絶後の惨劇に立ち上がった伝説の名探偵は、推理の力でこの悪夢を止められるのか。「疑え――そして真実を見抜け」二度読み必至の鮮やかな伏線回収、緻密な論理(ロジック)による美しき多重解決。本格ミステリの神髄、ここにあり。(解説・若林踏)
  • 夫婦茶碗
    3.8
    1巻440円 (税込)
    金がない、仕事もない、うるおいすらない無為の日々を一発逆転する最後の秘策。それはメルヘン執筆。こんな〈わたし〉に人生の茶柱は立つのか?! あまりにも過激な堕落の美学に大反響を呼んだ「夫婦茶碗」。金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカー(愛猫家)の大逃避行「人間の屑」。すべてを失った時にこそ、新世界の福音が鳴り響く! 日本文藝最強の堕天使の傑作二編。

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  • メガバンク最終決戦
    3.9
    日本最大のメガバンクであるTEFG銀行。ディーラーとして名を馳せた桂光義は専務の地位にいた。ある日、盤石なはずの銀行は国債暴落を機に巨大負債を抱え、一夜にして機能不全に。暴落した株に群がるハイエナの如き外資ファンドや混乱に乗じて巨利を貪ろうと暗躍する政財官の大物たち――。桂は総務部の二瓶正平と共に生き残りを懸けた死闘に挑む。『メガバンク絶滅戦争』改題。
  • メガバンク絶体絶命(新潮文庫)
    4.1
    日本最大のメガバンクを喰らい尽くす、魔の「T計画」が発動! TEFG銀行は絶体絶命の危機に陥った。総務部長としてこの難局に挑む二瓶正平。そして、頭取の椅子を捨て相場師として生きていた桂光義が、義と理想のために起(た)つ。史上最大の頭脳戦がここに始まった。経済の巨龍・中国の影。謀略 vs. 戦略。マネーを知り尽くす著者にしか描けなかった、痛快無比の金融エンターテインメント。
  • めぐみ園の夏(新潮文庫)
    4.0
    1巻737円 (税込)
    昭和二十五年夏。十一歳の亮平は孤児の施設「めぐみ園」に放り込まれた。母親の心ない仕打ちや妹との突然の別れ。情けなさも辛さも悔し涙も、歯を食いしばって乗り越え、亮平は生来の明るさと要領のよさで生き抜いていく。園長夫妻の理不尽な扱いやその息子の暴力にも正義感で立ち向かい、保母や先生にも愛されるのだが、思わぬ岐路が……。作家としての原風景を描き万感こもる自伝的長編。(解説・加藤正文)
  • めし
    4.0
    男が絶対の位置に坐っている世間の、そのような男からは離れた女、すなわち、ひたすら愛情だけに生きる女が、その愛情を失うことになったときの、まるで救いようのない虚無感、生活と心の拠りどころを失った女の哀しい運命を、永遠のテーマにした林芙美子の佳篇。昭和二十六年、朝日新聞に連載中、突然の作者の死により絶筆となったが、後に映画化されて、絶大な成功を収めている。
  • メタモルフォシス
    3.7
    その男には2つの顔があった。昼は高齢者に金融商品を売りつける高給取りの証券マン。一転して夜はSMクラブの女王様に跪き、快楽を貪る奴隷。よりハードなプレイを求め、死ぬほどの苦しみを味わった彼が見出したものとは――芥川賞選考委員の賛否が飛び交った表題作のほか、講師と生徒、奴隷と女王様、公私で立場が逆転する男と女の奇妙な交錯を描いた「トーキョーの調教」収録。
  • 目玉
    -
    タクシー内にただよう異臭から思い出す数かずのニオイについて。妖怪にはじめて出会った子供の頃の避暑地の出来事。同じ避暑地で起こった鋸山心中事件から連想する「天国に結ぶ恋」坂田山心中。白内障手術と人工水晶体と埴谷雄高氏と。いのししの肉を送ってくるヤクザとの25年にわたる奇妙なつきあい…等々、鋭利な感性で研磨された過去の記憶が醸しだす、芳醇な吉行文学の世界。7篇収録。
  • 眼の壁
    3.8
    白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。責任を一身に背負って自殺した会計課長の厚い信任を得ていた萩崎は、学生時代の友人である新聞記者・田村の応援を得て、必死に事件の真相を追う。二人は事件の背後にうごめく巨大な組織に立ち向かうが、手がかりは次々に消え去ってしまう…。複雑怪奇な社会の裏に潜む悪の実体をあばき、鬼気迫る追求が展開するベストセラー。

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  • 眼の気流
    3.9
    車の座席で戯れる二人づれに憎しみの執念をもやす若い運転手。愛人に裏切られた初老の男のひそやかな怒り――二人の男の接点に生じた殺人事件を追う表題作。立身出世のために愛する女性を殺すが、女は奇蹟的に息を吹き返し、記憶を失ったまま男の前に姿を現わす……非情なエリート官僚を描く『たづたづし』等全5編。日常生活に潜む怖ろしい生の断層、現代の憎悪を抉る推理傑作集。

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  • 芽むしり仔撃ち
    3.8
    絶望的な"閉ざされた"状況にあって、疎外された少年たちが築き上げる奇妙な連帯感。知的な抒情と劇的な展開に、監禁された状況下の人間存在という戦後的主題を鮮やかに定着させた長編。ノーベル賞を受賞した大江健三郎の処女長編。
  • メリーゴーランド
    3.7
    1巻649円 (税込)
    過労死続出の職場を辞め、Uターンしたのが9年前。啓一は田園都市の市役所勤務。愛する妻に子供たち、あぁ毎日は平穏無事。……って、再建ですか、この俺が? あの超赤字テーマパークをどうやって?! でも、もう一人の自分が囁いたのだ。〈やろうぜ。いっちまえ〉。平凡なパパの孤軍奮闘は、ついに大成功を迎えるが――。笑って怒って、時々しんみり。ニッポン中の勤め人の皆さん、必読。

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  • メルヒェン(新潮文庫)
    4.2
    誰からも愛される子に、という母の祈りが叶えられ、少年は人々の愛に包まれて育ったが……愛されることの幸福と不幸を深く掘り下げた『アウグスツス』は、「幸いなるかな、心の貧しき者。天国はその人のものなり」という聖書のことばが感動的に結晶した童話である。おとなの心に純朴な子どもの魂を呼び起しながら、清らかな感動へと誘う、もっともヘッセらしい珠玉の創作童話9編を収録。
  • もいちどあなたにあいたいな
    3.7
    澪湖(みおこ)は大学三年生。父の妹の和(やまと)を幼少の頃から母親より慕っていた。その叔母が、最近、どこかおかしい。叔母夫婦はようやく恵まれた愛娘を生後五カ月で亡くしていた。それで、精神に変調を来したのだろうか。大きな悲嘆が彼女を壊してしまったのか……澪湖の疑惑は深まるばかり。不安な彼女を支えてくれたのは、オタク青年木塚くんだった──独自の文体で、人格変容の恐怖を探る長編。
  • 妄想銀行
    4.0
    1巻605円 (税込)
    人間のさまざまな妄想を取り扱うエフ博士の妄想銀行は連日大繁盛。しかし博士が、彼に思いを寄せる女から吸いとった妄想を自分の愛する女性に利用しようとしたのが誤ちのもとだった――奇想天外なユーモアのあふれる表題作。ほかに、道で拾った風変りな鍵に合う鍵穴を探すことに情熱を傾ける男の物語『鍵』、人生修行に出て説教癖のついたロボットの話『人間的』などS・S32編。
  • 盲目的な恋と友情(新潮文庫)
    3.9
    タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。
  • 燃え上る青春
    -
    パリの裕福な実業家の家に育った主人公アンドレ・モオヴァル。彼と若く美しいド・ナンセル夫人との情事と、彼の将来に期待をかけるモオヴァル家の人々の姿を、詩人でもあるレニエが、流麗かつ詩的に描きあげた、作者円熟期の傑作。本作品発表当時(1909年)の仏文壇では詩人が小説をかくことが流行し、それらの作品では物語に、作者の夢想や感情がもりこまれ、きわめて美術的な小説となっていた。本作品はその代表作であり、堀口大學の名訳で味わうことができる。
  • 燃えあがる緑の木―第一部 「救い主」が殴られるまで―
    3.8
    1~3巻715円 (税込)
    百年近く生きたお祖母ちゃん(オーバー)の死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく……。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編三部作。
  • 燃えあがる緑の木 全三部合本版(新潮文庫)
    3.0
    百年近く生きたお祖母ちゃん(オーバー)の死とともに、その魂を受け継ぎ、「救い主」とみなされた新しいギー兄さんは、森に残る伝承の世界を次々と蘇らせた。だが彼の癒しの業は村人達から偽物と糾弾される。女性へと「転換」した両性具有の私は彼を支え、その一部始終を書き綴っていく……。常に現代文学の最前線を拓く作者が、故郷四国の村を舞台に魂救済の根本問題を描き尽くした長編。 ※当電子版は新潮文庫版『燃えあがる緑の木』第一部~第三部の全三巻をまとめた合本版です。
  • 燃えつきた地図(新潮文庫)
    4.2
    失踪した男の調査を依頼された興信所員は、追跡を進めるうちに、手がかりとなるものを次々と失い、大都会という他人だけの砂漠の中で次第に自分を見失っていく。追う者が、追われる者となり……。おのれの地図を焼き捨てて、他人しかいない砂漠の中に歩き出す以外には、もはやどんな出発もありえない、現代の都会人の孤独と不安を鮮明に描いて、読者を強烈な不安に誘う傑作書下ろし長編小説。(解説・ドナルド・キーン)
  • モオツァルト・無常という事
    4.2
    小林批評美学の集大成であり、批評という形式にひそむあらゆる可能性を提示する「モオツァルト」、自らの宿命のかなしい主調音を奏でて近代日本の散文中最高の達成をなした戦時中の連作「無常という事」など6編、骨董という常にそれを玩弄するものを全人的に験さずにはおかない狂気と平常心の入りまじった世界の機微にふれた「真贋」など8編、ほか「蘇我馬子の墓」を収録する。

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  • 黙阿彌オペラ
    4.0
    江戸も末の師走。狂言作者の河竹新七は、我が身を嘆き入水を試みるが果たせず、柳橋のそば屋で不遇を託つ仲間たちと偶然出会う。意気投合した五人は、捨て子のおせんを育てるため、株仲間を始める――。やがて御一新。文明開化に五人の命運が変転する。株仲間は国立銀行に、おせんはオペラ歌手に、新七は新作狂言で一世を風靡する……。時代に翻弄される黙阿彌と仲間たちを描く評伝劇。
  • 黙示
    3.8
    1巻825円 (税込)
    農薬散布中のラジコンヘリが小学生の集団に墜落する事故が発生。重い中毒症状に苦しむ子どもたちを目の当たりにした世論は、農薬の是非のはざまで揺れることに。その間隙を縫い、農薬を必要としない遺伝子組み換え食品を推進するアメリカの巨大企業と、日本の食品の買い占めを目論む中国。私たちは何を選び、何を捨てるのか。日本の食のあり方を厳しく問う社会派メガ・エンタメ!
  • 黙示録殺人事件
    3.6
    休日の銀座に、突然、蝶の大群が舞った。蝶の舞い上ったあとには、聖書の言葉を刻んだブレスレットをはめた青年の死体があった。これが、十津川警部の率いる捜査本部をきりきり舞いさせた連続予告自殺の始まりだった。次々に信者の青年たちを自殺させる狂信的な集団。その集団の指導者・野見山は何を企んでいるのか……。“現代の狂気”をダイナミックに描き出した力作推理長編。
  • 木馬の騎手
    4.5
    出稼ぎに出たきり戻らぬ父を尋ねて、ひとり東京に着いたキワ、自分は電気仕掛けで動くのだと頑なに信じる少年・作次、晴れ着を着て父親とメリー・ゴー・ラウンドに乗るチサ――。危ういバランスをとりつつ、生と死の深淵を覗き見る子供たち。この、人生の小さな冒険家たちの、様々な死とのたわむれを、清冽な抒情と澄んだユーモアを重ね合せて描く「接吻」「睡蓮」「厄落し」「星夜」「初秋」「ロボット」「遠出」「遊び」「出刃」など12編。著者会心の連作短編集。
  • 文字渦(新潮文庫)
    3.9
    1巻781円 (税込)
    「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい」。始皇帝の陵墓づくりに始まり、道教、仏教、分子生物学、情報科学を縦横に、変化を続ける「文字」を主役として繰り広げられる連作集。文字を闘わせる遊戯に隠された謎、連続殺「字」事件の奇妙な結末、本文から脱出し短編間を渡り歩くルビの旅……。小説の地平を拓く12編、川端康成文学賞・日本SF大賞受賞。(解説・木原善彦)
  • 持ち重りする薔薇の花
    -
    薔薇の花束を四人で持つのは、面倒だぞ、厄介だぞ、持ちにくいぞ――世界的弦楽四重奏団(クヮルテット)の愛憎半ばする人間模様を、彼らの友人である財界の重鎮が語り始める。互いの妻との恋愛あり、嫉妬あり、裏切りあり……。クヮルテットが奏でる深く美しい音楽の裏側で起きるさまざまなできごと、人生の味わいを、細密なディテールで描き尽くした著者最後の長編小説。
  • モナドの領域(新潮文庫)
    3.9
    河川敷で若い女性の腕が発見された。ほどなく近隣のベーカリーでアルバイトの美大生が精巧な腕形のバゲットを作り、店の常連の美大教授が新聞のコラムで取り上げ、評判を呼ぶ。次に教授は公園で人を集め、その全知全能を示し始める。自らを神の上の「無限の存在である創造主」だという教授の真意とは。そして、バラバラ殺人の真相は? 天才筒井康隆がその叡智の限りを注ぎ込んだ歴史的傑作。(解説・池澤夏樹)
  • 森

    -
    明治33年、15歳の菊地加根は九州から東京の森の学園・日本女学院に入学した。恋愛、友情、嫉妬……、「新しい女性」の理想を掲げた自由な校風の下、加根を取りまく女学生たちの青春の姿が細やかに描かれ、明治の群像が瑞々しく蘇る。女性たちの自立への物語であると同時に、幕末から明治30年代に至る文化史でもある豊潤なロマネスク小説。近代日本の百年を生きた著者の最後の大作。
  • 森がわたしを呼んでいる
    4.0
    父を亡くし、母と暮らす中学生の佐知子。真夜中に激しい地震があった翌々朝、自宅の周囲には突然、深い森が広がっていた。折しも母は仕事で海外へ。ひとりぼっちの佐知子に次々と迫る危険な影は、森の誕生の秘密と関わっているのか。そのとき、追い詰められた佐知子の耳に、亡き父の声と鳥の羽ばたきが聞こえてきた――。生と死が交錯する不思議の森の深奥で佐知子が出会ったものは。

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  • 門(新潮文庫)
    NEW
    -
    親友の安井を裏切り、その妻であった御米(およね)と結ばれた宗助は、その負い目から、父の遺産相続を叔父の意にまかせ、今また、叔父の死により、弟・小六の学費を打ち切られても積極的解決に乗り出すこともなく、社会の罪人として諦めのなかに暮らしている。そんな彼が、思いがけず耳にした安井の消息に心を乱し、救いを求めて禅寺の門をくぐるのだが。『三四郎』『それから』に続く三部作。(解説・柄谷行人)
  • モーツァルト荘
    4.0
    都会を捨てた一家が静かな高原で営むペンション〈モーツァルト荘〉。ラジカセのロックで踊り狂い、奇妙な忘れものを残していく若夫婦、駆け落ちカップルを囲む不思議な晩餐会、月夜に前庭で舞う裸婦、そしてクリスマス・イブに化けて出るのは狐?四季折々、訪れる老若男女が起こしていく事件ともいえない波紋の数々―。彼らが奏でる人生の協奏曲を円熟の筆で伝える連作小説集。
  • やがて訪れる春のために(新潮文庫)
    4.4
    入院中の祖母から、庭の様子を見てきてほしいと頼まれた村上真芽(まめ)。彼女が目にしたのは、荒涼とした景色だった。花が咲き誇った庭に、しっかり者の祖母に、いったい何が起きたのか? 庭を復活させようとする真芽は、怪しげな隣人や家の売却計画など様々な困難に直面するが、幼なじみたちの力を借りながら奮闘する。バラ、クレマチス、ミントなど植物が彩る庭を舞台に描く、あなたのための物語。(解説・岩田徹)
  • 役員室午後三時
    3.9
    80年の歴史に輝く日本最大の紡績会社華王紡に君臨する社長藤堂。会社へのひたむきな情熱によって華王紡の王国を再建し、絶対の権力を誇った彼が、なぜ若い腹心の実力者にその地位を奪われたのか? 帝王学的な経営思想をもつワンマン社長と、会社を“運命共同体”とみなす新しいタイプの経営者――企業に生きる人間の非情な闘いと、経済のメカニズムを浮き彫りにした意欲作。

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  • 約束の海
    4.0
    海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船が衝突、多数の犠牲者が出る惨事に。マスコミの批判、遺族対応、海難審判……若き乗組員・花巻朔太郎二尉は苛酷な試練に直面する。真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ花巻。時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が幕を開ける。自衛隊とは、平和とは、戦争とは。構想三十年、国民作家が遺した最後の傑作長篇小説。
  • 約束の果て―黒と紫の国―(新潮文庫)
    3.7
    「私たちのこと、忘れないでね」――そのとき、風が吹いた。大地に咲く紫の花が、一斉に空へと舞い上がる。かつて黄金の草原で、少年が少女に誓った約束が、五千年の時と遥かなる距離を越え、いま果たされる。偽史と小説――父から託された奇妙な古文書に秘められた謎。壙(こう)とジ南、史伝に存在しない二つの国を巡る、空前絶後のボーイ・ミーツ・ガール。日本ファンタジーノベル大賞受賞作。(解説・杉江松恋)
  • 疫病神
    4.0
    建設コンサルタント・二宮啓之が、産業廃棄物処理場をめぐるトラブルに巻き込まれた。依頼人の失踪。たび重なる妨害。事件を追う中で見えてきたのは、数十億もの利権に群がる金の亡者たちだ。なりゆきでコンビを組むことになったのは、桑原保彦。だが、二宮の〈相棒〉は、一筋縄でいく男ではなかった――。関西を舞台に、欲望と暴力が蠢く世界を描く、圧倒的長編エンターテインメント!
  • 夜光の階段(上)
    3.7
    1~2巻616円 (税込)
    貧しい青年美容師佐山道夫は、勤め先の美容室の常連客で、証券会社の社長夫人波多野雅子と関係を結び、その出資で独立する。野望に燃える佐山は、一方では雑誌「女性回廊」の編集者枝村幸子に接近し、彼女の紹介で有名タレントのヘヤーデザインを次々と手がけ、一躍美容界の寵児となる。だが、株で穴を空けた雅子が返済を迫るようになり、佐山の胸には黒い計画が生まれる--。

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  • 椰子・椰子(新潮文庫)
    4.1
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 妊娠中のもぐらと一緒に写真をとったり、町内の縄文人街を散歩したり、子供たちを折りたたんで押入れにしまったり、中くらいの災難に見舞われ一時乳房等の数が二倍になったり。奇想天外でヘンテコで不気味な出来ごとが、次々と繰りだされる日常を、ごく淡々と送る女性の、ユーモラスな春夏秋冬。一足踏みいれたらきっととりこになる、とっぷりと心地よい「椰子・椰子」ワンダーランド。
  • 野獣死すべし
    -
    敗戦で満洲から引揚げた伊達邦彦少年は、大戦の惨害に人間性の根底まで蹂躙され、大学生の頃には計算しつくされた完全犯罪を夢見るようになる。大学入学金の強奪に成功した彼は、戦時中父の会社を乗っ取った京急コンツェルンに対し執拗な復讐を開始する。怜悧な頭脳、端正な容貌と猛獣のような体躯を持つ非情の男伊達邦彦を描くハードボイルド小説の傑作。大藪春彦のデビュー作となる正編に加え、「週刊新潮」に連載された続編となる復讐編を収める。
  • 野性の呼び声
    4.5
    ゴールド・ラッシュ時代、セント・バーナードとシェパードの血をうけた飼犬バックは、ある日、邸から盗み出され、アラスカ氷原へと連れてゆかれた。そこには、橇犬(そりいぬ)としての苛酷な日々が待っていた。きびしい自然と、人間の容赦ないむちの響きに、バックの野性はめざめてゆく。数年後、広い峡谷を駆けてゆく狼の一群のなかに、毛並みのふさふさとしたたくましいバックの姿が見られた――。
  • やぶからし
    3.7
    生れついての放蕩がやまずに勘当され、“やぶからし”と自嘲するような前夫のもとに、幸せな家庭や子供を捨ててはしる女心のひだの裏側を抉った表題作。美しい妹の身勝手さに運命を変えられた姉が、ほんとうの幸福をさがし求めるまでを抑制された筆でたどった『菊屋敷』。ほかに、『避けぬ三左』『孫七とずんど』『山だち問答』『「こいそ」と「竹四郎」』『ばちあたり』など、全12編を収める。

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  • 藪原検校
    5.0
    東北の片田舎に生まれた盲人が、根深い差別の中で晴眼者に伍して生きて行こうとした時、彼にとっての武器は何だったか。殺人、脅し、強盗、強姦、数々の悪事を重ねて盲人にとっての最高の権力の座、検校位に登りながら、ついに三段斬りの極刑に処せられた杉の市=二代目藪原検校の非道の生涯を深い慈しみを込めて描く傑作戯曲。ほかに新作文楽「金壺親父恋達引」を収録。
  • 破れた繭―耳の物語*
    4.0
    1巻385円 (税込)
    古今東西、あるゆる方法で自伝は書かれた。しかし、《音》によって生涯が語られたことは、まだない。――少年の耳に残る草の呼吸、虫の羽音。落下してくる焼夷弾の無気味な唸り。焼跡に流れるジャズのメロディ。恐怖とともに聞いた「できたらしい」という女のひと言……。昭和5年に大阪に生れてから大学を卒業するまでの青春を、《音》の記憶によって再現する。日本文学大賞受賞。

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