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人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた……。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
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Posted by ブクログ
『ブルックリン・フォリーズ』を読んでポール・オースターにハマり、『ガラスの街』、『幽霊たち』、『鍵のかかった部屋』とニューヨーク三部作を読んで、一作飛ばしてオースター5作目となる本作を読んだ。 ニューヨーク三部作のようなメタ的な作品ではなく、程よくエンタメしていてどちらかといえば『ブルックリン・フォ...続きを読むリーズ』に近いが、人間ドラマには全く収まっていない。登場人物が少ない分、主人公の内面がフォーカスされ、極限的な状況と強烈な人物の洪水によって現実離れした魔術的な魅力を持った作品となっている。 物語の前半は、全てを失った天涯孤独の青年が友人や恋人など周りの人たちの力も借りながら自分のアイデンティティを取り戻していく人間ドラマなのだけれど、落ちぶれ方が極端過ぎて逆に面白い。そして天使のようなキティ・ウーに出会い、悪魔のような老人エフィングに出会う。キャラクターはいずれも魅力的でウィットとアイロニーに富んでいて読んでいて飽きさせない。そして象徴的に繰り返し出現する「月」。 後半になると物語はさらに加速し混迷を極めていく。まさに人生の不条理さが凝縮されていて、極端過ぎるほどに喜劇と悲劇が何度も何度も繰り返される。場面が変わるごとに新たな世界が描かれて、いくつもの短編小説を読んでいるようだが、全てが見事に繋がり、関係し合いながら物語に深みを与えていく展開は、読む人によって様々なテーマやメッセージを受け取ることができる。ポール・オースターが目指したのは読者によって完成される小説らしいが、まさにそうなっている。 かと言って複雑な難しい話では全くない。物語は過酷だが全体的にはとても読みやすい文章で、外で読んでると笑いを堪えるのが大変なくらい笑えるシーンも多い。難しいことは言わずにテーマも明快で、読後感は疲労感とともにスッキリとした前向きな気持ちになる稀有な小説だ。著者も本作をコメディだと評している。この作品をコメディと言うところにポール・オースターの凄みとアメリカという国の懐の深さを感じる。本書のエピグラフはジュール・ベルヌの「何ものもアメリカ人を驚かせることはできない」である。 他にも凄いと思うところはたくさんあるけれど、並べてもしょうがない気がする。何より素晴らしいのは、全体を通して物語が活き活きとしているのだ(今の自分の気分と合っているのもあるかもしれないけど)。なんだか読み終わるのが惜しいくらい好きな小説だった。登場人物全てが無様で愛おしい。そう、無様さこそ人間の魅力なのだと優しく教えてくれる。人生の残酷さに立ち向かう人間愛に満ち溢れている。 本作で五作品読んだが、読むたびにポール・オースターが好きになる。書き方も巧いなぁと思う。技術的なことは分からないけど、さらっと描いてくれる。それに多作なので他の小説もまだまだたくさんある。幸せなことだ。
四半世紀ぶりに再読。自分の読者人生における青春の1冊。面白いとか興味深いとか、言葉で語り尽くせない。大好き。
全ては偶然の連続だけれども人生はやり直しがきかないから必然なのだろう。 後になって考えるとその選択は間違いだったのではと思えるものでも、その選択の瞬間では正解でしかなかったということを強く意識しないと頭がおかしくなってしまいそうになる。 どうして人は罪の意識を抱き、罰を受けたくなるのかな。 疑いな...続きを読むく自分が正しいと思い込める方が生きやすそうなのに。 1つの小説というより登場人物が重なるいくつかの短編小説を読み終えた気分。 翻訳された小説はあまり読み慣れていないけれど、これはとても読みやすかった。
ジーンと心に染み入るような感動のある小説でした。 悲劇に振り回されながら生きる登場人物たちはとても人間味があり、僕はなぜか読んでいて救われる気持ちになりました。 登場する3人の男たちは、ある意味悲劇でつながっている深い関係だと思いました。 不思議と読後感がとてもよい小説でした。 また、このような小説...続きを読むを読みたいです
書き出しの「人類がはじめて月を歩いた夏だった」はあまりにも名文だと思う。 愛や喪失をテーマに紡がれる物語で文章も相まってとても美しく儚い。 以下、好きな文章。 ・「彼女に恋をしないこと なんて不可能だった。ただ単に彼女がそこにいるという事実に酔い知れないこと なんて不可能だった」 ・「僕は崖...続きを読むから飛び降りた。そして、最後の最後の瞬間に、何かの手がすっと伸びて、僕を空中でつかまえてくれた。その何かを、僕はいま、愛と定義する」 人生のオールタイムベストに挙げる人が多いのも頷ける。
喪失から始まり喪失で終わった。人生は喪失の連続だ。同じ場所に留まり続けることはできないし、自分の意思とは関係なく街の風景は変わっていく。歳をとるにつれてどんどん話のできる人は死んでいく。このような喪失とどのように向き合って生きていけばいいのだろうか。自分だったらどうなってしまうのだろうと考えながら読...続きを読むんでいた。
良い本だ。 M.S.フォッグの生き方に対しては、自分もそうなってしまうのではないかという不安と、羨ましさの感情が混ざる。
再読なのですが、最初に読んだのは高校3年生の時。それ以前にサリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』に出会っていた私は、今作があまり響かなかった。 そして現在大学四年生。当時よりも考えることが沢山あるし、将来という点ではより自分に決定権があり、4年越しに読んだこの作品がすごく響いた。人生を喜劇と...続きを読むとるか悲劇ととるか、偶然なのか宿命なのか。物語の中に沢山にちりばめられた選択に自分を重ねて読むことができました。
引力のように引き寄せられる不思議な縁。 死を垣間見て生を実感、孤独と後悔、渇望の日々と心の充実が繰り返し描かれる内容は、描写がリアルでシーンが鮮明に思い浮かびます。なので、追い詰められる感覚のストレスに読者も苛まれます。 フィクション小説ながら、20世紀後半のアメリカ(例えば書き出しが「...続きを読むそれは人類が初めて月を歩いた夏だった」等)の当時のニュースが織り交ぜられ、創作と事実が上手く交差しているから、なんだか1人の実在する人物の話を聞いているようでした。 情緒がありグッとくるとても美しい小説。
挫折と希望の繰り返し、偶然の連鎖 主人公は寂しい人にも思えるけど、豊かな経験をしたんだと思う。ただ、大切なものを失いすぎた 最後には希望を持っているところに救われる 「見るということはなにか」というエフィングの言葉には考えさせられる ひとつの人生を語り終えたような壮大さを感じた
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