あらすじ
人類がはじめて月を歩いた夏だった。父を知らず、母とも死別した僕は、唯一の血縁だった伯父を失う。彼は僕と世界を結ぶ絆だった。僕は絶望のあまり、人生を放棄しはじめた。やがて生活費も尽き、餓死寸前のところを友人に救われた。体力が回復すると、僕は奇妙な仕事を見つけた。その依頼を遂行するうちに、偶然にも僕は自らの家系の謎にたどりついた……。深い余韻が胸に残る絶品の青春小説。
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Posted by ブクログ
主人公が愛する伯父を失って泣き腫らし、泥酔・嘔吐し、行きずりの娼婦にホテルに連れ込まれた挙句、脚を開く彼女に子守唄を歌ってあげた一幕は感に堪えなかった
頁を急く衝動と、ずっと終わらなければいいのに、という一抹の寂しさを胸に同居させられた傑作
Posted by ブクログ
ジーンと心に染み入るような感動のある小説でした。
悲劇に振り回されながら生きる登場人物たちはとても人間味があり、僕はなぜか読んでいて救われる気持ちになりました。
登場する3人の男たちは、ある意味悲劇でつながっている深い関係だと思いました。
不思議と読後感がとてもよい小説でした。
また、このような小説を読みたいです
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書き出しの「人類がはじめて月を歩いた夏だった」はあまりにも名文だと思う。
愛や喪失をテーマに紡がれる物語で文章も相まってとても美しく儚い。
以下、好きな文章。
・「彼女に恋をしないこと なんて不可能だった。ただ単に彼女がそこにいるという事実に酔い知れないこと なんて不可能だった」
・「僕は崖から飛び降りた。そして、最後の最後の瞬間に、何かの手がすっと伸びて、僕を空中でつかまえてくれた。その何かを、僕はいま、愛と定義する」
人生のオールタイムベストに挙げる人が多いのも頷ける。
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喪失から始まり喪失で終わった。人生は喪失の連続だ。同じ場所に留まり続けることはできないし、自分の意思とは関係なく街の風景は変わっていく。歳をとるにつれてどんどん話のできる人は死んでいく。このような喪失とどのように向き合って生きていけばいいのだろうか。自分だったらどうなってしまうのだろうと考えながら読んでいた。
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柴田元幸さんを知ってから
ポール.オースターを知りました
そしてやっとこの有名な作品を読むことができました
なんともせつない青春小説
月が常にそばにいて
絶望と、偶然と、運命と、に振り回される
「太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である」ムーンパレスで出会ったこの言葉が
自らの家系を知り、未来を暗示していく
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10年ぶりくらいに再読。フォッグがユタ州の荒野をもっとずっと彷徨ってるイメージだったけど、実際には数ページだった。
世界との繋がりが完全に絶たれたと思っても、意外なところに繋がりは残っている。世界は偶然が支配している。終わったと思ったところから始まる。どんな絶望的な状況でも、世界は自分と関係なしに回り続ける。
「僕はただ歩きつづければよいのだ。歩きつづけることによって、僕自身をあとに残してきたことを知り、もはや自分がかつての自分でないことを知るのだ。」
キティが魅力的すぎる。
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最高。これがロマンチック。
ムーンパレスという名前のままに、何度も月に関するものが出てくる。叔父さんが「金がないからこれ以外送れないんだよ」と送ってくれた1000弱の本とそれを包むダンボールを家具にするという発想。叔父さんが亡くなりそのダンボールを本を読み売ることで悲しみと同時に消費し、叔父さんの本来の「役に立てる」を実行する。売る本もなくなってからは路上生活をするようになりその中でキティと出会い親友とキティに救われる。
次に盲目で車椅子に乗った気の狂った振りをする変わり者のおじいさんエフィングのところで働くことになる。エフィングが急に死を悟り、エフィングの隠された壮絶な物語が開けて行く。最後の目的に強盗を殺して奪い取った金を返すべく、エフィングがエフィングになってから唯一感動した「貧乏人に金をやる」という所業を成し遂げる。最終日、大雨が降り弱っているエフィングが外に出るのは危険だが、そんなことも顧みずエフィングは、昨日出会った晴れの日に壊れた傘を持ち雨が降っているように振る舞う謎の男から貰った傘を持って外に出る。そのうち大雨が降り主人公は雨宿りするようエフィングに言うが、エフィングはそれを無視してズタズタに破れた傘を持って「雨は降ってない」と言い切り壊れたように笑い続ける。最初は唖然としていた主人公も「本当だ、降ってない」とノリ、2人ともびしょ濡れになりながら金を配る。その後からエフィングは主人公を息子のように扱う。人生を肯定されたような気になったんだろうな。
結果、エフィングは肺炎になってしまい「12日」に死ぬという宣言は破られてしまうかと思ったが、エフィングの過去の機械的なまでに規則正しい生活が残っており、エフィングは主人公が気を使って嘘の日を教えたのにも関わらずきっかり12日に死亡した。
それに対する主人公の反応が大笑いなのは少し釈然としなかったけど、エフィングと大笑いしたことを考えれば不自然ではないと無理やり納得した。
次はエフィングの息子、巨漢の歴史学者バーバーと出会う、何度か出会う中ですごく好意的に接してくれる知識人だとしか思っていなかったが、キティが妊娠し中絶したことで別れた時に行先が無くなりバーバーの家にすませてもらうことになった。
なんやかんやあり、2人でエフィングのいう洞穴を探しに行くことにした。その道中母と叔父の墓へ行くと、バーバーが泣きながら母の名を呟き、父親だということがバレてしまう。主人公は感情の行き場がわからなくなったのか、今更でてきたことによる憎しみか、混乱か、激怒しバーバーを後ずさりさせることになった。そしてバーバーは墓穴へ落ちてしまい脊柱と頭蓋骨を割ることになってしまった。が、3ヶ月入院するも回復へ向かっていっていた。
そんな中主人公はまだバーバーが父親だという衝撃の事実を「母が他の男ともやってる可能性がある」という防壁を立てて受けいられれずにいる中、痩せていくバーバーに自分の顔との共通点を見つけてしまう。その直後元々あったバーバーの肥満による不健康が祟りバーバーはもって2週間となってしまった。主人公はバーバーの最期に母親の得意料理を食べさせてやろうと注文しようとしたが売り切れていた。その3日後にバーバーは死亡。
キティも数ヶ月放置してる間に寝盗られてた。
絶望した主人公は闇雲に車を走らせていく中エフィングの言う洞窟を探しに行くことにしたが、砂漠は湖になってしまったらしく見つからなかった。と、捜索している間に100万ドルを乗せた車が盗まれていた。主人公は絶望の末に「これは神による罰だ」と思い込むことにして、中国方面へとひたすら歩いていくことにした。何ヶ月もかけて海まで歩き、海に反射する月を眺めて話は終わる。
とにかくエフィング編が面白かった。純粋な意味での"面白い"変に混み入っていたり、奇を衒ってたり、社会風刺的な面白さではなく、ワクワクする本本来の楽しみを提供してもらった。
終わり方は釈然としなかったし何が伝えたいのかわからなかった。絶望ごっこはやめろ?人生は不条理だ?「何事も真に受けるな」?
でも、エフィングが最高だったので、全てよし!
ポール・オースター、またよもう!キティはよくわからない、いいや。
Posted by ブクログ
人生で何度も読みたくなる本。
高校生の頃、吉祥寺のヴィレッジバンガードで購入した。
ポップでお勧めされなければ手に取ることさえしなかっただろう。
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主人公のフォッグはハードな人生を送っている。様々な人との出会いがあって成長と挫折を繰り返す彼の姿に勇気をもらえた。
とても魅力的な主人公だった。
そしてストーリーの緩急が素晴らしい。
作者の才能をひしひし感じながら読み進めることが出来て、とても良い読書時間だった。
最近読んだ小説の中でいちばんお気に入り!
Posted by ブクログ
初のオースターは大変素晴らしい時間になった。
とにかく物語の展開が凄まじく一気に読んだ。流浪の青春を描きながら家族の話に帰結する巧みさに加え、人間の悪よりも善に光を当てるスタンスが心地よい。
Posted by ブクログ
誰かのおすすめ本で紹介されていて
気になって購入後、積読したままにしてたら
何に惹かれて買ったか、どんな内容か
さっぱり忘れてしまってた
わたしの最近の傾向でSFだったかなーと
思いながら読み進めたが、物語である。
僕の視点で話はすすむ
むむむ、最後まで読み切れるかなー
と不安になりつつ、読み進める
50ページも過ぎた頃からか
どんどん引き込まれていく
彼の中に。
小説って、また読もうと思うものはなかなかない
一回読んで、あーよかった、面白かったと
でも、最後まで、ワクワクもするし
人生についてすごく考えさせられる
アメリカ文学って、結構文化的なことを
知った上じゃないと楽しめないのが多くて
苦手だけど
知らなくても、訳も素晴らしいのだからだとおもうが
すんなり溶け込める
そして、人生の移り変わり、はかなさ
生きること、死ぬこと
偶然や必然や運命や
いろいろ思うこと尽きない
初読みでは、全ては移り変わる
執着なんてしても無駄だなーと
今の自分をかえりみた
年齢を重ねて、再度読みたい
もし、病気で死ぬ間際、病院に横になって
読むなら、どうしても読みたい
そんな本です。
巡り会えてよかった!
Posted by ブクログ
何かに導かれるようにして出会ったこの作品は、私にとって今のところ唯一、心の底からおもしろいと感じた翻訳小説である。
個人的に古典的な翻訳小説で難しいのは、断片的には面白いのに特に章立てがないためストーリーの繋がりが理解できないところだったけれど、「ムーン・パレス」は、それにもかかわらず最初から最後まで夢中で駆け抜けた。まさに青春小説の傑作。本棚に大事にしまって、何年後かにまたそのページを開きたい。
Posted by ブクログ
村上春樹を彷彿とさせるような、
非常に読みやすい文体。
書き出しが本当に素晴らしい。
この書き出しに、ノスタルジーもワクワク感も凝縮されている。
再生と喪失を繰り返す人生
登場人物もみんなチャーミング
青春小説の傑作!
Posted by ブクログ
偶然の出会いと別れによる人生の激しい浮き沈みが描かれることで、ストーリーに惹きつけられ、読書中は現実の悩みを一時忘れさせてくれます。必ずしも時系列ではない語りがあり、匠の技を感じました。
Posted by ブクログ
どこかでグッと掴まれるとか、起承転結がバッチリあるとか、あんまりそういう感じじゃないんだけど(ずっとちょっと変で悲しい話)、なーんか飽きずに楽しく読めて不思議。
MSフォッグ(と彼女のキティ)、フォッグとエフィング(目の見えない偏屈なじいさん)、エフィングの過去、フォッグとバーバー、バーバーの本の内容、みたいにそれぞれまあまあちゃんとした(どちらかというと重くて悲しい)話がたくさん出てきた。
でもなんからみんな好き。
特に最初のフォッグの、お金無いのにその中で謎にやりくりしようと頑張るところがなんか好き。叔父さんの残した本を読みまくって、売って、何もなくなったら公園で生きて…私も助けに行く親友とキティに加わりたかったな笑
人生の偶然性には本当にびっくりするよな!!
Posted by ブクログ
一度落ちるところまで落ちた生活から老人と出会い真実かわからない昔話と繰り返される出会いと別れの中で運命の数奇さが散りばめられている。最後はなんだか唐突せ切なくてとても良かった。
Posted by ブクログ
不格好で、不器用にもがく滑稽な姿。
主人公の青年期が見事に描かれています。
「ムーン・パレス」 ポール・オースター著
若い頃、何冊も同じ著者の本を読んだのですが強く印象に残ったのはこちらの一冊でした。
今年に入ってニュースで著者の訃報を受けました。その夜から3日間でこの小説を再読しました。
物語の前半は、主人公がとにかく極限状態に落ちていく様子、
後半はそこから回復して、自分のルーツを探すという設定です。
後半からの話はちょっと奇想天外で、ここが面白い!という方々が多々ですね。
私は、主人公マーコがどんどん落ちて彷徨うところが、この作品の一番の魅力だと思っています。
この主人公の精神状態がそのまま、つたないのに心を打つ、青春時代に重なるように思えて。
前半の主人公は、とにかく不様に、貧困状態に落ちていきます。
ただただ流されて落ちていくマーコに
何をしてるの!とハラハラしながら突っ込みをいれるんですけど、けれどその心理描写が、著者の語り口があまりにも素晴らしくて、ああ、わかると共感さえしてしまうほど。
「青春」って、青い春って表記するんですね。
長い冬を終え、草木が芽生える希望に満ちた季節でありながら、夜は暗く、寒い。
若さの持つ、無茶ぶり、ひたむきさ、希望に幻想、混沌、いろんなことが胸を打ちます。
ニューヨークのどこか都会的な軽さと洒落た雰囲気の感じられる文体もよいですよ。
Posted by ブクログ
それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。という美しすぎる書き出しがいい。音楽的とも評される文章は比喩表現含めてとても綺麗かつ、自嘲と自虐の目立つ語り口ながらニューヨーカーらしい軽快さもあるアメリカ現代文学らしいオシャレさがあった。
内容としては自伝的な青春小説でありながら、これは家族小説でもある。特に第二部の余命いくばくもない富豪の老人と、第三部の息子がそれぞれ主人公の父であり祖父だったという「偶然」と、それが連なって物語となる「必然」は非常に面白く、いずれも互いが関係性を自覚して双方向になったのは束の間で、死による離別となるのはたまらなく切ない。結局ひとりぼっちとなるラストも含めてかなり薄暗い小説ではあるものの、主人公は間違いなく出会った人間のほぼ全員に愛されており、悲しい物語でありながらそこの部分で奇妙にバランスが取れているなと思った。
Posted by ブクログ
随分と滑稽で、幾分と自虐的な貧乏学生マーコの視点から描かれる随筆チックな青春小説。
どうしたらこんな比喩が思いつくのか?の連続。純文学にも似た美しい翻訳が、思春期ならではの独りよがりの悲壮感、世の中を穿つことでしか得られない優越感と上手く融和していた。
起承転結というよりは、主人公の回想の中で偶発する出来事の連続にゆらゆらと身を任せながら楽しむ物語。
Posted by ブクログ
翻訳小説とは思えない文章の良さ!
表現が全部良くて、刺さりまくって大変でした。
面白い比喩表現が多くて、言葉遣いがとっても好き。
著者も訳者もほんとに素晴らしいです。柴田元幸さん訳の本もっと読みたくなっちゃった。
内容は非常に壮大で先が読めなくて面白かった。
時系列がごっちゃになってて、頭の中の回想を追ってるような感覚。
楽しかったし、展開が全く予想つかなくて驚かされてばかりだった。
大変面白かったです!
Posted by ブクログ
狂った若者とイカれた老人とのキテレツな関係も、読み進めるうちに頼もしいコンビのように思えてくる。
主人公と関わる登場人物の多くは、割り切れない葛藤と独りよがりでもそれを打破する工夫や拘りが散りばめられている。狂っていてもイカれていても同じ人なんだと思えた。
タイトルにある「ムーン」という言葉が、全編に渡って多くの描写に使われているのも読み終えて納得。
これは読んで良かった。
自分の人生の終盤にもう一度読むといいかもしれない。
Posted by ブクログ
最後の1章が良かった。
最後の章の為に、それまでの複雑に絡み合ったストーリーを読んできた甲斐があったと思えた。
最初から最後まで主人公には共感できず、途中で語られる砂漠での物語は正直つまらなかったが、この小説を貫く哀しい諦観のような空気感は楽しめた。その哀しさを最も感じられたのが最後の章であり、最後、主人公が到達した浜辺で見上げた月は、この物語中に一貫して存在する哀しさの象徴に思えた。
Posted by ブクログ
「それは人類が初めて月を歩いた夏だった」
主人公マーゴの物語が始まる。
敬愛するビクター伯父さんを亡くしてから、隙間から見える「ムーン・パレス」のネオンサインを、ただ眺め、思い浮かべるだけの生活を彷徨う……やがて、友とキティという女性に助けられて、無為の果てから生還する。
そののちに出会ったエフィングという人物が、主人公に生き様を見せる。
「……どこでもない場所のど真ん中の、何もない荒野に、独りぼっちで何か月も……わしはどこへもいく必要なんかないんだ。ちょっとでも考えれば、とたんにもうそこに戻っているんだから。このごろじゃ一日の大半はそこにいるのさ……」
物語は次に主人公マーコとエフィングの息子との関わりへ続く……。
このあたりになるとマトリョシカのように話中話が入り込み、やや難解になるが、別に研究者じゃないのでわからないところは気にならなければすっ飛ばして読む(と、思ったけど意外と読める)。
そして、終盤……。
『太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である』
オースターは孤独だ。
Posted by ブクログ
"'人類がはじめて月を歩いた夏だった"
伊坂幸太郎の重力ピエロ、春が2階から落ちてきた。と並ぶくらいロマンチックな書き出しです。
大切なものを手に入れては失っていく主人公の苦しむ姿を美しく感じました。
欲しいものを手に入れるにはそれを欲しがってはいけないなんて、果てしなく青春だ....。羨ましい。
そして侘び寂び万歳。
ひとつひとつを見れば悲劇ですが、俯瞰で見ると喜劇です。
こんなチャップリンみたいな小説がつまらないわけがない。
雨を感じながら読むのにはぴったりの本でした。
Posted by ブクログ
重い本だった。
ずっと波乱万丈な人生で、読むのが苦痛ではなかったけれど、逆にめちゃいいところもそんなに…
ムーンパレス好きなやつに悪いやつはいないらしいけど、入れなかったかも。
キティいいやつすぎるほんと
Posted by ブクログ
ありえない偶然が起こるが、それを必然と思わせるだけの魅力がこの本にはある。アメリカ小説特有の登場人物の多さはない。その分、キャラクターの心の動きに焦点を合わせることができ、青春ストーリーを楽しむめる。しかし、まだまだ私には、この話を深く理解する力はないようだ。