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自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。常に前衛的主題と取り組み、未知の小説世界を構築せんとする著者が、長編「砂の女」「他人の顔」と並行して書き上げた野心作10編を収録する。(解説・清水徹)
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Posted by ブクログ
文学的挑戦に富んだ短編集。文学を解体して、再構築しているような難解さがありつつも、エンタメ小説としても全く古びない力強さと、奇妙でじっとりとしていてニヒルな感触が印象的だった。
それにしても、どんなにか恐ろしい、孤独の日々だったことだろう。 ぼくは灰汁のような憐れみにひたされ、燻製のようになりながら、 やっとの思いで彼女を振り向いて見た。
「ぼくの眼に、彼女はすりガラスであっても、彼女の眼には、ぼくは単なる透明ガラスだったのだ。」(人魚伝) 人魚の彼女と「ぼく」の間にある言語・生物的な壁と、それに付随するもどかしさを端的に、そして叙情的に表す表現力。 安部公房の作品はいつも、どこにでもありそうな風景と人物である。なのに、何かが...続きを読む変で、普遍的世界と表裏一体の非現実。 あとがきでもあるように、相対する関係がじつは同じ穴のムジナで、メビウスの輪のように交わる世界が安部公房の持ち味である。 本著の中で特に好きなのは、「無関係な死」と「人魚伝」。「人魚伝」はかなり深い。 【無関係な死】 無関係の証明をしようとあがくうちに、その死体との関係性が増し、最後にはどうしても否定できない程の関係性が出来上がっている。床の白さの演出が素晴らしい。 サスペンスのような筋書きから、ほんの少し、初めの一歩がズレただけで、行き着く結末が非現実味を帯びる。 【人魚伝】 全身緑の人魚が可愛く思えてくる。まさか安部公房の作品でここまで女性?を愛らしく感じることがあるとは。 冒頭の「物語という檻の悲惨さ」は、最後の半ページで意味が啓ける。 物語にすれば、結末が生まれ、そこに何らかの意味づけがされる。この場合は「ロマネスクな家畜」(この表現も美しい。) 物語の意味づけは無意味であり、重要なのはその途中にある、書き上げられない小さな蠢き。 しかし人魚というこれぞ物語、伝説的寓話を伝えるには物語の手法しかない。物語にできないものを物語でしか伝えられない、滑稽さ。 こうした解釈を加えることも、物語に意味付けをしているという点で、作品を「物語の檻」に閉じ込めることになる。安部公房の妙技によって、作品を語ることを封じられてしまっている。 そして例に漏れず、「捕食者と家畜」、「物語とその拒絶」という相対するテーマが、メビウスの輪となって絡まっている。
安部公房のSFじみた短編小説群。純文学然とした冒頭作品で油断したが、2本目からは本領発揮の幻想なのかミステリなのかという話が続く。 帰宅し、アパートのドアを開けたら、見ず知らずの男の死体が転がっている。さてどうするか。警察に届けたら、自分が犯人にされてしまう。アパートの他の住人に押し付けるには、死...続きを読む体を運ばなくてはならぬ…(無関係な死)。 いやいや、油断した。2本目「誘惑者」で気づくべきだったのだ。安部公房じゃないか。死体が有っても犯人など出てこないし、3階から階段を降りたら4階に着くのだ。比喩をこねくり回したり、理屈をまぜっかえしたりなど不要。これぞ安部公房という短編である。 「使者」は名作「人間そっくり」の初期プロットなのであろうし、「賭」は「密会」をコメディにしたような作品である。中でも「人魚伝」は完全なるSFであり、メカニズムまで作り込まれている点は、そんじょそこらの中途半端なSF作品より出来が良い。 読んでいて、つげ義春や諸星大二郎、高橋葉介などの作品を思い浮かべる人もいるかも知れない。逆に、そういう作品が好きな人は必読の1冊である。
追っているはずが追われてた、人を嵌めようとしていたはずが自分で自分を追い込んでた、飼っているはずが飼われていた……というような状況の話が多い短編集だった。 相変わらず絶望的というか無慈悲な終わり方をする話ばかりだけどなんだか好き。 ただ、『なわ』だけはどうしてもだめだった。 犬好きの私はあの展開は...続きを読むちょっと読めなかったという個人的な問題なのであって、小説自体としては良いんだと思う…けど。 『誘惑者』は比較的わかりやすい話で好き。 『夢の兵士』の哀愁も。 『無関係な死』は私もあぁなったら焦ると思うし深刻な問題なんだけど、主人公の行動はなんだかギャグにもできそうな感じにみえてきて面白かった。
追うものが、追われるものになる。 無関係のものが、関係するものになる。 支配するものが、支配されるものになる。 他の安部公房の作品と同様に、この短編集の中でも立場の逆転が沢山起こっている。 恐ろしいけど、楽しい。 小さなきっかけ一つで、目に映る世界が大きく変わっていく。 「誘惑者」と「賭」が、個...続きを読む人的には好み。
本にはまさに「読み時」があるんだと実感した この本はその読み時に読んだからすごくよかった 表題作が文句ないけど、誘惑者と賭も好きです 透視図法は難しすぎてわからなかった
目次 ・夢の兵士 ・誘惑者 ・家 ・使者 ・透視図法 ・賭 ・なわ ・無関係な死 ・人魚伝 ・時の崖 事前情報を得ず、先入観を持たないようにして読んだ感想としては、一世代前の村上春樹みたい。 乾いた無関心、冷たい理不尽。 違いは、安部公房のほうが閉塞感が強くて人間的な感じ。 確かにここに書かれた...続きを読む作品はほとんどが私の生まれる前のもので、時代の断絶を感じざるを得ない。 けれども安部公房自身は平成までご存命だったのね! めっちゃ同時代人でした。あらあら。 私の脳内読書マップの中で、安部公房は2か所に存在している。 純文学の場所とSFの場所。 そもそも最初に読んだのが、高校の図書室にあった「世界SF文学全集」の『第四間氷期』だったのだから、SFから入って、のちに純文学の人だったのか…と思った次第。 この短編集は、そんな安部公房の純文学とSFの中間に存在して、橋渡しをしているような感じがした。 家に帰ると死体があった。どうにかしなくては…と主人公が奔走する『無関係な死』は、当人がまじめであればあるほど傍から見るとおかしいというシチュエーションコメディそのもの。 逆に、恋した相手の人魚に生活を脅かされていく『人魚伝』は、似たような設定がドラえもんにもあるけれど、こちらはホラー。 人魚には悪気が全くないのが怖いのだけれど、私たち人間も立場が変わればそうなるもんねえ。 ホラーと言えば、狂っているとしか思えない『賭』。 でも、これの本当の怖さは、実は今の世の中がこうなってしまっているのでは?っていう怖さ。 全体像が見えないまま、ノリと勢いで提案され続ける仕事。 傍から見るとあり得ない迷宮と化している職場は、もはや社長がいなくなろうとミッションが止まることはない。 怖。
幻想的というか不条理というか、とにかく訳のわからない10編。でも読み終えてしまった。 夢の兵士:脱走者の正体にニヤリとした。 誘惑者:駅での出来事。追う者と追われる者の逆転。立場の逆転好きだねえ。 家:死なない祖先。ホラー小説のようだ。 使者:嘘火星人の話。気が狂っているだけなのか? 透視図法:スル...続きを読むスルと登ってくる針金にゾッとした。 賭:頭のおかしい宣伝会社の話か? なわ:壁に開けた覗き穴。壁とか穴とか好きだねえ。ドキドキの展開だけど犬が可哀想。 無関係な死:なぜ警察に通報しないのか?などと言ってはけないのかな。 人魚伝:緑の人魚。ねじ曲がった欲望の果て。 時の崖:ボクサーの心の動き。結局は飯、タバコ、酒なのか。
表題作と『なわ』は一読の価値あり。 砂の女と同時代の作品集にという事で、不条理・不愉快要素が強く自分は大変楽しめた。
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無関係な死・時の崖(新潮文庫)
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安部公房
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