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Posted by ブクログ
短編10話。一つひとつの話が短いので読みやすい。
『箱男』『砂の女』『燃えつきた地図』など、安部公房の有名作品を思い起こさせるような内容もあり、非常に面白かった。
星新一のショートショートと少し雰囲気が似ている話もあるが、やはり安部公房はぶっ飛んでいる。
それでいて決してふざけているわけではなく、あくまでも真面目に描かれているからこそ、グイグイ引き込まれる。
『賭』は、奇妙な会社に巻き込まれていく展開がすごくワクワクして好き。
『無関係な死』は、無関係であることを証明しようとすればするほどドツボにハマっていくのだが、読んでいてなぜかすごく共感できる。
『人魚伝』は、アドレナリン分泌の有無が愛と恋の違いだという理論が素敵だと思った。
恋の話ではあるものの、ダークな展開で、この話もワクワクしながら一気に読んでしまった。
Posted by ブクログ
安部公房短編10編。今まで何冊か読んできて、私が感じた安部公房のイメージとなんかちょっと違うような…どこがってうまく言えないんですが。
気になったのは
・「使者」また自称火星人出てきたー!(「人間そっくり」を以前読んだので)
・「賭」どんな建物?どんな会社なん?頭ゴチャゴチャしてくるし、会話文に「……」がやたら多くてなんかずっと怪しい…でもコレ好き。
・「なわ」「無関係な死」リアルな嫌さ。嫌だー。
・「人魚伝」砂の女みたいだなと思ってたら、オチがすごい。人魚すごい。
・「時の崖」ほとんど心象描写だけど、映像が見える。
安部公房、面白い。引き続き読みます。
Posted by ブクログ
「ぼくの眼に、彼女はすりガラスであっても、彼女の眼には、ぼくは単なる透明ガラスだったのだ。」(人魚伝)
人魚の彼女と「ぼく」の間にある言語・生物的な壁と、それに付随するもどかしさを端的に、そして叙情的に表す表現力。
安部公房の作品はいつも、どこにでもありそうな風景と人物である。なのに、何かが変で、普遍的世界と表裏一体の非現実。
あとがきでもあるように、相対する関係がじつは同じ穴のムジナで、メビウスの輪のように交わる世界が安部公房の持ち味である。
本著の中で特に好きなのは、「無関係な死」と「人魚伝」。
【無関係な死】
無関係の証明をしようとあがくうちに、その死体との関係性が増し、最後にはどうしても否定できない程の関係性が出来上がっている。床の白さの演出が素晴らしい。
サスペンスのような筋書きから、ほんの少し、初めの一歩がズレただけで、行き着く結末が非現実味を帯びる。
【人魚伝】
全身緑の人魚が可愛く思えてくる。まさか安部公房の作品でここまで女性?を愛らしく感じることがあるとは。
冒頭の「物語という檻の悲惨さ」は、最後の半ページで意味が啓ける。
物語にすれば、結末が生まれ、そこに何らかの意味づけがされる。この場合は「ロマネスクな家畜」(この表現も美しい。)
物語の意味づけは無意味であり、重要なのはその途中にある、書き上げられない小さな蠢き。
しかし人魚というこれぞ物語、伝説的寓話を伝えるには物語の手法しかない。物語にできないものを物語でしか伝えられない、滑稽さ。
こうした解釈を加えることも、物語に意味付けをしているという点で、作品を「物語の檻」に閉じ込めることになる。安部公房の妙技によって、作品を語ることを封じられてしまっている。
そして例に漏れず、「捕食者と家畜」、「物語とその拒絶」という相対するテーマが、メビウスの輪となって絡まっている。
Posted by ブクログ
安部公房のSFじみた短編小説群。純文学然とした冒頭作品で油断したが、2本目からは本領発揮の幻想なのかミステリなのかという話が続く。
帰宅し、アパートのドアを開けたら、見ず知らずの男の死体が転がっている。さてどうするか。警察に届けたら、自分が犯人にされてしまう。アパートの他の住人に押し付けるには、死体を運ばなくてはならぬ…(無関係な死)。
いやいや、油断した。2本目「誘惑者」で気づくべきだったのだ。安部公房じゃないか。死体が有っても犯人など出てこないし、3階から階段を降りたら4階に着くのだ。比喩をこねくり回したり、理屈をまぜっかえしたりなど不要。これぞ安部公房という短編である。
「使者」は名作「人間そっくり」の初期プロットなのであろうし、「賭」は「密会」をコメディにしたような作品である。中でも「人魚伝」は完全なるSFであり、メカニズムまで作り込まれている点は、そんじょそこらの中途半端なSF作品より出来が良い。
読んでいて、つげ義春や諸星大二郎、高橋葉介などの作品を思い浮かべる人もいるかも知れない。逆に、そういう作品が好きな人は必読の1冊である。
Posted by ブクログ
追っているはずが追われてた、人を嵌めようとしていたはずが自分で自分を追い込んでた、飼っているはずが飼われていた……というような状況の話が多い短編集だった。
相変わらず絶望的というか無慈悲な終わり方をする話ばかりだけどなんだか好き。
ただ、『なわ』だけはどうしてもだめだった。
犬好きの私はあの展開はちょっと読めなかったという個人的な問題なのであって、小説自体としては良いんだと思う…けど。
『誘惑者』は比較的わかりやすい話で好き。
『夢の兵士』の哀愁も。
『無関係な死』は私もあぁなったら焦ると思うし深刻な問題なんだけど、主人公の行動はなんだかギャグにもできそうな感じにみえてきて面白かった。
Posted by ブクログ
目次
・夢の兵士
・誘惑者
・家
・使者
・透視図法
・賭
・なわ
・無関係な死
・人魚伝
・時の崖
事前情報を得ず、先入観を持たないようにして読んだ感想としては、一世代前の村上春樹みたい。
乾いた無関心、冷たい理不尽。
違いは、安部公房のほうが閉塞感が強くて人間的な感じ。
確かにここに書かれた作品はほとんどが私の生まれる前のもので、時代の断絶を感じざるを得ない。
けれども安部公房自身は平成までご存命だったのね!
めっちゃ同時代人でした。あらあら。
私の脳内読書マップの中で、安部公房は2か所に存在している。
純文学の場所とSFの場所。
そもそも最初に読んだのが、高校の図書室にあった「世界SF文学全集」の『第四間氷期』だったのだから、SFから入って、のちに純文学の人だったのか…と思った次第。
この短編集は、そんな安部公房の純文学とSFの中間に存在して、橋渡しをしているような感じがした。
家に帰ると死体があった。どうにかしなくては…と主人公が奔走する『無関係な死』は、当人がまじめであればあるほど傍から見るとおかしいというシチュエーションコメディそのもの。
逆に、恋した相手の人魚に生活を脅かされていく『人魚伝』は、似たような設定がドラえもんにもあるけれど、こちらはホラー。
人魚には悪気が全くないのが怖いのだけれど、私たち人間も立場が変わればそうなるもんねえ。
ホラーと言えば、狂っているとしか思えない『賭』。
でも、これの本当の怖さは、実は今の世の中がこうなってしまっているのでは?っていう怖さ。
全体像が見えないまま、ノリと勢いで提案され続ける仕事。
傍から見るとあり得ない迷宮と化している職場は、もはや社長がいなくなろうとミッションが止まることはない。
怖。
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小説・文芸
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