Posted by ブクログ
2020年02月14日
山崎豊子さん、最後の未完作品。
二つの点で興味惹かれる小説である。
* 高齢と病身である山崎さんの渾身の力はいかなるものなのか
* 作者テーマである「戦争と平和」を描くとしても、自衛隊から掘り起こすとは
上記は当時(2013年)文芸関係で話題になった。
氏の秘書野上孝子さんも解説で
「ま...続きを読むさか先生、自衛隊を書くのではないでしょうねと、飛び上がった」
と書いていらっしゃる。
「先生には『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』という戦争三部作がある。
その作者がどういう視点で自衛隊を書くのだろう。」
山崎氏全作品読破のわたし、文庫になるのを満を持ししていたので、さっそく。
さすがです!
自衛隊が批判にさらされた「潜水艦なだしお事件」を題材にフィクションが始まる。
その潜水艦の若き乗組員が主人公。
一般人の犠牲者がたくさん出た、あってはならない事故である。
たまたまその事件に遭遇してしまった真面目な悩みを通して
自衛隊とは何かを問う設定。
読んだところ、かなり自衛隊を肯定している。
「かなり」っていうところが今の国民の気持ちだと思う。
山崎節炸裂の力作ですが、第一部完結とはいえ、物足りないのは仕方ありません。
でも、書かれなかった全体の予定構造の概略が巻末に付録してあって、
第二部、三部と続くらしいが、それを読むのがわたしには非常に面白かった。
病魔と闘いながら、きちんと第一部を終わり後の構想を残しておく。
残念だけど好感持てる終わり方。
最後まで書きながら死ぬ、これぞ作家冥利ですよ。