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親友の安井を裏切り、その妻であった御米(およね)と結ばれた宗助は、その負い目から、父の遺産相続を叔父の意にまかせ、今また、叔父の死により、弟・小六の学費を打ち切られても積極的解決に乗り出すこともなく、社会の罪人として諦めのなかに暮らしている。そんな彼が、思いがけず耳にした安井の消息に心を乱し、救いを求めて禅寺の門をくぐるのだが。『三四郎』『それから』に続く三部作。(解説・柄谷行人)
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Posted by ブクログ
漱石先生の作品を読んでいると、自然、時代を感じずには居られないのでありますが、今回も文体共々透き通る様な感じを受けました⁉️ 初期3部作という事で、身構えて読み進めましたが、一万円札ではなくて、千円札に落ち付く由来を何となく感じるに至りました‼️ そういう事から、些か腑に落ちない点も在りますが、しか...続きを読むしながら、疑い無く名作であると判を押したいです⁉️ 漱石先生の作品はこれからも楽しみです
過去の出来事に対する後悔に苛まれながらも、日々何事もなく過ぎていく日常に深く幸せを感じる矛盾。 「こころ」ととても似ているところが多くて、あ〜漱石だなと感じた一冊でした。
はじめて読んだときは それから のインパクトが強すぎて、物足りなかったような感触だったが 読み返すとこちらの方が好みだと感じた。情景描写と、そのなかでひっそりと暮らす様子が描かれていて、非常に落ち着いて読める作品。
「こころ」に次いで好きになりました。場合によってはこころより好きかもしれない。解説に、「物語の後半寺に入ったのは作品の欠点という説もある」とあったけど、僕はそうは思わなくて、宗助の足掻きという名の逃げを表すのに効果的だったし、まぁこれがなければきっと宗介とお米のストーリーは彼らが死ぬまできっと今のま...続きを読むま平行線。結構な出来事も自分たちの中で理由をつけて卑下して逃げてるように見えるけど、その生活をさも美しく描いてる漱石ってやっぱ…嫌なやつ 笑(褒めてます) 安井からお米を奪った時の描写の少なさ、なぜ彼らが今の暮らしを選んだかの背景、会話の返事を待たずして(あまりにも明らかだからか、意図したものかはわからない)次の展開に移る作風が気に入りました。
夏目漱石の「三四郎」、「それから」に続く初期三部作最後の作品。 「それから」は、友人の妻を奪い返し、高等遊民を脱した主人公・長井代助が職を探しに出たところで終わります。「門」は代助の「それから」を描きますが、完全な続編ではなく登場人物の名前も状況も違います。 「それから」の物語をひとことで言うなら...続きを読む社会から逃れるように暮らす宗助と御米夫婦の苦悩や悲哀です。小説は何故この夫婦がひっそりと暮らしているのか、終盤まで説明しません。この小説は「朝日新聞」の連載小説ですが、愛読者はこの夫婦の事情を不思議に思いながら毎日読んでいたと思います。新潮文庫では裏表紙でプロットを全て説明していますが、これは余計なお節介です。「門」は「それから」よりも物語の動きがほんの少しだけ早いので、物語の進行を楽しむべき小説と思います。 「門」が描く夫婦の心情から、物語の色調は「それから」に比べて暗いです。それでも、希望もないけど、絶望もない夫婦の穏やかな日常が悲劇的に崩れることはない予感を小説の中で感じました。したがい、個人的に非常に居心地の良い小説世界であり、読んでいるあいだ幸福感を感じました。特に宗助が冒頭お茶の水あたりを散策する場面、大家一家との交流、何気ない夫婦の日常の会話は何とも言えない心地よさがあります。 終盤に主人公は救いを求め鎌倉の寺に参禅します。これは唐突な感じもし、不要と思いましたが、それでは「門」という題名は成立ちませんね。 結論を言えば、三部作の中ではいちばん好きな小説となりました。もし、自分が小説家になったら、こんな小説を書きたいです(なんちゃって)。
門の先に何が見えたのか。 遺恨を残した友人との過去か、 睦まじい夫婦の未来か... 宗助は優柔不断故に、門を通る人ではなく、その前で立ち竦む人である。それでも労苦を受け入れ、日々対峙している姿勢は現代の我々にも通底する。 春の兆しが夫婦の日常を優しく慰めた。
"こころ"で夏目漱石に惹かれて、内容もわからずとりあえず読んだ一冊。 起承転結がはっきりしているSFが好きな私でも、日常に潜む些細な感情を独特なセンスで表現している本書に読む手が止まらなかった。宗助と御米との幸せな夫婦生活の裏にある確かな影が人生の儚さと奥ゆかさを感じさせられた。...続きを読むタイトルにもある"門"と宗助との繋がりも読んでいただきたい。
かつて犯した罪を背負い世間に背を向けて暮らす宗助と御米、その背徳の行為を作品は具体的に語らない。その静かさに友の女を取った罪の深さを知る。作品としては「それから」の続きという位置づけだ。だが、新しいテーマとして宗教(禅)が提示される。 漱石は書く「彼(宗助)は門を通る人ではなかった。又、門を通らない...続きを読むで済む人でもなかった。要するに、彼は門の下に立ち竦んで、日の暮れるのを待つべき不幸な人であった。」無論「門」は宗教的あるいは禅的なものへの比喩であろうが、宗教をもってしても助けられない宗助は、何を糧に生きたらよいのか? この作品、ほとんど50年振りの再読だが、その当時感じた御米の可愛らしいは今も変わらない。救いの無い宗助の捨てて得た珠玉の宝はこの可愛らしさなのだろう。
めずらしく仲の良い幸せそうな夫婦…と見せかけて「それからのそれから」。 幸せそうな日常はいつ崩れるかもわからないような軟弱な地盤の上に建っている。 出店で買ったささやかなお土産、本筋からは逸れた他愛の無い会話、読み返してみればそれら全てが空虚であり慄然とした感さえある。 無邪気で愛想のよい御米が前夫...続きを読むを捨てたのだと思うと、その邪気の無さが空恐ろしい。
過去により満足な地位につけず、淡々と日々を送る。夫婦仲は良好。過去の重荷は、時間がゆっくりと解決する、そう思うしかなくやり過ごしていく。あり得た未来の姿としての坂井、過去の自分の映しとしての弟。そのコントラスト。 しかし不意の再来によりその手法は解決でないと知る。悟るために禅寺に赴くが、修行に専心す...続きを読むることもできず、かといって問題を放擲することもできない。立ちすくむしかない。 門がメタファーなのは間違いないが、それが禅寺でのエピソードのメタファーだけなのか。作品全体のそれなのか。いや。後者なのだろうがどのような意味で? また、屏風の一件もとてもメタフォリックなのだが、解釈が難しい。
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