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戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靱さを鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。
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Posted by ブクログ
山崎豊子氏の作品はスケールが大きく、大作の印象だけど、初期の頃のだけど、素晴らしい読みごたえのある内容だった。 戦前中後をダンディに生き抜いたクラタ氏の、パリでの様子、戦争中も文学と芸術、パイプを愛した男、調べて書くという彼女の才覚溢れる作品だった。
ムッシュ・クラタ、人にどう思われても良いとは自分には思えないが、何か強い信念・信条を持って少なくとも人に流されない様にしたいと思わされた。
山崎豊子氏といえば、どちらかというと何巻にもわたる大作が有名だが、本書は、表題「ムッシュ・クラタ」をはじめ「晴着」「へんねし」「醜男」の中・短編作品が収録されている。いずれも昭和30年代・40年代に書き下ろされた小作品で、どこか淋しく切なく、心揺さぶられる結末になっている。
先日お亡くなりになられた山崎豊子さんの作品を何か読んでみようと思い、近くの本屋さんで長すぎない本と思って探していたら、大長編以外では短編集の本書しか残っていなかったので、これにしてみました・・・。(みんな考えることは同じだ!) 表題作の『ムッシュ・クラタ』のほか『晴着』『へんねし』『醜男』の4編を収...続きを読む録。どの作品も山崎豊子氏を有名にした社会の深層を鋭くえぐる長編小説ではなく、人間の性(さが)をみつめ、味わい深い余韻を残すような作品になっています。 『ムッシュ・クラタ』はダンディであることを身上としパリを愛してやまなかった主人公の倉田氏が、いかに自らを厳しく律しそれを矜持とする生活を全うしたかを、戦前・戦中・戦後という激動の時代を背景に、山崎自身が仮託した女性作家が聴き取り取材にて次第に明らかにしていく物語。孤高に一流を求める倉田氏の、表面は滑稽だが、しかし厳しく貫き通す態度は、読む者を最後には感慨深くさせる迫力を持っている。 最後に収録されている『醜男』はそれとは真逆で、外見は醜いが平凡に生きてきた定年間近の係長の主人公が、美人妻に翻弄され、たかられてもなお妻に未練を残す男の物語で、『ムッシュ・クラタ』とは好対照な作品であるといえる。本の構成上の配置からか、本書の最後の短編になっているが、読後感がその関係上あまり良くないので(笑)、最後に読まないことをお勧めする。(笑)あるいは、妻目線も並行で描かれれば、突然の豹変という腑に落ちない心情もカバーできたかもしれない。「醜」であることから「美」に痛々しいまでに尽くすその姿が切ないが、一方で「美」を求めて止まなかった主人公の最期の言葉は、周囲から思われる「幸福」とは別次元のあくなき男の憧れを痛烈に表しているといえる。 『晴着』は病気である夫から所望され、かつて思い出のある晴着を着用するまでを描いた物語。晴着を着るまでの過程の中で、彼女らの過去のいきさつがしみじみと描かれ、ラストの何となく予感されたシーンへと繋がっていくのだが、構成やシーンが物語としてよく練られていて、小品ながら感慨深い佳作となっている。 『へんねし』は主人公の大阪商家の主が妾をいくら持っても、意外と妻が嫉妬を抱かず、物分かりの良い妻として振る舞っているのだが・・・という物語。冷静以上?な妻の振る舞いがとてもコワい。(笑) こうしてみると、『ムッシュ・クラタ』の気骨あるダンディズムといい、『晴着』の体格のよい男性描写といい、それとは裏腹の『醜男』の男性像といい、山崎の好みの男性像が窺われるようである。そう、『醜男』の主人公への作者の眼差しはあくまでも冷たい!それとは反対に『晴着』の姑や『へんねし』の妻、『醜男』の美人妻に見られるような女性の内面の冷たさの描きっぷりも凄く、山崎の「男というもの」「女というもの」を見る目はあくまでも鋭い。さらに、氏お得意の関西弁を駆使した会話や、『へんねし』のように大阪商家を背景とした物語など、山崎豊子が描く社会派小説とはまた異なる、氏がもう一方で得意としたテーマや技法を詰め込んだこの短編集はかなり贅沢なのではないだろうか。 いろいろと氏の作品は取り沙汰されることもありましたが、特に社会の暗部をえぐり白日の下に曝したその作品群は、現代社会を生きていく上で未だ忘れてはならないものばかりです。謹んでご冥福をお祈りいたします。
まだ読んでないこんなに面白い山崎作品があったことが嬉しい。 壮大な作品よりこれくらいの短編や大阪商人もの、面白いなー、うまいなーー。 表題作のムッシュクラタはおそらく、他にあまりないタイプの作品。 フランスかぶれ、おしゃれすぎてかっこつけすぎてまわりに疎んじられていたような主人公の、知られざる半生、...続きを読むと書くと非常に陳腐だなああ。 読後感が損なわれるのでこれでストップ!
今更の山崎豊子であるが抜群に面白かった 淡々と語られているのに引き付けられるのは何故だろう 入り口は個性的な男の物語であるが 実は女性の生き方の話で 現代には通らない女道を辛く表現している 自分の居場所は自分で作る 見事な女たちに感心する
山崎豊子の短編を初めて読んだが、秀逸。表題作もいいし、へんねしもいい。最後のブ男は自分の器量を見定めろとの教訓を感じた。
山崎豊子を長編小説の人と思っていた私は、短編集を読むとまるで別人が書いているんじゃないかと思うほど、毛色の違う作品に驚かされる。 長編大河とはまた違った、一話完結型の物語は、山崎作品を読破しようとするときのいいアクセントになると思う。
山崎豊子作品は『女系家族』に続いて2作品目。 短編4作品からなるこの本ですが、表題の『ムッシュクラタ』はほかの3作品とは異なる感じでした。 一人の人物を違う人の目で見るという書き方。 人によってこんなにも違う、しかし同じ人物。 ・・・・・ こんなにレビュー書くのが難しいとは。。。 こ...続きを読むうなってしまうと読んでくださいとしか言いようがない気がします。 たぶん、感じ方も人によって違うと思いますし、読んでいる時の気持ちのあり方で捉え方も違うのですから。 山崎豊子作品はもっと読んでみたい作家の一人になりました。
社会派小説を書くことに定評のある山崎豊子であるが、この短編小説も非常に面白い。 どろどろした人間関係を克明に描き出している、というか怖い。 一番気に入ったのはやはり「ムッシュ・クラタ」であろうか。あんまりどろどろした人間関係を描いているのは好きではないというのがありますが^^; もちろん全て...続きを読む読みましたけどね。 結構薄いので、初めて山崎作品に手を出す人にはちょうどいいかもしれません。
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ムッシュ・クラタ
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山崎豊子
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