新潮文庫作品一覧

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  • 劇場(新潮文庫)
    4.0
    高校卒業後、大阪から上京し劇団を旗揚げした永田と、大学生の沙希。それぞれ夢を抱いてやってきた東京で出会った。公演は酷評の嵐で劇団員にも見放され、ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった――。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。芥川賞『火花』より先に着手した著者の小説的原点。
  • 激情次長―不正融資を食い止めろ―(新潮文庫)
    4.0
    1巻814円 (税込)
    大洋栄和銀行の上杉健は、問題があると思えば上司や官僚であろうと容赦しない広報部次長だ。横領、派閥抗争、大蔵省接待、インサイダー取引。数々の苦難を持ち前の正義感で乗り越えてきた上杉に、未曾有の金融不祥事が立ちはだかる! 隠蔽を図る経営幹部たち。腐敗が極限にまで達した銀行の膿を出し切ることはできるのか? 企業エンタテインメントの傑作。『さらば銀行の光』改題。
  • 下駄の上の卵 (新潮文庫)
    4.0
    昭和21年7月。憧れのまっ白な軟式野球ボールを手に入れるため、山形から闇米抱え密かに東京へと向かった国民学校六年生の野球狂の少年たち。その大冒険は、疲弊と混乱の極みに達した東京の街を舞台に、一進一退のシーソーゲームとなって展開していく。眼前に広がる敗戦の実像、しかし人々はなおしたたかに生きている。戦後とはいったい何だったのかを少年たちの視点から繙(ひもと)いた永遠の名作。(解説・井筒和幸)
  • 月光のスティグマ(新潮文庫)
    3.5
    幼馴染の美人双子、優衣(ゆい)と麻衣(まい)。僕達は三人で一つだった。あの夜、どちらかが兄を殺すまでは――。十五年後、特捜検事となった淳平は優衣と再会を果たすが、蠱惑(こわく)的な政治家秘書へと羽化した彼女は幾多の疑惑に塗(まみ)れていた。騙し、傷つけ合いながらも愛欲に溺れる二人が熱砂の国に囚われるとき、あまりにも悲しい真実が明らかになる。運命の雪崩に窒息する! 激愛サバイバル・サスペンス。
  • 月光の東
    3.6
    1巻825円 (税込)
    「月光の東まで追いかけて」。出張先のカラチで自殺を遂げた友人の妻の来訪を機に、男の脳裏に、謎の言葉を残して消えた初恋の女性の記憶が甦る。その名前は塔屋米花。彼女の足跡を辿り始めた男が見たのは、凛冽な一人の女性の半生と、彼女を愛した幾人もの男たちの姿だった。美貌を武器に、極貧と疎外からの脱出を図った女を通し、人間の哀しさ、そして強さを描く傑作長編小説。
  • 月光の誘惑
    4.5
    自ら命を絶つため、高校生の浅倉美紀は灯台に向かう。だが先に、若い女性が崖の向こうへと消えてしまった。幼い子を残して……。15年後、美紀は成長した涼子と母娘として暮らしていた。しかし、涼子の修学旅行のバス事故を皮切りに、浅倉家に不穏な出来事が続く。美紀の父の病、母の隠し事、妹の悲恋。そして涼子のピアノの発表会で、ついに――。一気読み必至の疾風サスペンス!
  • 月桃夜(新潮文庫)
    4.3
    薩摩の支配下にあった奄美。孤児のフィエクサは、父を失った少女サネンと兄妹の契りを交わす。砂糖作りに従事する奴隷のような身分の二人だが、フィエクサは碁を習い才覚を発揮、サネンは美しい娘に成長する。しかしサネンが薩摩の役人から妾に所望され、過酷な運命が動き出す――。濃厚な花の匂いの中、無慈悲な神に裁かれる禁断の絆。魔術的な魅力に満ちたファンタジーノベル大賞受賞作。(解説・吉田伸子)
  • 月曜日の朝・金曜日の夜
    4.0
    1巻770円 (税込)
    中央線に乗って国立駅から東京駅まで通う。沿線に展開する四季折々の風景、車内にみる世相百態など、通勤電車の心とその表情を捉えた「月曜日の朝」。週末にホッと一息ついて行きつけの止り木でピーナツを噛み、寿司屋の床几でコハダをつまむ。わが街のやすらぎの風情を描く「金曜日の夜」。ひとつひとつの挿話に季節感が刻みこまれ、日常生活を再発見する新しい歳時記。
  • 下天を謀る(上)
    4.2
    「その日を死に番と心得るべし」との覚悟で幾多の合戦を生き抜いた藤堂高虎。織田信長亡き後、豊臣家に三顧の礼を持って迎え入れられるが、秀吉は茶々との愛欲に溺れ、天下人としての資質を失っていく。落胆した高虎は一時出家さえ試みるが、徳川家康から届いた一通の手紙に心を動かされ、再び下天を謀る決意を固める──。「戦国最強」との誉れ高い異能の武将を描く本格歴史小説。
  • 解縛―母の苦しみ、女の痛み―
    4.0
    理想を押しつけ、娘を思い通りにしようとする母。憧れと恐れを抱かせる9歳年上の姉。女たちの軋轢に向き合わなかった父。絶望感から私は、15歳で摂食障害に陥った。自立を求めて「女子アナ」になるが、男性社会のなかで挫折と理不尽を経験。育児をきっかけに不安障害を発症し、死を願うまでに。そんな私を救ったのは――。鋭い客観性で自らを見つめ、包み隠さずつづった衝撃の手記。
  • 幻化
    -
    消え去った記憶を確かめようと南九州を旅する精神病の男を通して、二十数年間の心象風景を文学へと結晶させた、戦後文学屈指の名作「幻化」。ほかに「庭の眺め」「記憶」「仮象」「空の下」「突堤にて」「凡人凡語」の全7編を収録。一貫して戦後の繁栄の仮象の底に生の深淵を見つめ続けた梅崎春生の後期作品集。
  • 限界病院(新潮文庫)
    -
    北海道富産別市立バトラー病院は過疎化とともに経営が悪化し、市財政のお荷物と化していた。市長一派は民間譲渡も視野に入れた改革に手を付ける。医師・看護師の減給を決行し、赤字のままの予算案を市議会に提出。医師を供給してきた北斗医大はその無策に激しく反発する。東京からやってきた外科医城戸健太朗は新院長大迫佳彦と女医吉川まゆみとともに病院改革に乗り出していくのだが……。(解説・東えりか)
  • 言語小説集
    3.6
    ワープロのディスプレイ上でカギ括弧同士が恋をした。威張り腐った●や■に他の記号たちが反乱を起こす「括弧の恋」。方言学の権威が、50年前自分を酷い目に遭わせた特高の元刑事を訛りから見破って復讐する「五十年ぶり」。ある日突然舌がもつれる青年駅員の悲劇を描く「言語生涯」など言葉の魔術師による奇想天外な七編に加え、抱腹絶倒の四編を新たに収録した著者最後の短編集。
  • 玄笑地帯
    -
    「純粋些末事没入力批判」「楽器?武器?生殖器?」「鍋やきうどんに気をつけろ」「コンピューターは馬鹿か」「突発性大量創作症候群」「われらが不満の初夏」「基地外に刃物というが」「馬鹿な神を持つ者の苦悩」「譫妄状態における麻雀」…。黒い笑いがこだまする。高い笑いが降ってくる。毎回改行なしの即興生演奏に、計算された毒が仕組まれた恐怖のエッセイ集。 ※文庫版掲載のイラストは、電子版には掲載しておりません。ご了承ください。
  • 源氏紙風船
    -
    「源氏物語」は、何ゆえ千年にもわたって絶えることなく読みつがれ、語りつがれてきたのか――。光源氏と彼をとりまくあまたの女、物語を飾る着物、美術工芸品などなど、舞台背景となる宴について、作者・紫式部のこと……。それぞれのテーマごとに、「源氏狂い」「源氏酔い」を自認する著者が、思いがけない角度から限りない優しさをこめて語る、くめども尽きぬ〈愛の古典〉の魅力。
  • 源氏姉妹(新潮文庫)
    3.0
    源氏物語、それは高貴さに美貌と知性を兼ね備えた主人公、光源氏と肉体関係を結んだ女性たちが織りなす、「姉妹(シスターズ)」のお話。天性の床上手だった夕顔、体の相性ばっちりのセフレ朧月夜、幼女の頃にさらわれた紫上、義理の母なのに関係を持った藤壺……。エロティックな濡れ場や姉妹の心情を肉付けし、源氏のセックス依存と背徳を浮き彫りに。古典を現代的に再構成した刺激たっぷりのエッセイ。(解説・高橋源一郎)
  • 源氏物語私見
    4.0
    半生の情熱を傾け「源氏物語」全五十四帖の完訳をなし遂げた著者が、訳業のかたわらに書き留めた源氏への愛とその魅力を収める「源氏物語」体験の全貌。空蝉に作者・紫式部の自画像を読み取り、宇治十帖に独自の評価を述べるなど、著者ならではの着眼で問題を提起し、さらに、人間の生きざまの哀しさ、宿命の不可思議さを綴る。「源氏物語」への理解と興味をいっそう深める随想集。
  • 源氏物語・隣りの女
    5.0
    亡き母に生きうつしといわれる、父帝の妃・藤壺を恋慕しつつ凛々しく成人した光源氏の、甘美な愛の遍歴を雅びなせりふで語る「源氏物語」。隣りに住むスナックのママの情事に深入りし、その情人と関係を持った人妻の非日常性を描く「隣りの女」。出稼ぎ男の殺人事件を機に現代の家族像を浮彫りにする「七人の刑事」など、テレビドラマの鬼才・向田邦子の傑作シナリオ、6編を収録する。

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  • 源氏物語を知っていますか
    4.2
    男女の愛欲と孤独。野心と諦観。縦横無尽に張り巡らされた伏線の糸。平安貴族を熱中させた、極上華麗な大ベストセラー大河小説『源氏物語』五十四帖を、短編小説の名手・阿刀田高があなたのかわりに読みました。大人のユーモアとエロス溢れる軽妙な語り口で、70年以上にわたる長大なストーリーと複雑に絡み合う人間関係が、すんなり頭に入ります。学生からシニアまで全国民必携の一冊。 ※新潮文庫に掲載の挿画は、電子版には収録しておりません。
  • 現代語訳 竹取物語
    -
    光る竹から生まれたかぐや姫が娘になり、貴公子の求愛に無理難題を与え、煌々と冴えわたる満月の夜に昇天するという永遠の美の幻想……。源氏物語の絵合の巻に「物語の出で来はじめの祖なる竹取の翁」とある「竹取物語」は、平安時代から千百年ものあいだ読み継がれ親しまれている。日本の自然と情感を愛したノーベル賞作家の現代語訳と、ていねいな解説で読む、わが国最古の美しい物語。

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  • 現代語訳 とわずがたり(新潮文庫)
    3.3
    幼少の頃から後深草院のもとで養育された二条は、十四歳の春に院の寵愛を得る。二条は院の愛人となってからも、あまたの貴人や高僧たちと交渉を重ねるが、かねてからの出離の思いが高じ、ついには尼となって諸国遍歴の旅に出る。――波瀾にみちた性の体験を大胆に告白し、愛欲の世界を脱して、宗教に浄化されていく過程を描いた女流日記文学の傑作を、艶麗な筆に甦らせた名訳。
  • 玄鳥さりて(新潮文庫)
    3.8
    富商の娘を娶り、藩の有力派閥の後継者として出世を遂げる三浦圭吾。その陰には、遠島になってまで彼を守ろうとした剣客・樋口六郎兵衛の献身と犠牲があった。十年後、島から戻った六郎兵衛。だが、二人は敵同士として剣を交えざるを得なくなる……。派閥争いに巻き込まれ、運命に翻弄されていく男たち。彼らは、何を守るために刀を振るうのか。真に大切なものを問う、葉室文学の円熟作。(解説・島内景二)
  • 元禄流行作家 わが西鶴
    -
    「わしは俳諧師という商人や」と豪語し、知恵才覚を駆使して版元を巧みに操ってゆく西鶴。「俳諧は興行や」といい、大坂住吉大社に人集めして昼夜ぶっつづけの矢数俳諧を行ない、世間を驚かせる西鶴。そんな彼が、芭蕉についに比肩することあたわず、俳諧へのこだわりをきっぱりと捨て、「好色一代男」をはじめとする浮世草紙作家へと変貌してゆくまで。――著者渾身の力作長編小説。
  • ゲーテ格言集
    4.1
    偉大なる詩人であり作家であると同時に、最も人間的な魅力にあふれたゲーテは、無限に豊富な知と愛の言葉の宝庫を残している。彼の言葉がしばしば引用されるのも、そこには永久に新鮮な感性と深い知性と豊かな愛情とが、体験に裏づけられて溶けこんでいるからである。本書は、彼の全著作の中からと、警句、格言として独立に書かれたものの中から読者に親しみやすいものを収録した。
  • ゲーテ詩集
    3.7
    向学心に燃え、たゆまぬ努力によって、生涯、自らの宇宙観を拡充していったゲーテの作品は、尽きざる泉にも似て、豊富多彩をきわめる。喜怒哀楽、叡智、恋……人間性への深い信頼にささえられ、世界文学に不滅の名をとどめるゲーテの抒情詩を中心に、物語詩、思想詩の代表的な作品を年代順に選び、彼の生活を背景に、その大宝庫を楽しむことができるよう編まれた独特の詩集である。
  • 恋ぐるい
    4.0
    才能に溺れて落ちていく男に、女は一途な想いを寄せ、慕い続ける…稀代の才人・平賀源内と野乃との人知れぬ恋。本草学者、戯作者で発明家としても一世を風靡しながら、取るに足らぬ男を殺めて入牢した源内は、獄中で回想と妄想に身悶えしながら、野乃との狂おしい交情を憑かれたように綴る―しくじり続きの男をひたすらに愛した女の情愛を描き尽くす時代長篇。
  • 恋するディズニー 別れるディズニー(新潮文庫)
    4.0
    「ディズニーランドでデートをすると別れる」という、若者の間でささやかれている噂は本当なのでしょうか。長期間にわたる某大某サークル内カップルの観察結果、すいている時期や曜日、乗りものやショーの仲良くなるまわりかた等を大公開。また、男子がショップでイライラする理由等、男女の謎も解明。ずっとラブラブでいたい女子は本書を彼に読ませてからディズニーデートに行きましょう。
  • 恋情からくり長屋
    4.0
    「治兵衛さん、しぼり尽させてもらいますえぇ」。島原女郎の請け出しに身代賭けた大店の旦那。菊の香りを懐かしむ消えた恋女房に瓜二つの歌比丘尼。国もとの妻の胸を騒がす不思議な夢が暴く、見てはならないこの世の闇……。浪花で恋に焦がれ、江戸で情けに溺れる女と男。西鶴もかくや、の情念にじむからくり話を自在に操る名うての著者の絶品世話物競演! 『夢からの手紙』改題。
  • 恋に焦がれて吉田の上京
    3.4
    札幌に住む吉田苑美(そのみ)は、23歳にして人生初の恋をする。相手は四十男のエノマタさん。不器用な乙女は「会いたい」と「知りたい」と「欲しい」の本能のまま、想い人を張り込んだ。だがある時彼は上京し、吉田は友人前田の制止(「正気かい?」)を振り切り後を追う。まだ吉田の存在を知らぬ彼に、ちゃんと出会うために。初恋の全てがここにある! 『とうへんぼくで、ばかったれ』改題。
  • 恋の櫛―人情江戸彩時記―(新潮文庫)
    5.0
    指物師の職人の家に後添いとして入ったおしなだったが、なつかぬ継子と姑の苛烈な虐めに、耐えきれず家を出た。二年後、ばったり、夫に出遭ってしまう(「蝋梅」)。こっそり組織的に藩士に内職をさせていた貧乏藩。足軽勘七の透かし彫の柘植櫛が大店の跡取り娘の手に渡り、娘は「この職人に会いたい」と言い出した(「恋の櫛」)。江戸の各所で職人の技と意地と優しさが交差する。心温まる傑作四編。
  • 恋人たちの誤算
    3.8
    1巻572円 (税込)
    弁護士事務所に勤める流実子と一流商社のOLの侑里は、高校の同級生で25歳。卒業以来、連絡の途絶えていた二人が思いがけない形で再会した。夢を実現するためなら、自らの体も武器にする流実子。自分を棄てた男とやり直すために、婚約を解消する侑里。愛なんか信じない。愛がなければ生きられない。それぞれの「幸福」をつかむための、がむしゃらな闘いが始まった。

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  • 恋文・私の叔父さん
    4.1
    結婚10年目にして夫に家出された歳上でしっかり者の妻の戸惑い。しかしそれを機会に、彼女には初めて心を許せる女友達が出来たが…。表題作をはじめ、都会に暮す男女の人生の機微を様々な風景のなかに描く『紅き唇』『十三年目の子守歌』『ピエロ』『私の叔父さん』の5編。直木賞受賞。

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  • 広域指定
    4.0
    一月十日午後九時、未帰宅者の一報を受け柴崎警部は高野朋美巡査らを急行させた。九歳の女児、笠原未希はどこへ消えたのか? 早期保護を目指し指揮を執る綾瀬署署長、坂元真紀。主導権を奪おうとする警視庁捜査一課。未解決事件の悪夢に悩まされる千葉県警。キャリアまでを巻き込んだ事件の捜査の行方――そしてその真相とは。名手が持てる力の全てを注ぎ込んだ、長篇警察小説。
  • 行為と死
    -
    愛する女性ファリダのために、スエズ義勇軍に参加し、爆薬を抱えて夜の海を泳ぎきり、かけがえのない生命の燃焼の時間を持ち得た男、皆川。ところが東京に帰った皆川は、次から次とさまざまな女の肉体に惑溺し、バルトリン腺粘液の白い海に溺れて過ぎてゆく日々……。交錯するスエズと東京、純粋な愛とすさまじい性の営み、現代人にとっての“人間復権”を激しく追究した野心作。
  • 項羽と劉邦(上)
    4.3
    紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し戦国時代に終止符をうった。しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。――これは、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の猛将・項羽と天下を争って、百敗しつつもついに楚を破り漢帝国を樹立するまでをとおし、天下を制する“人望”とは何かをきわめつくした物語である。
  • 項羽と劉邦(上中下) 合本版
    4.4
    紀元前3世紀末、秦の始皇帝は中国史上初の統一帝国を創出し戦国時代に終止符をうった。しかし彼の死後、秦の統制力は弱まり、陳勝・呉広の一揆がおこると、天下は再び大乱の時代に入る。――これは、沛のごろつき上がりの劉邦が、楚の猛将・項羽と天下を争って、百敗しつつもついに楚を破り漢帝国を樹立するまでをとおし、天下を制する“人望”とは何かをきわめつくした物語である。 ※当電子版は『項羽と劉邦』(上)(中)(下)の全三巻をまとめた合本版です。
  • 工学部ヒラノ教授
    4.0
    朝令暮改の文科省に翻弄され、会議と書類の山に埋もれながらも研究、講義に勤しむ工学部平教授。安給料で身体を酷使する「女工哀史」さながらの毎日。累々たる屍を踏み越えつつ頂上を目指す大学出世スゴロク。そして技術立国日本の屋台骨を支える「納期厳守」「頼まれたことは断らない」等エンジニア七つの鉄則。理系裏話がユーモアたっぷりに語られる、前代未聞の工学部実録秘話。
  • 後宮小説
    4.0
    時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに……。さて、銀河の運命やいかに。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。
  • 香華
    4.1
    女としてのたしなみや慎みを持たず、自分の色情のままに男性遍歴を重ね、淫女とも言えるような奔放な生き方をする母の郁代。そんな母親に悩まされ、憎みさえしながらも、彼女を許し、心の支えとして絶えずかばい続ける娘の朋子。――古風な花柳界の中に生きた母娘の肉親としての愛憎の絆と女体の哀しさを、明治末から第二次大戦後までの四十年の歳月のうちに描く。
  • 高校生ワーキングプア―「見えない貧困」の真実―(新潮文庫)
    4.3
    「弟や妹には、普通の暮らしをさせたいんです」「もう嫌や。金、降ってこーい」スマホを持つ一見普通の高校生が、親に代わって毎日家事をこなす。家計を支えるためにダブルワークをする。進学費用として奨学金という借金を背負う。彼らのSOSはなぜ見過ごされてしまうのか? 働かなければ学べない高校生の声を集め、この国の隠れた貧困層の実態を浮かび上がらせた切実なルポルタージュ。(解説・荻上チキ)
  • 広告みたいな話
    4.0
    この時代のカケラを、文化、言葉、風俗、社会、メディアの分野から拾い集め、言文一緒、ハンフリーなんて言葉で、無重力の時代、カフェバー、椎名誠の文体、ビートたけしまで軽く鋭く斬っていく。これを読めば、訳の分からん世の中のことも分かってきたような気になる、これぞこの時代の広告になっている一冊!
  • 孔子
    3.7
    二千五百年前、春秋末期の乱世に生きた孔子の人間像を描く歴史小説。『論語』に収められた孔子の詞はどのような背景を持って生れてきたのか。十四年にも亘る亡命・遊説の旅は、何を目的としていたのか。孔子と弟子たちが戦乱の中原を放浪する姿を、架空の弟子・えん薑が語る形で、独自の解釈を与えてゆく。現代にも通ずる「乱世を生きる知恵」を提示した最後の長編。野間文芸賞受賞作。
  • 甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実―
    4.0
    「甲子園なんてこなければよかった」──。球史に刻まれた一戦、1992年夏、星稜vs明徳義塾。松井との勝負を避けた明徳は非難を受け、試合をきっかけに両校ナインには大きな葛藤が生まれた。あれから15年、自らの人生を歩みだした監督・元球児たちが語る、封印された記憶。高校野球の聖地で、彼らは何を思い、何が行われたのか。球児たちの軌跡を丹念に追ったノンフィクション。
  • 甲州赤鬼伝(新潮文庫)
    5.0
    その赤備え軍団は「戦国の伝説」となった――。十四歳の初陣で功を上げられず、父の介錯を務め首を切った山県昌満。心に深手を負い、若き頭領の重圧がのしかかる。だが馬鉄砲の腕を磨き、臣下の窮地を救った昌満は、赤備えの大将として復活。家康と、腹心井伊万千代を震え上らせる戦いを挑んでいく。権謀術数が渦巻く乱世で、最強の赤鬼たちは、いかなる光芒を放ったのか。鮮烈無比の傑作。
  • 好色覚え帳
    -
    「好色な小説家といわれる保坂庄助」の、好奇心あふれ、奇妙でいてしかも真剣な行動に託してくりひろげられる、現代風俗のカリカチュア。――“頓狂連”なる珍妙な仲間たちをひきいてとりおこなう赤線忌、寒詣りから、結婚相談所の見合い、近親相姦の村探訪記、乱交パーティの実地研究、女学校の運動会見物まで、黒メガネに映った虚実反転の世界を、諧謔諷刺まじえつつ描く連作長編。
  • 好色 義経記
    -
    源義経は「判官びいき」に代表されるように、母・常磐御前との生き別れや、兄である頼朝との確執など、その生涯が常に悲劇として描かれた。が、中丸流に史料のウラ側を眺めれば「こいつはただの寿毛平(スケベエ)な男じゃないか」という結論になる。事実、彼は出っ歯で赤毛、色白の小男でカッコよくないという。そんな義経の素顔を求め、大胆な推理と解釈を加えた講談調に仕立てた、爆笑の一代記。

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  • 工場(新潮文庫)
    3.8
    大河が南北を隔てる巨大工場は、ひとつの街に匹敵する規模をもち、環境に順応した固有動物さえ生息する。ここで牛山佳子は書類廃棄に励み、佳子の兄は雑多な書類に赤字を施し、古笛青年は屋上緑化に相応しいコケを探す。しかし、精励するほどに謎はきざす。この仕事はなぜ必要なのか……。緻密に描き出される職場に、夢想のような日常が浮かぶ表題作ほか2作。新潮新人賞、織田作之助賞受賞。(解説・金井美恵子)
  • 洪水はわが魂に及び(上)
    5.0
    1~2巻627円 (税込)
    50種の野鳥の声を識別する知恵遅れの幼児ジンと共に、武蔵野台地の核避難所跡に立て籠り、「樹木の魂」「鯨の魂」と交感する大木勇魚(いさな)。世界の終末に臨んでなお救済を求めず、自らの破滅に向って突き進む「自由航海団」の若者たち……。世代を異にする両者の対立・協同のうちに、明日なき人類の嘆きと怒り、畏れと祈りをパセティックに描いて、野間文芸賞を得た渾身の純文学巨編。
  • 高知・龍馬 殺人街道
    2.7
    〈私は、現代の坂本龍馬である。必ず、日本を洗濯する〉。宣言書が雑誌社に届いた。その言葉通りに、物議をかもした社長、有名漫画家、風俗王が射殺されてゆく。そして、遂に狙いは総理大臣に定められた! 龍馬を崇拝し、彼の足跡を辿りながら、大胆な手口で犯行を続ける男。高知、京都、十津川警部の捜査行は続く。トラベルミステリーとサスペンスを見事に融合させた長篇小説。
  • 皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上)(新潮文庫)
    4.4
    1~2巻935~990円 (税込)
    12世紀が終わる頃、神聖ローマ皇帝とシチリア王女の間に一人の男子が生まれた。少年は両親をはやくに失い、絶大な権力をもつ法王の後見を受けたが、帝位に登り、広大な領土を手中にすると、法王との関係が緊張。法王に十字軍遠征を約束するが、剣ではなく交渉を選んだことでますます反感を買い、ついには破門に処されてしまう……。生涯を反逆者として過ごした中世を代表する男の傑作評伝。
  • 幸福
    -
    1巻1,144円 (税込)
    愛してはいけない女との、ただ一度の過ちを胸に秘め、小さな町工場で油にまみれて働く、無口な青年数夫の前に、兄の婚約者だったその女、組子が再び現われた……。数夫を慕う組子の妹素子、組子を見守る中年男八木沢、そして数夫を憎む兄の太一郎。さまざまな愛が、互いにからみあい、もつれ、傷つけあう姿を通して、本当の「幸福」とは何かを問いかける、男と女の愛のドラマ。

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  • 幸福な家族
    3.4
    馬鈴薯や玉葱や南瓜に美を見いだして、あくことなく野菜の絵を描く老ドイツ語教師・佐田とその妻、聡明で個性的な息子、娘とその恋人たちが、人類の意志としての幸福を愛し、幸福を極めようとする、どこまでも素朴な善意を基調として構成された小説。彼らの周辺でさかんに交される、真情こもった当意即妙のユーモラスな会話は、読者の心を明るい希望で満たして尽きることはない。
  • 幸福について―人生論―
    4.0
    幸福は人間の一大迷妄である。蜃気楼である。がそうは悟れない。この悟れない人間を悟れないままに、幸福の夢を追わせつつ救済しよう。人生はこの意味では喜劇であり戯曲である。従ってこれを導く人生論も、諷刺的、ユーモア的にならざるをえない。本書は厭世哲学者といわれる著者が、豊富な引用文と平明な表現で人生の意義を説き幸福を教える名随筆「処世術箴言」の全訳である。
  • 幸福村
    -
    小さな島から上京し、カメラ店で働いていた景子が手にいれた幸せは、見せかけだけのものだった。――心身共に傷つきながらも新たな幸福への旅立ちを予感させる表題作。死化粧師という仕事を選んだ女性の変貌と自立を見つめる「天櫓」。一人息子に先立たれた老夫婦が息子の忘れ形見を探し出す「麦藁帽子」。身近な不幸を見据えながら、真の幸福を求め続ける女性たちを描いた中編三作。
  • 幸福論
    3.6
    多くの危機を超えて静かな晩年を迎えたヘッセの随想と小品。はぐれ者のからすにアウトサイダーの人生を見る「小がらす」など14編。
  • 神戸 愛と殺意の街
    2.5
    〈神戸の悪党〉と名乗る人間から、ビール会社、銀行などに送られた脅迫状。それに続く巧妙な現金強奪事件。十津川警部は事件の鍵を求め、神戸に向かった。捜査の中で浮かび上がった男は、さまざまな作戦を使い、十津川と互角に渡り合う。強敵の出現に闘志を燃やす捜査陣。男は「夢の計画」を実現するために、十津川に最後の戦いを挑んだが――。港の街神戸をめぐる傑作長編ミステリー。
  • 神戸震災日記
    3.5
    何かしろ、何ができる? ――愛着ある街の悲報に接して、作家は現地に駆け付けた。バイクに跨がり、水、下着、化粧品などを直接手渡す。そして見えてきたのは、マスコミや企業の偽善、被災者の心を汲みとれない知事や市長の体温の低さだった。その後もテント村や仮設住宅に通い続けて、何ひとつ震災前と変わらぬまま封印されてゆく現代日本の病巣までを焙り出し、作家から長野県知事へ転身させた根本的動機となる経験の、渾身のレポート。
  • 神戸・続神戸(新潮文庫)
    4.1
    第二次大戦下、神戸トーアロードの奇妙なホテル。“東京の何もかも”から脱走した私はここに滞在した。エジプト人、白系ロシヤ人など、外国人たちが居据わり、ドイツ潜水艦の水兵が女性目当てに訪れる。死と隣り合わせながらも祝祭的だった日々。港町神戸にしか存在しなかったコスモポリタニズムが、新興俳句の鬼才の魂と化学反応を起こして生まれた、魔術のような二篇。(解説・森見登美彦)
  • 神戸電鉄殺人事件(新潮文庫)
    5.0
    神戸異人館のプールで、横浜にいたはずの若手人気女優と京都の会社社長の死体が発見された。彼女の死後、何かを探すために六本木の超高層マンションの彼女の部屋を訪れた、まるで共通点のない五人の男女。そのうちの二人が、カンボジア、東京駅で殺された。そして、有馬温泉駅発の神戸電鉄の車内でも、男女が殺害される! 十津川警部が大胆不敵な連続殺人に挑む、長編トラベルミステリー。
  • 荒野のおおかみ
    4.1
    物質の過剰に陶酔している現代社会で、それと同調して市民的に生きることのできない放浪者ハリー・ハラーを“荒野のおおかみ”に擬し、自己の内部と、自己と世界との間の二重の分裂に苦悩するアウトサイダーの魂の苦しみを描く。本書は、同時に機械文明の発達に幻惑されて無反省に惰性的に生きている同時代に対する痛烈な文明批判を試みた、詩人五十歳の記念的作品である。
  • 黄落(新潮文庫)
    4.0
    還暦間近の夫婦に、92歳の父と87歳の母を介護する日がやってきた。母の介護は息子夫婦の苛立ちを募らせ、夫は妻に離婚を申し出るが、それは夫婦間の溝を深めるだけだった。やがて母は痴呆を発症し、父に対して殺意に近い攻撃性を見せつつも、絶食し自ら命を絶つ。そして、夫婦には父の介護が残された……。自らの体験から老親介護の実態を抉り出した、凄絶ながらも静謐な佐江文学の結実点。(解説・櫻井よしこ)
  • 香乱記(一)
    4.2
    悪逆苛烈な始皇帝の圧政下、天下第一の人相見である許負は、斉王の末裔、田氏三兄弟を観て、いずれも王となると予言。末弟の田横には、七星を捜しあてよという言葉を残す。秦の中央集権下では、王は存在しえない。始皇帝の身に何かが起こるのか。田横は、県令と郡監の罠を逃れ、始皇帝の太子・扶蘇より厚遇を得るのだが……。楚漢戦争を新たな視点で描く歴史巨編、疾風怒濤の第一巻。
  • 香乱記(一~四)合本版(新潮文庫)
    -
    悪逆苛烈な始皇帝の圧政下、天下第一の人相見である許負は、斉王の末裔、田氏三兄弟を観て、いずれも王となると予言。末弟の田横には、七星を捜しあてよという言葉を残す。秦の中央集権下では、王は存在しえない。始皇帝の身に何かが起こるのか。田横は、県令と郡監の罠を逃れ、始皇帝の太子・扶蘇より厚遇を得るのだが……。楚漢戦争を新たな視点で描く歴史巨編。 ※当電子版は新潮文庫版『香乱記』一~四巻をまとめた合本版です。
  • 功利主義者の読書術
    3.8
    功利主義的読書とは何か? それは本の大海から、本当に使える叡智を抽出する技術だ。聖書、資本論、名作古典小説からタレント告白本まで、具体的効用の薄いとされるジャンルの書物をあえて選択。紙背に隠れたメッセージを読みとり、過酷な現実を戦い抜く方法を鮮やかに提示する。世界の非情さと教養の豊穣、いずれをも知りぬく当代随一の論客による、挑発と知的興奮に満ちた読書指南。
  • 虚空の冠(上)―覇者たちの電子書籍戦争―(新潮文庫)
    4.0
    1~2巻671~715円 (税込)
    俺の夢は、メディアの制覇だ──。終戦直後の日本。若き新聞記者、渋沢はある船舶事故に遭遇。一人生き延びた彼は、事故をめぐる重大な秘密と引き換えに、出世の階段を登り始める。時は移り、現代。IT企業の社長、芦野は電子書籍ビジネスに目を付けた。そのコンテンツ獲得のために、今や極東グループの会長となった渋沢に接触を試みる。時代を予言する衝撃のエンタテインメント。
  • 虚空遍歴(上)
    3.8
    旗本の次男、中藤冲也が余技として作る端唄は、独得のふしまわしで江戸市中のみならず遠国でももてはやされた。しかし冲也はそれに満足せず、人を真に感動させる本格的な浄瑠璃を作りたいと願い、端唄と縁を切り、侍の身分をも棄てて芸人の世界に生きようとする。冲也の第一作は中村座で好評を博するが、すぐに行き詰り、妻も友をも信じられぬ懐疑の中にとじこめられてしまう。

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  • 國語元年
    -
    明治七年、文部省官吏南郷清之輔は「全国統一話し言葉」の制定を命じられた。織田信長や太閤秀吉の天下統一にも比すべき大事業! しかし彼の家では家族、奉公人など十の方言が入り乱れて大混乱……。戯曲版・井上ひさし日本語連続講座。
  • 国銅(上)
    4.4
    1~2巻737円 (税込)
    歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。天平の世に生きる男と女を、作家・帚木蓬生が熱き想いで刻みつけた、大河ロマン。
  • 国道16号線―「日本」を創った道―(新潮文庫)
    3.3
    横須賀から、横浜、町田、八王子、川越、柏などを経て木更津まで。東京をぐるりと囲む16号線エリア。約1100万人が住む一大経済圏である。旧石器時代から人々が集まり、二つの幕府の礎となった。絹の輸出で近代国家を支え、戦後はユーミンをはじめ新たな才能がここで育まれる。子供たちも増加し、未来へつながる道となった16号線、その秘密とは。胸躍る、新・日本文明論。(解説・三浦しをん)
  • 国難―政治に幻想はいらない―
    -
    世界史上稀に見る、豊かで平和で格差が小さい、美しき日本国はもう終わった。政治は混迷を極め、経済は停滞。このままでは必ず国は滅びる。もうおわかりのはずだ。耳に心地のよいことばかり言う政治家を、決して信用してはいけないことを――。有事は明日にも起こりうる。我が国に残された時間は長くない。だからこそ国民を信じ、真実をお話しよう。全てを語り尽した覚悟と矜持の一冊。
  • 孤高の人(上)
    4.4
    1~2巻737円 (税込)
    昭和初期、ヒマラヤ征服の夢を秘め、限られた裕福な人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々を、ひとり疾風のように踏破していった“単独行の加藤文太郎”。その強烈な意志と個性により、仕事においても独力で道を切り開き、高等小学校卒業の学歴で造船技師にまで昇格した加藤文太郎の、交錯する愛と孤独の青春を描く長編。
  • 孤高の人(上下)合本版(新潮文庫)
    4.7
    1巻1,474円 (税込)
    昭和初期、ヒマラヤ征服の夢を秘め、限られた裕福な人々だけのものであった登山界に、社会人登山家としての道を開拓しながら日本アルプスの山々を、ひとり疾風のように踏破していった“単独行の加藤文太郎”。その強烈な意志と個性により、仕事においても独力で道を切り開き、高等小学校卒業の学歴で造船技師にまで昇格した加藤文太郎の、交錯する愛と孤独の青春を描く長編。 ※当電子版は新潮文庫版『孤高の人』上下巻をまとめた合本版です。
  • ここから先はどうするの―禁断のエロス―(新潮文庫)
    3.3
    官能小説の依頼に難航していた女性ホラー作家は、女性同士のカップルの後をつけ漫画喫茶へ。隣の壁に耳を澄ませ聞こえてきたのは、衣擦れ、溜息、潤みの音で……(「壁の向こうで誰かが」)。医師の寺沢は急患の老女の足に驚く。爪先に向かって細く、指は折り畳まれ、足裏は窪んでいた。纏足だ。それは、性具だった――(「Lotus」)。歪んだ欲望が導く絶頂、また絶頂。五人の作家の官能アンソロジー。
  • ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―(新潮文庫)
    4.1
    差別の激しい土地に生まれ、同性愛者として長じ、「八歳で作家になった」と豪語したという天才はデビュー前から天才だった。ニューヨーク公共図書館が秘蔵する貴重な未刊行作品を厳選した14篇。ホームレス、老女、淋しい子どもなど、社会の外縁にいる者に共感し、仄暗い祝祭へと昇華させるさまは、作家自身の波乱の生涯を予感させる。明晰な声によって物語を彫琢する手腕の原点を堪能できる選集。(解説・村上春樹)
  • ここだけの女の話
    3.5
    恋はどうして、いつも期待や望みを裏切って思いがけない方向へ転がっていくのだろう。そして人はどうして、そんなままならぬ恋から逃れられないのだろう――。なぜか手放せない想いに逆にからめ取られて、身動きできなくなってしまった男と女のデリケートな哀歓を、なめらかな大阪言葉にのせてしみじみと綴る。読むほどに人恋しさが募ってくる、恋愛小説ならではの情趣溢れる10篇。
  • ここは私たちのいない場所(新潮文庫)
    3.6
    順風満帆な会社員人生を送ってきた大手食品メーカー役員の芹澤は、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚もしていない。ある日、芹澤は元部下の鴫原珠美と再会し、関係を持ってしまう。しかし、その情事は彼女が仕掛けた罠だった。自らの運命を変えた珠美と会い続けようとする芹澤。彼女との時間は、諦観していた彼の人生に色をもたらし始める――。喪失を知るすべての人に捧げるレクイエム。(解説・中瀬ゆかり)
  • 心が挫けそうになった日に(新潮文庫)
    4.2
    人生は挫折の連続だ。それを乗りこえていくのが人生ではないか。敗北をおそれず、勝利に甘えるな、と、小声で耳打ちするしかない。――この激動の時代をどのように生き抜けばいいのか。そして、生きていく上でのピンチをいかに克服するのか。不条理にみちた人生の危機からの脱出術を、自らの体験をもとに、深く丁寧に、そしてやわらかく伝える豊潤な講義録。『七〇歳年下の君たちへ』改題。
  • 心がだんだん晴れてくる本
    3.6
    話の間をもたせようと頑張ってしまう……相手の反応が恐くて、自分から誘えない……「印象に残らない自分」がイヤだ……なんだか自分を好きになれない……そんな風に思ったこと、ありませんか? 心がどんよりしてどうしようもない時、そんなにがんばらなくても、むりしなくてもいいのです。たまには「がんばる自分」をお休みしましょう。時に逃げたり避けたりするほうが正しい場合もあるのだから――。むりせず元気になるためのこころの処方箋。

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  • 心が安らぐ145種 旅先で出会う花ポケット図鑑(新潮文庫)
    -
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 花に感じ入るのはそのいさぎよさである。時期が来れば咲き、時節が去れば散ってゆく。そんな姿を求めて、早春、他の植物が地中で眠っている時に咲く花に会いに行き、陽春から秋には海辺と高山を行き来する。晩秋から冬は信州に住む地の利を生かし、野山や高原へと向かう……。半世紀に亘り花を追い続けてきた著者が50の探索コースを極上のエッセイと写真で解説する花紀行、渾身の最終作! ※当電子版は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。ご了承ください。
  • 心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告―
    3.6
    最初は心の小さな狂いでも、それをきっかけに、普通の人間が精神全体を蝕まれてしまうことがあり、ときには取り返しのつかない行動をとることがある。しかし、正常な精神と狂気の境目はごく淡く、我々の社会はアルコール依存、統合失調症、人格障害、うつ病など様々な精神疾患とともにある。人は、いつ、いかにして心を病むのか。現役の臨床医師が、虚説を排して実態を報告する。
  • 心に龍をちりばめて(新潮文庫)
    3.6
    小柳美帆はエリート記者の黒川丈二との結婚を目前に、故郷の福岡で同級生の仲間優司と再会する。中学時代「俺は、お前のためならいつでも死んでやる」と唐突に謎の言葉を口走った優司。今その背中に大きな龍の刺青と計り知れぬ過去を背負っていた。時間や理屈を超え、二人の心に働く不思議な引力の正体とは――恋より底深いつながりの核心に迫り、運命の相手の存在を確信させる傑作。
  • こころの最終講義
    4.5
    心理療法家・河合隼雄はロールシャッハ・テストや箱庭療法などを通じて、人間のこころの理解について新たな方法を開拓した。また、『日本霊異記』『とりかへばや物語』『落窪物語』等の物語を読み解き、日本人のこころの在り処と人間の根源を深く問い続けた。伝説の京都大学退官記念講義「コンステレーション」を始め、貴重な講義と講演を集めた一冊。『物語と人間の科学』改題。
  • こころの読書教室
    4.6
    一冊の本を端から端まで読むと、なにかを「知る」以上の体験ができる……物語を手がかりに人間の心の深層を見つめ、鋭い考察を重ねた臨床心理学者河合隼雄。豊かな読書体験をもとに、カフカ、ドストエフスキー、ユングから村上春樹、吉本ばなな、児童文学や絵本まで、「深くて面白い本」二十冊をテーマごとに読み解く。縦横無尽に語り下ろした晩年の貴重な書。『心の扉を開く』改題。※文庫版に収録されていた解説は、電子版では掲載していません。ご了承ください。
  • 心は孤独な狩人(新潮文庫)
    4.4
    1930年代末、恐慌の嵐が吹き荒れるアメリカ。南部の町のカフェに聾唖の男シンガーが現れた。店に集う人々の痛切な告白を男は静かに聞き続ける。貧しい家庭の少女ミック。少女に想いを寄せる店主。流れ者の労働者。同胞の地位向上に燃える黒人医師――。だがシンガーの身に悲劇が起きると、報われない思いを抱えた人々はまた孤独へと帰っていくのだった。著者23歳の鮮烈なデビュー作を新訳。
  • 心は孤独な数学者
    4.5
    天才中の天才ニュートン。ニュートンの「プリンキピア」を12歳で読破した早熟の天才ハミルトン。ヒンドゥーの女神のお告げを受け、新定理を量産した神がかり的天才ラマヌジャン。天才はなぜ天才なのか。才能ゆえの栄光、が、それと同じ深さの懊悩を彼らは抱えこんでいたのではなかったか。憧れ続けた3人の天才数学者の人間としての足跡を、同業こその理解と愛情で熱く辿った評伝紀行。
  • 叱言 たわごと 独り言
    -
    本書には合成甘味料、着色料等いっさい使用しておりません。歯に衣着せぬ辛口のお叱言をベースに、ほんのりとした酒・料理の甘み、人生のほろ苦さなどを加えてじっくりと練り上げた、風味豊かなエッセイ集です。近ごろ目にあまる世相への毒舌を味わうもよし、年期の入った酒の話、書斎の隅でのよもやま話もまたよし……。どこからでも楽しめる一二五編のエッセイ・アラカルト。
  • 小島(新潮文庫)
    4.0
    「絶対に無理はしないでください」豪雨に見舞われた地区にボランティアとして赴いた〈私〉は、畑に流れこんだ泥を取り除く作業につく。その向こうでは、日よけ帽子をかぶった女性が花の世話をしていた。そこはまるで緑の小島のようで――。被災地支援で目にした光景を描いた表題作のほか、広島カープを題材にした3作など14編を収録。欧米各国で翻訳され、世界が注目する作家の最新作品集!(解説・藤野可織)
  • 古城の風景I―菅沼の城 奥平の城 松平の城―
    4.3
    戦国期の古城を巡る作家の眼は、そこに将兵たちの哀歓を見る。大軍相手でも容易に落ちぬ墨守の名将として驍名を馳せた菅沼氏。今川─武田─徳川と臣従し、その勇猛を賞賛された奥平氏。籠城せずに常に城外で決戦した剽悍無類の松平氏。三氏ゆかりの城々を経巡り、高潔達意の名文で、その豊穣な思念と鋭敏な歴史観を縦横に記した白眉の城塞紀行。単行本1、2巻を合本して文庫化。
  • 古代史 50の秘密
    3.0
    なぜ、中国は倭国を重要視したのか。『古事記』が書かれたのはなんのため? 古代版政権交代・大化の改新の真相は。天照大神は本当に女神なのか。「任那日本府」は存在しなかった? 古代日本の戦略と外交、『日本書紀』などの文書に隠された謎、氏族間の政争、斉明・持統など次々と女帝が誕生した理由。気鋭の歴史作家が埋もれた歴史の真相を鮮やかに解き明かす。
  • 木精―或る青年期と追想の物語―
    3.8
    1巻671円 (税込)
    ドイツの神経研究所で学ぶひとりの日本人精神科医。彼が遠い異国へやって来たのは、人妻との情事に終止符を打つためでもあった。ドナウ源流地帯、チロルの山々、北国の町々――ヨーロッパを彷徨う彼の胸に去来する不倫の恋への甘美な追憶、そして、作家としての目覚めと将来への怯え。著者自身の若き日の魂の遍歴をふり返り、虚構のうちに再構成した《心の自伝》。『幽霊』の続編。
  • 胡蝶の失くし物―僕僕先生―
    4.0
    師弟より近く、恋人より遠い関係のまま、ゆるゆると旅を続ける僕僕先生と王弁に怒濤の急展開! なんと政府公認の精鋭刺客集団「胡蝶房」に、先生暗殺の命が下されたのだ。送り込まれたのは、猛毒を操る劉欣。しかし孤独なスナイパーの意外な過去が明らかになり、僕僕一行は思わぬ局面へと歩を進めて……。一方で薄妃の恋にとうとう決着? 大人気の中国冒険奇譚、波乱の第三弾。

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  • 胡蝶の夢(一)
    3.9
    黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良順。悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった彼の弟子、島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たち。
  • 胡蝶の夢(一)~(四) 合本版
    -
    黒船来航で沸き立つ幕末。それまでの漢方医学一辺倒から、にわかに蘭学が求められるようになった時代を背景に、江戸幕府という巨大組織の中で浮上していった奥御医師の蘭学者、松本良順。悪魔のような記憶力とひきかえに、生まれついてのはみ出し者として短い一生を閉じるほかなかった彼の弟子、島倉伊之助。変革の時代に、蘭学という鋭いメスで身分社会の掟を覆していった男たち。 ※当電子版は『胡蝶の夢』(一)~(四)の全四巻をまとめた合本版です。
  • 国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―
    4.5
    ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その“断罪”の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた――。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。執筆活動を続けることの新たな決意を記す文庫版あとがきを加え刊行!
  • 狐笛のかなた
    4.4
    小夜は12歳。人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を亡き母から受け継いだ。ある日の夕暮れ、犬に追われる子狐を助けたが、狐はこの世と神の世の〈あわい〉に棲む霊狐・野火だった。隣り合う二つの国の争いに巻き込まれ、呪いを避けて森陰屋敷に閉じ込められている少年・小春丸をめぐり、小夜と野火の、孤独でけなげな愛が燃え上がる……愛のために身を捨てたとき、もう恐ろしいものは何もない。※新潮文庫に掲載の〈「児童文学」という魔法 宮部みゆき〉は、電子版には収録しておりません。
  • 古都再見(新潮文庫)
    4.0
    幕が下りるその前に見るべきものは、やはり見ておきたい。歴史作家は故郷を離れ、古都・京都に仕事場を構えた――。先斗町のウオッカバーで津田三蔵の幻を追い、西本願寺の〈司馬さんのソファ〉に新撰組の気配を感じ、四条河原町のレトロな喫茶店で本能寺の変に思いを馳せる。現代人の失くした信念、一途、そして命の尊さを描き続けた著者が遺した、軽妙洒脱、千思万考、珠玉の随筆68篇。(解説・澤田瞳子)
  • 琴電殺人事件(新潮文庫)
    -
    香川県琴平町にある日本最古の芝居小屋、金丸座。そこで毎年開かれる「こんぴら歌舞伎」に出演する人気役者・松川市之介に執拗に脅迫状が送られる。後援者のゲーム会社社長尾形が脅迫状の送り主と思われたが、その尾形が青山の自宅マンションで刺殺死体で見つかった。そして脅迫状の予告通り、琴電琴平線の車内で殺人事件が発生する。因襲と確執が渦巻く歌舞伎界の謎に、十津川警部が挑む!
  • 孤独な散歩者の夢想
    4.0
    十八世紀以降の文学と哲学はルソーの影響を無視しては考えられない。しかし彼の晩年はまったく孤独であった。人生の長い路のはずれに来て、この孤独な散歩者は立ちどまる。彼はうしろを振返り、また目前にせまる暗闇のほうに眼をやる。そして左右にひらけている美しい夕暮れの景色に眺めいる。――自由な想念の世界で、自らの生涯を省みながら、断片的につづった十の哲学的な夢想。
  • 孤独な夜のココア
    4.0
    察しの悪い恋人にいつもイライラしている〈かおり〉、からかい半分の同僚の言葉を信じ、男性に大きなバースディーケーキを贈るケチな32歳の〈ちさ〉、年下の男性に恋をし、エープリルフールに妊娠を告げる〈和田サン〉。大人の女性の恋愛を、辛くも優しく描写した12の珠玉短編集。
  • 孤独の意味も、女であることの味わいも(新潮文庫)
    3.3
    人に絶望しても、性暴力に遭っても。愛する子を喪って、すべての「いま」に正解がないように思えても。人生には必ず意味がある。救えない人間などどこにもいないのだから――。母親の後ろに隠れていた少女が、異性の欲望に晒されて呆然とした青春時代を経て、自由を渇望し、自らの言葉だけで生きるに至るまで。気鋭の国際政治学者が、端正な文章で紡ぐようにして綴った等身大のメモワール。(解説・茂木健一郎)

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