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1930年代末、恐慌の嵐が吹き荒れるアメリカ。南部の町のカフェに聾唖の男シンガーが現れた。店に集う人々の痛切な告白を男は静かに聞き続ける。貧しい家庭の少女ミック。少女に想いを寄せる店主。流れ者の労働者。同胞の地位向上に燃える黒人医師――。だがシンガーの身に悲劇が起きると、報われない思いを抱えた人々はまた孤独へと帰っていくのだった。著者23歳の鮮烈なデビュー作を新訳。
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Posted by ブクログ
闇を鮮やかに描きだしている作品。 みんな誰かと心を通わせたいと思っているのに、うまくいかない。そんなときにただ聞いてくれる存在がどれほど有難いか、そんな人がいてくれたらどれほど人生が明るくなるか。 私も誰かの光になれたらと思えた。
色彩豊かな片想いが錯綜する物語。 1930年代の大不況による貧困と差別が蔓延するアメリカ南部で暮らす人々。 主人公のミック、ジェイク、ブラント、コープランドを中心に様々な人が聾唖の白人、シンガーに心を寄せる。 シンガーが唖であるがゆえに理想の友人像を作り出し傾倒する。ただしシンガー自身はその友人たち...続きを読むのことを強く思っているわけではなく、心の中にはただ一人、精神病院に収容されてしまった友人アントナプーロスのみ。 理想の友人のおかげで日々の苦しい生活が救われていると感じている中、その一方通行は突然ドミノ倒しのように崩壊し、人々は孤独へと帰っていく。 こう書くととても重苦しい感じがするのだが、マッカラーズが描き出すこの悲劇はとても美しいのだ。 冒頭に「色彩豊か」と書いたとおり、世界を、そして登場する人々に色々な色を与え、80年前の人々の姿を生き生きと描きだし、決して古くさいと思わせることなく、全員を愛おしく感じさせる。 これは素晴らしい小説。600ページとなかなかの長編だけど、決してその時間は無駄にならない。 傑作。2023年の締めくくりがこの本でよかった。
これほど力強くも繊細な小説を読んだのはいつ以来だろう。海の向こうではファシズムが台頭しつつある暗い時代、アメリカ南部の貧困と人種差別が蔓延する小さな町に暮らすひとりの聾唖の男と、彼をとりまく4人の人びとの物語だ。 町にある夜流れ着いた大酒飲みのアナーキストは、この世の矛盾について多くの知識を蓄えはし...続きを読むたが誰にも理解されず、巨大な怒りを内に抱え込んで自己破壊的な暴発をくりかえしている。 一方、この町にただひとりの老黒人医師は、差別と暴力に虐げられる同胞たちへの大いなる愛とともに彼らの愚かさへの怒りに突き動かされているが、彼もまた、家族を含め誰ひとり理解者をもたない。 才気煥発な下宿屋の少女は、心の「内側の部屋」に豊かな音楽をあふれさせているけれど、これもその力を外に向かって表現する方法を知らぬまま、唖の男への慕情を募らせている。 そして彼らをじっと見つめる食堂の主人は、夜の深さと、そこでしか生きられない異形のものたちを、自らの隠された分身のように愛する男だ。 自らの内にある膨大なエネルギーを持て余し、ただひとり自分の魂を理解してくれそうな存在をもとめて、唖の男のもとを訪れる4人の人びと。彼がたたえる大きな沈黙と静かな微笑は、彼らがそれぞれ孤独に抱えこむ苦悩と希望とをすべて受けとめてくれるように見えた。しかし実は唖もまた、まったく受け取り手のいない巨大な愛を、その内に孤独に抱えこんでいたのだった… 理解し共感してくれる存在をそれぞれに渇望していながらも、決して互いに理解し共感しあうことのできない巨大な魂の孤独。その絶望とその希望を、これほどまでに繊細に描いた小説がほかにあるだろうか。おそらく少女ミックと食堂の主人ビフは最も作者自身に近い存在と思われるが、老黒人医師とアナーキストがついに正面から出会い、互いに共通する熱望を見出しながら罵り合い絶望して別れる場面の緊迫には読む側も息を詰まらせざるを得ない。一見、救いのない物語だが、戦争というより大きな暴力の予兆が満ちる中で、彼らは最後まで生き抜く希望を失ってはいない。 自分とまったく異なる人たちの心の深みに降りて行って、その最も柔らかい部分に触れるような小説を、裕福な家庭出身の若い白人女性であったマッカラーズはどのようにして書くことができたのだろう。愚かに傷つけあい共感を拒みながら共感を可能にする人間というものの可能性を指し示すこの小説、このような時代にあって、それはなんという希望であることか。
第二次世界大戦が始まる直前くらいのアメリカ南部の田舎町を舞台にした群像劇。聾唖で聞き役に徹する男性シンガーと、彼を自分の理解者だと慕う人々。年齢や人種も様々だが、自分の正義、真実、才能、情熱などが周りに理解されないという孤独感を抱えているのが共通している。この作品がすごいなと思うのは、彼らの苦悩を描...続きを読むきつつも、独りよがりな部分も浮き彫りにしていることだと思う。人間ってそういうものなのかな、孤独ってなんだろうと考えさせられる。ババ―やベイビーといった脇役の子供のエピソードも印象に残った。
孤独は前提であると言っていたのは糸井重里だった気がするけれど、人間が生きる上での前提である孤独を再認識するような小説だった。
高校生以来、20年ぶりに読む! 言葉で伝えられることはとても少ないのかもしれない。 いや、そもそも伝えると言うこと自体、本当は無理があることなのかもしれない。 閉塞感に満ちていて、読んだあと数日心が沈む。 早く明るくなりたい。 だけど、わずかな、わずかな希望を見つけられる気もする。
自分の話をじっくり聴いてくれる相手が居る。それがどれほど救いになるか。 それだけでも人の役に立てるのかもしれないと、優しい気持ちになった。
人間の本質に関する部分を現実味を伴って文章で表現するのは決して容易ではない。それを可能とするためには作者自身が少なからず生きるうえでの酸いや甘いを経験する必要があるのではないかと思うのだが、ここで驚くべきはマッカラーズが23歳の若さで、しかも処女作にして、その点をほぼ完璧に近いかたちで小説に仕上げた...続きを読むことだ 欧州でファシスト政党が台頭し、今にも世の中が戦争の渦に吞まれようとしていた時代のアメリカ南部を舞台に、年齢や人種、思想が異なる男女の人生が交錯する物語は何となくフォークナーの作品と共通する雰囲気が窺える 巻末の解説で訳者・村上春樹は、マッカラーズの小説は個人的に閉じた世界と述べている。なるほど、登場人物たちの内面描写を中心とした話はたしかにクローズされてはいるが、逆にマッカラーズの視点自体はとても開かれているような気が私にはする。これを象徴するのがスピノザとマルクスの考え方に共鳴し、アフロ・アメリカンの地位向上を強い理念とする黒人医師コープランドである。本作の展開においてベースラインに近い役割を果たす彼のキャラクターはオープンマインドな見方なくしては創造出来ないのではなかろうか 人は自分の胸のうちを誰かに黙って聞いてもらいたいもの。神父への告解が然り、セラピーも然り、ブログなんてのもあるいはそうなのかも。「心は孤独な狩人」はそこら辺がよくわかるストーリーだ。面白いのは、街の人々が「私の唯一の理解者」として畏敬の念を抱く聾唖の男シンガーが実は彼らの話をたいして真剣には聞いていないこと(相手の口の動きで内容を把握するシンガーは彼らの話がいつも同じなのに半ばウンザリしている)。そしてシンガーもまた、時々会う聾唖の友人相手に時間が経つのも忘れて手話で語り掛け、積もりに積もった澱を吐き出す。結局のところはひとりぼっちか、そうでないかは関係なく、孤独や寂しさは皆の心の何処かに宿っている。この本を読むとそんな風に感じられる 村上春樹曰く「最後まで(翻訳をせずに)大事にしまっておいた」という一作。折に触れて目を通し、もっと理解を深めたい
大学で英文学の授業の教材として読んだ思い出の本が、同様に思い出深い村上春樹に訳されるという幸せ。 以前読んだ村上春樹と柴田元幸の対談本「本当の翻訳の話をしよう」で話題に出てたのがきっかけで手に入れてみた。 授業で学んだから内容は多少覚えていたとは言え、20年以上前に読んでから読み直してもいなかった...続きを読むので、ふんわりとした記憶しかなかった。 耳の聞こえない主人公のシンガーさんが、町の人々から色々なことを相談されるけど、相手は一方的に話すだけで別に探偵的なことをするわけでもない。 そしてある日悩みを聞かされまくった主人公は自殺してしまう。 そして町の人々は後悔する。 といった感じ。 読み直した結果、結構大事なところが間違っていた。 記憶ではシンガーの死を知って、俺達は彼のことを何も知ろうとしなかった…!とみんなで嘆いてたように思ったけど、全くそんなことはなかった。「なんで突然死んでしまったんだろう」とか言ってるだけ。最初から最後まで、みんな自分本位だった。そういう意味でもみんな孤独だったな。 あと、完全に忘れていたけどシンガーの親友のおデブさんがいて、最初は仲良く暮らしているけど徐々に精神がおかしくなり、ついには病院送りになってしまう。でもシンガーさんは変わらず彼を愛し、病院にも良く面会しに行って、お土産も渡し、でも結構ぞんざいに扱われ、最後には連絡もないまま亡くなってしまい、それが原因でシンガーさんも自殺してしまう。 だから、町の人達の悩みという陰の気がシンガーさんに溜まってそれのせいで、ということは全然なかった。むしろ、シンガーさんは町の人達、なんか良くわからんけどやたらと話しかけてくるなぁ、まあええけど、くらいの軽いテンションだった。なのに町の人達はシンガーさんだけが分かってくれてる!みたいな感じだったし、終始すれ違い。 シンガーさんが主人公というより、町の人達と含めてマルチ主人公という形だった。貧乏だけどがんばってる女の子は、読むまでは忘れてたけど、読み直したら思い出した。いたいた。 でもレストランの主人や、テンションが終始おかしいパワータイプの男性、あと苦労人過ぎる黒人の医者という他の主人公たちはあまり覚えてなかったわ… そして主人公たちはまだ良いが、海外小説あるあるとして名前がわかりにくい!そもそも名付けが有名人の名前から取ってるカール・マルクスというキャラクターがいるのに、他の登場人物が資本論のマルクスの話をしたりする。そして普通にあだ名で呼んだりもする。誰が誰だー? あと、キャラ同士の関係性もいまいち理解できなかった。血の繋がった家族なのか、使用人の家族なのかもう分からんぜ!まあ、ストーリーにはあまり関係ないから良いけど! 女の子主人公のミック、音楽好きでピアノも学び始め、作曲までできるという、才能がありそうな雰囲気なのに色々な運命のいたずらで普通に働き始め、そのまま音楽のことを忘れてしまっていく。うーん、切ない。 しかし、銃を遊びで触って暴発させて好きな女の子を射殺しかけてしまう弟は、それのせいで一家の生活が壊滅したのに反省どころか女の子を逆恨みしており、非常にリアルな子ども描写だが、ミックを応援する読者としては悲しくなってしまう。 で、翻訳作品としてだが、割と翻訳感が残っていたのもあり、個人的には余り好みではなかった。翻訳作品の常識としては、読みやすくするためだとしても下手に意訳を含めてしまうのはNGというものがあるらしいが、いや、読みやすさでしょ。 ただ、村上春樹流翻訳のやり方は、結構意訳というか、文の順番や構成を変えたりというのはしてるらしい。 しかも、村上春樹作品というバイアスがかかってしまっている気がする。自分はまだ原作を読んでからこの翻訳を読んでいるので、オリジナルの印象が残ってる気がするけど、翻訳版を最初に読む人はもう、村上春樹作品の第一印象がついてしまうのではないか。 例えば、まるで〜みたいに構文がしっかり出てくる。 p122 まるでブラシできれいにこすられ、長いあいだ洗面器の水に浸けられていたみたいに。 いや、別に村上春樹専売ということはもちろん無いんだけど、でも村上作品にまるでみたいにが出てくると、やっぱりな、と思ってしまうのだった。 というか、前から思ってたけど別に村上春樹翻訳作品、ものすごく良いかとというと特にそんなことはない。 普通に翻訳感は残ってるし、更にやっぱり村上作品だというノイズが乗ってしまう。 もちろん、シンガーさんがやれやれと言ったりスパゲッティを茹で始めるなんてことはないし、プロだし、自分の好きな作品しか訳さない人だから、そこで自分の色をつけることは絶対ないとは言え、とはいえ村上春樹っぽさが出ないはずもないので。 悪いとかではいっさい無いし、翻訳するななんてことはないんだけど、なかなか難しい。 どうでもいいけど、原題の「The Heart is a Lonely Hunter」という響きが頭に染み付いているからか、タイトルは四節あるような印象があり、「心は孤独な狩人」、ではなく「心は〇〇で孤独な狩人」という形で脳裏に浮かびがちだった。あと主人公がシンガーじゃなくてハンターと覚えがち。
貧しく人種差別も激しいアメリカ南部のある町。それぞれ熱い使命や思想、夢を持っている登場人物達が、聾唖の男シンガーにだけはその秘めた思いを語る。いつもは聞き役のシンガーも、啞のアントナプーロスだけには手を素早く動かし話しまくる。 人は、自分の話をまっすぐに受け止めてくれる人を求めている。語りたい、理解...続きを読むしてほしい。 自分の思いが空回りして実現しない事は圧倒的に多い。それでも大半の人は生きていく。シンガーはなぜ死んだのか。皆、彼に話すだけ話して、彼を知ろうとはしなかったからか。 決して幸せな話ではなく、うるさくて静かで、なぜか心地良い読書だった。不思議だ。
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