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天才中の天才ニュートン。ニュートンの「プリンキピア」を12歳で読破した早熟の天才ハミルトン。ヒンドゥーの女神のお告げを受け、新定理を量産した神がかり的天才ラマヌジャン。天才はなぜ天才なのか。才能ゆえの栄光、が、それと同じ深さの懊悩を彼らは抱えこんでいたのではなかったか。憧れ続けた3人の天才数学者の人間としての足跡を、同業こその理解と愛情で熱く辿った評伝紀行。
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Posted by ブクログ
自ら数学者でもある著者が、特に尊敬する3人の歴史上の数学者の生涯を追う旅をする。3人とは、イギリス人のニュートン、アイルランド人のハミルトン、インド人のラマヌジャンである。時代は違うが、皆ケンブリッジ大学で研究をした。 私は数学に明るくないので、この3人の学問的なすごさは正直なところ分からないが、著...続きを読む者がどれほど敬意を抱いているかが十分に伝わってくる。ニュートンは、重力の法則が知られているが、微分積分学の生みの親といわれる。ラマヌジャンも短い生涯のうちに、独学時代を含め3,000を越える公式や定理を発見したという。その一部をインターネットで見てみたが、めまいがしそうな数式だった。 彼ら天才の日常生活や、どう処遇されたかなどが功績とともに紹介されていて、著者がそのゆかりの土地や人を訪ねる。想像を絶するほどの天才は、その能力を正当に評価できる人がいなかったりして、なかなか発見されない場合も多いという。特にインドの片田舎にいた高卒のラマヌジャンがたまたまその才能を見出されたのは、奇跡なのだろう。著者がラマヌジャンのノートブック現物と対面したときの、興奮がよく伝わってきた。学問に人生をかけて打ち込む人は、分かってくれる人も少なく、とても孤独なのだという。 カーストのトップのバラモンに属するラマヌジャンをひらめきに導いているのは、ヒンズー教の女神だというところも、興味深く読んだ。インドがイギリスの植民地だった頃の話や、インドとイギリスの関係や、イギリスのフェア精神によって無名のラマヌジャンも見出されたという著者の考察も面白かった。 私は、数学や物理といった自然科学の分野の天才は無条件に尊敬してしまう。サイモン・シン「フェルマーの最終定理」にも鳥肌が立ったが、本書も数学の知識がなくても、読みやすくてお勧めである。
「数学者」とタイトルにありますが、本の中で数学の公式や定理はほとんど出てきません。著者自身も数学者でありながら、どちらかというとこの本で取り上げられているニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンという3人の偉大な数学者の人となり、そして生まれてから死ぬまでの人生そのものを見つめる「伝記の著者」としてのス...続きを読むタンスを一貫しています。 理数系の論文のような味気なさは微塵も感じさせず、3人の数学者の生まれ故郷を訪ね歩いてそこで触れた様々な人や物、場所のことを情感豊かに描いて見せています。何も知らされずに読んだら、著者が数学者であるということにはちょっと気づけないと思います。 面白いのは、取り上げている数学者ごとに、本の性質が少しずつ変わっていること。 ニュートンの場合、300年近く前のイギリスの社会風俗やニュートンという人物の特殊な性格について紹介する章として読めます。 次のハミルトンの場合、アイルランドの人たちの性格がいかにイギリスと違うか、イギリスと付き合う上でのアイルランドのジレンマ、そして詩人でもあったハミルトンの「文学的な関心と表現」を知るための章として読めます。 最後のラマヌジャンの場合、半分以上は彼の性質を知るというよりインド滞在記として読めてしまうぐらい、インドの風景がふんだんに描かれています。 そんなわけで、どの章を読んでもそれぞれに面白い。ただ唯一、「数学者」というテーマだけで結びつけられた一連の作品群だと思って触れるのが好いかも知れません。非常に興味深く読めました。
この本は、ニュートン、ラマヌジャン、ハミルトン(数学者のほう)という偉人についての伝記を、著者が実際に彼らの生誕ないし活躍の地に足を踏み入れたエッセイとして綴るものである。 タイトルを一見するととても寂しい数学者の印象が伝わってくるが、実際はそれほど単純な話ではない。 この本においては、...続きを読む彼らがどういう生涯を遂げたのかを、孤独な側面と、それに起因する出来事、それに付随する事件などを踏まえて、美しく綴られている。ハミルトンは、恋をした相手に詩を書くような青年であったし、それで大きな心の痛手を負うたりもしていたようだ。ハミルトンの青年としての純粋さなども伝わる、非常な名著と思う。 数学史に興味をお持ちの方には、ぜひ一読することをおすすめできる。
天才は幸せでない。 そんな気はしていたが、それにますます確信が深まった。 生来の素質だけではなく、不遇な幼少時代の環境も手伝って特異な偉業を産む頭脳が形作られたり、天才であるがゆえに平凡な幸せから引き離される結果となったりするように見える。 天才であることと、幸せであることは相入れないのか。 主...続きを読む人公としてニュートン他の偉人3人にフォーカスしているけども、その周辺に大学数学や物理の授業で出てきた歴史的人物がどんどん登場する。 大学では彼らの業績しか知らされないだけに、主人公とのかかわりのなかで、そもそもどういう人だったか、性格や暮らしぶりといったところに光があたるのは、理系の人ならば特に面白いはず。
ニュートン,ハミルトン,ラマヌジャン彼らそれぞれのバックグラウンドを丁寧に説明し,著者が実際に訪ね,実際に書いていたノートを拝見したり,故郷の住んでいた家などを訪れるともう本の中からもこれらの偉大な数学者たちが裏で一生懸命に過ごしていた熱い努力が伝わってくるような作品でした.数学者としてだけでなく,...続きを読む彼らそれぞれを1人の人間として捉えて,様々な角度から書いてあったので非常に天才といえども親しみを持ち,より彼らと私との距離を近くしてくれた本でした.是非ご一読ください.
数学者、藤原正彦の大天才数学者3人をつづった本。といっても半分以上はインドの大天才、シュリニヴァーサ・ラマヌジャンに割かれています。そしてラマヌジャンの天才っぷりにビックリ! それと各地に実際に赴き、藤原氏が思い、感じたことをつづった文章が秀逸!!
この本を読んでわかったことは1、天才も凡人と同じように、いやそれ以上に悩む。2、天才だからといって幸せとは限らない。
「良かった頃」の藤原正彦氏の傑作と私は思う。もっとも20年ぶりに再読したがいささか情緒的で決めつけすぎる著者の記述は鼻につくが。 ともあれ、本書はインドの天才数学者ラマヌジャンを知りたい人は真っ先に手に取ると良いと思う。ラマヌジャンが何故かわかった定理たちの凄さはやはり数学者にしかわからない。藤原さ...続きを読むんのおかげで人類の生み出した真の天才であるラマヌジャンを知ることができたわけだが、彼を知ると知らない人生では大きな違いがあると私は信じている。ありがとう藤原正彦氏。 ちなみにニュートンのひどさとアイルランドの数学者ハミルトンの数学者的純粋性も知ることができますよ。
偉大な数学者ゆかりの地を巡りながら彼らの人生に思いを馳せる物語。メインストーリーに登場する天才数学者たちもさることながら、出自や職業に関係なく天才を天才と正当に評価して処遇した数学者たちも同様に素晴らしいと感じた。
数学史上最高レベルの栄光を手にしながらも、悲劇的な人生を送った日本人好みの世界三大数学者を、自身も数学者である著者が紹介。 この板の人にとって特に興味をひかれるのが、3人目のラマヌジャン。著者は、数学の天才と言えど、生まれ育った環境、文化の影響はあるはずと考え、3人の一生をそれぞれ現地へ飛んで取材し...続きを読むながらたどるが、3人ともその神への信仰が力の源泉になっていたことに気づく。 独学の天才だったラマヌジャンは、夢占いの専門家でもあった。ヒンズーの戒律を犯して渡英する決断をしたのは夢でまばゆい光を見たためだったし、夜中に起き出しては夢で見た公式をノートに書き留めていた。 ラマヌジャンは、「我々の百倍も頭がいい」という天才ではない。「なぜそんな公式を思いついたのか見当がつかない」という天才だと著者は述べる。特殊相対性理論はアインシュタインがいなくても、2年以内に誰かが発見しただろうと言われる。数学や自然科学の発見のほとんどは、ある種の論理的必然、歴史的必然がある。だから、10年か20年もすれば誰かが発見する。ラマヌジャンの公式群のほとんどは必然性が見えない。ということは、ラマヌジャンがいなかったら百年後も発見されないということである。 ラマヌジャンの独創の秘密を、著者はインドの数学者に聞くと、彼はチャンティング(詠唱)を一因として挙げた。詠唱とは、詩文などをメロディーに乗せて唱えることで、インドでは古代から数学と文学が混淆していた。例えば12世紀の数学書『リーラーヴァティ』には、次のような詩が書かれている。 ミツバチの群れが遊んでいました その半分の平方根のハチたちは 中略 ミツバチ全部で何匹いるのでしょう インドでは、伝統的に教科書までが詩文で書かれていた。あらゆる教科で、九九のように丸ごとリズムに乗せて覚える方式が取られてきた。子供の頃から、折に触れて得られた知識や概念をもてあそぶことが、ひらめきにつながる。イギリス支配下で屈辱的な思いをしていたインドで、ラマヌジャンはヒーローになるが、確かに彼のようなタイプこそ、インド人の心をつかむ英雄なのかもしれない。
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心は孤独な数学者
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藤原正彦
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