美しい日本の言霊 歌謡曲から情緒が見える

美しい日本の言霊 歌謡曲から情緒が見える

ビジネス・実用
999円 (税込)

4pt

3.5

切々たる恋の記憶、いつも笑っていた若い日々。父が風呂場で歌ったヒットソング、母が台所で口ずさんだメロディ。たとえ時代は変わっても、歌は生き続ける。人間の限りある命と「別れ」は不可分であり、だからこそ私たちは惜別の念と共に、豊かな情緒、文化を育むことができた。歌謡曲を愛する数学者が、日本の詩歌に込められた万感の思い、失われたものが喚起する力を読み解く。 【本書に登場する主な童謡・歌謡曲・詩】ぞうさん/たきび/ふじの山/浅草の唄/花/空の神兵/わたしが一番きれいだったとき/花の街/異国の丘/柿の木坂の家/急げ幌馬車/別れの一本杉/赤いハンカチ/白い想い出/22才の別れ/なごり雪/赤い靴のタンゴ/ふれあい/秋桜/喫茶店の片隅で/学生街の喫茶店/さくら/ダンスパーティーの夜

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美しい日本の言霊 歌謡曲から情緒が見える のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    書店の平積みに目が止まり読んだ。
    藤原正彦は新田次郎と藤原テイの次男で、彼の心に残った歌謡曲を取り上げて、その曲にまつわる情景や思い出を回想しながら書いたエッセイである。
    当該曲とその人のもち歌をスマホのYoutubeで聴きながら自分の“懐メロワールド”を楽しむ一風変わった読書体験ができた。

    作者の文章は力みがなく平易で読みやすい。
    日本の歴史や伝統に誇りをもち幼少期の国語教育を大事にすべきという考えには同感できる。
    戦中の大陸生活と母に連れられた引き揚げそして父のシベリア抑留など家族の体験は彼に環境に負けない強い意志を育むことになる。成長過程を語る言い回しには所所でエリート数学者の衒いを感じる。戦争に翻弄される生活者の悲しみや希望を願う歌謡曲を取り上げていて、それぞれの歌は各々深い共感を誘う。

    島倉千代子の『哀愁のからまつ林』はそれほど聴いた覚えはないが透き通った声の切ない歌が心に沁みる。
    この本にはないが『東京だよおっかさん』も聴いた。戦争は母親に非情で、息子を失う悲しさが痛切だ。
    悲哀を帯びた旋律に歌詞の秀逸さが際立つ。当時大人達が彼女の歌に聴き入っていた意味が今頃になってわかる。同期入社の友人がよく歌っていた。
    『花』や『空の神兵』『花の街』は終戦後の人々の苦労と平和への祈り、天使の声のような女学生の合唱に作者は今も聴きながら涙するという。
    『異国の丘』『柿の木坂の家』『琵琶湖周航の歌』『別れの一本杉』などは自分には一世代前の歌だが、時代を超えた何ともいえない懐かしい曲だ。
    『22才の別れ』は社会に出て少し経った頃のかぐや姫の歌である。矛盾を怒り無性に人が恋しかった荒んだ日々を思い出しよく聴いた。懐かしさと後悔が疼く。
    『なごり雪』も同じで、伊勢幸三の作詞作曲である。
    作者はアメリカから帰ってきて初めてこれを聴いて衝撃を受けたという。
    『秋桜』は嫁ぐ娘への母親の切ない想いを歌う。山口百恵が母娘の哀調を淡々と醸す。この歌を聴くたびに苦労をかけた母に詫びる気持ちで一杯になる。
    『紅葉』『毬藻の唄』『学生街の喫茶店』など作者が青春の憂愁と懐かしさに酔う様子もリアルで共感できる。
    作者の感想よりそれぞれの曲に興奮する自分がいた。

    最後に作者がアメリカ留学に持って行った本の、中原中也の「月の浜辺」と萩原朔太郎の「櫻」、そして茨木のり子の「さくら」の詩を全文紹介する。
    日本人の「もののあわれ」の情趣をしみじみ噛み締めてこのエッセイを締めくくる。
    数学家に大成した彼の人生は若い頃からその時々に流行った歌謡曲や演歌の魂とともにあった。




    0
    2024年11月02日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    けっこうクセあるけど(笑)、藤原正彦さん好きで、尊敬しています。この本棚にも「祖国とは国語」と「国家の品格」入れています。数学者でありながら、文学に造詣が深く、でも国語の専門家というわけではないから独自の解釈というところが面白い。
    もともと国語の重要性を痛感しており、正しく美しい日本語を使いたいと思っており、最近仕事でも後進の指導にあたることになったので、語彙を増やしたいな、と思って購入しました。
    戦前、戦後くらいの、古い歌謡曲の歌詞を紹介し、そのころのご自分の状況を思い起こしながらその詩のどこがどのように良いのかをつづっています。
    イルカの「なごり雪」とか、山口百恵が歌った「秋桜」、♪秋の夕日に 照る山紅葉~♪で始まる「紅葉」など、私も知っている歌もあったけど、もっと古い歌が多い。
    昔の歌謡曲ってこういう感じだったのね…と興味深い。
    藤原正彦さんの好みでもあるのだろうけど、かなわなかった恋の歌、別れの歌が多く、哀愁ただよいまくりです(笑)。
    お母様藤原ていさんや、お父様新田次郎との思い出も交えてあり、とても興味深いし、詩ってこんな風に味わうものなんだな、という勉強にもなるし、昔の言葉や言い回しの語彙も増えるし、聞いたことのある昭和の歌の時代背景とかもわかるし、なかなか良い本だったと思います!

    0
    2024年05月12日

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