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幕が下りるその前に見るべきものは、やはり見ておきたい。歴史作家は故郷を離れ、古都・京都に仕事場を構えた――。先斗町のウオッカバーで津田三蔵の幻を追い、西本願寺の〈司馬さんのソファ〉に新撰組の気配を感じ、四条河原町のレトロな喫茶店で本能寺の変に思いを馳せる。現代人の失くした信念、一途、そして命の尊さを描き続けた著者が遺した、軽妙洒脱、千思万考、珠玉の随筆68篇。(解説・澤田瞳子)
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Posted by ブクログ
司馬遼太郎の「街道をゆく」は、私の愛読書のひとつなのだが、残念なことに、京都の洛中に関しての街道(テーマ)が入っていない。 「街道をゆく」に取り上げられた京都付近の街道は、「洛北諸道」「叡山の諸道」「「嵯峨散歩」「大徳寺散歩」等があるが、いずれも「洛外」で、「洛中」に関して書かれたものがない。理由は...続きを読むわからない。(ご存じの方が居れば教えて下さい) その空白を埋めてくれたのが本書である。 ただ冒頭から「人生の幕が下りる。近頃そんなことをよく思う。(中略)今年(2015年)二月から京都で暮らしている。これまで生きてきて、見るべきものを見ただろうか、という思いに駆られたからだ。(中略)幕が下りるその前に見ておくべきものは、やはり見たいのだ」と、自分の余命を知っているかの如き悲愴な覚悟をもった書き出しである。 全編を通じて、京都とその歴史を語りながら、いわゆるガイドブックのようなものは一切ない。 日々の苦悩に悶々としながら生きた歴史上の人物を、身近な人間として静かにじっくりと語ってくれている。著者の優しさだろう。 著者は本作の連載(当初は週刊新潮に連載)を終えたちょうど1年後に他界した。この続きを読めないのが残念でたまらない。 葉室麟の愛読者としては、是非読んでおきたい1冊である。
最後に住んでいた京都をそぞろ歩いて発見したことや、京都に関するさまざまな歴史上の人物についての滋味溢れる文章である。さすがに歴史小説家だけあって、興味深い話が満載で、非常に面白かった。ついこないだ亡くなられてしまったが、残念なことだ。芹沢鴨を始め幕末の人物がたくさん出てくるが、生きるということの深さ...続きを読む、悲しさを感じてしまう。江戸時代の詩人・学者の頼山陽を慕っていた弟子の江馬細香の「夏夜」という漢詩には感じ入った。 雨晴れて庭上竹風多し 新月眉の如く繊影斜なり 深夜涼を貪て窓おおはず 暗香枕に和す合歓花 ふふ、なかなか艶っぽいでしょ。
葉室さんの溢れる知識の波に圧倒された 私自身の少ない知識の壺から持っているモノと照らし合わせて「その話聞いたことある」「その説は知らなかった」「初耳だ」と揉まれながら読んだ 彼と共に市内各所を巡りながらそこに纏わる色んなお話を聞いているようで面白かった 何回でも読みたい 歴史に関する知識はもちろんの...続きを読むこと、社会に対する目と考えが深く鋭くて尊敬する 京都での第二の青春を心ゆくまで楽しめていたならいい
「あるべきようは」あるがままにあらしめよ 高い物語性を有する能楽 「キリスト教を社会の軸とする欧米で発達した近代文学には、宗教的な原罪意識が精神の底にある」
故郷の九州から京都に移り住んだ著者が、死去の前年まで週刊誌に書き綴った随筆68篇。 読み通すと、自らの死期を間近に見通したかのような筆致が随所に見られると思うのは、思い込みだろうか。 例えば『中原中也の京』で。 『ひとは輝かしい光に満ちた夢のごとき何かに駆り立てながら生き急ぐ。それが「青春」かもしれ...続きを読むないが、近頃、同じものが「老い」の中にもあるのではないかと思わぬでもない。死を予感した心のざわめきが似ているからだ』とあるが・・・
好きな京都について好きな葉室麟のエッセイを初めて読んだ。歴史小説家なのだから当たり前だが、とても歴史に造詣が深く、単なる京都本よりも歴史について思想を飛躍させている印象。何度か京都を訪れた人も、読むと新たな発見があるかも知れない。
ベストセラー作家である葉室氏の遺した師玉の随筆集。京都に仕事場、住まいを構えた作者の深い思いが此処に。
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