Posted by ブクログ
2020年11月14日
福岡出身の私にとって秋月は小さい頃何度か行った思い出の土地である。覚えている記憶は、紅葉と葛餅。最近では台風や水害で話題になっているが、本作は私の知っている秋月をふんだんに詰め込んだ作品だった。
話自体は歴史物でよくある巨悪と対峙する青春一代記物。怖がりの小四郎が同年代の仲間とともに乗っ取りを狙う...続きを読む福岡藩と戦い、自藩を守っていく。戦いの場面や友情の話などそれぞれの要素で高揚するものがあったが、それがどれも秋月の美しい風景に根付いているのが素晴らしい。
史実に根付いているからか、最後の悪に徹しても自藩を守ったというのが少し納得はいかなかったが、「織部崩し」の青春期から守るものが増えた「成年期」の葛藤など現代にもよく観られるテーマも歴史小説らしく清廉に美しく描いていて、読んでいて清々しかった。
その中でも、いとが「葛」を見つけ出し、それを名産に借金を返していくことに繋げるシーンは鳥肌物だった。ここが葛餅の原点なのかと。