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順風満帆な会社員人生を送ってきた大手食品メーカー役員の芹澤は、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚もしていない。ある日、芹澤は元部下の鴫原珠美と再会し、関係を持ってしまう。しかし、その情事は彼女が仕掛けた罠だった。自らの運命を変えた珠美と会い続けようとする芹澤。彼女との時間は、諦観していた彼の人生に色をもたらし始める――。喪失を知るすべての人に捧げるレクイエム。(解説・中瀬ゆかり)
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Posted by ブクログ
これから読む方、 必ず解説まで読んでください。 喪失を知るすべての人へ捧げるレクイエム と書かれていたが、 私自身がこれまで感じた喪失とは少し違ったものではあった。 ただ、大事なことを気づかせてくれるようなテーマが盛り込まれていたことは間違いない。 自分の向いていた方向を考え直すような作品だと感じ...続きを読むた。 本文は終始サクサクと読みやすかったのに 解説まで読んで、こんなに考えられた内容だったのか、と頭がぐるぐるした。
ここは私たちのいない場所 後書きまで読んで、この物語が分かった気がしました。フッと湧いたように仕事を無くして、それ以後、何か中途で止まったままで何処へ向かうのか?どう決めようか何も思いが浮かんでこなかった。 これまで仕事が第一優先として生きてきた。ずっと立ち止まらせてきた人生を見つめ直して、自分の為...続きを読むの新しい一歩を何方へ向けて踏み出そうか、ずっと持ち合わせていなかった選択権をどう使おうかと逡巡しているような印象を読んでいてずっと感じていました。 最愛の者であっても違っても、見知った誰かを喪失したその時、なにか自身を振り返る瞬間があって、それが起因にこれまで観ていた景色の色あいが少しずつ変化して行くような…その変化を感じていた。 ちょっとした気まぐれから起こった気持ちの変化は、それまで自分を縛り付けてきたロープが自然と緩み解けてしまっていた。まだ自分では理解出来ていないかもしれないが、心の傷の再生が始まっている…そんな気持ちにさせる優しい物語だった。
まさかの白川道の死を受けて、事実婚だった女性に向けて書いた小説。やはり、白石一文は、いい。2019を締めくくる最高の一冊でした。
「人は親にならない限りずっと子供。子供を持たない人は、最後までずっと子供でいようとしている人」 刺される。否定できない。少なくとも「子供を持つ努力をしない人」と「子供を持ちたくないと強く思っている人」に限定して当てはまるものだとは思うけど。 そしてさらに「親友のお葬式に出られないことを悔やむ感情もな...続きを読むい」。 これは主人公と自分が重なって、冷たい種類の人間であることを痛感した。 でも存実はそれを客観的に気付いているし、珠美の存在によりこれから変わっていくのであろう良い未来が想像できる終わり方でした。※それにしても突然の終わり方で驚く。ページを探して二度見。
短編だけれども白石一文がぎゅっと詰め込まれた再生の物語だなと思った。 解説で、パートナーを亡くした編集者の方(中瀬ゆかりさん)へ贈ったものだと知って納得。 とても優しくて包み込むような文章だったから。彼の作品はどれも優しい物語なのだけれど、文章からそれを感じることはあまりなかったから。 物語の終...続きを読む盤、芹澤と珠美は明らかに救われ、再生されるのだけれど、では何から救われたのか、については明確ではない。(出来事としてはあのことがかっかけでそれは明確に描写されているけれど、そのことが2人の心に明確なダメージを与えたとは思えなかった) 人は日々、傷付き、恐れ、挫け、そして日々、癒されてゆく。 芹澤と珠美がゆるやかに再生していく心地よい物語を背景に、白石一文が中瀬ゆかりさんへのメッセージを伝える構造になっているのかなと思う。 香代子の思い出の曲の話や、生と死の話、子どもがいる世界・いない世界の話。
死ぬことについての哲学のような本。 人が死ぬこと、または、自分が死んだ後の世界。 それは恐れることも悲しむ必要もないのではないか。 人の死とその人の不在が同じ意味を持つとしたら、、、。 長いこと会っていない親友の死。 知らされる前は、彼は存在する世界なのである。 たとえ、彼がもうこの世の中に...続きを読むいないにしても。 また本筋とは少し異なるが 主人公とかつての部下との付かず離れずの距離間が たまらなく私は好きだ。 また子供を持つ持たないという価値観に触れる部分もすごく気に入っている。 中瀬ゆかりのあとがきも含め、 本書を包む穏やかな空気感も良き。
中瀬ゆかりさんの解説を読んで、余韻の追い打ち。まさに、言葉をむさぼり読んだ。 子供がいる世界とそうでない世界。 あなたがいる場所とそうでない場所。 生と死。 お気に入り。
主人公がとにかく俯瞰的。ページ数はそれほど多くないけど、自分にとっては印象に残る言葉がたくさんあった。
順風満帆な会社員人生を送ってきた大手食品メーカー役員の芹澤は、三歳で命を落とした妹を哀しみ、結婚もしていない。ある日、芹澤は元部下の鴫原珠美と再会し、関係を持ってしまう。しかし、その情事は彼女が仕掛けた罠だった。自らの運命を変えた珠美と会い続けようとする芹澤。彼女との時間は、諦観していた彼の人生に色...続きを読むをもたらし始める─。喪失を知るすべての人に捧げるレクイエム。 著者の小説を読むのは2作目。特殊な?導入さえ納得できれば、すんなり読み進めることができた。
芹澤と珠美が“色仕掛“をきっかけに出会い、退職や離婚といった社会的には一見マイナスな出来事を皮切りに、ふたりが徐々に回復していくストーリー。 その過程には、著書白石さんからのメッセージが散りばめられている。 共感できるメッセージもあったが、衝撃を受けるような、何か新しいことを気づかせてくれるメッセ...続きを読むージがなかった上に、よく理解できなかったメッセージがあったため、星は3。 以下、メモ ■共感できたメッセージ ・ほんの小さなミスはほんの小さな結果を招き、重大なミスが重大な結果を招く。重大な結果を招いた以上、そのミスはほんの小さなミスであるはずがない。些細な手違いや判断ミスに見えたとしても、実は、そこには深刻な要素がぎっしりと詰め込まれていて、ただ、僕たちはいつも散々な結果に打ちひしがれるあまり出来事の本質を見極めようとしない。だから重大なミスがしばしば小さなミスのようにみなされてしまうだけなんじゃないかってね。 ・心が参ってしまったときは自分自身に治してもらうのが一番なのよ。というか、自分の心は自分にしか治せないの。 ・幾らお金があったって、生きる目的みたいなものがなくちゃ生きていけないものよ ・一生、誰かの経済力に寄生して生きていくなんて、それほどつまらない人生はありませんからね ・私は生まれてからこのかたずっと、奥野と私が存在する世界で暮らしていた。それが5時間前に奥野が死に私だけが存在する世界に変化した ・奥野が死んだことなど別に知りたくなかったし、知らなければ、私はこれからも奥野と私が存在する世界にずっと居続けることができたのだ ・結局、人間は、自分が死ぬのかどうか判断がつかないまま本当に死んじまうんだよ ・ビジネスにおいて最も必要な資質は大胆さと冷静さだったり妻や子供を持った男たちには、会社を辞めるおいう選択肢がなく、自分たちを脆弱にしているが、当人たちはよくわかっていない。 ■よく分からなかったメッセージ ・芹澤さんって、どうして結婚しなかったの? 他人の世話をするのが面倒だからかな ・我が子ほど愛おしい存在はいませんし、女だからこそ深く味わえる愛情というものがありますから。ただ、珠美のように、子供という重い荷物を一生持たずに暮らしていくのも悪くないという気はしますね ・女性が仲間割れするのは、男に比べると若い時期に時間がなさすぎるのと、容姿といううまれながらの絶対的格差のせいだろうけど、ただ、きみたち女性が団結していかないと、この男社会を変えるなんて到底不可能だと僕はいつも思うね その団結って発想が、どうしても私たち女には馴染まない気がするんだよねえ ・子供のいない世界と、子供のいる世界 つまり、子供の感情が分からなくなった人間たちがいる世界と、子供と子供の感情が分からない人間とが共存症する世界のこと。 ・人と共に生きても、人間は決して強くはなれない
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