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Posted by ブクログ
主人公「私」は青野精一郎が語り部となっています。
小説の舞台は福岡市で地元の高校から、現役で早稲田大学の政経学部に進学し、卒業後業界五番手の損害保険会社に就職しました。四十三歳で企画部門の部長に抜擢され、仕事に手応えを感じ始めていた矢先、会社が業界最大手の会社と合併してしまったところから彼の転落人生になります。
主人公は、かつて部下だった女性と不倫関係に陥ったことがあります。そのことが、後年になって深いダメージを受け、うつ病を発症し、退社とともに離婚もしました。
小説が書かれている時期は、その後ちょうど一年を経過したところから物語が始まります。主人公は、故郷の福岡に帰り、一人暮らしをしていたのです。
主人公の親友は、津田敦という人物で、本書では、「あっちゃん」と呼ばれ、同い年の幼なじみです。彼は主人公と同じ高校を出て一橋大学に進み、卒業後は都市銀行に就職、母子家庭で努力家です。
二十代で独立し、東京・銀座で経営コンサルタント事務所を開業していました。銀行勤務時代に親孝行をしようと思って母親を東京に呼び寄せていたところ、母親は死んでしまいます。そして煙草も吸わないのに肺がんになり、つらい治療に耐えているのです。この世の不合理に怒りさえ抱いてしまう。
主人公とあっちゃんは、時に対話しながらそれぞれの考えを深めて、再生するという過程が、この物語の特徴ではないかと思います。
著者の作品を読むのは初めてですが、読みにくい小説ではなく、著者とは世代が同じくらいで、所々含蓄があり腑に落ちて、思索をしていました。
※本書より抜粋
『いつでもどんなことがあっても自分だけは、いまの自分というものを根本的に愛し、認め、許すようにしようと言い聞かせつづけてきた。結局、そうした他愛のない子供じみた自覚だけが、自らの病気を徐々に癒してくれる』
お薦め作品です
読書は楽しい。
Posted by ブクログ
自分が虚ろな状態が鬱ではないか。未来の病気や過去の男出入りのことへの嫉妬、ましてやいま目の前の人に対して、天涯孤独な下枝を選ぶなど、自分のことばかり欲しがる。すべては己がつくりだした幻で、その幻に苦しめられる。いまだって、本を読んでいなければ、ぼくの中にできた心の隙間に幻が入り込んできて、自分を保てなくなってしまう。本に向き合ういまでさえ、君はどの文で泣き、笑い、励まされたのか思いを馳せてしまう。いつでも、どこでも、その気になれば情報を得られる現代、死を身近に感じることが減り、あきらめきれないことが多すぎる。生きること、死ぬこと、愛すること、愛されること、いつ、どこで、自分もどうなるか分からないなと思った。みんななにかを抱えてる。裏表があるから成長できる。まあ、それでも、ぼくの問題はそんなややこやしかったり、大きなことではなくて、自分のことばかりな幼稚さ。それだけのことなのに、いままで生きてきた癖はなかなか直せない。いまは気づけるようになったので、後悔の連続。それに気づかせてくれたのは、とても有り難い。だから、心からなにか力になりたいとは思う。応援するしかできないけど。現状への不平や不満ばかりを募らせて、いつも性急によりよい自分になろうとし過ぎていた。だからこそ、こうしてずっと厭いつづけてきたかつての自分自身たちから強烈なしっぺ返しを受けている。時が経ち、誰かに相談し、新たな関係性が築かれていくということは、もうもとには戻れない自覚を強めていく。そういうものだとも思う。
女性は、やさしく、強く、たくましいな。
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