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Posted by ブクログ
私は先に「水神」の方を読んでしまったが、この「国銅」があって「水神」がある、そんなことが自ずと頓悟された。
非常によくできた二昔前ぐらいの連続テレビドラマを観ているかのようだ。
主人公の国人が絵に描いたような善人の模範で、周りの人々や環境にも異様なほど恵まれる、などといったフィクションならではの好都合も随所に見られるが、本作全体を貫き通す真っ直ぐな流れは揺らぐことなく、読者の真情に迫る。
物語の中には、謎もどんでん返しもトリックも出てはこないが、“生きる”とはどういうことなのか、そんな命題に真っ向から取り組み、そのプロセスを経て得られた著者なりの答えが示されている。
「水神」同様、作中に出てくるなんでもない食べ物の数々や、また医師ならではの見地から描かれた疾病の表現などが印象に残る。
大仏建立の具体的な方法についても、ここまでよく調べられたものだと感服する。
奈良登りの掘り口や釜屋、吹屋もそうだが、登場人物たちが働いている現場の暑さ寒さまで伝わってくるような臨場感だ。
Posted by ブクログ
若い頃「師」と呼べるような人と出会えることは本当に幸せなことだと思う。
この物語に出てくる主人公「国人」もそのような出会いを経て次第に成長していく。
時には死者もでる程過酷な大仏建立の課役を務めつつ、様々な人との出会い、別れを乗り越えて「自分の仏」=アイデンティティを確立していく主人公の様子を、徐々に出来ていく大仏と平行させて描いている。
「国人」が次第に魅力的な人間に成長していく過程を「景信」をはじめ様々な個性あふれる登場人物や、大仏建立作業はもちろん、その他にも当時の都の様子、食べ物等の細かい風俗描写を織り交ぜて描いており、全く飽きずに読み進めることができた。そして最後には本当にさわやかな気持ちにさせてくれた。ちょっと悲しかったけどね。
飽食の今、なんでも手に入る今、この本に出てくる数々の質素な食事のなんと旨そうなことか。1冊の詩集からでもなんといろんなことが学べるか。
今の僕より国人の方が豊かな心のような気がする。精進精進。。。
Posted by ブクログ
天平時代を生きた人達の物語。当時の社会状況が、ことこまかに描かれている。現代ではもう見られなくなった、さまざまな職種の人達も登場。渡来人、百済人もよく描かれている。船や橋、建物などの記述も鮮やかでとてもよい。当時の食文化も読み応えがあった。鮨などにいたっては、当時から1200年以上の時を経て、やっと世界中で食べられるようになったのであるから、釈迦の真の教えが世界にあまねく広まるのは、まだまだ先のことであろう。金曜の夜に馬鹿騒ぎをし、ジーンズを履いて犬を散歩させ、大型スクリーンを眺めて暇を潰し、果てには飲酒運転で暴走してしまう、至極退屈な現代の日本人達と、当時を必死で生きた天平人、どちらが幸せな日本の姿であったであろうか。といっても、日本人の行動が世界中から注目されているのは事実であろう。きのう乗ったルーズベルト島とマンハッタン島を結ぶケーブルカーの中でおもしろい会話を聞いた。「俺は、朝6時に起きて毎朝運動をしている。おまえはロシア時代に軍隊を経験しているから、朝、運動をしているのか?」「ああ、ストレッチをしている。」「日本人も朝、運動をしているそうだな。」云々。皆、鮨を食べて運動をして長生きしたいのでせうか。
下巻の詩句に
宴安消霊根
酖毒可不恪
無以肉食資
取笑葵與藿
というのがあった。大日如来も現代日本人には苦笑いであろうか。
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