ノンフィクション - 集英社作品一覧

  • 池波正太郎「自前」の思想
    3.0
    二十三回忌を迎え、なぜ今なお池波正太郎が愛されるのか。そこには池波が描き、そして生きた、たとえ貧しくとも「世間」というセーフティネットが機能し、誰もが「自前」で生きていける社会に対する我々日本人の郷愁と憧憬があるのではないか。「ワーキングプア」「孤立死」「世代間格差」……社会が個人を分断し、突き放している今の日本。辛口評論家と江戸研究家の最強コンビが、『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』など池波のヒット作はもちろん、池波自身の人生をも読み解きながら、これからの日本人に相応しい生き方を共に考える。【目次】はじめに 佐高 信/序章 池波正太郎、愛される理由/池波正太郎年譜(1) 世間に学んだ一〇代/第一章 仕事の流儀/池波正太郎年譜(2) 戦中、戦後、二〇代/第二章 遊びに磨かれて/池波正太郎年譜(3) 脚本作者から小説家へ、直木賞の三〇代/エッセイ(1) 池波ドラマの演者たち 佐高 信/第三章 家族の肖像/池波正太郎年譜(4) 『鬼平』『梅安』『剣客商売』始動の四〇代/第四章 正義は誰のため?/エッセイ(2) 『鬼平犯科帳』を歩く 田中優子/池波正太郎年譜(5) 三大シリーズ充実の五〇代と早すぎる死/第五章 江戸と東京のメンタリティ/終章 答えは池波正太郎にあり/あとがき 田中優子
  • 人間の居場所
    3.8
    【開高健ノンフィクション賞受賞後第1作!】巨大な資本の流れは、人々の暮らしをボロボロに蝕み、国家は、国境の壁をますます迫り上げる。押し出された者は、当て所もなく荒野を彷徨うのみ。――私たちの居場所はいま、どこにあるのか? シリア難民、AKB、三里塚闘争、LGBT、暴力団、新宿ゴールデン街、子ども食堂、日本赤軍、刑務所、イスラム国、釣り場……。一見バラバラな「断片」を繋ぎ合わせたとき、見たことのない地平が浮かび上がってくる。「人間」の姿を丹念に描いたこの小さな本に、私たちの生存のヒントが、隠されている! 【目次】はじめに/第一章 流浪に浮かぶ祖国/第二章 共犯者たちの秘密基地/第三章 あのころ「学舎」があった/第四章 「雑民」たちの浄化/第五章 アジールの崩壊/第六章 残された旗/第七章 食堂が紡ぐモノ/第八章 極北の「持ち場」/第九章 砂漠の団欒/第十章 異界の不文律/おわりに
  • 新・冒険論(インターナショナル新書)
    4.0
    チベットで人類未踏の峡谷踏破、北極圏で闇の世界を80日間歩く極夜行……。数々の独創的な挑戦を行ってきた著者による冒険論。真の冒険の例として、ピアリーやナンセンの北極探検を挙げ、マニュアル化されたエベレスト登山やアドベンチャーレースなどを「スポーツ化した疑似冒険」と喝破する。日本人で初めて冒険の本質に迫った、画期的論考!
  • シリーズ<本と日本史>(2) 遣唐使と外交神話『吉備大臣入唐絵巻』を読む
    -
    <本と日本史>は「本」のあり方から各時代の文化や社会の姿を捉え、当時の世界観・価値観の実態を考察する歴史シリーズ。第二巻の本書が扱うテーマは「遣唐使」である。だが実証的な遣唐使ではない。12世紀末から13世紀初頭にかけて制作された『吉備大臣入唐絵巻』を中心に、19世紀にまで連なる後代に仮構された遣唐使<像>を検討する。大国への対抗意識や異国・異境への尽きぬ思いが託された幻想の中の遣唐使は、日本の劣等感と優越感がないまぜになった東アジア文化交流の象徴でもあった。そして今なお、時代を超えた国際関係のあり方を探る拠り所として、複眼的な視点を提供し続けるのである。 【目次】まえがき/第一章 吉備真備――人物と文物/第二章 『江談抄』を読み解く――絵巻への道/第三章 『吉備大臣入唐絵巻』の形成と世界/第四章 遣唐使の神話と伝説/終章 東アジアの回路へ/あとがき/参考文献
  • 無戸籍の日本人
    4.2
    無戸籍の日本人、1万人以上。「偽装ランドセル」で通学しているふりをしていた冬美。生まれて以来、「家」というものに住んだことがない明。身分証明書無しでも就ける仕事を掛け持ちしてきたヒロミ。あまりに過酷で不条理な無戸籍者の現実。なぜ無戸籍になるのか? なぜこの状況は改善されないのか? 制度上は「存在しない」彼らに光を当て、この国が抱える歪みに迫る衝撃のノンフィクション。
  • 永六輔の伝言 僕が愛した「芸と反骨」
    4.0
    中学生のときにラジオ番組に投稿を始め、放送作家への道を歩み始めた永六輔は、やがて戦後放送文化のトップランナーとして新しい時代の価値を次々と生み出していく。その道程で出会い、学び、繋ぎ、そして見送ってきた多くの先輩や仲間たち。渥美清、三木鶏郎、小沢昭一、野坂昭如、中村八大、いずみたく、三国連太郎、美空ひばり、井上ひさし……皆に共通していたのは、自由と平和への希求、そして反骨の心意気だった。半世紀にわたり永に伴走してきた盟友・矢崎泰久が本人に成り代わって活写した、永六輔と彼らの熱い交わり。それは、不透明な時代を生きる私たちに知恵と勇気をくれる「昭和からの伝言」である。【目次】まえがき/第一章 青春の出会い/第二章 三木鶏郎の伝説/第三章 規格外れの先輩たち/第四章 中村八大の才能/第五章 昭和の歌い手/第六章 「中年御三家」の反戦/第七章 昭和の知性/あとがき/参考資料
  • 日本の女帝の物語 あまりにも現代的な古代の六人の女帝達
    3.8
    飛鳥奈良時代は六人の女帝が頻出した時代でした。だからといって、それをただ年表的になぞるだけでは「その意味」は見えてきません。「その天皇はどの天皇の血筋か」とか「徐々に複雑に消された皇統」とか、「嫁姑の問題」とかを読み解くと、極めて現代的な人間世界が見えてきます。当たり前に女性の権力者を生むことのできた「天皇家だけの特別」とは何なのか。この本は、女帝をめぐる歴史ミステリーなのです。【目次】第一章 「女帝」とはなんなのか?/第二章 「皇」の一字/第三章 聖武天皇の娘とその母/おわりに
  • 日本の行く道
    3.6
    『日本の行く道』というタイトルを見ると、人は「これからの日本の行く道を教えてくれる教科書のようなものだ」と考えるでしょう。そして人は「教科書のような顔をした本」を求めます。なぜなら「教科書ならよっかかれる。だから安心だ」と思うからです。しかしこの安心は、生きるための選択肢を狭めることです――こうした意識のもとで、作家・橋本治が「教育」「家」「政治」「経済」のことどもに、独自の「一発かませる」を展開する本です。【目次】はじめに/第一章 「子供の問題」で「大人の問題」を考えてみる/第二章 「教育」の周辺にあったもの/第三章 いきなりの結論/第四章 「家」を考える/あとがき――二十年しか歴史がないと
  • 怪魚を釣る(インターナショナル新書)
    4.0
    怪魚とは、「体長一メートル、もしくは体重一〇キログラムに成長する淡水域の巨大魚」の総称。本書では、世界四〇ヵ国以上で五〇種超の怪魚を釣り上げてきた著者が、これまでに蓄積したノウハウを惜しみなく披露する。さらに、謎多き巨大ナマズ・イートングーシーダダやアマゾンのピラルクーなど、規格外の巨大魚たちの写真も多数収録。怪魚を釣り、食し、研究する楽しみが詰まった一冊。
  • 不平等をめぐる戦争 グローバル税制は可能か?
    4.0
    名だたる大企業や著名人がタックス・ヘイブン(租税回避地)を利用して“合法的”脱税を行う実態を白日の下にさらした「パナマ文書」。それが示したのは、あまりにも不公平で一方的な富の収奪の世界だった。諸国民の税により築かれたインフラを利用し巨額の利益をあげながら、ほとんど納税しない大企業や富裕層の存在。租税を回避する巨額の富に対していかにして課税できるか? グローバル税制の考え方と仕組み、そしてその可能性を示したのが本書である。環境問題から貧困問題まで、これらを一挙解決できる財源は、ここにある。【目次】はじめに/第一章 パナマ文書の衝撃/第二章 富の偏在を可視化すること/第三章 グローバル・タックスの可能性/第四章 グローバル・タックス実現のためのステップ/第五章 政治と現実を動かすために/第六章 グローバル・ガヴァナンス――EUの夢/おわりに 不平等と戦う人々/あとがき
  • 悲しみの子どもたち ――罪と病を背負って
    4.0
    罪と病という二重の試練を背負った子どもたち。医療少年院で、精神科医として彼らと向かい合う著者が、多くのケースとの関わりを通して、異常な行動の根底にある問題に迫っていく。なぜ、彼らは自らを傷つけ、他人を害さねばならなかったのか。想像もつかない冷酷な犯罪を犯してしまったのか。損なわれた心は回復できるのか。人との絆は取り戻すことができるのか…。だが、そこに浮かび上がるのは、決して特別な子どもたちだけの問題ではない――。圧倒的な事実の重みと、子どもたちの悲しみが胸をつく、臨床現場からの痛切なメッセージである。【目次】はじめに 社会を映す鏡としての医療少年院/第一章 回避空間の病理/第二章 親という名の十字架――愛情飢餓と命がけの自己アピール/第三章 劣等感に塗れて/第四章 運命を分けるもの――非行発現のメカニズム/第五章 社会が生み出す非行/第六章 壊れた心は取り戻せるのか?/第七章 本当の希望を取り戻すために/おわりに 明るい未来は明るい子ども時代がつくる/参考文献
  • 奇跡の村 地方は「人」で再生する
    4.0
    少子高齢化と人口減少により「地方消滅」が叫ばれて久しい。そんな中、長野県下伊那郡下條村は、全国の自治体関係者から「奇跡の村」と呼ばれている。少子化対策に目覚ましい成果をあげてきたからだ。「陸の孤島」と揶揄される人口約4000人の山村が、1998~2002年の5年間平均出生率で長野県トップを記録。現在でも、全国平均1.43人を上回る1.88人(2013年)と、トップクラスの高い出生率を誇る。その秘密はどこにあるのか? この下條村を中心に、独自の移住促進策で「消滅論」に抗う各地の山村を取材。この先の社会に光を点す、希望のルポルタージュである。【目次】はじめに/第一章 奇跡の村「下條村」/第二章 消滅可能性ナンバーワン? 「南牧村」を訪ねて/第三章 人をつなげる役場職員「旧・藤野町」/おわりに
  • 沖縄戦いまだ終わらず
    4.0
    戦後70年の沈黙を破って、孤児たちが“あの夏”の辛く哀しい記憶を語り始めた。だが、オスプレイ、米軍基地、集団レイプ……沖縄の現状はあの頃と変わっていない。沖縄の叫びはなぜ本土に届かないのか。『僕の島は戦場だった』を改題し、米軍普天間基地の辺野古移設問題が争点だった2014年県知事選挙の原稿を加え、今なお続く“沖縄戦”に迫る。現代日本の歪みを暴く渾身のルポルタージュ。
  • ギュンター・グラス 「渦中」の文学者
    4.0
    小説『ブリキの太鼓』で世界的に知られる、現代ドイツを代表するノーベル文学賞受賞作家ギュンター・グラス。社会民主主義者であり、政治活動も厭わない「行動する作家」でもあるが、自伝的小説『玉ねぎの皮をむきながら』において、かつてナチスの武装親衛隊だったことを告白し、全世界に衝撃を与えた。近年もドイツ社会のタブーともいえるイスラエル批判を行い物議をかもすなど、80歳を超えてなお世界を「翻弄」し続けている。常に「渦中にいる」この大作家の実像を、気概のグラス研究者が明らかにする。【目次】まえがき/第一章 ふるさとを離れることはない<一九二七年から五○年>/第二章 灰色を愛す<一九五○年代>/第三章 コラボレートする<一九六○年代、七○年代>/第四章 真実はそのつど、語り直される<一九八○年代>/第五章 喪失は文学の前提である<一九九○年代>/第六章 想起とは恩寵でもあれば、呪いでもある<二一世紀>/あとがき 渦中にあるということ/ギュンター・グラス略年賦/邦訳作品リスト
  • 妻と最期の十日間
    4.3
    世界各国の紛争地域を取材してきた著者が、最愛の妻をくも膜下出血で亡くすまでの看取りの十日間を記録したノンフィクション。世界中で多くの生と死を見続けてきた著者だったが、迫りくる妻の「死」には、ただひたすら戸惑い、動揺し、取り乱すばかりだった。回復の兆しはなく、意識も戻らぬまま、脳死に陥る妻。著者は、妻の「その瞬間」までを詳細に記録することで、過酷な現実と向き合うことを選ぶ。【目次】プロローグ/第一章 突然の知らせ/第二章 延命/第三章 家族旅行/第四章 日記/第五章 病床の聖餐式/第六章 目の前の事実/第七章 不安/第八章 鳴り始めたアラーム/第九章 二人だけの時間/第十章 桜舞う夜に/エピローグ
  • オリンピックと商業主義
    3.7
    オリンピックをテレビで観戦していると、他のスポーツイベントとは「風景」が違うことに気づく。それは「会場に広告看板がない」からだ。クーベルタンが理想を掲げて創始した近代オリンピックの「格式」は、そのような形で今も守られている。だが舞台裏では、莫大な放映権料やスポンサー料がIOCの懐を潤し、競技自体にまで影響を及ぼすという実態がある。一方で、その資金のおかげで税金の投入が回避され、途上国の選手が参加できるという現実もある。果たして、オリンピックが「商業主義」を実践するのは是なのか非なのか。本書は、五輪礼賛でも金権批判でもないスタンスで、この問題を深く掘り下げる。【目次】序章 三つのロンドンオリンピック/第一章 「商業主義」の起源と歴史/第二章 「商業主義」の弊害とは何か/第三章 五輪マネーは、どのように分配されるのか/おわりに―オリンピックは誰のためにあるのか
  • メジャーリーグ なぜ「儲かる」
    4.0
    イチロー、松井秀喜、松坂大輔ら多くの日本人選手が活躍するメジャーリーグは、過去一〇年余りで収入を四倍超にする急成長を実現し、昨今の経済危機下にあっても順調にビジネスを拡大している。なぜ、そんなことが可能なのか? そのカラクリを、初めて公表される内部資料などを含めて詳細に解説。また、全収入の五%がジャパンマネーという実態や、WBC開催の真の意図など、容赦ないグローバル戦略の全貌に迫る。メジャーリーグはいまや、単なる娯楽ではない。スマートかつ貪欲な「ビジネスエリート」が火花を散らす<戦場>なのである。過去10年で収入を4倍にし、昨今の経済危機下でも順調にビジネスを拡大するメジャーリーグ。その強欲で狡猾な経営戦略に迫る。本邦初公開の内部資料に基づく、興味津々のデータが満載。※この電子書籍は、集英社新書『メジャーリーグ なぜ「儲かる」』2015年3月11日発行の第2刷を底本としています。
  • カストロとゲバラ(インターナショナル新書)
    4.0
    青年弁護士だったカストロが、盟友の医師チェ・ゲバラらと共にキューバ革命を成功に導いてから約六〇年。その間キューバは、アメリカ政府の経済封鎖やカストロ暗殺計画に屈することなく、国民が平等で、教育費・医療費が無料の理想国家を築き上げてきた。キューバ危機という、核戦争の恐怖をも乗り越えた二人の革命家から、我々はいま何を学ぶことができるのか? 現在までのキューバ史を壮大なスケールで描く。
  • 松本清張 「隠蔽と暴露」の作家
    3.5
    社会全体に陰鬱な雰囲気がひろがりつつあるこの時代に、松本清張が再び求められている。本書は清張の表現の核にあった「隠蔽と暴露」の方法をたどる。そして、清張の作品をとおして、わたしたちが日常で感じる社会や国家への「疑い」を称揚し、そこにひそむ秘密を見抜く方法を明らかにする。戦争、明るい戦後、政界、官界、経済界、社会的弱者、宗教など、清張が精力的に描いたテーマは多くあるが、戦後最大の隠蔽装置ともいえる「原子力ムラ」にふみこまなかった清張の謎にも迫る。 【目次】はじめに 松本清張がよみがえる/第I部 松本清張、人と方法/第一章 松本清張とは誰か/第二章 「隠蔽と暴露」という方法/第II部 隠蔽する力に抗う試み/第一章 戦争 『球形の荒野』、『半生の記』、『黒地の絵』/第二章 明るい戦後 『ゼロの焦点』、『砂の器』、『顔』/第三章 政界、官界、経済界 『点と線』、『けものみち』、『黒革の手帖』/第四章 普通の日常、勝者の歴史 『或る「小倉日記」伝』、『父系の指』、『無宿人別帳』/第五章 暗い恋愛 『天城越え』、『波の塔』、『強き蟻』/第六章 オキュパイドジャパン 『小説帝銀事件』、『日本の黒い霧』、『深層海流』/第七章 神々 『黒い福音』、『昭和史発掘』、『神々の乱心』/第八章 原水爆、原子力発電所 『神と野獣の日』、『松本清張カメラ紀行』、「幻の作品」/おわりに 松本清張とともに/主要参考文献
  • ナチスと隕石仏像 SSチベット探検隊とアーリア神話
    3.0
    2012年、「宇宙から来たブッダ」というタイトルで、シュトゥットガルト大学のグループが、学会誌「隕石学と宇宙科学」に論文を発表した。それによると、アーリア民族のルーツ調査のため、かつてナチス親衛隊(SS)長官ヒムラーが、第二次世界大戦前夜の1938年にチベットへ探検隊を派遣した。その折、かれらが発見し、持ち帰った仏像が隕石製であったという、驚くべき鑑定結果が報告された。胸に「卍」が刻まれたこの仏像の真贋と秘められた現代史に、探検隊の踏査行と仏像、ナチス思想を検証することで迫る、アカデミック・ドキュメンタリー。ナチスの闇が、ここに眠る。 【目次】はじめに/第1章 秘境チベットへ派遣されたナチス親衛隊/第2章 「隕石仏像」をめぐる対立する見解/第3章 「隕石仏像」の各パートの考察/第4章 チンガー隕石の入手経路と制作年代/第5章 秘境チベットの隕石信仰、鳥葬、探検家ヘディン/第6章 ヨーロッパの人種主義の生成/第7章 ナチスの人種主義とアーリア神話の成立/第8章 狂信的人種主義者ヒムラー/第9章 ナチスのシンクタンク:アーネンエルベ(ドイツ先史遺産研究所)/終章 第三帝国の最終戦争と人種主義の破綻/おわりに/主要参考文献一覧
  • 名門校「武蔵」で教える東大合格より大事なこと
    3.7
    校内の一等地にやぎがいる。英語の授業で図画工作。おまけに、きのこを見つけたら成績が上がる!? 時代が急速に変わりゆく中、恐ろしいほどのマイペースさで独特の教育哲学を守り続ける名門進学校がある。それが本書の舞台、私立武蔵中学高等学校だ。ときに理解不能と評されることもある、武蔵の教育が目指しているものとはいったい何なのか……。斬新な視点から数々の学校や塾を論じてきた気鋭の教育ジャーナリストが「学校とは何か?」「教育とは何か?」に迫る、笑撃の「学校ルポルタージュ」。 【目次】はじめに/第一章 「ひつじ」になるな「やぎ」になれ!/第二章 目指しているのは“モヤモヤ”を残す授業/第三章 大学受験期に優秀生を海外で一人旅させる/第四章 小惑星探査機「はやぶさ」を生んだ天文台/第五章 現実離れした極論をぶつけ合え!/第六章 時が経つほどに沁みる武蔵の価値/第七章 校長は芸大出身/おわりに/参考文献
  • 十五歳の戦争 陸軍幼年学校「最後の生徒」
    4.0
    昭和20年4月1日。少年・矢島喜八郎、のちの作家・西村京太郎は、エリート将校養成機関「東京陸軍幼年学校」に入学した。8月15日の敗戦までの、短くも濃密な4か月半。「天皇の軍隊」の実像に戸惑い、同級生の遺体を燃やしながら死生観を培い、「本土決戦で楯となれ」という命令に覚悟を決めた――。戦時下の少年は何を見て、何を悟ったのか。そして、戦後の混乱をどのように生き抜いて作家となったのか。本書は、自身の来歴について、著者が初めて書き下ろした自伝的ノンフィクション。いまこそ傾聴したい、戦中派の貴重な証言である。【目次】第一章 十五歳の戦争/第二章 私の戦後――特に昭和二十年(前半は戦争、後半は平和だった時代)/第三章 日本人は戦争に向いていない/主要参考文献
  • マンションは日本人を幸せにするか
    3.5
    「マンション」と呼ばれる鉄筋コンクリート造の集合住宅に日本人が本格的に住み始めて約60年。今や都市部では主流の住形態だ。だが、形あるものはいつかは朽ちる。郊外のニュータウンでは住人の高齢化と共にマンションの老朽化が大きな問題にもなっている。そもそも日本人はなぜマンションに住み始めたのか、分譲マンションの区分所有という権利形態に潜むリスク、高層階に住むことは健康にどう影響するか、など誰も気付かなかった「そもそも論」から、業界の儲けのカラクリ、さらには未来のマンションの風景まで、この道30年の住宅ジャーナリストが、住まう人たちを幸せに導くマンションのあり方を探る。【目次】プロローグ――マンションが日本人にもたらした「正と負」の側面/第一章 マンションは日本人を幸せに導いてきたか?/第二章 マンションの黎明期/第三章 管理組合と民主主義/第四章 儲けるためのマンション/第五章 繰り返される不動産バブル/第六章 マンション、この不完全な住まい/第七章 マンションは日本人の健康を損なうか?/第八章 マンションの未来を拓くために/エピローグ――二つのマンションの奇跡/おわりに
  • たとえ世界が終わっても その先の日本を生きる君たちへ
    4.3
    “イギリスのEU離脱決定”と“ドナルド・トランプのアメリカ大統領当選”を見て、成長と拡大を求め続ける資本主義経済の終焉を確信したという橋本治。資本主義の終わりとは何か? その後を我々はどう生きるべきなのか? 「昭和の終わりと同時に日本経済は飽和した」「貿易なんて西洋人の陰謀に過ぎない」「国民はクビにできないので、企業経営感覚の政治家は容易に差別主義者になる」など、政治や経済といった枠を超えて次世代に語りかけるメッセージ。【目次】まえがき/序章 イギリスのEU離脱を見ながら考えた/第一章 バブルになるとどうなるか/第二章 「ヨーロッパ」という謎を解く/第三章 経済は飽和したら終わるものだ/第四章 バブルを経て「社会」が消えた/第五章 なにを言ってもムダな人たち/第六章 世界が終わった後に/終章 不思議な王子様のモノローグ――私は中学生のときにバブルを見た/あとがき 川喜多研
  • 「火附盗賊改」の正体――幕府と盗賊の三百年戦争
    4.0
    「火附盗賊改」と言えば、“鬼の長谷川平蔵”の名が挙がる。否、正確には長谷川平蔵の名しか挙がらない、とも言える。実際、彼らは町奉行に比べ日陰の立場にあった。だが、強盗・放火といった凶悪犯罪が多発した百万都市・江戸で、火附盗賊改ほど頼りにされた組織はなかった。謎多き存在感と相まって、町人はもちろん武士たちも、畏怖と同時に畏敬の念を抱いたという。本著では、凶悪な盗賊一味との対決を軸に、その誕生から変遷、彼らならではの捕り物、苛烈な詮議の様子、幕臣の中での位置づけ、人情味あふれる素顔まで、豊富な資料をもとに、旗本の中でも武闘派の猛者ぞろいだった火盗改の実像に迫る。【目次】はじめに/第一章 戦国の争乱から「徳川の平和(パクス・トクガワーナ)」へ/第二章 最初の火附盗賊改/第三章 将軍吉宗の江戸/第四章 日本左衛門vs.徳山五兵衛/第五章 二人の長谷川平蔵/第六章 火附盗賊改の行く末/第七章 最後の火附盗賊改/おわりに
  • 非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か
    3.6
    性体験、雇用、加齢、家族……。男性の抱える悩みが今ほどクローズアップされた時代は、過去にないだろう。男はなぜ、今の世を生きづらく感じるのか、根底にある男の「弱さ」、その先に見える「新たな男らしさ」とは? 本書は、客観的な突き放した立場からではなく、男性たちの弱さに寄り添いながら問題と向き合い、たとえ愛されず、承認されずとも、優しく、幸福に生きていく方法を探った全く新しい男性批評である。【目次】第一章 男にとって弱さとは何か?/第二章 男のルサンチマンについて――非モテの品格?/第三章 男のケアと子育てについて――そして父になる、男になる/あとがき
  • 子規と漱石 友情が育んだ写実の近代
    3.5
    1895年。夏目漱石は俳句を教わるという名目で、結核が見つかり意気消沈する正岡子規を松山に呼び寄せた。子規が得意とする俳句を通して、彼を元気づけるために……。第一高等中学の同窓生である2人は、意見を戦わせながら新たな表現を模索した。本書は、そんな「文学者の友情」を描きながら、子規が俳句・短歌に持ち込んだ「写生」概念の成立過程を解説。また、子規が病床で描いた随筆『墨汁一滴』『病床六尺』『仰臥漫録』にも焦点を当て、そこに通底にする写実主義を読み解く。【目次】はじめに/第一章 子規、漱石に出会う/第二章 俳句と和歌の革新へ/第三章 従軍体験と俳句の「写実」/第四章 『歌よみに与ふる書』と「デモクラティック」な言説空間/第五章 「写生文」における空間と時間/第六章 「写生文」としての『叙事文』/第七章 病床生活を写生する『明治三十三年十月十五日記事』/第八章 生き抜くための「活字メディア」/終章 僕ハモーダメニナツテシマツタ/おわりに
  • ジャーナリストはなぜ「戦場」へ行くのか――取材現場からの自己検証
    3.4
    「イスラム国」による後藤健二氏、湯川遥菜氏の人質・殺害事件以降、「そんな危険な所へ行く必要があるのか」という世論に乗じて、政権は露骨な報道統制に踏み出し、メディアは萎縮してしまった。危機感に駆られたジャーナリストたちが、フリーランス、新聞社、通信社、テレビ局など立場や媒体を超えて本書に集結。海外取材の最前線に立ってきた体験を踏まえ、これまでの「事故」をシビアに自己検証し危険回避の具体的方策を提示するとともに、「それでも、誰かが“そこ”へ行かなければならない」と訴える。【目次】第一章 後藤健二氏の人質・殺害事件がもたらした影響 石丸次郎/第二章 ジャーナリストは「戦場」でどう行動したのか(紛争地を抱える中東の事実を見る「目」の役割 川上泰徳/“イスラム国”取材、その一部始終 横田 徹/戦場の人々を見つめるまなざし 玉本英子/通信社の記者は、最後まで残って取材を続ける 及川 仁/テレビの「危険地取材」はどう変わったか 内藤正彦/危険地取材をテレビに売り込む 高世 仁)/第三章 戦争報道を続けるために――過去の事例から学ぶべきこと 綿井健陽/第四章 米国メディアの危険地報道――日本との相違 高橋邦典/第五章 危険地報道とジャーナリスト 土井敏邦
  • 奇食珍食 糞便録
    3.8
    世界には「トイレがない」環境で生きる人々が26億人以上存在すると言われている。タクラマカン砂漠、チベット、パプアニューギニア、シベリア、フォークランド、モルジブなど、世界の辺境を長年めぐってきた著者ならではの視点で、「人間が何を食べ、どう排泄してきたか」をテーマに余すところなく、赤裸々にルポルタージュする。カバー写真はモルジブ、マレの伝統漁法。横木に釣り師が座って魚を狙う。人間の糞が魚のエサに、魚は人間の飯に。これぞ見事な食物連鎖だ。【目次】第一章 世界糞便録/第二章 奇食珍食/最悪なるもの(あとがきにかえて)
  • 誰が「知」を独占するのか ――デジタルアーカイブ戦争
    3.0
    「アーカイブ」とは、従来図書館や博物館が担ってきた、過去の文書や映像・音楽などを収集・公開する仕組み。いわば「知のインフラ」であり、その有効活用によって社会が得られる利益は計り知れない。しかし近年、アーカイブのデジタル化に伴い、これら「情報資産」を巡る国境を越えた覇権争いが激化している。グーグルやアマゾンなどアメリカ発の企業が世界中の情報インフラを掌握しつつある一方で、お粗末極まりないのが日本の現状。本書では世界を巻き込んだ「知の覇権戦争」の最新事情を紹介し、日本独自の情報インフラ整備の必要性を説く。【目次】はじめに/第1章 アーカイブでしのぎを削る欧米/第2章 日本の大規模デジタル化プロジェクトたち/第3章 知のインフラ整備で何が変わるのか/第4章 「ヒト・カネ・著作権」/第5章 最大の障害「孤児作品」/第6章 アーカイブ政策と日本を、どう変えて行くか/あとがき
  • ミツバチ大量死は警告する
    3.3
    ニ一世紀になってにわかに発生した「蜂群崩壊現象」。地球上の様々な場所で同時多発的に大量のミツバチが姿を消したこの現象は、世界中を震撼させた。著者は、日本で実情を探るうち、主要因を突き止める。真犯人に浮上したのは、ハチのみならず生態系全体、さらには人間にとっても脅威となる、戦慄の化学物質だった……。人間の生活環境のみならず、生態系にまで深刻なダメージを与える環境化学物質の実態を詳細にリポートする。【目次】はじめに/序章 ミツバチ一家は完全分業/第一章 ミツバチの墓があちこちに/第二章 なぜミツバチは減り続けるのか/第三章 アメリカのミツバチは疲労困憊/第四章 農業規制に動いたEUの国々/第五章 ネオニコチノイド系農薬の罪と罰/第六章 「農薬安全神話」のまやかし/第七章 生物多様性の宝庫・田んぼの危機/第八章 急増する子どもたちの異変/第九章 広がり、深刻になる健康被害/第十章 「脱・化学物質づけ」への道/あとがき
  • 実録 ドイツで決闘した日本人
    4.1
    驚くべきことにドイツの学生結社は今日でも、鋭い真剣を用いた決闘が一部の学生の間で普通に行われている。一九八○年代初頭にドイツ留学した著者はふとしたことから学生結社に誘われ、そこで決闘を経験する。文豪ゲーテ、哲学者ニーチェ、政治家ビスマルクらはもちろん、現在の政財界を担うドイツのエリートの多くが決闘経験者という事実。本書は、武士道にも通じるゲルマン騎士の「高貴なる野蛮さ」を具現する決闘文化に迫るドキュメントである。【目次】プロローグ/第一章 ドイツの決闘/第二章 決闘の掟/第三章 学生結社の日常/第四章 伝承と継承 高貴なる野蛮/エピローグ/あとがき
  • 司馬遼太郎が描かなかった幕末 松陰・龍馬・晋作の実像
    3.7
    国民的作家として読み継がれている司馬遼太郎。そのあまりの偉大さゆえに、司馬が書いた小説を史実であるかのように受け取る人も少なくない。しかし、ある程度の史実を踏まえているとはいえ、小説には当然ながら大胆な虚構も含まれている。司馬の作品は、どこまでが史実であり、何が創作なのか? 吉田松陰、坂本龍馬、高杉晋作が活躍する司馬遼太郎の名作をひもときながら、幕末・維新史の真相に迫る。【目次】はじめに/第一章 吉田松陰と開国/第二章 晋作と龍馬の出会い/第三章 高杉晋作と騎兵隊/第四章 坂本竜馬と亀山社中/第五章 描かれなかった終末/おわりに
  • 中東民衆革命の真実――エジプト現地レポート
    3.7
    2011年、2月21日、エジプトを30年間統治してきた大統領、ムバーラクが退陣を表明した。それは、5000年にも及ぶアラブの大国の歴史の中で、民衆が初めて自らの手で体制を打倒した瞬間であった。この革命の余波はシリア、リビア、イエメン、サウジアラビアなど中東に広がり、各地で叛乱の火の手があがっている。エジプトで、ムバーラク政権を追い詰めたものはいったい何だったのか。エジプトを軸とする中東の動きを長年観察し、現地取材を続けてきたジャーナリストが、今後の中東情勢を考える。【目次】はじめに/第一章 静かな興奮/第二章 予測を超えた展開/第三章 旧世代の憂鬱/第四章 タハリール共和国/第五章 下支えした既成勢力/第六章 五十四年体制の崩壊/第七章 新しい革命/第八章 青ざめる米国/第九章 不可視の船出/おわりに
  • 千曲川ワインバレー 新しい農業への視点
    3.4
    千曲川流域を活性化させたい、就農希望の若者やワイナリー開設を夢見る人の背中を押したい、という思いから始まったプロジェクト「千曲川ワインバレー」。流域にブドウ畑や新たなワイナリーを集積、更にはそのノウハウを伝授するワインアカデミーを設立するなど、本書では壮大なプロジェクトの全容を明らかにし、そこから見えてきた日本の農業が抱えている問題や展望にも迫る。様々な実践の先にあったのは「縁側カフェ」や「エシカルな生活観光」といった新しいライフスタイルの提案であり、日本農業の可能性だった。【目次】はじめに――いまはじまろうとしていること/第一章 のどの渇く風景/第二章 ワインとサッカーの新時代/第三章 ワイン農家は新人類/第四章 フランス人はなぜワインを飲まなくなったのか/第五章 農業はライフスタイルである/第六章 日本ワインの価値/第七章 ワインのある食卓/第八章 千曲川のほとり/あとがき――すでに動きはじめたこと
  • 女ノマド、一人砂漠に生きる
    3.6
    夫や子どもたちと離れ、たったひとりでラクダを連れてエジプトの砂漠で暮らす女遊牧民サイーダ。著者は、彼女と遊牧生活をともにするなかで、これまで自身で思い描いていた、素朴で自由な“ノマド”像とのギャップに困惑しながらも、彼女のたくましい生命力に惹かれていく。結婚するまでお互いの顔をほとんど見ないという「恋愛」事情や一夫多妻のリアルな内実など、急速に変容するイスラムの社会にあっても、日本とはまったく異なる価値観で力強く生きる一族の女たちを鮮やかに描いた渾身のノンフィクション!【目次】第1部 女ひとりの砂漠/第1章 もうばあさんだから男はいらない/第2章 男がいないと、どうなるか/第3章 祈りがもたらす心の安らぎ/第4章 雨で人も物も流される/第5章 お客さま扱いの頃をすぎて/第2部 うつりかわり/第6章 収入の安定とひきかえに失ったもの/第7章 記憶の彼方の砂漠/第8章 砂漠の民vs町の民/第9章 愛は結婚後/第3部 男と女/第10章 白いハンカチと赤い口紅/第11章 結婚は人生の楽しみの半分/第12章 妻はふたり/第13章 嫉妬と中傷/エピローグ これから
  • 司馬遼太郎の幻想ロマン
    -
    『坂の上の雲』『竜馬がゆく』など大衆的な歴史小説家としての司馬遼太郎はよく知られているところ。また、独特の史観で書かれた数々の評論、随筆も物故後の今も多くの読者を得ている。だが、初期の作品群『ペルシャの幻術師』『戈壁の匈奴』等を読むと、司馬は卓越した幻想小説家であったことがわかる。大衆歴史小説家のイメージとは異なる、司馬のもう一つの作家性に秘められたものとは何だったのか。本書は、司馬遼太郎が遺した爛熟の幻想世界の秘密に初めて迫る評論である。【目次】はじめに/第一章 司馬遼太郎の人と文学の原風景・竹内街道(大道)/第二章 “辺境史観”によって、遠い祖先のルーツをさぐる/第三章 幻想小説(一)―雑密(雑部密教)と役行者/第四章 幻想小説(二)―純密の世界と雑密の世界を映し出す司馬文学の真骨頂/第五章 幻想小説(三)―山伏、忍者、幻術師の関連/第六章 幻想小説(四)―散楽雑伎(戯)と幻想小説のおもしろさ/あとがき/本書関連の司馬遼太郎略年譜
  • よくわかる一神教 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教から世界史をみる
    NEW
    -
    今、世界は第二次世界大戦以来、最も危険な状態だと言われる。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとパレスチナの衝突は、なぜ起こるのか。それを深く知るには、「一神教」の知識が不可欠。本書では、同じエルサレムを聖地とするユダヤ教、キリスト教、イスラム教をめぐる約三千年を追いながら、日本人がわかりにくいと思われるポイントを整理し、質問形式でその起源や地理、歴史を西洋歴史小説の第一人者が解説する。図版満載&明快な構成で世界史入門書としても最適! 文庫版オリジナル書き下ろし「第三部第五章 ウクライナ戦争」も収録!!
  • デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場
    4.1
    両手の指9本を失いながら“七大陸最高峰単独無酸素”登頂を目指した登山家・栗城史多氏。エベレスト登頂をインターネットで生中継することを掲げ、SNS時代の寵児と称賛を受けた。しかし、8度目の挑戦となった2018年5月21日、滑落死。35歳だった。彼はなぜ凍傷で指を失ったあともエベレストに挑み続けたのか? 最後の挑戦に、登れるはずのない最難関のルートを選んだ理由は何だったのか? 滑落死は本当に事故だったのか? そして、彼は何者だったのか? 謎多き人気クライマーの心の内を、綿密な取材で解き明かした第18回開高健ノンフィクション賞受賞作!
  • 獣医師の森への訪問者たち
    3.0
    九州で生まれ北海道の家畜診療所の獣医師となった著者。赴任した60年代、北が自然の情報発信地として注目され始め、研究者や学生の集まる場が必要となる。オホーツク海近くに家を借り“倉庫”と名づけた。倉庫には、キツネ、モモンガなど野生動物から、ユニークな人間たちも来て……。人間と同じように対等に動物とも付き合うを信条とし、旺盛な好奇心とやさしさで大自然を見つめた写真&エッセイ。
  • 平成犬バカ編集部
    4.3
    激動の犬現代史を追う――。平成、それはこの国に多くの“犬バカ”が生まれた時代――。この国の犬たちは、かつて番犬と呼ばれていた。そんな日本の犬たちが、人間社会のなかで存在感を示しはじめたのは、時代が平成になった頃のことだ。新しいペットライフの土台が整い、人間と犬をとりまく環境や価値観が大きく動いた。日本で暮らす飼い主と犬にとって、それは有史以来の大変革期といっても大げさではなかった。雑誌『Shi-Ba』の歩みとともに犬現代史の全貌に迫る。『ゼロ! 熊本市動物愛護センター10年の闘い』『動物翻訳家』の著者が平成最後の戌年に贈る、動物ノンフィクションの集大成!
  • 囚人服のメロスたち 関東大震災と二十四時間の解放
    4.0
    1923年9月1日、巨大な地震が関東を襲った。横浜刑務所の典獄・椎名通蔵はそのとき、倒壊する建物に身を置く囚人たちの安全のため、世界初の完全開放処遇を決断した。条件は一つ、24時間以内に再び戻ってくること──。彼らの帰りを信じる看守とそれに応える柿色の服を纏う者たちの厚い信頼関係と、未曽有の災害に直面してなお人間らしさを貫いた人びとの姿を描く感動のノンフィクションノベル。
  • 争うは本意ならねど 日本サッカーを救った我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール
    4.8
    我那覇和樹を襲った、日本サッカー史上最悪の冤罪事件。沖縄出身者として初の日本代表入りを果たした彼のキャリアは、権力者の認識不足と理不尽な姿勢により暗転した。チームやリーグと争いたいわけではない。ただ、正当な医療行為が許されない状況を何とかしなければ。これは一人の選手と彼を支える人々が、日本サッカーの未来を救った苦闘の記録である。覚悟と信念が宿るノンフィクション。
  • マラス 暴力に支配される少年たち
    3.5
    中米にはびこる凶悪なギャング団「マラス」。主力メンバーは、全身にタトゥーを入れ、殺人や恐喝、麻薬取引などの犯罪に手を染めている。しかし、そこに関わる者の多くが、実はごく普通の青年だ。悪行の数々は、極貧のもと、親に守られず居場所を失い、追い詰められるなかでみつけた“生きる術”にすぎない。残虐性ばかりが強調されてきた彼らの真の姿に迫る第14回開高健ノンフィクション賞受賞作。
  • 根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男
    4.4
    野球選手としては三流、監督としては二流、でもゼネラルマネージャーとしては天下無双―昭和から平成の野球界を支え続けた男、根本陸夫。広すぎる人脈と卓越した洞察力を武器に、低迷していたカープ、ライオンズ、ホークスを変革し、黄金時代を築いた。王貞治、衣笠祥雄、工藤公康らの証言をもとに、今も語り継がれる“球界の寝業師”に迫る。この一冊で日本プロ野球史の表も裏も全て分かる!
  • 孤高 国語学者大野晋の生涯
    4.5
    名著『日本語練習帳』の著者で国語学の巨人・大野晋は、その研究に八十八年の人生を捧げた。東京下町に生まれ、小学校の時に父親から『広辞林』と『字源』を与えられ、大戦下、一高から東京帝国大学に学ぶ。還暦を過ぎてから発表した「日本語の起源はタミル語」であるという研究は、学界論争を巻き起こす。司馬遼太郎をして「抜き身の刀」と言わしめた大野晋の波瀾万丈の生涯を描いた傑作評伝。
  • 白い土地 ルポ 福島「帰還困難区域」とその周辺
    5.0
    「どうしても後世に伝えて欲しいことがあります」原発事故の最前線で陣頭指揮を執った福島県浪江町の「闘う町長」は、死の直前、ある「秘密」を新聞記者に託した――。娘を探し続ける父親、馬に青春をかける高校生、名門野球部を未来につなぐために立ち上がったOB、避難指示解除後たった一人で新聞配達を続ける青年、そして帰還困難区域で厳しい判断を迫られる町長たち……。開高健賞受賞記者が原発被災地に3年半住み込んで記した震災ルポルタージュ。第2回ジャーナリズムXアワード(Y賞)受賞。
  • 1974年のサマークリスマス 林美雄とパックインミュージックの時代
    3.0
    誰しも忘れられない青春時代がある。1974年、若者にとって、アナウンサー・林美雄はサブカルチャーの水先案内人だった。久米宏の同期としてTBSに入社しながら、圧倒的に水をあけられてしまった林は、深夜ラジオのパーソナリティとして自らの道を見いだした。松任谷由実、石川セリ、野田秀樹、タモリ……きらめく才能たちもまた林に光見いだされ、世に羽ばたいていく。若者の心を揺さぶり続けたアナウンサー林美雄の評伝。
  • 人生にとって挫折とは何か
    -
    女性トップアナウンサーからフリーのキャスターへ転身、文筆活動ではベストセラーを上梓。常勝街道を突き進んで来たかに見える人生は、しかし挫折の繰り返しであった……。失意、諦め、後悔。挫折に伴う痛みと無縁の者はいない。苦い思いは後を引き、老いてなお人生の後ろ髪を引く……。人生の終盤まで誰もが引きずりがちな挫折を克服し人生の彩りへと昇華する、著者ならではの極上の哲学を披歴する。
  • 敗者の想像力
    4.2
    1945年、日本は戦争に負け、他国に占領された。それから四半世紀。私たちはこの有史以来未曽有の経験を、正面から受け止め、血肉化、思想化してきただろうか。日本の「戦後」認識にラディカルな一石を投じ、90年代の論壇を席巻したベストセラー『敗戦後論』から20年。戦争に敗れた日本が育んだ「想像力」を切り口に、敗北を礎石に据えた新たな戦後論を提示する。本書は、山口昌男、大江健三郎といった硬派な書き手から、カズオ・イシグロ、宮崎駿などの話題作までを射程に入れた、21世紀を占う画期的な論考である。【目次】まえがき/はじめに 想像力にも天地があること――小津安二郎、『敗北の文化』、カズオ・イシグロ/第一部 敗者の日本/第一章 私たちが被占領民だったころ――W・G・ゼーバルト、林達夫、朴泰遠/第二章 占領下の文学――第三の新人、曽野綾子、大江健三郎、目取真俊/第三章 ゴジラは死んで、どこに行くのか?――本多猪四郎、R・エメリッヒ、G・エドワーズ/幕間 シン・ゴジラ論(ネタバレ注意)――庵野秀明/第二部 敗者の戦後/第四章 低エントロピーと「せり下げ」――山口昌男と多田道太郎/第五章 世界の奴隷として考えること――吉本隆明と鶴見俊輔/第六章 「成長」なんて怖くない――宮崎駿と手塚治虫/第七章 大江健三郎の晩年/終わりに 『水死』のほうへ――大江健三郎と沖縄/あとがき
  • 橋を架ける者たち――在日サッカー選手の群像
    3.8
    吹き荒れるヘイトスピーチ、嫌韓反中本の数々……。後押しするかのように、行政もまた朝鮮学校へ相次ぐ差別的な措置を下している。しかし、我々はそこに生きる、ひたむきに何かに打ち込む若者の物語に耳を傾けたことがあっただろうか。強豪として知られる朝鮮高校蹴球部出身の安英学(アンヨンハ)、梁勇基(リャンヨンギ)、鄭大世(チョンテセ)……。スーパープレーヤーたちの物語から、彼らを取り囲む日本社会の今が見えてくる。サッカーで、差別は乗り越えられるのか。マイノリティに光を当て、選手たちの足跡を描ききった魂のノンフィクション。【目次】第一章 イマジン 安英学(アンヨンハ)の軌跡/第二章 「国境」を越える安英学/第三章 誠実なるファンタジスタ 梁勇基(リャンヨンギ)・疾走する人間ブルドーザー鄭大世(チョンテセ)/第四章 帰国運動を巡って刻んだ双曲線 キム・ミョンシクとリ・ドンギュウ/第五章 突破する詩人 理事長リ・ガンホン/第六章 レイシズムに抗う 李普鉉(リーボヒョン)/第七章 CONIFAワールドフットボール・カップ1/第八章 日本人オンリー/第九章 CONIFAワールドフットボール・カップ2/エピローグ
  • 蹴る群れ
    -
    エディンは戦争の子だよ――。現在イングランドプレミアリーグのマンチェスターシティで活躍するジェコについて父はそう語った。当時6歳だった彼は、サラエボ包囲戦下で狙撃の脅威に晒されながらサッカーを学んだという。戦争や天災など、様々な困難に直面しながら、人々はなぜボールを蹴るのか。選手や指導者として世界中でサッカーに携わる19人の声に耳を傾けた魂のノンフィクション。ボスニア・ヘルツェゴビナ代表選手・ジェコのインタビューを収録。
  • 鯨人
    3.8
    インドネシア東ヌサテンガラ州に属するレンバタ島のラマレラ村は、銛一本で鯨を仕留める伝統捕鯨で知られている。写真家である著者は約19年にわたりこの村の様子を取材。世界最大の生物に挑む誇り高き鯨人達の姿と、村の営みに深く根ざす捕鯨文化の詳細を記録し、ついには捕鯨の水中撮影を敢行する。だが、この村にもまた、グローバリゼーションの波は押し寄せていた……。岐路に立つラマレラ村とその捕鯨文化を雄渾に活写する、比類なきネイチャー・ドキュメンタリー。【目次】プロローグ/第一章 鯨の島へ/第二章 鯨漁に挑戦/第三章 再挑戦/第四章 鯨漁撮影/第五章 陸の物語/第六章 鯨の眼/エピローグ
  • 沈みゆく大国 アメリカ
    3.9
    「1%の超・富裕層」が仕掛けた「オバマケア」で、アメリカ医療は完全崩壊! 次なるターゲットは、日本だ! 鳴り物入りで始まった医療保険制度改革「オバマケア」は、恐るべき悲劇をアメリカ社会にもたらした。「がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用」「高齢者は高額手術より痛み止めでOK」「一粒10万円の薬」「自殺率一位は医師」「手厚く治療すると罰金、やらずに死ねば遺族から訴訟」。これらは、フィクションではない。すべて、超大国で進行中の現実なのだ。石油、農業、食、教育、金融の領域を蝕んできた「1%の超・富裕層」たちによる国家解体ゲーム。その最終章は、人類の生存と幸福に直結する「医療」の分野だった! 本書は、稀代のアメリカウォッチャーである著者が、完全崩壊した米国医療の実態とその背景を、入念な取材により炙り出した渾身のノンフィクションである。 ■主な内容 ・「がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用」 ・「自己破産理由のトップは医療費」 ・「夢から覚めたら保険料が二倍に」 ・「一粒10万円の薬」 ・「高齢者医療費は三分の一にカット」 ・「自殺率トップは医師」 ・「手厚く治療すると罰金、やらずに死ねば遺族から訴訟」 ・「安い早い! ウォルマートがあなたの主治医になります」 ■目次 はじめに 父の遺言 序章 「1%の超・富裕層」たちの新たなゲーム 第一章 ついに無保険者が保険に入れた! 第二章 アメリカから医師が消える 第三章 リーマンショックからオバマケアへ 第四章 次のターゲットは日本
  • 考えて生きる 合理性と好奇心を併せもつ
    4.3
    SNS時代の情報収集術、メタバースやNFTの今後。ウクライナ戦争後の世界の行方、核融合技術と原発。自分が今35歳のサラリーマンだったら?社債転換型トークン、“安い国”日本の可能性。自分の頭で考えるためには?会話の最中に意識していることは?…などなど、現在進行形にして普遍性のあるテーマを語りあいつつ、それぞれの「考え方」「読み方」「話し方」まで披露。どうにも知的雑談が足りないコロナ時代に、「頂上の雑談」をお届けします。
  • 黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い
    4.3
    落選また落選! 供託金没収! それでもくじけずに再挑戦! 選挙の魔力に取り憑かれた泡沫候補(=無頼系独立候補)たちの「独自の戦い」を追い続けた20年間の記録。第一章では今、日本で最も有名な「無頼系独立候補」、スマイル党総裁・マック赤坂への10年に及ぶ密着取材報告。第二章では公職選挙法の問題、大手メディアの姿勢など、“平等”な選挙が行なわれない理由と、それに対して著者が実践したアイデアを。第三章では2016年東京都知事選挙における「主要3候補以外の18候補」の戦いをレポート。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作。
  • 「地元チーム」がある幸福 スポーツと地方分権
    2.8
    私たちの人生を本当に豊かにするのは、「遠くのオリンピック」ではなく、「近くのチーム」である! 野球、サッカー、バスケット……スポーツの世界は一極集中から地方展開へ! かつては、「地元にプロスポーツチームがある」のは大都市圏に限られていた。ところが現在では、全国ほぼすべての都道府県に「地元を本拠地とするプロスポーツチーム」(野球、サッカー、バスケット、アイスホッケーなど)が存在する。この画期的な状況は、何を物語るのか。格差研究など、経済データに基づく社会分析の第一人者が、「中央集権から地方分権へ」という日本社会のキーワードに重ね合わせつつ、その意義を多方面から分析する。
  • 「国連式」世界で戦う仕事術
    4.0
    欧州と中東の国連機関を渡り歩き、世界の難民保護に深く関わってきた著者は、シビアな競争社会でもあった二八年間のキャリアを通じ、自己の価値を高め、ポジションを上げながら、世界の公益に貢献するプロジェクトを実現させてきた。曰く、きわめて政治的な組織でもあった国連を生き抜く支えとなったのは、「世界で困っている人の役に立ちたい」という信念だった。本書は、世界に伍して<戦った>著者の仕事術と生き方論である。グローバル社会を生きるために必要な力、知恵とは何か。次代の日本人に有用な技術や視点を提供する。[国連パワーエリートの仕事と生き方の流儀]○人の役に立つために、まずは自分を知る○与えられた仕事を超える○最初の100日で成果を出す○上司を管理する○組織内の紛争からアイディアは生まれる○権力の行使を恐れないetc.
  • 沈みゆく大国 アメリカ 〈逃げ切れ!日本の医療〉
    4.2
    あなたは盲腸手術に200万円払えますか? 「医療への市場原理導入を防げ! あらためて国民皆保険の素晴らしさを啓発する良書」 日本医師会今村聡副会長推薦! リーマンショック以降、ますます巨大化するウォール街と多国籍企業群の最強タッグ。彼らが次に狙うのは、一〇〇兆円規模の日本の医療・介護ビジネスだ。世界が絶賛する〈国民皆保険〉に私たちが無関心でいるすきに、他国を次々に食い物にしてきた、強欲資本主義の魔の手がじわじわとのびる。急速に高齢化する日本は、世界規模のマネーゲームから逃げ切る事ができるのか? 気鋭のアメリカウォッチャーが、綿密な現場取材と膨大な資料を通し書き下ろした、待望の緊急出版。ベストセラー『沈みゆく大国 アメリカ』に続く驚愕の姉妹編! ■主な内容 ・「世界最速で高齢化する日本は、投資家たちのドリームランド」 ・「ヒトラーのやり方に学べ~経済財政諮問会議」 ・「超高速な新薬承認のウラ」 ・「国民皆保険は邪魔だからなくせ!(by アメリカ)」 ・「TPPより怖いTiSAって何?」 ・「お年寄りは早く死んでね(後期高齢者医療制度)」 ・「給料安くて介護職員が辞める? じゃあ外国人で!」 ・「高齢化が医療を破綻させるは、ウソ? ホント?」 ・「何が医療費を押し上げているのか?」 ・「医師は足りている? 余っている?」 ・「給食で医療費を下げる!」 ・「国の責任転嫁を逆手にとろう」 ・「総理、医療を成長産業にしましょう!」 ■目次 序章 「臨終」の格差 第一章 オバマもびっくり! こんなにアメリカ化していた日本医療 第二章 (株)アメリカに学ぶ、大衆のだまし方 第三章 マネーゲームから逃げ出すアメリカ人 第四章 逃げ切れ! 日本
  • 『五足の靴』をゆく 明治の修学旅行
    3.0
    明治40年夏、与謝野鉄幹が北原白秋、木下杢太郎、平野萬里、吉井勇の若き四詩人を連れて九州を旅した。「五人づれ」という連名で「東京二六新聞」に連載された紀行文『五足の靴』には、その後活躍する詩人たちの才能の萌芽を見ることができる。2018年に世界遺産に指定された長崎、天草の地も踏んでいた彼らの足跡を、森まゆみが10年以上かけて歩き、追体験した詩情と旅情あふれるノンフィクションは、知られざる名著の解説書、歴史を体感できる旅へと誘う極上のガイドブックでもある。世界遺産(文化遺産)「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を巡る付録つき。
  • 毒親と絶縁する
    3.8
    「教育虐待」とは何か? 気鋭の若手評論家として活躍する著者が、なぜ両親との「絶縁」を宣言せざるを得なかったのか? 高校一年の冬に発症以来、現在まで続いている「パニック障害」の恐怖。それを引き起こした原因ともいえる、「教育」の美名のもとでの両親による「教育虐待」。そして結婚を機に両親との過去に正面から向き合おうとした結果、「絶縁」という選択に至った結末……。自らの半生をつまびらかにする衝撃の告白は、著者と同様の体験を持つ読者に向けて、逃げ方と戦い方の範を示す。
  • 音楽が聴けなくなる日
    4.3
    電気グルーヴのピエール瀧が麻薬取締法違反容疑で逮捕された翌日、レコード会社はすべての音源・映像の出荷停止、在庫回収、配信停止を発表した。近年ミュージシャンの薬物事件ではこのような対応が即座になされ、また強化されてきたが、その「自粛」は何のため、誰のためのものだろうか? こうした「自粛」に異を唱える著者たちがそれぞれの立場から問題の背景と構造を明らかにし、現代社会における「音楽」「薬物」「自粛」の在り方について考察を深めていく一冊。巻末の音楽自粛小史は必見。
  • 水道、再び公営化! 欧州・水の闘いから日本が学ぶこと
    4.1
    水道民営化とは、地域窮乏化政策だ! 欧州の水道再公営化運動が生んだ、新たな民主主義から学び、日本の水道を、グローバル資本から守る。一九八〇年代以降、民営化路線を歩んできた欧州の水道事業。しかし杜撰な管理や財務の問題にスポットがあたり、再び、水道を公営化に戻そうという大きな流れが市民運動を起点に巻き起こっている。昨今、注目されている欧州の左派ポピュリズムのうねりの中核は、実は「水道の再公営化」を求める権利運動だったのだ。水は、人々の共有財・公共財<コモン>である。資本が利潤をあげるための対象として水を扱えば、たちまちその地域は窮乏化していく。民営化で疲弊した欧州の人々の怒りが地方自治体を動かし、「ミュニシパリズム」や「フィアレス・シティ(恐れぬ自治体)」など、新しい民主主義の形を作り出しているのだ。その成果である、水道事業の再公営化はなんと178件。水を再び自分たちのものへと取り戻す欧州の運動から日本が学び、各自治体において民営化をストップさせるにはどうすればいいのか。日本人でありながら、欧州・民主主義の最前線に立つ著者が、日本再生のためのカギを明かす。
  • 言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか
    4.0
    2018年、M-1審査員として名を轟かせた芸人が漫才を徹底解剖。M-1チャンピオンになれなかった塙だからこそ分かる歴代王者のストロングポイント、M-1必勝法とは? 「ツッコミ全盛時代」「関東芸人の強み」「フリートーク」などのトピックから「ヤホー漫才」誕生秘話まで、“絶対漫才感”の持ち主が存分に吠える。どうしてウケるのかだけを40年以上考え続けてきた、「笑い脳」に侵された男がたどりついた現代漫才論とは? 漫才師の聖典とも呼ばれるDVD『紳竜の研究』に続く令和時代の漫才バイブル、ここに誕生!
  • 国家の統計破壊(インターナショナル新書)
    5.0
    第二次安倍政権の発足以降、わかっているだけでも53件の統計手法が見直され、そのうち38件がGDPに影響を及ぼしている。賃金や消費などの基幹統計は、国民生活と密接に結びついたものである。手法の変更によりかさ上げされた数字では連続性がなく、もはや統計の意味をなさない。これは「統計破壊」と呼ぶべき異常事態である。この問題をいち早く追及し国会でも公述した著者が、公的データをもとに統計破壊の実態を暴く。
  • 戦後最大の偽書事件 「東日流外三郡誌」
    4.0
    青森県五所川原市にある一軒の農家の屋根裏から、膨大な数の古文書が発見された。当初は新たな古代文明の存在に熱狂する地元。ところが1992年の訴訟をきっかけに、その真偽を問う一大論争が巻き起こった。この「東日流外三郡誌」を巡る戦後最大の偽書事件を、東奥日報の一人の青年記者が綿密な取材を重ね、偽書である証拠を突き付けていく──。事件後見えてきた新たな考察を加えた迫真のルポ。
  • 日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族
    -
    義を貫き、日本の名誉を守り抜いた男がいた。第二次大戦中、中国でスパイとして暗躍した深谷義治。終戦後も潜伏し続けたが、当局に逮捕され、中国最悪の上海監獄へ収監された。その月日は、20年以上。残酷な拷問を受け続け、幾度も生死をさまよい、それでも祖国や家族のために完全黙秘を貫いた。彼の不屈の信念を支えたものは、いったい何だったのか。戦争の傷跡をえぐる壮絶なノンフィクション。
  • ラ・ロシュフーコー公爵傳説
    -
    「太陽も死もじっと見詰めることは出来ない」(『マキシム』)17世紀のモラリスト、ラ・ロシュフーコー。深く鋭いシニカルな人間洞察から生まれたその著書、『マキシム(箴言集)』は、今日まで広く読み継がれている。争乱の世紀に名門貴族として生まれ、戦闘と陰謀と恋愛に明け暮れた彼が、なぜ厭世的な思想を持つにいたったか? 波乱の生涯を、文明と歴史を軸に描く評伝小説。
  • カミュ伝(インターナショナル新書)
    4.0
    コロナ禍において再び大きな反響を呼んだ小説『ペスト』の作者アルベール・カミュ。彼のアルジェリアでの生い立ちから、パリでのレジスタンス活動、『異邦人』『ペスト』など代表作の執筆過程、プレイボーイとしての華麗なる女性遍歴、サルトルとの論争、ノーベル文学賞受賞の経緯、自動車事故という悲劇的な最期など、波瀾に満ちた生涯と思想・哲学にせまる。フランスを代表する作家の決定版的評伝。
  • 線量計と奥の細道
    3.8
    東日本大震災の翌年。著者は放射線量計を携え、芭蕉の『奥の細道』全行程約二千キロを辿る旅に出た。折り畳み自転車を漕いで行き、時には列車や車も利用。津波被害や放射性物質汚染を被った地域では、無言の奮闘を続ける人々に出会う。三百年前の俳諧紀行に思いを馳せつつ、放射線量を測って進む旅。被曝に怯えと逡巡や葛藤を抱きながら、“生きる”を考えた魂の記録。日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
  • 忘れじの外国人レスラー伝
    4.2
    カール・ゴッチ、ザ・デストロイヤー、アンドレ・ザ・ジャイアント、ビル・ロビンソン、ダイナマイト・キッド、テリー・ゴーディ、スティーブ・ウィリアムス、バンバン・ビガロ、ビッグバン・ベイダー、ロード・ウォリアー・ホーク――。昭和から平成の前半にかけて活躍し、今はもう永遠にリング上での姿を見ることが叶わない伝説の外国人レスラー10人。本書は今だから明かせるオフ・ザ・リングでの取材秘話を交え、彼らの黄金時代はもちろんのこと、知られざる晩年、最期までの「光と影」を綴る。
  • 戦国、まずい飯!(インターナショナル新書)
    4.0
    あの時、あの武将はいったい何を食べていた? 薄味を供した料理人を殺せと命じた信長、糠(ぬか)味噌汁を残して叱られた井伊直政、逃避行中に雑草を食べた真田信之、生米は水に浸してから食べよと心づかいする家康……。歴史小説家である著者が、さまざまな文献から戦国の食にまつわる面白いエピソードを紹介。さらに文献に登場する料理を再現し、実食する。果たしてその味は……。どれだけまずいのか!? 食を通して、当時の暮らしぶりを知り、戦国の世と先人たちに思いを馳せる。
  • 美意識の値段
    3.6
    クリスティーズは世界二大オークション・ハウスのひとつ。その日本法人の社長である著者は、長年東洋美術部門インターナショナル・ディレクターをつとめ、日本美術のスペシャリストとして多くの美術品と出会い、オークションを通じて、作品の橋渡しをしてきた。本書は、オークションを取り巻く個性あふれる関係者、セールでの駆け引きはもちろん、美術品との数奇な出会い、真贋の見分け方、「歴史の一部」を預かるトップコレクター達の誇り、そして欧米でのオークション・ハウスと人々の関係等の逸話を紹介。そして日本美術への想いを通して、アートと共にある生活を提案し、美意識の磨き方とそれをビジネスや人生に活かす視点を示す。◆推薦◆○掛け値なしに、「面白い!」と断言できる本。美術館に飛んでいって、是非とも本物を見たい!という気持ちにさせられる。――平野啓一郎氏(小説家) ○美術とマネーは動的平衡。伝運慶作の仏像を日本古美術市場最高額でオークション取引成立させたのがこの著者。絶対に面白い本――福岡伸一氏・大推薦(『動的平衡』著者)
  • 国家と記録 政府はなぜ公文書を隠すのか?
    4.0
    公文書は歴史の記述に不可欠であり、後世の政策選択のためにも参照されるべき国民共有の知的資源。そして、国民の知る権利や行政の説明責任を担保するものです。このような理由から公文書管理法は制定されましたが、この数年来、その法の精神を裏切るように、皇室会議の議事録未作成、自衛隊日報の隠蔽、統計偽装問題が起き、森友・加計問題等、公文書が意図的に記録されず、隠蔽、改竄される事態が続発しています。情報公開法と公文書管理法があるにも関わらず政府が公文書を恣意的に作成せず、破棄したり、隠したりする理由は何なのでしょうか。本書はこの問題を概観し、あるべき公文書管理体制を展望します。◆主なトピック◆◎政府の統計がおかしい◎金融庁報告書問題◎新自由主義時代の情報公開と公文書管理制度◎公文書管理法はなぜ骨抜きにされるのか◎森友学園問題の再燃◎文書「改竄」と民主主義の危機◎文書主義と公文書管理法◎イラク日報問題に見る公文書管理の歪み◎加計問題に見る公文書公開のあり方◎皇室会議の議事録未作成◎電子メールは行政文書か◎対談 情報公開と公文書管理の制度をどう機能させるか 三木由希子氏(特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス理事長)
  • 新版 悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記
    5.0
    クロアチアの準優勝が世界を驚かせた2018年サッカーW杯ロシア大会。スイス対セルビア戦でコソボ移民の二人が見せた「鷲のポーズ」。さかのぼること20年、1999年のNATOによるユーゴ空爆にその端緒を探ることができる。当時、著者が身の危険を顧みず「世界の悪者」とされた旧ユーゴ紛争地を歩き、直に触れたすべてを綴った貴重な記録。執筆当時から現在までの空白を繋ぐ追章を加えた新版。
  • アルキメデスの驚異の発想法 数学と軍事(インターナショナル新書)
    -
    天才的な数理科学者として広く知られているアルキメデス。小学校の算数の教科書では円周率がおよそ3.14であることを初めて発見した人物として紹介され、中学校の理科の教科書では、「浮力に関する法則」の項で「アルキメデスの原理」が説明されている。果たして「アルキメデス」とはどのような人物だったのだろうか。本書ではその生涯を追いながら、古代ギリシア思想におけるさまざまな制約下で、発想を形として実現させたアルキメデスの凄さを再発見する。
  • 香港デモ戦記
    4.1
    逃亡犯条例反対に端を発した香港デモは過激さを窮め、選挙での民主派勝利、コロナウィルス騒動を経てなお、混迷の度合いを深めている。お気に入りのアイドルソングで気持ちを高める「勇武派」のオタク青年、ノースリーブの腕にサランラップを巻いて催涙ガスから「お肌を守る」少女たち……。リーダーは存在せずネットで繋がり、誰かのアイデアをフラッシュモブ的に実行する香港デモ。ブルース・リーの言葉「水になれ」を合い言葉に形を変え続ける、二一世紀最大の市民運動の現場を活写する。「諦めないでください。手にしている一票を軽んじないでください。個人の力を軽んじないでください。生きている心は誰かを動かせるから。諦めないで努力し続けていけば、いつか必ず成果を得られると、私は信じています。(中略)私には仲間がいます。この戦いは、一人ではなく、仲間がいるから続けられる。それは、香港衆志の仲間、民主派の仲間だけでなく、日本から応援してくれる人も含みます。そんな仲間がいる限り、香港の民主化、市民の権利のために、戦い続けたいと思います。」〈周庭(アグネス・チョウ)、本文より〉
  • 堕ちた英雄 「独裁者」ムガベの37年
    3.8
    事実上のクーデターによる辞任から、わずか2年で急逝した前ジンバブエ大統領、ムガベ。マンデラになれなかった男の実相に迫る。人種差別闘争の闘士から、腐敗した権力者に、そして最後は41歳差の妻の暴走をとめられず体制転覆、異国の地でひっそりと息を引き取った。世界史上、独裁政権は枚挙に暇がないが、これほど絵に描いたような軌跡を辿った「独裁者」は類例を見ないだろう。超長期政権、容赦ない粛清、ハイパーインフレ。名だたる独裁者のなかでもジンバブエの元大統領、ムガベの特異性は際立つ。英雄はなぜ、独裁者となったのか。盤石の体制はなぜ、唐突な終焉を迎えたのか。徹底取材でその世界史的意味を探った、最強の独裁者を追うノンフィクション。
  • 自己検証・危険地報道
    -
    3年4カ月の拘束から得た「教訓」とは? シリアで3年4カ月にわたって拘束された安田純平。本書は、安田と、彼の救出をめぐって苦悩したジャーナリストたちが、このような事態で何をすべきだったか、家族やメディアへの対応は適切だったか、そして、ジャーナリストの仕事について政府や社会にどう訴えていけばいいのか……など、危険地報道をめぐる課題について「本音で」討議した自己検証本である。安田本人による、2002年のアフガニスタンから15年のシリアに至る取材活動の「総括」も収録。◆危険地の現場を取材することの意義は本書でも多くの執筆者が触れており、言を俟ちません。具体的に実行するにあたって、今回の私や家族が経験したものが役に立ち、危険地においてよい仕事をする人が増えていってくれたらありがたいです。――安田純平(本文より)
  • ルポ 戦場出稼ぎ労働者
    3.6
    世界中から集められる、貧しい派遣労働者たち! 自ら出稼ぎ労働者となり、単独潜入取材した記録! 民営化の果て、その現場とは? 現代の民営化が進む戦争では、世界中の貧しい人々が集められ、基地や建設現場などの危険地帯に派遣され、労働者として働いている。こうした出稼ぎ労働者なしでは、もはや軍事的なオペレーションは、成立し得ないのだ。著者は自ら出稼ぎ労働者となり、イラク軍基地訓練施設に単独で潜入した。グローバル化世界における、世界の貧困を前提にした戦争ビジネス、その実態に迫った貴重なルポルタージュ。 【目次】はじめに/第一章 イラク戦場労働への道/第二章 戦場労働の心得/第三章 戦場の料理人/第四章 戦火の中で/第五章 戦場で働くということ/おわりに
  • 中国人のこころ 「ことば」からみる思考と感覚
    3.3
    日本人「あなたたちは、いま何時だかわかっているのか!?」 中国人「……夜の2時半です」。日本人バスガイドさん「皆さま、お疲れ様でした」 中国人観光客「いえ、私は別に疲れていません……」。「噛み合わない」やり取りは、今日もまたどこかの日本人と中国人との間で交わされているに違いない。それではなぜ、こうした誤解やすれ違いが生じてしまうことになるのだろうか? その答えのカギは、日本語と中国語のそれぞれの「ことば」がもつ特質と、それぞれの発想法の違いにあるのだという。本書は、30年以上にわたり中国語を研究してきた著者が「言語」を切り口にして、日本との比較を行いながら中国人に特有の思考様式や価値観について分析・紹介した、思わず笑える知識が満載のユーモア溢れる言語文化論である。グローバル化が進み、中国人との日々の接点が増えている現代日本人にとって、必読の一冊だ。【目次】序章 「ことば」は人を造り、人を現す/第1章 対話における反応──聞き手はどう対応しているか?/第2章 人間関係とコミュニケーション──「挨拶」について考える/第3章 中国語の伝達機能と受信感覚──「意味」による呪縛/第4章 中国人の価値観──現実世界の認識と行動の規範/第5章 言語システムに侵食する思考と感覚──法則の背景に存在するもの/あとがき──「ことば」は「思惟・感覚」を支配する
  • 羽生結弦を生んだ男 都築章一郎の道程
    5.0
    都築は羽生に言った。「挑戦をしなさい」「未知の世界に向かいなさい」そして、こう言い続けた。「芸術家になりなさい」。オリンピック連覇を果たした羽生結弦。幼き日の羽生を見出し、徹底的に基礎を教え続けたコーチが都築章一郎だ。五〇年以上にわたり日本フィギュアスケートの発展に貢献してきた名伯楽は、現在も精力的に多くのスケーターに指導を続けている。都築が若き日に、フィギュアスケートの手本としたのが芸術大国ロシアだった。私財をなげうち、日本のフィギュア界の礎のために世界を奔走してきた生き様、そして知られざる日露文化交流史をも描く!
  • 勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇
    4.7
    2006年夏、甲子園決勝再試合に日本中が沸いた。早実VS駒大苫小牧。しかも駒大は、北海道勢初の全国制覇を成し遂げて以降負け知らず、前人未到の三連覇に王手を掛けていた。チームを率いるのは35歳の香田誉士史。輝かしい実績とは裏腹に、何が彼を満身創痍に追い込み、表舞台から引き摺り下ろしたのか。高校野球史上最も有名な監督を追った渾身作。第39回講談社ノンフィクション賞受賞作。
  • 明治の説得王・末松謙澄 言葉で日露戦争を勝利に導いた男(インターナショナル新書)
    3.5
    言葉で日本を創り、日本を守った男がいる。末松謙澄(すえまつ けんちょう)、福岡県行橋市に、日本がアメリカと不平等条約を結んだ翌年(1855年)に生まれた。日本をどんな国にするのか――政治家として、また多才な文化人として、西郷隆盛への降伏勧告状、大日本帝国憲法、下関条約の締結文の草案を書き、明治維新史『防長回天史』を編纂。日露戦争では日英同盟の強化などにより日本の窮地を救い、近代日本の礎を作った。謙澄の作った道を今の私たちは歩いている。彼は何を目指し、何をしたのか――世界を舞台に活躍し日本の国際化と近代化に果たした謙澄の足跡を辿る。
  • 性風俗シングルマザー 地方都市における女性と子どもの貧困
    3.6
    「彼女たちは、なぜ、その仕事をやめられないのか?」経済的困窮におかれたシングルマザーの中で、デリヘルなどの性風俗店で働く人たちが増えている。首都圏に比べて賃金も低い、働き口も少ない、行政の公的サービスも十分でないという地方都市において、「性風俗シングルマザー」はどのように仕事と育児をこなし、貧困から脱出しようともがいているのか? 地方都市で困難な状況に直面する彼女たちと社会福祉をつなげようと、性風俗店での無料法律相談を実施する著者が、現場の声を丹念に拾いつつ、単なるルポの枠を超えて、具体的な問題解決策まで提案する。【主な内容】・子供たちがひしめきあう託児所 ・風俗で働いていることを隠して結婚 ・子育て支援の充実した隣町に引っ越し ・高時給の仕事を探し、いつの間にかデリヘルに ・離婚できない「隠れシングルマザー」 ・接客中に保育園から電話がかかってくる ・スマホで分娩の方法を調べて自宅出産 ・「最悪の客」に指名される ・最初の仕事で性暴力被害に ・足りないのは「夫」でも「お金」でもない ・財政難の地方都市が貧困の連鎖を断つためには
  • ジャーナリズムの役割は空気を壊すこと
    5.0
    ジャーナリズムの劣化はその国の劣化を意味する。新型コロナの非常事態宣言下での東京五輪強行は、危惧された通り感染爆発と医療崩壊を招いた。当初から問題に塗(まみ)れたこの五輪を批判しきれず空気に迎合した大手メディアは、日本のジャーナリズムの限界を象徴的に露呈した。原発事故、森友加計、公文書改竄等、未解決のまま忘れ去られる問題が堆積する現状は権力監視の役割を果たせないメディアの追認の結果だ。本書は映画「i-新聞記者ドキュメント-」の森達也と望月衣塑子が安倍・菅時代のメディア状況を総括。一方向に暴走する「空気」の壊し方、ジャーナリズムの役割と復活の方途を語りあう。 「この国のメディアはおかしい。 ジャーナリズムが機能していない。 そんな言葉を日常的に見聞きするようになってから、 もう何年が過ぎただろう」森達也 「“鉄壁”という菅(義偉)氏の幻想を創ったのはメディアにほかならない。 もっと強い言い方をすれば、 菅首相を生み出した“共犯”でもある。 菅氏は、市民の命を預けられるような人ではなかった。 メディアの責任は重い」望月衣塑子
  • 都市は文化でよみがえる
    -
    文化(アート)は都市再生に多大な影響を与えるものである。しかし、アート単独、特に現代アートによる地域復興には限界がある。アトラクティブな美術館の建設やアートイベントは一時的な集客であり、その地に住む人々にとって真に魅力的な地域となるかは別問題だ。都市の再生や復興は、もともとそこにある文化や歴史、人々の営みを無視して成すことはできない。本書では、金沢、岡山・瀬戸内エリア、前橋、大阪、ヨーロッパ、香港など、国内外のケースを参考にしながら、アートと都市の関係性を考える。現代美術家の会田誠、フランスの元文化大臣ジャック・ラングとの対談も収録。
  • わたしの心のレンズ 現場の記憶を紡ぐ(インターナショナル新書)
    -
    写真家の著者は約半世紀にわたり、ベトナム、カンボジア、アウシュヴィッツ、広島、長崎、沖縄…など、戦争の悲劇に襲われた地の撮影、取材を続けてきた。現在、コロナ禍において取材がままならない中、一旦立ち止まり、これまでに訪れてきたそれらの場所に思いを馳せてみる。すると、世界は今も戦争の影響の下にあることを強く感じる。戦争は必ずしも戦闘の顔をしていない。砲火、蹂躙の後に何年、何十年と続く物心両面に残る後遺症もまた戦争の顔である。ベトナム戦争時に子ども時代を送った人、治療を続ける広島、長崎の被爆者…。著者はその表情に眼差しとレンズを向け、いつも寄り添う。ウクライナへのロシア軍の侵攻が起こってしまう現状に警鐘を鳴らすとともに、戦争をもたらす差別や狂気、それらを生き延びる道を考える。著者撮影の写真も約40点掲載!
  • 福島が沈黙した日 原発事故と甲状腺被ばく
    4.5
    福島原発事故後の甲状腺被ばく測定、裏で仕組まれた歪曲と隠蔽の工作。なぜ被災者は裏切られたのか――。執念の調査報道で明らかになった衝撃の新事実が、今ここに。2021年3月で発生から10年となる福島原発事故。時間の経過とともに事実究明や責任追及が希薄になるなか、今現在も放射線の影響で生じうる健康被害を懸念する人々が多数いることを忘れてはならない。本書は、新聞記者である筆者が被害の核心とされる甲状腺被ばくに切り込み、国や県が実態把握を怠った狡猾な工作を告発する書である。彼らが認めていない放射線被害がいかに隠蔽・歪曲されたか――。綿密な情報開示請求で得た膨大な量の文書とその解析、関係者への周到な聞き取り取材により、衝撃の真相に迫る。
  • 国対委員長
    3.8
    官邸から立法府をまもれ――。元自民党副総裁・山崎拓氏との特別対談収録。国会運営は、与野党の「国会対策委員会」(国対)という法的根拠のないシステムに依存している。事実上、与党と最大野党の、二人の国対委員長が特別な権限を持っているが、未だその実態については古い五五年体制の談合政治のようなイメージでしか捉えられていない。二〇一七年一〇月、史上初の野党第一党の女性国対委員長となった著者が野党をとりまとめ、時に与党と手を組んでも食い止めようとしたものは何だったのか。公文書の改竄・隠蔽が続き、官邸による「国会無力化計画」が進行したこの間の舞台裏を初めて明かす。
  • 大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起
    3.6
    なぜ大学改革は失敗し続けるのか――? オックスフォード大学の苅谷剛彦と東大の吉見俊哉が徹底討論! 大学入試改革が混乱を極めているが、大学の真の問題はそこにあるのではない。日本の大学が抜け出せずにいる問題の本質に迫る刺激的な対論! 今、大学は歴史的に見ても大きな変革期にある。世界の多くの大学が、いわば瀕死の状態に陥っており、とりわけ日本の大学が抱える問題は根が深い。幾度となく改革が試みられるものの、ほとんど成果が上がらないのはなぜなのか。本書では、オックスフォード大学教授の苅谷剛彦と、ハーバード大学でも教えた経験のある東京大学大学院教授の吉見俊哉が、それぞれの大学を比較し、日本のトップレベルの大学が抜け出せずにいる問題の根幹を、対論を通じて浮かび上がらせる。
  • 大岡忠相 江戸の改革力 吉宗とその時代
    -
    テレビドラマでおなじみの大岡越前こと、大岡忠相。第八代将軍吉宗の時代に江戸町奉行として江戸の改革に尽力した人物。江戸町奉行とは、今でいう東京都知事、警視総監、消防総監、東京地方裁判所の所長などの重要ポストが合わさった役職。忠相は、吉宗の享保の改革の重要な部分を担うことに。関東地方の農業振興、町火消しの設置など、お白州裁きだけでない、その知られざる偉業に迫る歴史評伝。
  • 差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える
    3.9
    思いやりを大事にする「良識的」な人が、差別をなくすことに後ろ向きである理由とは――。 「ジェンダー平等」がSDGsの目標に掲げられる現在、大学では関連の授業に人気が集中し企業では研修が盛んに行われているテーマであるにもかかわらず、いまだ差別については「思いやりが大事」という心の問題として捉えられることが多い。なぜ差別は「思いやり」の問題に回収され、その先の議論に進めないのか?  女性差別と性的少数者差別をめぐる現状に目を向け、その構造を理解し、制度について考察。 「思いやり」から脱して社会を変えていくために、いま必要な一冊。 「あなたの人権意識、大丈夫? “優しい”人こそ知っておきたい、差別に加担してしまわないために――。 価値観アップデートのための法制度入門!」――三浦まり氏(上智大学教授)、推薦!
  • 北朝鮮 拉致問題 極秘文書から見える真実
    4.0
    小泉訪朝から20年。 なぜ解決できなかったのか? ◆内容◆ 2002年9月、小泉純一郎氏が日本の総理として初めて北朝鮮を電撃訪問し、金正日委員長が拉致を認め、5人の被害者が帰国を果たしてから20年。 小泉訪朝当時、日朝関係は大きく改善するかに見えた。 だが、その後交渉は暗礁に乗り上げ、拉致問題解決を重要課題としていた安倍長期政権、続く政権でも進展がない。 国会の「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」等でこの問題に尽力してきた著者はある文書を入手。 そこには拉致の実態、北朝鮮での生活等が詳しく記されていた。本書は極秘文書の内容を分析し、日朝外交を概観することで問題が解決に進まない原因を指摘。北東アジア安定のために何が必要かを提言する。 ◆主なトピック◆ 第1部 極秘文書 ◎政府の「極秘文書」を分析する ◎安倍総理は、なぜ「極秘文書」の存在を否定したのか ◎はじめて明らかになった日本人の名前とは ◎「極秘文書」はこうしてつくられた ◎拉致被害者の実数を推測させる管理番号 ◎横田めぐみさんが拉致された理由 ◎横田めぐみさん安否情報の真偽 ◎「極秘文書」は外交でどう活用されたか? 第2部 外交の問題 ◎歴史的な訪朝はどのように実現したか ◎いまも語られる「拉致の安倍」神話の真相 ◎民主党政権の挑戦と失敗 ◎日朝「ストックホルム合意」への道 ◎幻の「安倍昭恵さん訪朝計画」 ◎拉致問題は解決できるのか ◎残留日本人、「日本人妻」、日本人墓地 ◎風化していく拉致問題 ◎問題解決への私の提言 解説 高世 仁(ジャーナリスト)
  • ルポ 森のようちえん SDGs時代の子育てスタイル
    3.8
    コロナ後の世界を生き抜くためのヒントが幼児教育の中にある!? いま最も注目の子育て新スタイル「森のようちえん」を徹底取材! その驚きの全貌を描き出した、必読の一冊! 最近、日本中で急速な広がりを見せている幼児教育のムーブメントがあります。 自然のなかで子どもたちを自由に遊ばせながら育てる幼児教育・保育活動、通称「森のようちえん」です。 森のようちえんでは子どもたちの「自己肯定感」や「身体感覚」、そして近年話題の「非認知能力」がぐんぐんと育ちます。 それだけではありません。 森のようちえんは日本の教育の常識、さらには社会構造さえも変えてしまう可能性を秘めているのです。 その教育の真髄は、一体どこにあるのでしょうか。 そして森のようちえんの教育実践から、私たちはいかなる子育てのヒントを得られるのでしょうか? 教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが全国各地での丹念な取材をもとに、その驚きの全貌を描き出します。 子育てや教育に関わるすべてのひとにとって、必読の一冊です。 【目次】 はじめに 第一章 「おもちゃ」なんていらない ヨーロッパの「森の幼稚園」との違い 第二章 「おとな」は見てるだけ!? モンテッソーリやシュタイナーとの共通点 第三章 「せいちょう」を焦らない 非認知能力を引き出す自然のマジック 第四章 「きょうしつ」って何? 森を揺るがす幼児教育・保育無償化制度 第五章 「しぜん」は子どもの中に 都市部でもできる森のようちえん おわりに 付録 「非認知能力」とは何か? 参考図書 【本書の主な内容】 ・幼児教育でいちばん大切なことは何か ・「通年型」「融合型」「行事型」……森のようちえんのさまざまなタイプ ・水と泥と砂と土があれば、子どもたちは延々と遊ぶ! ・見えないものが見えてくる!? いま話題の「非認知能力」とは ・プロの保育者は子どもたちのどこを見ているのか ・森のようちえん旋風を巻き起こした「伝説の園」 ・自然のなかで子どもたちを育てることの本当の意味 ・環境危機の解決に必要なのは、SDGsではなくて「森のようちえん」かもしれない
  • 落合博満論
    3.3
    2011年、圧倒的な実績を残しながらプロ野球界を去った落合博満。噂された球団との確執や過度の拝金主義といったイメージとは裏腹に今もなお、シーズンオフには落合待望論がまことしやかに語られる。孤高の天才打者にして名監督、その魅力の淵源は何処にあるのか? 2019年シーズン中には、球界を代表するスラッガー山川穂高が落合に教えを乞うた。山川の姿によって再び火がついた作家は、さらに、さらにという思いで落合の諸相を訪ね歩く。対談、俳句、エッセイ……至高の野球人を味わい尽くす一冊。
  • 沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち
    4.0
    2010年代初め、「沖縄の恥部」とまで言われた売春街が、浄化運動によって消滅した。戦後間もなく駐留する米兵たちによる性犯罪や性病の蔓延を緩和するための色街だった。著者は売春に従事する女性、風俗店経営者、ヤクザに綿密なインタビューを敢行。なぜ米兵や県外の観光客までこぞって遊びに訪れた色街は消されたのか? 沖縄の“もう一つの戦後史”を炙り出す比類なきノンフィクション。
  • アントニオ猪木とは何だったのか
    3.3
    2022年10月1日、享年79。 不世出のプロレスラー、アントニオ猪木は死んだ。 わたしたちは「猪木ロス」を乗り越えて、問わなければならない。 わたしにとって、あなたにとって、プロレス界にとって、時代にとって、社会にとって、アントニオ猪木という存在は何だったのか。 アントニオ猪木とは果たして何者だったのか。 哲学者から芸人まで独自の視点を持つ7人の論客が、あらゆる枠を越境したプロレスラー、アントニオ猪木という存在の謎に迫る。 全て書き下ろし。 ◆目次◆ 壁抜けしつつ留まる猪木――入不二基義 馬場派からの猪木論――香山リカ A LONG TIME AGO……――水道橋博士 存在無意識に生きたプロレスラー――ターザン山本 1000万人に届く言葉を求めた人――松原隆一郎 アントニオ猪木 あれやこれやの語――夢枕 獏 猪木について考えることは喜びである――吉田 豪
  • ドンキにはなぜペンギンがいるのか
    3.8
    【24歳の著者が挑む! 日本の「いま」を切り取ったチェーンストア都市論】 私たちの生活に欠かせないチェーンストアは都市を均質にし、街の歴史を壊すとして批判を受けてきた。 だが、チェーンは本当に都市を壊したのだろうか。 1997年生まれの若き「街歩き」ライターはその疑問を明らかにすべく、32期連続増収を続けるディスカウントストア、ドン・キホーテを巡った。 そこから見えてきたのは、チェーンストアを中心にした現代日本の都市の姿と未来の可能性である。 ドンキの歴史や経営戦略を社会学や建築の視点から読み解きながら、日本の「いま」を見据える。 【推薦!】 ■石田英敬 氏(東京大学名誉教授) ドンキめぐりはクセになる、読み出したら止まらない、ドンペン探偵が読み解くチェーンストア記号論。 ■宮沢章夫 氏(作家・早稲田大学教授) まず「肯定する」という態度がここにはある。正直、ドンキが渋谷にできたとき、80年代の渋谷を知る者は苦い気持ちを味わった。世代的にそんなことなど関係ない著者はドンキを中心にロードサイドやショッピングモールを肯定する。そしてその「肯定」が、いま私たちを取り巻く資本の構造への、見事な批評になっている。
  • 「それから」の大阪
    4.2
    大阪は「密」だからこそ魅力的だった。 そんな大阪の町はこれから変わってしまうのか、それとも、変わらないのか――。 2014年に大阪に移住した著者が「コロナ後」の大阪を歩き、人に会う。 万博開催予定地、40年の営業に幕を下ろす立ち飲み店、閑散とした道頓堀界隈、自粛要請に振り回される屋台店主、ベトナムに帰れず大阪で1年以上を過ごすアーティスト、町を練り歩くちんどん行列、新世代の大衆酒場、365日朝6時から営業する銭湯、ド派手な巨大看板をつくる工芸店……。 非常時を逞しく、しなやかに生きる大阪の町と人の貴重な記録。

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