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国民的作家として読み継がれている司馬遼太郎。そのあまりの偉大さゆえに、司馬が書いた小説を史実であるかのように受け取る人も少なくない。しかし、ある程度の史実を踏まえているとはいえ、小説には当然ながら大胆な虚構も含まれている。司馬の作品は、どこまでが史実であり、何が創作なのか? 吉田松陰、坂本龍馬、高杉晋作が活躍する司馬遼太郎の名作をひもときながら、幕末・維新史の真相に迫る。【目次】はじめに/第一章 吉田松陰と開国/第二章 晋作と龍馬の出会い/第三章 高杉晋作と騎兵隊/第四章 坂本竜馬と亀山社中/第五章 描かれなかった終末/おわりに
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Posted by ブクログ
松陰、松陰門下の研究では第一人者の一坂氏の著作。
司馬遼太郎の作品はあくまでも『小説』であって虚構がある事を丁寧にふんだんな資料で説明してゆく。
これは解っていても司馬遼太郎ファンには切ないことだろうと思う。私も司馬遼太郎は好きなので気持ちは分るつもりだ。だが、筆者は決して司馬遼太郎を否定しているのではなく、『虚構を持ち込んが背景、理由』も考え提示する。そして理解を示す。著者が司馬遼太郎を敬愛していることが解る。
一面で『維新の英雄』として小説に描かれた人物を政治家等が盲目的に尊敬し、「私の理想です」という態度には批判的だ。私も同感。小説の登場人物を理想にしてはいけないだろう。
若いときに『三国志演義』を読んでいたく感動し、その後『正史三国志』に進み、研究書にも接したが、その時の失望と新たなおもしろさの発見を思いだした。
Posted by ブクログ
龍馬さんが近江屋で亡くなってから146年が経ちました。
「もう、幕末関係の新事実は出尽くしたんじゃないの?」と素人の私などは思ってしまうのですが、ありがたいことにまだまだこうして新しい本が出てきます。
この本は今年、平成25年の9月に出版されたものです。
この本では、吉田松陰・坂本龍馬・高杉晋作を大々的に「英雄」として送り出した司馬遼太郎先生の小説を論じ、そこに描かれなかった「本当の姿」を映し出したものです。そこには松陰・龍馬・晋作だけでなく、その周りにあったものの、司馬作品には出てこない、それでも印象的な人たちも取り上げてくれています。
かく言う私は、司馬作品を今まで読んだことがありません。意識的に避けているところもあります。
私自身、趣味でとはいえ小説を書く身であるので、小説は所詮「小説」でしかないことなど百も承知です。ですが、小説であれ大河ドラマであれ、それを「史実」として受け取ってしまうひとが多いということに怖さを感じてしまうのです。それだけ「フィクション」だと言われようと、受け取る側がそう取らなければそれは「史実」となり、出典を知らないままに口伝えでそれがあたかも「史実」になっていってしまう、それはとても怖いことです。
実際、小説やドラマの中で使われた言葉がまるで龍馬さんが「本当に言ったこと」のように平然と使われ、それを商品として売られているものさえあります。
私が知りたいのはそういった「創作」ではなく「本当の言葉」なのですが、それがどちらであるのか調べるのでさえ困難なものもあります。
例えば、将軍家茂が孝明天皇の加茂行幸に随従したときの有名なくだり、高杉晋作が家茂に向かって「いよっ、征夷大将軍!」と野次を飛ばした一件。私はこれをどこで見たのか忘れてしまったのですが、すごく印象に残っていてすごく好きなエピソードでした。でもこれは実際には「創作」らしいのです。今回、この本でそのことを知り、結構衝撃でした。
一坂さんのこの本を読んで思うのは、すごく「客観的」だなあ、ということです。
研究者もひとりの人間です。個人的感情もあるかと思います。ですが、やはりそこに感情が入ってしまうと史料に対する正確な評価もできなくなります。
私の本棚の中には一坂さんの他の著書がありませんので、他の本も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎が国民的作家であるがゆえに作品に登場する人物たちの評価やイメージを決定的にしてしまい、そこには歴史家としては看過できない創作や司馬の意図が下地となって歪められていると指摘し、作品を引用しながら特に松陰、龍馬、晋作について史実をあげて丁寧に誤解を解いている。
古くから指摘されている司馬史観批判であり、大の司馬ファンの私からすると反論もあるのだが、確かに司馬の作品では司馬自身が、時折、天の声のように登場し、「翻って考えると・・・・と言っていい」などと言う表現で読者に強いイメージを与え誤解を与えてしまっているのも事実。
この本は司馬の価値を下げると考えるのではなく、ファンとしてどの部分が史実で、どこが創作なのか、一段深い作品の楽しみ方を与えてくれるものとして推薦したい。
Posted by ブクログ
『竜馬がゆく』『世に棲む日日』を題材に、偉大なる国民的エンターテイメント作家・司馬遼太郎の筆力の源泉を検証する一冊。
史料のない部分について自由に想像の羽を広げ、史料の取捨選択において歴史家とは異なる選択をし、民明書房を縦横無尽に活用する。本文中にカッコつきの「司馬遼太郎」を登場させるメタ文学の使い手でもある。
そのようにして書かれた小説は、歴史をシンプルな形に再構成するので、より多くの人に受け入れられやすいものとなった。歴史の真実を知るために読むべきものではないことが、よくわかる。
司馬遼太郎が執筆を始めると神保町からその分野の本がゴッソリなくなる、というエピソードがあちこちで書かれている(1か所から拡散したのかも)。本書を読んでみて「そのエピソードは単純な感嘆ではなく、皮肉、毒舌の類なのかも」と思った。
史料の価値を判断する能力がないのか、玉石混交の資料の山から面白ストーリーを書くのに役立つ資料を選び出す能力に秀でていたのか、どちらが真相なのかはわからないが。
Posted by ブクログ
司馬遼太郎氏の小説(あくまでも小説)は好きで
学生のころからよく読んできました。
大体のものは読んだのではないかと思います。
また今、街道をゆくを最初から読みはじめました。
確かに、氏の小説は小説であることは重々理解している
つもりですが、本書にもありますが、どこまでが史実で
どこからが創作なのかがよくわからない部分があり、
史実のほうがあまり面白くなかったりすることが
あるのは確かだと思います。
ただ、本書にもありますが、だから司馬氏の小説の輝きが
失われることはないし、司馬氏が書いた登場人物像を
完全に否定してかかる必要もないことについては全く
同意します。
司馬氏の小説を読んだときのわくわく感や、
登場人物に対する、思い入れ、親近感や一体感は、
本当に楽しいし、また自分を見つめること、見返すこと、
その道筋を感じることが糧になるものだと思います。
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