Posted by ブクログ
2018年04月28日
本屋で手に取り目次を見ると、本多勝一さんの名前や彼が展開していたパイオニアワーク論が目に入る。僕も学生のころ熱心に読んでいたので、著者がどう解釈して自身の冒険に投影してきたのか、大いに興味がわいた。
エベレストが初登頂された後は、ルートを変えたり、無酸素で挑戦したりとバリエーションを変えないと、...続きを読むそれは冒険とは呼べない。『初』がつかないと冒険とは呼べないのだ。パイオニアワークとはそういうものと理解している。誰も行ったことがない『地理的空白』がなくなった現代で、冒険は難しい。極夜の北極圏を旅する冒険を『発見』した著者のうれしそうな顔をテレビで見た時、冒険で飯を喰うことの社会的な大変さを感じた。
展開されるのは本格的な冒険や探検についての考察だが、僕は社会人が休日に出かける『週末冒険』にあてはめて考える。彼の言う脱システム論は登山をベースに展開されるが、有名なコースやイベントに人が集まるサイクリングを取り巻く状況とよく似ている。同じ日本で起こっている現象なのだから当然の帰結だと感じる。
自由や創造性を求めた登山は結果を予測しにくく、つまらない登山に終わることも多いとの論旨には大いに同意する。事前に地図だけみて出かけるサイクリングも同じだ。路傍に何を見て、風に何を感じるかで面白さは変わる。
後に控えるのは著者の最新冒険行『極夜行』だ。さて、どんな冒険だったのか、読むのが楽しみだ。