Posted by ブクログ
2020年01月26日
探検家・作家の角幡さんのエッセイ。
雑誌の連載をまとめた本で、著書には書けなかった登山や探検の裏事情、考えたこと等、探検活動に対する著者の想いが書かれていて大変面白かった。テーマはほぼ困りごと。探検家である著者には常に困り事が付きまとう感じがする。上手く行っていることは、別段書くことでもないので、困...続きを読むり事が話題になるのは仕方ない。家庭の事、妻との関係や旅行時の手続きのような些細な出来事から、極地での生死に関わるような問題まで、いろいろなテーマを取り上げて考察する。
著者の探検スタイルは、どちらかと言えば結果重視ではなくプロセスを楽しむことが重要と考えている。単にどこかに到達するだけなら、便利で安全な手段もあるが、人間と自然の一体感を感じるためには、多少の不便さ(昔のツール)を使ったほうが良い。楽しみ方の深さが違うと考えているようだ。
自分も彼の考えには共感できる部分がある。例えば、天体観測の趣味も、GPSを使った自動導入望遠鏡を利用すれば、簡単に目的の星を見ることができる。単に天体を見たいという欲望を満足させるには、それでも充分だが、星図を見て赤道儀の目盛りを読んで、自分の力で天体を導入した時の満足感は自動導入を上回る達成感があると思う。そういう不便さに楽しみを見出すのもひとつの方法だ。
ただ、その辺りはそれぞれの考え方次第だし。他人に薦めるものでもない。自分のスタイルを決めたら、それに従って行動し、ぶれないことが大事。この本を読んでいて、そんなことを感じた。