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水道民営化とは、地域窮乏化政策だ! 欧州の水道再公営化運動が生んだ、新たな民主主義から学び、日本の水道を、グローバル資本から守る。一九八〇年代以降、民営化路線を歩んできた欧州の水道事業。しかし杜撰な管理や財務の問題にスポットがあたり、再び、水道を公営化に戻そうという大きな流れが市民運動を起点に巻き起こっている。昨今、注目されている欧州の左派ポピュリズムのうねりの中核は、実は「水道の再公営化」を求める権利運動だったのだ。水は、人々の共有財・公共財<コモン>である。資本が利潤をあげるための対象として水を扱えば、たちまちその地域は窮乏化していく。民営化で疲弊した欧州の人々の怒りが地方自治体を動かし、「ミュニシパリズム」や「フィアレス・シティ(恐れぬ自治体)」など、新しい民主主義の形を作り出しているのだ。その成果である、水道事業の再公営化はなんと178件。水を再び自分たちのものへと取り戻す欧州の運動から日本が学び、各自治体において民営化をストップさせるにはどうすればいいのか。日本人でありながら、欧州・民主主義の最前線に立つ著者が、日本再生のためのカギを明かす。
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Posted by ブクログ
杉並区民で岸本区長には共感しておきながら、
著作を読んでなかったのでまずはこちらを。
欧州の水道再公営化の事例を取り上げながらも、
にも関わらず遅ればせながら民営化をしようという日本の政治家の動きを危惧して書かれた作品。
折しも、その水道民営化の旗を振った人物が、
現政権でまた顔を見せ始めた麻生太郎だし、
今作が5年以上前の著作なだけに
現状が気になります。
今後も、まずは民営化が進まぬよう注視したい。
一方で、今作の後半にはミュニシパリズムという印象的な言葉が登場し、
まさにいま杉並区で取り組もうとしているものが何なのかが見えます。
本人がどれほど政治家になる未来を想像してたかはわからないけれど、
こういう著作の存在も、招聘に動いた人々のきっかけにはなってたのかもしれない。
とにかく、ますます彼女の今後が楽しみです。
Posted by ブクログ
最近読んだこの手の「啓蒙的実用書」の中ではピカイチの読み易さと説得力。
その点では、本書を読もうと思ったきっかけとなった、斎藤幸平氏のベストセラー「人新生の資本論」を大きく凌駕する印象だ。
しかも、本書で再三再四登場するPPP/PFIの申し子とも云える世界的「水メジャー」ヴェオリア社。その日本代表は、当方の高校大学時代の同級生だ。そうか、本書の著者が闘っているのは、ある意味、あの彼女が体現している価値観、事業なのか。そう思うと、安易に本書の主張全てを無条件に肯定する気にもなれず。我ながら、もっと勉強し、事実と理論に基づく客観的な認識と理解を深める必要があることを痛感する。
しかしそれにしても、著者が危惧するこれからの日本への懸念や危機感は本物だ。
我々の「コモン=公共の富」をどう守り、マネージしていくのか。当事者の一人として、他人事扱いしない関わり方を志向したいと痛感した。
Posted by ブクログ
水道、再び公営化!
ヨーロッパでの動きをもとに、水道事業の民営化に対して一石を投じる本書。
フランス、イギリスが水道を民営化された状態からいかにして公営化に至ったかが記載されている。また、水や住居などの<コモン>を民間企業に任せることの危険性を論じている。論点としては、一つは水貧困の問題である。水貧困とは、家計支出のうちの水道料金の割合が一定以上の世帯を指すが、水道料金という固定費を民営化=企業の収益状況により値上げが起こるものとしてしまうと、貧困層の生活が苦しくなるというものである。実際に、民営化直後に水道料金を4倍に引き上げる企業も存在し、その結果、貧困層はトイレを毎回流さないなどの対応で水道料金の支出を減らすということを余儀なくされているが、そのような対応が人権を棄損するものではないかという論調のもと、市民団体が再公営化の運動を始めた経緯などが記載されている。また、単純に民営化の方が高くかかるということも述べられている。水メジャーは地方公共団体とコンセッション契約というものを結ぶ。このコンセッション契約は、地方公共団体がお金を民営業者に支払って水道事業を委託するものであるが、その委託料金には、水道事業を行うにあたり民営業者が資金調達する際の金利や民営業者の役員報酬などが過大に支払われていると糾弾されている。資金調達する際の金利は、市民の税金によって賄われており、全体として公営化した方が安い場合は、何のメリットもない。さらに、民営化によって危機対応時のリスク管理も切り詰められる傾向にあり、倒産リスクのある一民間企業が水道事業でリスク管理をおざなりにした場合、割を食うのは市民である。
上記の対応として、ヨーロッパではミュニシパリズムという新たなムーブメントが起きている。地方都市などと市民団体などが連携し、民営化されたコモンを再公営化することや、地産地消を標榜する動きである。規模の経済を理由に民営化された事業の収益は結局のところ国外の流出しており、現在、リスクだけが転嫁されている状況になっているコモンを扱う事業を、再び市民の手に取り戻すという考え方である。ミュニシパリズムは地域主義と混同されることがあるが、地方都市間での国際協調がある点で、地域主義とは異なる。ミュニシパリズムのベースとして、国家という枠組みを超えた多国籍企業による民営化に対抗するためには、地方都市や市民団体もまた、国家という枠組みを超えた連帯が必要であるという考え方がある。まさしく、マルクス・エンゲルスが共産党宣言で労働者の国際協調を訴えたように、地方もまた、国際協調を通じて多国籍企業に対抗すべきではないかというところがミュニシパリズムの現代性であろう。筆者は、国家が多国籍企業に対して利益誘導し、草の根の地方政治を蔑ろにしてきたツケを今払うことになっていると語る。実際、日本においてもトリクルダウン論法を下に、法人税減税や特区構想を行っているが、果たしてこの動きは富めるものがさらに富めるようになるわけではないのかという論点がある。そうした動きに対抗する手段として、ミュニシパリズムは新たなムーブメントとなっている。しかし、ここまでくるともはや国家という想像の共同体に何の意味があるのかとも思えてくる。現在、テロリズムやゲリラ戦によりWW2とは別の形で世界大戦が起こっていると話す政治学者もいる。これまでの政治の主役であった国民国家という概念の終わりの始まりを、そこに見ることができるかもしれない。
Posted by ブクログ
インフラの老朽化に危機感を感じる今日この頃ですが、財政難とはいえ水道という公共の財=コモンを民営化すると利益優先になり危うくなる。
それをコモンとして取り戻そうとする欧州の市民運動の手法がとても理知的だなと思った。したたかに、民主主義の仕組みを変えていく躍動感を感じた。
欧州では水道事業の民営化により、本来共有物であるはずの水道が、利益の対象となり、管理も杜撰になってしまった。
PPP/PFIと呼ばれる官民連携の全てが悪いとは思わないけど、本来公共の財であるべきもの、利益の対象とすべきでないものの見極めは重要だなと思った。
水道事業を通じて、本来の民主主義を捉え直すことが出来てなかなか面白かったです。
Posted by ブクログ
水道事業の民営化問題にとどまらず、グローバル企業に抗する自治体の取り組みなどが紹介されていて、とても興味深い。
民営化によって水道料金が高騰したり、サービスや品質が低下したり、事業や財務状況の監督が困難になったりする。イングランドとウェールズの水道会社10社は、必要のない借り入れを繰り返して借入金を膨らませ、税金の支払いを少なくし、株主への配当を確保し、必要なインフラ整備を行わない口実としていた。民営化は株主優先、企業利益優先というビジネスルールによって、公共が解体されるプロセスであった。
スペインでは、2008年の世界経済危機を受けて、EUの財政規律を守るために福祉や教育などの公共サービスの予算を大幅に減らし、若年層の失業率はピーク時に55%にも達した。2011年の統一地方選の際に若者たちが各地で草の根の政治集会を開き、各都市で抗議活動が行われた(15-M運動)。各地でシルクロと呼ばれる草の根の政治グループが結成され、2015年の地方選では6つの自治体で反緊縮を掲げる左派政権が誕生した。バルセロナでは市民活動家が市長に就任し、民泊事業の増加による住宅問題への対応や水道事業の再公営化を進めた。また、15-M運動は左派政党のポデモスを誕生させ、2019年には社会労働党との連立政権を樹立させた。
地域のことは地域の人々が集まって議論し、自律的に決めようという取り組みは「ミュニシパリズム」と呼ばれるようになり、世界各地に広がっている。利益や市場のルールに基づく新自由主義を脱却して、公益とコモンの価値を中心に置いて市民の社会的権利を拡大することを目指す。
国民国家を巻き込みながら展開する新自由主義に対抗するために、自治体間で国際的に協力するミュニシパリズムは、「フィアレス・シティズ」という運動へ発展した。2020年時点で、欧米を中心に77か所が参加している。競争、排除、対立などの男性的な価値観から、共生、包摂、協力といった女性的価値観で人間にやさしい政治を実現しようとする政治のフェミナイゼーションには共感する。
水道事業が民間企業から公的事業に取り戻した事例は、2019年時点で311件。電力、地域交通、ごみ収集、教育、健康・福祉サービス、自治体サービス、通信サービスの分野を加えると、1408件。
著者は、民間の水道事業者が欧州で市場を失った結果、日本が新しい市場として狙われたと推測している。この動きは、1990年代の外国産タバコや昨今の農薬の動きなどとよく似ていると思った。
世界各国で、水道事業を民営化することにより、運営権を売却して得た資金を債務返済に回す事例が多い。日本では、財政再建団体指定を免れたいという動機があるほか、PPP/PFI導入を拒否した場合に政府からその理由の説明を求められることにもなった。
公共調達において地元企業を優先し、地元の経済を回す取り組みも紹介されているが、税金の使い方としても合理的だと思う。
水や食料などに対して一部の者が利益を得る仕組みを導入することがおかしいと感じた。水や食料などの生存に欠かせないものには、資本主義を導入しないという思想が必要なのではないかと思った。
ヨーロッパでは政治活動を広場で行うことには、民主主義の歴史を感じた。建物内の閉じられた空間で行うよりも多くの人が参加でき、関心も持ってもらえるので、日本人が学ぶべき点だと思った。
岸本さんが杉並区長に当選したことを知って読んだが、このような経験を持った人が日本の自治体の首長に選ばれる時代になったんだな、と感慨深い思いを抱いた。
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ビジネス・実用
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