鯨人

鯨人

小説・文芸
770円 (税込)

3pt

インドネシア東ヌサテンガラ州に属するレンバタ島のラマレラ村は、銛一本で鯨を仕留める伝統捕鯨で知られている。写真家である著者は約19年にわたりこの村の様子を取材。世界最大の生物に挑む誇り高き鯨人達の姿と、村の営みに深く根ざす捕鯨文化の詳細を記録し、ついには捕鯨の水中撮影を敢行する。だが、この村にもまた、グローバリゼーションの波は押し寄せていた……。岐路に立つラマレラ村とその捕鯨文化を雄渾に活写する、比類なきネイチャー・ドキュメンタリー。【目次】プロローグ/第一章 鯨の島へ/第二章 鯨漁に挑戦/第三章 再挑戦/第四章 鯨漁撮影/第五章 陸の物語/第六章 鯨の眼/エピローグ

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鯨人 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    インドネシアの多島諸島の最東端、レンバタ島の農作物も出来ない入り江に約2000人ほどの漁村がある。写真家の石川梵さんは92年から今までずっとその村ラマレラの伝統捕鯨に魅せられ、取材を続けて来た。1997年に写真集「海人」、2011年にその取材過程を記した本書、2021年には「くじらびと」というドキュメンタリー映画までつくった。確かにホンモノだけが見せる魅力が、本書には随所に散りばめられている。

    私はどうしても、ラマレラ捕鯨に古代日本の捕鯨を想像しながら読んでしまう。万葉集にある「いさなとり」は捕鯨という意味であるが、実は日本でも縄文時代から鯨を食べていた証拠が諸所に残っている。私は韓国の蔚山で組織的捕鯨を記録した壮大な壁画(新石器時代)を見たことがある。ラマレラは、手造りの帆掛船で鯨を追い、銛1本を投てきするのではなく自ら飛び込んで突くというもっとも原始的な方法だった。当然海に落とされるが、直ぐに船に戻ってまた銛を突き、最後は包丁で滅多刺しにして絶命させる。一瞬の油断が命取りだ。それを可能にする村の民俗は、私の想像を超えていた。

    村のインフラは極めて素朴。水道もなければガスもない。調理には薪の火、鯨の脂でランプを灯す、塩田を作って塩を確保していた。表紙の写真を見ればわかるが、銛持ちは極めて大柄で筋肉質、彼らの主食は白米にとうもろこしを混ぜたご飯。鯨を獲ることに成功すれば、関わった舟全てに鯨肉が分配される。一頭の鯨で家族を二ヶ月賄うことができると言われる。命をかけた捕鯨だからこそ、共同体の怪我人老人含めての福祉補完システムはキチンと完備されていた。女たちもとれた鯨肉は、直ぐに売ったり干し肉にして後で売ったりして、食料や金に交換経済で換えてゆき、男たちの人生を支えている。

    やはり銛撃ちが少年の1番の憧れであるとか、船や漁具の作製、祈りも、そうだろうな、というひとつひとつ説得力があった。もちろん、古代と多くの部分で違うが、想像できる部分は沢山あった。

    だからこそ、縄文、弥生前期にかけての、鉄器が普及していない時代の捕鯨が何処までラマレラ式なのか、疑問がむくむくと湧いてくる。石器の銛で果たして脂肪30センチのマッコウクジラを仕留めることができるのか?そもそもそんな大きな銛は、遺物で展示されていたことがあったけ?入り江に迷い込んだ鯨をたまたま仕留めただけではないのか?鯨は古代人の人生では忘れることのできない大事件だった。だからこそ壁画に描かれたのかも知れない。しかし、日本の絵画土器には(おそらく)ひとつも登場していない(サメの絵は多い)。宿題がまたひとつ出来た。

    その他興味深い処のメモ
    ・マンタとはオニイトマキエイ(5メートルほどの体長)。年間10頭の鯨に対し、マンタは100頭ほどとれている。この漁の発展形が捕鯨だったのかも知れない。
    ・イルカよりもシャチやサメの方がよっぽど獲るのは楽。
    ・一番の銛撃ちは、一撃で鯨を突き殺した者。
    ・櫂を漕ぐ時の歌に「象牙を生やした水牛よ、どうか私たちを村へ連れていっておくれ」というのがある。古代から鯨が牛や馬などと同じ仲間であることを知っていた。
    ・1番銛には心臓が分け与えられる。香辛料代わりのタマリンドという臭い消しを入れ、煮込み料理にしていた。鯨肉丼は案外美味しいらしい。


    NO Book & NO Coffee NO LIFEさんの鯨月間レビューで、こんなノンフィクションがあるんだ、と知りました。ありがとうございます♪

    0
    2022年11月21日

    Posted by ブクログ

    映画くじらびと 鑑賞後に再読し監督のヤバ味を再認識した事をご報告♪
    銛一本で巨鯨を狩るラマレラの人々を追う素敵なレポートが狂気の様相を帯びるのは物語の終盤。
    "海の上の物語は撮れた"海の中のドラマを提示してこそ完全なものとなる"
    と写真家は鯨と人の死闘の海にダイブし、血の海なかで海の王の今まさに瞑目せんとする眼をレンズに捕捉しフィルムに焼きつけんと巨体に突き立つ銛に手を掛け、海中に引きずり込まれながらシャッターを切りまくる。
    憑かれ物狂い王の死に迫り撮る様は本作の白眉。
    活字を追って総毛立つ経験は忘れられない。

    0
    2021年12月05日

    Posted by ブクログ

    インドネシアの島の中で、銛一本で鯨に立ち向かい、生きてきた人たちに密着した七年間の記録。その営み。
    2010年、著者は再び村へ向かう。短いエピローグだけど、とても印象的。彼らと僕を隔てるものは何か。
    写真集、海人も観る。

    0
    2011年10月22日

    Posted by ブクログ

    ドキュメンタリーは『ヤノマミ』以来、読みました。
    これも素晴らしかった。
    とても私にはいけない所へ、膨大な時間を費やしてのこと。
    自然と、そこに生きている鯨、人。
    厳しく残酷で、改めて命を奪って生きていくことについて
    考えさせられました。
    それと同時に文明が進んで、「便利になること」
    「安易に手に入れること」によって、忘れがちになってしまうことについても。
    人は時々、立ち止まって、人類もまた地球上に生かされている
    生物の一種でしかないことを、肝に銘じるべきな気がしました。

    近く、写真集もぜひ、みたいと思っています。

    0
    2011年08月07日

    Posted by ブクログ

    インドネシアの辺境で銛打ちで捕鯨する人々を追ったノンフィクション。漁をする様は激しく、人々の生活は優しい。自然と調和して生きてる中にも文明は入り込んでくる。命や生きる事とか何が幸せなのか考えてしまう。とても興味深く面白かった。

    0
    2011年06月08日

    Posted by ブクログ

    「"ラマファは自分のためだけじゃない。貧しい人、夫を亡くした人のために鯨と闘うんだ"と。これは先祖代々続いている教えなんだ」p.128。Twitterで「すごい本に出会ってしまった。雄弁な写真を撮る写真家ほど、その写真に匹敵する文章を書くの法則」とつぶやいたら、著者からフォローされてびっくり。うれしがって、リフォローしました。笑。

    0
    2011年06月07日

    Posted by ブクログ

    骨太なルポ。文章も活きていて面白かった。
    長い間受け継がれて来た伝統も、その後の状況の中で変わっていかざるを得ないのが複雑な思いに。
    写真が少ないのが物足りないが、それは写真集で。

    0
    2011年06月05日

    Posted by ブクログ

    日本人カメラマンが、鯨漁で生計をたてる、インドネシアの一漁村に密着取材したもの。何より漁の方法が凄い。手漕ぎ船で鯨に近づき、飛びついて銛で突きまくるだけ。そして15メートルのマッコウクジラを仕留める男達!
    マタギにしろ漁師にしろ、狩りには生活のため以上の何か、「エンターテイメント」としての存在理由がある事を再認識できる。
    「過剰な捕獲」「過剰な保護」は決してベターな選択ではない!

    0
    2011年05月30日

    Posted by ブクログ

    インドネシアの捕鯨の民・ラマレラの生活や漁を、実際に船で追って写真に収めた筆者が書いたノンフィクション。再訪の際の変わりつつあるラマレラを見ると、勝手なのだろうが、複雑な気持ちになった。

    0
    2011年04月28日

    Posted by ブクログ

    インドネシア東ヌサテンガラ州レンバタ島。日本から運が良くて最短3日の旅程を要するこの島で、プレダンという小さな帆船と銛一本でマッコウクジラ漁を獲る人々がいる。7年に渡る取材によってその勇猛果敢な姿を捉えたドキュメンタリー。日本の捕鯨にもかつてあった相互互助の社会システムなど、興味深いものがある。

    0
    2011年03月20日

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