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ニューヨークの魔法使い
ニューヨークは変わった街だと聞いてはいたが、これほどとは思わなかった。テキサスの田舎から出てきて一年、いまだに毎日驚いてばかりいる。宙に浮いている妖精や耳のとがったエルフ、教会の屋根にいたりいなかったりするガーゴイル……。こんなの想定外だ。でも、ニューヨーカーたちは振り返りもしない。変なのはこの街? それともわたし? ボーイフレンドはできないし、会社の女上司はヒステリーの二重人格。いい加減にうんざりしていたある日、思いもかけない転職の話が舞い込んできた。でもちょっと待って、うまい話には必ず裏がある。現代のニューヨークを舞台にした、魔法版『ブリジット・ジョーンズの日記』。(株)魔法製作所シリーズ第1弾。 -
模倣の殺意
七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。著者が絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。記念すべきデビュー長編の改稿決定版! -
ウェッジフィールド館の殺人
ジェーンは英国の領主屋敷(マナーハウス)に滞在していた。いっしょに旅行している叔母が館の主である男爵とかつて恋仲で、ふたりのあいだに生まれた娘が男爵の養女になっていたのだ。ある晩、館の使用人が主の車を運転中に事故で死亡。車を調べてみると、ブレーキに細工されていたことがわかる。娘の身を心配する叔母に頼まれたジェーンは、折よく館を訪ねてきたレドヴァースと事件を調べはじめる。だが、ジェーンが操縦を教わっている複葉機の部品が壊されたり、怪しい人影が目撃されたりと不審な出来事が続き……。アガサ賞最優秀デビュー長編賞受賞シリーズ。 -
キャクストン私設図書館
イギリスの片田舎にたたずむ〈キャクストン私設図書館&書物保管庫〉では、シャーロック・ホームズやドラキュラ伯爵など、名作の登場人物たちが実体化して暮らしている。ひとりの登場人物との出会いをきっかけにこの図書館を訪れた読書好きのバージャー氏は、やがて物語の世界をゆるがすとんでもない事件を引き起こし……。エドガー賞最優秀短編賞を受賞した表題作ほか、同図書館で語り継がれるホームズの逸話、『失われたものたちの本』の世界から贈る短編、次々と怪現象を起こす奇書をめぐる中編の四作品を収録。本と物語がテーマの作品集!/【目次】キャクストン私設図書館/虚ろな王(『失われたものたちの本』の世界から)/裂かれた地図書──五つの断片/ホームズの活躍:キャクストン私設図書館での出来事/訳者あとがき/解説=牧眞司 -
〈伝説とカフェラテ〉シリーズ
珈琲店を開きたい。それがヴィヴの夢だった。苦楽を共にしてきた傭兵仲間に別れを告げ、最後の冒険の戦利品である幸運の輪を引き寄せるというスカルヴァートの石を持って、いちから店作りに着手する。廃屋同然の厩を買い取り、気むずかし屋だが腕は確かな船大工を雇って改装。見慣れない飲み物に最初は閑古鳥が鳴いていた店も、募集広告を見てやってきた店員が描いたセンス抜群の看板や、隠れた天才パン職人のつくるうっとりするようなパンや菓子のおかげで、次第に繁盛しはじめるが……。ネビュラ賞最終候補の心温まるコージーファンタジイ。 -
ロボットとわたしの不思議な旅
自意識を獲得したロボットと人類が平和裏にたもとを分かち、別々の地域で暮らすようになってから、長い年月がすぎた。あちこちの村を巡っては、悩みを抱えた人々のためにお茶を淹れる喫茶僧のデックスは、ある日思い立って文明社会を離れ、人類の手が入らない大自然の中へ向かう。そこで出会ったのは、一台の古びたロボットだった。人間たちの社会のありように好奇心をもつその奇妙なロボット・モスキャップと共に、デックスは長く不思議な旅に出る。心に染み入る優しさに満ちた、ヒューゴー賞、ローカス賞、ユートピア賞受賞の二部作を一冊に収録。/【目次】緑のロボットへの賛歌/はにかみ屋の樹冠への祈り/解説=勝山海百合 -
シャーロック・ホームズの誤謬 『バスカヴィル家の犬』再考
ホームズの推理は間違っている! 『アクロイド殺害事件』におけるポワロの推理に異を唱え、真相を暴いて話題を呼んだ推理批評家バイヤール。フランス論壇の雄たる彼が、今回はシャーロック・ホームズに挑んだ。長編『バスカヴィル家の犬』のホームズ推理の疑問点・矛盾点を鋭く指摘し、真犯人を炙り出す。/【目次】登場人物/ダートムアの荒地/捜査/第一章 ロンドンにて/第二章 荒地(ムーア)で/第三章 ホームズの手法/第四章 不完全性の原理/再捜査/第一章 推理批評とは何か?/第二章 複数の語り/第三章 犬のための口頭弁論/第四章 ステープルトンの弁護/幻想性/第一章 シャーロック・ホームズは存在するのか?/第二章 テクストへの移住者/第三章 テクストからの移住者/第四章 ホームズ・コンプレックス/現実/第一章 文学による殺人/第二章 見えない死/第三章 真実/第四章 そして真実のみを/バスカヴィル家の犬/訳者あとがき/解説=杉江松恋 -
案山子の村の殺人
楠谷佑のペンネームで活動する僕ら合作推理作家の、次の新作は山奥の寒村を舞台にした本格ミステリになる予定だ。しかし真舟のプロットは仕上がったものの、執筆担当の僕の作業が捗らない。田舎の村に行ったことがないからだ。だったら、と大学の友人に勧められ、旅館を営む彼の実家がある宵待村に、僕と真舟は旅行に出掛けたが、そこで本物の事件に巻き込まれることになるとは、僕たちはまったく想像していなかった。案山子だらけの宵待村で、案山子に毒の矢が射込まれ、別の案山子が消失し、ついに殺人事件が勃発する。現場はいわゆる雪の密室の様相を呈していた。推理作家の大学生コンビ、篠倉真舟と宇月理久が謎解きに挑む。 -
〈刑事ハービンダー・カー〉シリーズ
これは怪奇短編小説の見立て殺人なのか?──イギリスの中等学校タルガース校の旧館は、かつてヴィクトリア朝時代の作家ホランドの邸宅だった。クレアは同校の英語教師をしながら、ホランドを研究している。10 月のある日、クレアの親友である同僚が殺害されてしまう。遺体のそばには“地獄はからだ”という謎のメモが。それはホランドの怪奇短編に繰り返し出てくる文章だった。事件を解決する鍵は作中作に? 英国推理作家協会賞受賞のベテラン作家が満を持して発表し、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞へと至った傑作ミステリ!/解説=大矢博子 -
わたしが幽霊だった時
季節は夏。昼下がりの林道は家に続いている。歩きながら(事故だわ!)ふいにそう思った。なにかが変。事故に遭ったって思うんだけど、頭がぼやけてて何も思い出せない。気がついたら、ここ歩いてるんだもの。あたしいま何着てるんだろう。わからないから下を見た。体がない! あたしは生垣を通り抜け、ドアを通り抜けて家のなかに入った。宙に浮きながら。部屋じゃ、だいっ嫌いな姉さんや妹たちが相変わらずのけんか。誰もあたしのこと気づきゃしない。あたし、幽霊になっちゃったんだ……でも、なぜ? 現代英国を代表する著者が贈る、おかしくてほろ苦くも暖かい時空を超えた物語。/解説=金原瑞人 -
怪物を捕らえる者は
聖母マリアの祠の裏、雪の下から16歳の少女の遺体が発見された。遺体や服からアフガニスタン人移民の青年のDNAが見つかるが、刑事オリヴァーとピアが事情聴取をする前に彼は消えてしまった。有力な手がかりが見つからず捜査が難航するなか、数日後の夜に、田舎道で男が車にはねられて死亡する。男は裸足で、体には動物の咬傷や拷問の痕があった。彼はどこから逃げ、誰にこんな目に遭わされたのか――。ふたつの事件の捜査から導き出される、ドイツ警察を揺るがす史上最悪の真相。とてつもない急展開を見せる、大人気警察小説シリーズ。/解説=上條ひろみ -
夜色表紙の本
それは濃紺の革表紙に星座が型押しされた、薄い小さな冊子だった。父が文字を書き、意匠と飾り文字は叔父が、細密画は母が描いた。〈夜の写本師〉である三人が彼のために書いてくれたものだ。その『夜色表紙』が消えた。戦争に行くといって家を出た息子が持っていったのか? 訃報のみがもたらされた息子。『夜色表紙』には必ず自分のもとに戻ってくるという魔法がかけられているはず。戻ってこないのなら息子は生きているかもしれない。息子の消息を求め〈護符師〉ヴァニバスは旅立った……。人気の〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ。/【目次】夜色表紙/影の馬/森林監督官/大地女神(イルモア)の罠/あとがき -
黄色い部屋の謎【平岡敦訳】
高名な科学者スタンガルソン教授と、令嬢マティルドの住むグランディエ城の離れの一室で事件は起こった。内側から鍵をかけられた完全な密室、《黄色い部屋》から聞こえた助けを求める女性の悲鳴。ドアを壊して入った者たちの見たものは、血の海のなかに倒れたマティルドの姿だった。襲撃者はどこに消えたのか? そしてさらに続く怪事件。その謎に挑んだのは、18歳の新聞記者ルルタビーユだった。パリ警視庁の名警部ラルサンと謎解きを競い合いつつたどり着く奇怪な事件の真相は? 密室ミステリの名品として、ミステリファン必読の古典となった傑作。/解説=戸川安宣 -
アルバトロスは羽ばたかない
海を望む街に建つ児童養護施設・七海学園に勤めて三年目となる保育士の北沢春菜は、毎日多忙な仕事に追われつつも、学園の日常に起きるささやかながら不可思議な事件の解明に励んでいた。そんな慌ただしくも幸せな日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。警察の見解通り、これは単なる不慮の事故なのか? だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手がかりが隠されていた――鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』に続く清新な本格ミステリ。/解説=千街晶之 -
トリカゴ
蒲田署刑事課強行犯捜査係の森垣里穂子は、殺人未遂事件の捜査中に無戸籍者が隠れ住むコミュニティ“ユートピア”を発見する。容疑者のハナはコミュニティのリーダーであるリョウの妹だった。捜査によって彼らが唯一安心して暮らせる場所を壊してしまうのではないか──里穂子は苦悩しながら調べを進めるうち、かつて日本中を震撼させた未解決の“鳥籠事件”との共通点に気づく。特命捜査対策室で同事件を担当する専従捜査員・羽山圭司とともに執念の捜査の果てに辿りついた衝撃の真実とは。社会問題への真摯なまなざしとミステリの企みが見事に融合した、第24回大藪春彦賞受賞作。/解説=千街晶之 -
藍色時刻の君たちは
2010年10月。宮城県の港町に暮らす高校2年生の小羽、航平、凜子は家族の介護と家事に忙殺され、鬱屈を抱えていた。だが、町にやって来た女性・青葉が、小羽たちの孤独に理解を示す。彼女との交流で3人が前向きになっていった矢先、2011年3月の震災により全てが一変してしまう。2022年7月。看護師になった小羽は、震災時の後悔と癒えない傷に苦しんでいた。そんなある時、彼女は旧友たちと再会。それを機に、過去や青葉が抱えていた秘密と向き合うことに……。第14回山田風太郎賞を受賞した感動長編を、書き下ろし掌編などを加えて文庫化。/解説=瀧井朝世 -
生きるか死ぬかの町長選挙
町長不在となったシンフルの町。長年にわたり陰で町を仕切っていた婦人会の会長アイダ・ベルが、ついに表舞台に立つべく立候補する。二週間前から身分を偽り町に住んでいるCIA秘密工作員のフォーチュンは、これまでの縁から選挙戦を手伝うことに。ところが、アイダ・ベルと対立候補テッドの公開討論会が終わった直後、テッドが殺されてしまう。テッドの妻に犯人扱いされた友の無実を証明するため、フォーチュンたちは立ちあがるが、その結果シンフルはまたも大騒ぎになるのだった! したたかな女性たちが大暴れ、〈ワニ町〉シリーズ絶好調!/解説=上條ひろみ -
イザベラ・バード、日出ずる国で妖怪に出会う
明治11年夏、奥州を縦断して蝦夷地を目指す英国人女性がいた。その名はイザベラ・バード。お供は通訳兼従者の若者伊藤鶴吉と英国からついてきた小妖精ディル&ジンジャーだ。一行は行く先々で妖怪に出くわし、思わぬ事件に巻きこまれる。本当に恐ろしいのははたして妖怪か人間か。旅を続けるうち、好奇心旺盛なイザベラと無口な鶴吉は少しずつ心を通わせていくが、鶴吉はある秘密を抱えていた。ヴィクトリア朝の英国を飛び出した実在の女性旅行家(レディ・トラベラー)が、日常と非日常のあわいをたゆたう謎に挑む、レトロで新鮮な正統派歴史冒険ファンタジイ!/解説=小出和代 -
折れざる槍
人々に妖精の谷と怖れられる地で、荒野を庭として育った少女がいた。母は少女の名を隠し、少女の父、海の息子マナナーンから盗んだ鉢を護って洞穴でひっそりと暮らしていた。だが少女は日ごとに成長し、力強く、そして素早くなった。やがて広い世界への憧れが抑えきれなくなった少女は、母からペレティルという名前を受け取ると、カエル・レオンに玉座を構える王アルトゥルスの戦士団に加わるべく旅立った……。ネビュラ賞受賞作家が、アーサー王伝説群の中のパーシヴァルの物語を独自の視点で語り直した鮮烈な作品。LAタイムズ文学賞受賞作。 -
シャーロック・ホームズは引退しました
名探偵シャーロック・ホームズの物語が人気を博する1932年、こちらロンドンはベイカー街。ホームズの作中住所に建つアビー・ロード住宅金融組合には、かの探偵の実在を信じる人々から依頼の手紙が届き続ける。組合で働くハリエットは、そんな手紙にひたすら「シャーロック・ホームズは引退しました」と断りの返事をタイプする日々を送っていた。しかしあるとき、メイドの失踪にまつわる切実な依頼を読んだ彼女は、ホームズの秘書を名乗り自ら調査に乗り出すことに……。名探偵に代わり挑む、変装、尾行、推理。清新なミステリシリーズ、堂々封切り!/解説=北原尚彦 -
渚にて 人類最後の日
第三次世界大戦が勃発し、世界各地で4700個以上の核爆弾が炸裂した。戦争は短期間に終結したが、北半球は濃密な放射能に覆われ、汚染された諸国は次々と死滅していった。かろうじて生き残った合衆国の原潜〈スコーピオン〉は汚染帯を避けてメルボルンに退避してくる。オーストラリアはまだ無事だった。だが放射性物質は徐々に南下し、人類最後の日は刻々と近づいていた。そんななか、一縷の希望がもたらされた。合衆国のシアトルから途切れ途切れのモールス信号が届くのだ。生存者がいるのだろうか? 最後の望みを託され、〈スコーピオン〉は出航する……。読者に感動をもって迫る永遠の名作。/解説=鏡明 -
鳥はいまどこを飛ぶか
この小説は、最初の二節と最終の二節以外のaからlの配列を任意に変更して読んで下さって結構です――各章の間を自由に飛翔する鳥を異なる角度から追うことによって無数の物語展開を体験できる、実験精神に満ちた表題作の他、三島由紀夫・安部公房らに高く評価された異色作「X電車で行こう」、夜行列車で殺人を目撃した男の奇妙な一晩を描く「赤い貨物列車」、生きた首を拾った男が辿る数奇な運命「首狩り」など全10篇を収録。「季刊NW-SF」創刊、サンリオSF文庫創刊に際し先鋭的なSFや前衛文学の紹介に尽力、創作・評論両面で輝かしい軌跡を残す巨人による幻の傑作が甦る。/解説=高橋良平 -
氷の家
フレッド・フィリプスが走っている……その言葉は八月の静かな午後、さながら牧師のお茶会で誰かが発したおならのように鳴りひびいた。庭師を周章狼狽させたのは、邸の氷室に鎮座していた無惨な死骸――性別は男。だが、胴体を何ものかに食い荒らされたその死骸は、人々の嘔吐を誘うばかりで、いっこうに素姓を明示しようとしない。はたして彼は何者なのか? 迷走する推理と精妙な人物造形が読む者を八幡の藪知らずに彷徨わせ、伝統的な探偵小説に織りこまれた洞察の数々が清冽な感動を呼ぶ。新しい古典と言うにふさわしい、まさに斬新な物語。英国推理作家協会最優秀新人賞受賞作!/解説=巽昌章 -
ユダの窓
一月四日の夕刻、ジェームズ・アンズウェルは結婚の許しを乞うため恋人メアリの父親エイヴォリー・ヒュームを訪ね、書斎に通された。話の途中で気を失ったアンズウェルが目を覚ましたとき、密室内にいたのは胸に矢を突き立てられて事切れたヒュームと自分だけだった――。殺人の被疑者となったアンズウェルは中央刑事裁判所で裁かれることとなり、ヘンリ・メリヴェール卿が弁護に当たる。被告人の立場は圧倒的に不利、十数年ぶりの法廷に立つH・M卿に勝算はあるのか。法廷ものとして謎解きとして、間然するところのない本格ミステリの絶品。/座談会 ジョン・ディクスン・カーの魅力=瀬戸川猛資、鏡明、北村薫、斎藤嘉久、戸川安宣(司会)/本座談会と『ユダの窓』について=戸川安宣 -
図書館司書と不死の猫
愛妻を亡くし、ケンブリッジの図書館を定年退職したばかりのわたしに届いた、不思議な猫についてのメール。なぜか人の言葉をしゃべるその猫は、死ぬたびに生き返る数奇な半生を送ってきたらしい。おまけに猫の飼い主は行方不明になっていて――。本を愛し、へらず口をたたき、永遠の命を生きる猫。その周囲で起こる不可解な事件。メールに綴られた出来事は現実か、創作か。わたしは好奇心をくすぐられて調査に乗り出すが、その先には意外な展開が待ち受けていた。元・図書館司書と謎に包まれた猫が織りなす、ブラックで奇妙で、なのに心躍る物語。/解説=金原瑞人 -
図書館の殺人
9月の朝、風ヶ丘図書館の開架エリアで死体が発見された。被害者は常連利用者の男子大学生。閉館中の館内に忍び込み、山田風太郎の『人間臨終図巻』で何者かに撲殺されたらしい。現場にはなんと、二つの奇妙なダイイングメッセージが残されていた! 警察に呼び出された裏染天馬は独自の捜査を進め、一冊の本と一人の少女の存在に辿り着く。一方、風ヶ丘高校では期末テストにまつわる騒動が勃発。袴田柚乃たちは事件とテストの両方に振り回されることになり……。ロジカルな推理と、巧みなプロットで読者を魅了する〈裏染天馬シリーズ〉第4弾。/解説=佐々木敦 -
ミステリなふたり あなたにお茶と音楽を
愛知県警捜査一課内で広く敬われながらも同時に恐れられている、通称“氷の女王”こと京堂景子警部補。ずば抜けた捜査能力と体術で犯人を追い詰めるクールビューティーな姿は、新人刑事・築山瞳にとって密かな憧れであり目標だ。そんな京堂警部補は、自宅に着いた途端に叫んだ――「ただいまあ。ねえ新太郎君、お腹空いたあ」「お帰り。今ご飯作るから」職場では鋼鉄の刑事、だが家では年下のダーリンにデレデレの景子さんと、イラストレーター兼主夫として妻を支えながら安楽椅子探偵の才能も発揮する新太郎君の名コンビによる謎解き7編!/解説=熊崎俊太郎(紅茶鑑定士) -
エンタングル:ガール
映画監督を志す守凪了子(カミナギリヨーコ)は舞浜南高校に進学し、憧れの映画研究部に入部する。仲間たちとともに、AIを駆使した長編映画を製作し、コンテストに応募するのだ。作品提出期限は夏休み最終日。だが、撮影を続けるなかで、了子たちはあちこちで奇妙な齟齬に出会う。それはこの高校だけでなく、舞浜という街自体に隠された〈世界のほころび〉だった――。新進気鋭のハードSF作家が新たな着想で綴るゼロ年代最高の本格SFアニメ『ゼーガペイン』の語られざるエピソード。巻末に文庫版ボーナストラックを加えた。/【目次】プロローグ/第一章 なぜ守凪了子(カミナギリヨーコ)は映画監督になれないのか/第二章 ホログラフィック・ノイズ/第三章 守凪組/第四章 n番目の祝祭/第五章 ダークディスク/第六章 シェルタリング・サマー/第七章 からまる夏の守凪了子/第八章 エントロピック・アシンメトリ/第九章 舞浜南高校映画研究部/第十章 オケアノス――世界の海/第十一章 夏を継ぐもの/第十二章 831/エピローグ/ポストクレジットシーン ホロニックワールド・エンタングルメント/単行本版あとがき/文庫版あとがき/解説=花澤香菜 -
神々の歩法
一面の砂漠と化した北京。廃墟となった紫禁城に、アメリカ軍の最新鋭戦争サイボーグ部隊が降り立った。標的は、魚座の超新星爆発の影響で吹き飛ばされた高次元知性体が、地球に落下し人間と融合した“憑依体”。その圧倒的な戦闘能力に対し、なす術もなく倒れゆく部隊員たちの眼前に、突如青い炎を曳いて少女ニーナが現れた。自身も憑依体となりながら理性を保つニーナの協力を得て、部隊員たちは世界各地に現れる憑依体に挑んでいく……。〈裏世界ピクニック〉著者による、第6回創元SF短編賞受賞作にはじまる本格アクションSF連作長編!/【目次】神々の歩法/草原のサンタ・ムエルテ/エレファントな宇宙/レッド・ムーン・ライジング/単行本版あとがき/文庫版追記/解説=堺三保/カバー+本文イラスト=窓口基(『東京入星管理局』他) -
〈ときときチャンネル〉シリーズ
十時さくらは配信サービス《ときときチャンネル》で同居人のマッドサイエンティスト・多田羅未貴の発明を紹介し、収益化して生活費の足しにすることを目指す。マグカップで宇宙を飲む? 時間の結晶を飼う? 無限に拡張していく家の中で迷子? 外ロケに出たら異世界へ入り込み、通販でエキゾチック物質をお取り寄せ! 多田羅の発明品が巻き起こすトラブルもこみで、ゆるやかに楽しくお届けします。目指せチャンネル登録者数1000人! 全編配信口調と視聴者コメントで語られる新感覚の百合配信者SF。/【目次】#1【宇宙飲んでみた】/#2【時間飼ってみた】/#3【家の外なくしてみた】/#4【近所の異世界散歩してみた】/#5【エキゾチック物質雑談してみた】/#6【登録者数完全破壊してみた】 -
神様の次くらいに 人の死なない謎解きミステリ集
デートに誘ったはずが「家電量販店に行こう」と言われ、憧れの女性と開店前行列に並ぶことになった大学生の青年。その日遭遇したある謎解きの顛末から、彼は人の優しさについて思いを巡らすことになる。著者の実体験を反映した佳品の表題作ほか、文化祭前日に生徒会副会長が密室の謎に直面する学園もの「ライオンの嘘」、公園からひとつずつ何かが消えていくのはなぜかを名探偵凜堂星史郎が推理する「小さいものから消えよ」など五編を収録する。日々の暮らしのなかにふと入り込んだ謎とその真相を鮮やかに描いた、人の死なない謎解き作品集。著者初の〈日常の謎〉、文庫オリジナル。/【目次】「さくらが丘小学校 四年三組の来週の目標」児童たちのいざこざを収めるため謎解きに挑む新米教師の悪戦苦闘/「ライオンの嘘」男子サッカー部の部室からパソコンが消失。現場は密室だった――/「神様の次くらいに」家電量販店の開店前行列に並んだ先輩と俺のささやかな謎解き/「小さいものから消えよ」公園からひとつずつ何かが消えてゆく? 名探偵凜堂星史郎の推理/「デイヴィッド・グロウ、サプライズパーティーを開く」『星読島に星は流れた』の青年デイヴィッド、セグウェイに乗って再登場/あとがき -
グラスバードは還らない
マリアと漣は大規模な希少動植物密売ルートの捜査中、得意取引先に不動産王ヒューがいることを摑む。彼には所有高層ビル最上階の邸宅で、秘蔵の硝子鳥や希少動物を飼っているという噂があった。ビルを訪れた二人だったが、そこで爆破テロに巻き込まれてしまう! 同じ頃、ヒューの所有するガラス製造会社の関係者四人は、知らぬ間に拘束され、窓のない迷宮に軟禁されたことに気づく。「答えはお前たちが知っているはずだ」というヒューの伝言に怯えて過ごしていると、突然壁が透明に変わり、血溜まりに横たわる男の姿が!? 好評シリーズ第3弾!/解説=宇田川拓也 -
〈邪馬台国はどこですか?〉シリーズ
カウンター席だけの地下一階の店に客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった……。回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活――を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵かつ奇想天外なデビュー作品集。/【目次】悟りを開いたのはいつですか?/邪馬台国はどこですか?/聖徳太子はだれですか?/謀叛の動機はなんですか?/維新が起きたのはなぜですか?/奇蹟はどのようになされたのですか?/*本電子書籍は『邪馬台国はどこですか?』(創元推理文庫 新装新版 2024年8月30日初版発行)を底本としています。 -
綺譚集
散策の途上で出合った少女が美しく解剖されるまでを素描する「天使解体」、白痴の姉とその弟が企てる祖父殺し「サイレン」、陵辱された書家の女弟子の屍体が語る「玄い森の底から」等、妖美と戦慄が彩る幻想小説や、兎派と犬派に分かれた住民たちの仁義なき闘争を綴る「聖戦の記録」の黒い笑い、失われた女の片脚を巡る「脛骨」の郷愁、ゴッホの絵画を再現した園に溺れゆく男たちの物語「ドービニィの庭で」の技巧等々。文体を極限まで磨き上げた十五の精華を収める。孤高の鬼才による短篇小説の精髄。※紙書籍版とはカバー画像が異なります。/【収録作】「天使解体」/「サイレン」/「夜のジャミラ」/「赤假面傳」/「玄い森の底から」/「アクアポリス」/「脛骨」/「聖戦の記録」/「黄昏抜歯」/「約束」/「安珠の水」/「アルバトロス」/「古傷と太陽」/「ドービニィの庭で」/「隣のマキノさん」/解説=石堂 藍 -
山伏地蔵坊の放浪
洒落者の猫井は紳士服店の若旦那、禿頭が眩しい藪歯医者の三島に写真館の床川夫妻、そしてレンタルビデオ屋の僕、青野良児。年齢も職業もまちまちな僕らは、土曜の夜になるとダンディなマスターの店『えいぷりる』に集い、地蔵坊先生の話を聴く。この先生、鈴懸に笈を背負い金剛杖や法螺貝を携え……と十二道具に身を固めた正真正銘の山伏なのだ。放浪中の体験談といって披露してくれるのは、およそ実話とは思えない怪しい事件揃い。額面通りに受け取れば、彼はさながら遍歴する名探偵だが。さて、眉に唾をつけつつ今宵も幕を開けるとしよう――「面白そうですね。ぜひ聞かせてください」/【目次】第一話 ローカル線とシンデレラ/第二話 仮装パーティーの館/第三話 崖の教祖/第四話 毒の晩餐会/第五話 死ぬ時はひとり/第六話 割れたガラス窓/第七話 天馬博士の昇天/あとがき/文庫版あとがき/解説=戸川安宣 -
巨星 ピーター・ワッツ傑作選
地球を発って十億年以上、もはや故郷の存続も定かでないまま銀河系にワームホール網を構築し続けている恒星船と、宇宙空間に生息する直径2億kmの巨大生命体との数奇な邂逅を描くヒューゴー賞受賞作「島」、かの有名な物語が驚愕の一人称で語られるシャーリイ・ジャクスン賞受賞作「遊星からの物体Xの回想」、戦争犯罪低減のため意識を与えられた軍用ドローンの進化の果てをAIの視点で描く「天使」――『ブラインドサイト』で星雲賞など全世界7冠を受賞した稀代のハードSF作家ピーター・ワッツの傑作11編を厳選。日本オリジナル短編集。【収録作】「天使」/「遊星からの物体Xの回想」/「神の目」/「乱雲」/「肉の言葉」/「帰郷」/「炎のブランド」/「付随的被害」/「ホットショット」/「巨星」/「島」/解説=高島雄哉 -
前崎中央高校科学部の事件ファイル
2年生に進級のタイミングで、東京の男子校から群馬県立前崎中央高校に転校してきた安井良。特別教室で活動している部活でも見学に、と思った放課後、化学室で奇妙な女子生徒を見かける。着崩した制服の上に白衣を羽織った金髪ギャルは、何と牛タンを焼いていた!? その女子生徒は、理系クラスのトップで科学部の2年生・木暮珠理だった。こんな強烈な出会いから科学部の面々と交流することになった良は、図書室の呪いの忌書事件、黄泉からの手紙事件、トンネルの悪霊事件に巻き込まれていく――。「東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞」優秀賞を受賞した、学園化学ミステリ!/【目次】#33 図書室の忌書事件……図書室である本を手に取ると呪われる!?/#34 黄泉からの手紙事件……下駄箱に届く白紙の手紙は黄泉からのメッセージ?/#35 トンネルの悪霊事件……丑三つ時にトンネルのまん中で手を叩くと悪霊に憑かれる!? -
わたしのいないテーブルで
新型コロナウイルスが蔓延する2020年春、手話通訳士の荒井尚人の家庭も様々な影響を被っていた。刑事である妻・みゆきは感染の危険にさらされながら勤務をせざるを得ず、一方の荒井は休校、休園となった二人の娘の面倒をみるため手話通訳の仕事ができない。そんな中、旧知のNPOから、ある事件の支援チームへの協力依頼が来る。女性ろう者が、口論の末に実母を包丁で刺したという事件のサポートだ。聴者である母親との間に何が? “コロナ禍でのろう者の苦悩”、“家庭でのろう者の孤独”をテーマに描く、〈デフ・ヴォイス〉シリーズ第4弾。/解説=佐久間文子 -
サーチライトと誘蛾灯
ホームレスを強制退去させた公園の治安を守るため、ボランティアで見回り隊が結成された。ある夜、見回り中の吉森は、公園にいた奇妙な来訪者たちを追いだす。ところが翌朝、そのうちのひとりが死体で発見された! 事件が気になる吉森に、公園で出会った昆虫オタクのとぼけた青年・エリ沢が、真相を解き明かす。観光地化に失敗した高原での密かな計画、〈ナナフシ〉というバーの常連客を襲った悲劇の謎。5つの事件の構図は、エリ沢の名推理で鮮やかに反転する! 第10回ミステリーズ!新人賞を受賞した表題作を含む、軽快な筆致で描くミステリ連作集。/【収録作】「サーチライトと誘蛾灯」/「ホバリング・バタフライ」/「ナナフシの夜」/「火事と標本」/「アドベントの繭」/あとがき/解説=宇田川拓也 -
真実の10メートル手前
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。太刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。日本推理作家協会賞受賞後第一作「名を刻む死」、土砂崩れの現場から救出された老夫婦との会話を通して太刀洗のジャーナリストとしての姿勢を描く「綱渡りの成功例」など粒揃いの6編。第155回直木賞候補作。/解説=宇田川拓也 ※本作品は 2018年3月22日まで販売しておりました単行本電子版『真実の10メートル手前』の文庫電子版となります。 本編内容は単行本電子版と同じとなります。 -
〈たまさか人形堂〉シリーズ
会社をリストラされ突如無職となった澪(みお)は、祖母が遺した小さな人形店を継ぐことにした。人形マニアの青年・冨永と謎多き職人・師村の助けを得て、いまでは人形修復を主軸にどうにか店を営んでいる──自分がモデルになったという、顔を粉々に砕かれた創作人形の修復を希望する美しい女性。だが、その人形が創られたのは、彼女が生まれた頃と思しい三十年以上前のことだと判明する(「毀す理由」)。ほか、伝統的な雛人形を有する旧家の不審死、チェコの偉大な人形劇団の秘密など、名手が人形を通して人の心の謎を描く珠玉の短編を収める。書き下ろし短編「回想ジャンクション」を収録。/解説=紅玉いづき -
深い穴に落ちてしまった
深い森のまん中にある、深い深い穴の底。兄弟は空を見上げ、脱出の方法を思案している。土壁に階段をつくる。弟を肩にかつぎ上げる。どれほど見込みがなくとも、ふたりは生きなければならない。虫や木の根を食べ、泥水を飲む日々が綴られるなか、やがて物語は不可思議な幻覚と、めくるめく謎で満たされていく――。なぜ章番号は素数だけなのか。幻覚に隠された暗号とはなにか。そもそも兄弟はなぜ穴に落ちたのか。ふたりが辿りつく結末は、驚愕とともに力強い感動をもたらす。現代版『星の王子さま』であり、“深い穴”で生きるあなたに捧げる寓話。/解説=西崎憲 -
火星のプリンセス
【映画「ジョン・カーター」原作】南軍の騎兵大尉ジョン・カーターはある夜、アリゾナの洞窟から忽然と火星に転移した。時まさに火星は乱世戦国、地球とは桁外れに発達した科学力を背景に、四本腕の獰猛な緑色人や地球人そっくりの美しい赤色人らが、それぞれ皇帝を戴いて戦争に明け暮れている。その渦中に飛びこんだ快男子カーターは絶世の美女デジャー・ソリスを救い出すべく、剣を片手に超人的な身体能力を駆使して縦横無尽の大活躍を見せる……。スペース・オペラの原点ともいうべき不朽の傑作!解説=高橋良平※本電子書籍版は、2012年3月初版の『[新版]火星のプリンセス』を底本といたしました。1980年2月初版の『火星のプリンセス』および1999年6月初版の『[合本版]火星のプリンセス』の挿絵は収録しておりません。 -
強欲な羊
怖い、でもページを捲る手が止まらない!とある屋敷で暮らす美しい姉妹のもとにやってきた「わたくし」が見たのは、対照的な性格の二人の間に起きた数々の陰湿で邪悪な事件。ついには妹が姉を殺害するにいたったのだが――。はたして“羊の皮を被った狼”は姉妹どちらなのか?圧倒的な筆力で第7回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」に始まる“羊”たちの饗宴。揺れ動く男の心理と狡猾な女を巧みに描く「背徳の羊」。愛する王子と暮らす穏やかな日々が崩壊する過程を、女たちの語りで紡ぐ「ストックホルムの羊」ほか全5編。女性ならではの鋭い狂気が秀逸な連作ミステリ。 -
卒業したら教室で
伊神さんの卒業から丸一年、市立高校にまた卒業の季節がやってきた。今年は柳瀬さんをはじめ、仲のよかったひとつ年上の先輩たちが学校を巣立っていく。そんな、しんみりとしたある日の放課後、秋野麻衣が、おずおずと相談にやってきた。鍵のかかった真っ暗なCAI室で、不可解なものを見たらしい。書道室や山岳部の部室などでも謎の人物の出現と消失があったという情報が寄せられ、卒業生によるとそれは「兼坂(んねさか)さん」という市立高校「八番目の七不思議」らしいが……。トリックメーカーである似鳥鶏が贈る、予測不能の〈市立高校シリーズ〉最新作。 -
星読島に星は流れた
天文学者サラ・ディライト・ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年、天体観測の集いを開いていた。ネット上の天文フォーラムで参加者を募り、招待される客は毎年、ほぼ異なる顔ぶれになるという。それほど天文に興味はないものの、家庭訪問医の加藤盤も参加の申し込みをしたところ、凄まじい倍率をくぐり抜け招待客のひとりとなる。この天体観測の集いへの応募が毎年驚くべき倍率になるのには、ある理由があった。孤島に上陸した招待客たちのあいだに静かな緊張が走るなか、滞在三日目、ひとりが死体となって海に浮かぶ――奇蹟の島で起きた殺人事件を描く、俊英会心の長編推理! -
今だけのあの子
結婚おめでとう、メッセージカードを書く手が震える。大学時代、新婦とは一番の親友だった。けれど恵には招待状が届いていない。たった6人しかいない同じグループの女子の中で、どうして私だけ線引きされたのか。呼ばれてもいない結婚式に出席しようとする恵の運命、そして新婦の真意とは(「届かない招待状」)。進学、就職、結婚、出産、女性はライフステージが変わることでつき合う相手も変わる。「あの子は私の友達?」心の裡にふと芽生えた嫉妬や違和感が積み重なり友情は不信感へと形を変えた。めんどうで愛すべき女の友情に潜む秘密が明かされたとき、驚くべき真相と人間の素顔が浮かび上がる傑作ミステリ短篇集全5篇。/解説=大矢博子 -
自殺予定日
「美しく強かな継母が父を殺した」再婚してわずか一年半足らずで父が急死。遺産とビジネスを受け継ぎ生き生きと活躍する継母の姿に、女子高生の瑠璃はそう確信した。彼女は自らの死をもって継母の罪を告発しようと決意する。しかし自殺の名所として有名な山奥の森で首を吊ろうとしたところ、かつて同じ森で首吊り自殺したという“幽霊”と出会い、裕章と名乗る彼に継母の罪の証拠を一緒に探そうと提案される。瑠璃が決めた期限以内に見つからなければ、その時死ねばいいと。六日後──それが瑠璃の自殺予定日となった。継母の罪を暴き、父の無念を晴らせるのか?! すべての予想を裏切る、一気読み必至の傑作ミステリ!/解説=池上冬樹 -
月光ゲーム
夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々――江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく……。いったい犯人は誰なのか? そして、現場に遺されたYの意味するものは何? 平成のエラリー・クイーン=有栖川有栖の記念すべきデビュー長編。 -
仔羊の巣 ひきこもり探偵シリーズ2
季節はめぐり、僕、坂木司と鳥井真一の間にもゆっくりと変化の兆しは訪れていた。ひそやかだが確実な羽ばたきの予感、それが僕を不安にさせる。鳥井がひどい風邪をこじらせたある日、僕は同僚の吉成哲夫から、同期の女性の様子がおかしいと相談される。病気の鳥井に代わって慣れない探偵役をつとめることになった僕は・・・・・・。また、木工教室を開くようになった木村栄三郎さんのもとで出会った男性、そして地下鉄の駅構内で見掛けた少年が抱える悩み、そして僕自身に降りかかる悪意の連続、それらの真実を鳥井はどう解くのか――。坂木と鳥井に加わる、新たな仲間と風。ひきこもり探偵シリーズ第二弾。 -
無常商店街
姉から猫の世話を頼まれ、 見知らぬ町に滞在することになった翻訳家の宮原。ある日、 近づかないように忠告されていた商店街にうっかり足を踏み入れてしまう。常に景色が変容し、 重なりあった異界が垣間見える商店街の深淵から、アリアドネの伊藤と名乗る人物に救出されるも、姉が異界の町の御神体にされたという事実を知らされる。事態を打開するには、 来たる 「掌紋祭」 の 「踊り合い」 で異界に近づく必要があるという。宮原は祭りに参加するべく、 町のダンス教室で猛特訓を積むことに。言葉とイメージの奇術師・酉島伝法が贈る往(ゆ)きて踊りし物語!/【目次】無常商店街/蓋互山、葢互山/野辺浜の送り火/巻末特別対談 カシワイ×酉島伝法 -
昨日まで不思議の校舎
にわか高校生探偵団、市立最大の謎に挑む! 超自然現象研究会の会誌〈エリア51〉臨時増刊号が特集した「市立七不思議」が何者かに影響を与えたのだろうか? 突如休み時間に流された、七不思議の一つ「カシマレイコ」を呼び出す放送。そんな女子生徒は、もちろん存在しない。さらにその日の放課後に、四ヶ所で発見された「口裂け女」を模した悪戯、さらにさらに翌日には「一階トイレの花子さん」まで用務員室に出現。なぜ七不思議のうち、この三つが現われたのだろう? かつては七不思議ではなく、「市立三怪」だったということを突き止めた葉山君、そして伊神さんは、その背後にある悪意に気づくが……。コミカルな学園ミステリ・シリーズ長編。 -
最良の嘘の最後のひと言
検索エンジンとSNSで世界的な成功を収めた企業・ハルウィンには、超能力研究の噂があった。それを受け、ハルウィンはジョーク企画として「4月1日に年収8000万で超能力者をひとり採用する」という告知を出す。そして審査を経て、自称超能力者の7名が3月31日の夜に街中で行われる最終試験に臨むことに。ある目的のために参加した大学生・市倉は、同じ参加者の日比野という少女と組み、1通しかない採用通知書を奪うため、策略を駆使して騙し合いに挑む。『いなくなれ、群青』、〈サクラダリセット〉の著者が贈る、ノンストップ・ミステリ。/解説=大森望 -
コーチ
期待されながら伸び悩む若手刑事たちの元に、警視庁本部から送りこまれる謎の男、向井光太郎。捜査上の失態を悔やみ、男社会での自身の立場についても苦悩する女性刑事。取り調べ係を目指しながら、容疑者である有名俳優相手に苦戦する刑事、尾行が苦手な刑事。彼らそれぞれに的確なアドバイスを与えるその男は、警務部人事二課所属だった。経験を積み、本部の捜査一課所属となり出会った三人は、向井との関わりを語り合い、彼の知られざる過去を探り始める。彼の過去と三人が担当する女子大生殺害事件が交錯し、見えてきた思いも寄らぬ事実とは?/解説=古山裕樹 -
夜の写本師
右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジストに、目の前で育ての親を惨殺されたことで、彼の人生は一変する。月の乙女、闇の魔女、海の女魔道師、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。宿敵を滅ぼすべく、カリュドウは魔法ならざる魔法を操る〈夜の写本師〉としての修業をつむが……。日本ファンタジーの歴史を塗り替え、読書界にセンセーションを巻き起こした著者のデビュー作。 -
戦前日本モダンホラー傑作選
「大正末期から昭和十年代半ばにかけての十数年間は都市部を中心に「昭和モダン」と呼ばれるスマートで軽快な大衆文化が栄え、人々がこぞって新奇な刺激と快楽を追い求めた時代であった。同時に、生活様式の変化にともなって昔ながらの怪談とは趣きを異にする新しいスタイルの怪奇小説が生まれ、娯楽として享受された時代でもある」(序文より)この時代の研究者が精選した21篇。当時ホラー小説の分野で中心的な存在だった〈新青年〉誌掲載作を除外し、犯罪実話雑誌から少年誌まで幅広い媒体から集めた。/【目次】序文 恐怖が娯楽だった時代 会津信吾/高田義一郎「疾病(しっぺい)の脅威」/椎名頼己「屍蝋(しろう)荘奇談」/渡邊洲蔵「亡命せる異人幽霊」/西田鷹止「火星の人間」/角田喜久雄「肉」/十菱愛彦「青銅の燭台(しょくだい)」/庄野義信「紅棒で描いた殺人画」/夢川佐市「鱶(ふか)」/小川好子「殺人と遊戯と」/妹尾アキ夫「硝子箱の眼」/宮里良保「墓地下(ぼちした)の研究所」/喜多槐三「蛇」/那珂良二「毒ガスと恋人の眼」/高垣眸「バビロンの吸血鬼」/城田シュレーダー「食人植物サラセニア」/阿部徳蔵「首切術の娘」/米村正一「恐怖鬼侫魔(きねま)倶楽部奇譚」/小山甲三「インデヤンの手」/横瀬夜雨「早すぎた埋葬」/岩佐東一郎「死亡放送」/竹村猛児「人の居ないエレヴエーター」 -
緋色の研究【深町眞理子訳】
アフガニスタンへの従軍から病み衰えて帰国した元軍医のワトスン博士。ロンドンで下宿を探していたところ、偶然に同居人を探している男を紹介され、共同生活を送ることになった。下宿先はベイカー街221番地B、相手の名はシャーロック・ホームズ――。ホームズとワトスン、永遠の名コンビの誕生であった。ふたりが初めて手がけたのは、空き家でのアメリカ人旅行者の奇妙な殺人事件。いくつもの手がかりから、ホームズの精緻な推理によって浮かびあがった驚きの真相の背景には、長く哀しい物語があった……。名探偵ホームズ初登場の記念碑的長編!/解題=戸川安宣、解説=高山宏 -
ゲノム・トーカー
2034年。木星圏へ投入された探査機「さいせい」は、ミッションの途上で奇妙な電波源に遭遇する。カメラに映り込んだ巨大な黒い影──直径100メートル、全長500メートルの円筒は、現生人類がはじめて接触する異星種族の宇宙船だった。彼らは1万6000年前に放たれた人類の全遺伝情報(ゲノムデータ)を受信し、発信源を辿って太陽系を訪れたのだという。だがあらためて言うまでもなく、当時の地球上には高度な文明など存在しなかったはずだ。ゲノムを他星系に送信したのは、未知の超古代文明なのか? それとも……。圧倒的な知的興奮を喚ぶ、人類史×宇宙SF。 -
あなたには、殺せません
「犯人だって、好きで犯罪に走ろうとしているわけではありません。必ず迷いがあります。その段階でうちに来てもらえれば、犯罪の発生を未然に防ぐことができます」──そのNPO法人には、罪を犯すか悩む人が相談にやってくる。相談員はそんな犯罪者予備軍たる人々から聞き出した犯行計画の穴を次々と指摘していく。相棒の剽窃に怒るミュージシャン、夫の罪が露見することを恐れる妻、想い人の死に復讐を決意した大学生……。不備を突かれた者たちの殺意は、果たして本懐を遂げるのか。犯罪発生を未然に防ぐ!? 新しい形の倒叙ミステリ短編集!/【目次】五線紙上の殺意/夫の罪と妻の罪/ねじれの位置の殺人/かなり具体的な提案/完璧な計画/解説=若林踏 -
アウシュヴィッツの恋人たち
23歳で強制収容所に移送されたツィッピ。グラフィックデザインの腕を見こまれ事務職に就き、さまざまな手段で大勢の収容者の命を救う。16歳のダヴィド。家族を殺害され、同じ収容所に到着した彼は、音楽の才を活かして極限の環境を生き延びる。初めて会った瞬間からふたりは恋に落ち、命がけの逢瀬を重ねる。やがて解放のときがきて、ツィッピはダヴィドと再会を約した地に向かうが──。アウシュヴィッツで出会ったふたりの70年の軌跡を描く傑作ノンフィクション! -
蒼志馬博士の不可思議な犯罪
私は殿島直紀、弁護士である。今にして思えば、私の事務所の隣に住む綾子が姿を消したことが事件の発端だった。いっしょに暮らしていた孤児たち四人を残して消えた綾子。私が密かに思いを寄せていた彼女は、姿を消す前に米軍接収地でトラブルに巻き込まれていた――。同時期、米軍宛に蒼志馬博士を名乗る人物から脅迫状が届く。「粗暴な米軍は即刻去るべし。さもなくば私の開発した殺人兵器で死にゆく運命にある」と。綾子の失踪に蒼志馬博士なる人物は関係しているのか?キザで眉目秀麗な荒城、学ランの義手探偵・真野原の活躍を洒脱に描く、本格ミステリ連作集。シリーズ第三弾。 -
青の王
砂漠に咲く奇跡の都ナルマーン。王宮の上空では翼をもつ魔族が飛び交い、豊かな水をたたえた池の中には魚や竜の姿をした魔族が泳ぐ。ナルマーンの王は神に選ばれ、魔族を操る力を授けられたのだ……。そんなナルマーンに住む孤児の少年ハルーンが出会ったのは、不思議な塔に閉じ込められたひとりの少女だった。ハルーンは、自分の名前も知らないというその謎めいた少女を助けて塔を脱出する。だが彼らのあとを、魔族が、そしてナルマーン軍が追いかけてきたのだ! 〈妖怪の子預かります〉シリーズで大人気、気鋭の著者が贈る傑作異世界ファンタジー。 -
蒼の上海-Sogen SF Short Story Prize Edition-
地球が蒼類と呼ばれる異生命体に支配され、ほとんどの生き物が死滅した未来。一部の人類は海底都市へと逃げ込み、人造人間〈イレニアム〉たちを使役して海中に潜んで暮らすようになっていた。荒廃した中国・上海に、六つのポッドが着底した。海底から送り込まれたイレニアムの作戦部隊だ。彼らの任務は蒼類の活動を抑制する酵素を持つ陸生サンゴ・アマノリスの採取することだった。隊員のアニカは生まれて初めて大地を踏みしめ、訓練の記憶を頼りに街を駆け抜ける。しかし、作戦遂行のために脳内に埋め込まれた装置が解除されたことで、その視界に色彩あふれる幻の上海の姿が現れ……自らの使命と向き合う主人公の心の機微を、現実と幻が交錯する都市の姿に重ねて描く、第11回創元SF短編賞受賞作。※本電子書籍は、『Genesis されど星は流れる』(東京創元社 2020年8月28日初版発行)に収録の「蒼の上海」のみを電子書籍化したものです。『Genesis されど星は流れる』全ての電子書籍版ではございませんのでご注意ください。 -
赤い靴の誘惑
ケイティ・チャンドラー26歳。ニューヨークに出てきて1年余り。やっと自分の能力をいかせる職場と巡り合い、どうやら彼氏のいない生活からも卒業の気配。一見順風満帆のようだが、やはり人生そううまくはいかないもの。スパイ事件が発生し、社内の雰囲気は最悪に。魔法に免疫のあるケイティがスパイ事件の調査を任され、ただでさえ目が回るほどの忙しさのなか、なんとテキサスからパパとママがやってくるという。つき合いはじめたばかりの、会社の顧問弁護士で免疫者(イミユーン)仲間イーサンの協力で、なんとか無事乗りきれると思った矢先、ママが変なものが見えると言い出した。危うし、ケイティ! 好評〈(株)魔法製作所〉第2弾。 -
赤い館の秘密
長閑な夏の昼下がり、田舎の名士の屋敷、赤い館で一発の銃声が轟いた。死んだのは、オーストラリアから15年ぶりに館の主マークを訪ねてきた兄ロバート。死体を発見したのは館の管理を任されているマークの従弟ケイリーと、館に滞在中の友人を訪ねてきた青年ギリンガムだった。発見時の状況から一緒にいたはずのマークに疑いがかかるが、肝心のマークの行方は杳として知れない。興味を惹かれたギリンガムは、友人ベヴァリーをワトスン役に、事件を調べ始める。『クマのプーさん』で有名な英国の劇作家ミルンが書いた長編探偵小説、新訳決定版。/解説=加納朋子 -
赤銅の魔女 紐結びの魔道師1
凋落久しいコンスル大帝国の領地ローランディアで暮らしていた魔道師リクエンシスの平穏を破ったのは、隣国イスリル軍の襲来だった。イスリル軍の先発隊といえば、黒衣の魔道師軍団。下手に逆らわぬほうがいいと、リクエンシスは相棒のリコらと共に、慣れ親しんだ湖館を捨てて逃げだした。ほとぼりが冷めるまで、どこかに身を寄せていればいい。だが悪意に満ちたイスリル軍の魔道師が、館の裏手に眠る邪悪な魂を呼び覚ましてしまう……。招福の魔道師リクエンシスが自らの内なる闇と対決する、〈オーリエラントの魔道師〉シリーズ初の三部作開幕。