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命を助けた若者に、つらい人生を歩んできたゆえの奇怪な風貌を罵倒され、心が折れてしまった老姉妹。10年の長きにわたり、部屋で安らかに眠り続ける少年。屋敷の敷地内に薄暗い洞窟を持つ金持ち夫婦に雇われて、“隠者”となった男。“蝶の修理屋”を志し、古物店で見つけた手術道具を使って博物館に展示されている標本の蝶を蘇らせようとする少年。家の近くの丘で掘り出した骨を集め、ネックレスを作る少女。――ブッカー賞最終候補作の著者が、日常と異常の境を越えてしまい異様な事態を引き起こした人々を描く、奇妙で愛おしい珠玉の短編集。/【目次】ピアース姉妹/眠れる少年/地下をゆく舟/蝶の修理屋/隠者求む/宇宙人にさらわれた/骨集めの娘/もはや跡形もなく/川を渡る/ボタン泥棒/訳者あとがき/解説=石井千湖
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Posted by ブクログ
どの短編も奇妙で、ちょっとまぬけで
ちょっと残酷で、ちょっとワクワクして、
とにかくおもしろかった。
中でも蝶の修理屋さんの小道具を手に入れた少年の話しは、ワクワク感がすごかった。
蝶のコレクションを見ると、美しいのだけれど、
これほどの蝶を殺してミイラにしているかと、
思うと、なにか違うんじゃないかと思う気持ちは
よくわかるし、そう思ってもきた。
少年の努力と思いが報われた瞬間は、もうたまらなくスッキリとして、ほっこりとして、嬉しくなった。
それに火星人がきたと大騒ぎになる子供たちの話し。
これは楽しかった。常になにかに飢えて、冒険をしたくなるお年頃。つまらない日常が一瞬にして
ワクワクだらけの非日常になる。
それに対する大人たちの対応もすごかった。
ことに校長先生のアイデアは脱帽。
子供たちのワクワクをつぶさずに、本当に上手に収束させている。
こんな大人ばかりだったら、子供たちは、のびのびと素敵な成長を遂げることでしょう。
よい読書時間となりました。
Posted by ブクログ
ミック・ジャクソンとは「こうしてイギリスから熊がいなくなりました」で出会った。現代作家だが、作品の設定に時代感があり、1960年生まれということに意外さを感じた。
私の最近のもう1人のお気に入り、ジョン・コナリー同様、ものすごい才能なのに日本での知名度は低く、翻訳本も少ない。
”熊“がまさしくそうだが、この短編集でも、かなりの奇想天外な話が淡々と語られ、しかもほとんどが静かに終わる。
彼の代表的な作品の世界は、乾いていて寂しげだ。「ピアーズ姉妹」しかり「地下をゆく舟」しかり「蝶の修理屋」しかり。
しかし登場人物たちはそれを悲観するでもなく、頑なに静かで揺るぎない。
時折、心の中を隙間風が通るようではあるが、すぐに日常の習慣に立ち戻っていく。
彼らの暮らしぶりには無駄がなく、時計の針のように正確に日常を刻む。夢や理想を追うことのない生き方は、寂しさや哀しみから彼らを守ってくれている。
だが、彼らに非日常(溺れていた男、ボートと洪水、標本の蝶と修理道具)が襲いかかると、さすがの彼らにも夢や興奮が生まれ、突如として大胆になり、もの凄い行動力を発揮する。何とも恐ろしい小市民だ。
そして彼らはそれぞれに自分流のやり方で非日常を飲み込んでしまい、よってほとんどの話の結末は”静かに閉じる“のである。
もっともっと読みたくさせる作家である。
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