あらすじ
命を助けた若者に、つらい人生を歩んできたゆえの奇怪な風貌を罵倒され、心が折れてしまった老姉妹。10年の長きにわたり、部屋で安らかに眠り続ける少年。屋敷の敷地内に薄暗い洞窟を持つ金持ち夫婦に雇われて、“隠者”となった男。“蝶の修理屋”を志し、古物店で見つけた手術道具を使って博物館に展示されている標本の蝶を蘇らせようとする少年。家の近くの丘で掘り出した骨を集め、ネックレスを作る少女。――ブッカー賞最終候補作の著者が、日常と異常の境を越えてしまい異様な事態を引き起こした人々を描く、奇妙で愛おしい珠玉の短編集。/【目次】ピアース姉妹/眠れる少年/地下をゆく舟/蝶の修理屋/隠者求む/宇宙人にさらわれた/骨集めの娘/もはや跡形もなく/川を渡る/ボタン泥棒/訳者あとがき/解説=石井千湖
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Posted by ブクログ
本当に奇妙なはなしなんですが、どこかで何かが救われるような気がしました。
いい本に巡り合えたと思います。
どの話も良かったのですが、『宇宙人にさらわれた』はほんとにいい話です。
ぜひたくさんの人に読んでもらいたい。
Posted by ブクログ
不思議なお話
ハッピーエンドではない
お話もあったけれど
その顛末に共感してしまった
宇宙人にさらわれた
骨集めの娘
ボタン泥棒
は優しく穏やかな読後感
川を渡る
はちょっと笑ってしまった
Posted by ブクログ
ミック・ジャクソンとは「こうしてイギリスから熊がいなくなりました」で出会った。現代作家だが、作品の設定に時代感があり、1960年生まれということに意外さを感じた。
私の最近のもう1人のお気に入り、ジョン・コナリー同様、ものすごい才能なのに日本での知名度は低く、翻訳本も少ない。
”熊“がまさしくそうだが、この短編集でも、かなりの奇想天外な話が淡々と語られ、しかもほとんどが静かに終わる。
彼の代表的な作品の世界は、乾いていて寂しげだ。「ピアーズ姉妹」しかり「地下をゆく舟」しかり「蝶の修理屋」しかり。
しかし登場人物たちはそれを悲観するでもなく、頑なに静かで揺るぎない。
時折、心の中を隙間風が通るようではあるが、すぐに日常の習慣に立ち戻っていく。
彼らの暮らしぶりには無駄がなく、時計の針のように正確に日常を刻む。夢や理想を追うことのない生き方は、寂しさや哀しみから彼らを守ってくれている。
だが、彼らに非日常(溺れていた男、ボートと洪水、標本の蝶と修理道具)が襲いかかると、さすがの彼らにも夢や興奮が生まれ、突如として大胆になり、もの凄い行動力を発揮する。何とも恐ろしい小市民だ。
そして彼らはそれぞれに自分流のやり方で非日常を飲み込んでしまい、よってほとんどの話の結末は”静かに閉じる“のである。
もっともっと読みたくさせる作家である。
Posted by ブクログ
★★★★☆「ピアース姉妹」「眠れる少年」「蝶の修理屋」の三作が印象的でした。1番初めにピアース姉妹の話からでインパクトがありました。詳しいあとがき、解説も読んで他の作品も読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
短編という形式にピッタリの話が10編。訳者あとがきにあるように、日常と非日常・正気と狂気な境界線、そのギリギリのところにいる人々の話だ。切なく愛おしい人たちの物語に、珍しくも心が動いた。
Posted by ブクログ
「こうしてイギリスから熊がいなくなりました」繋がりで、また同じく挿絵のデイヴィッド・ロバーツに惹かれて。
・ピアース姉妹
・ボタン泥棒
・宇宙人にさらわれた
がお気に入り。
どれもブラックユーモア的で、挿絵が今にも飛び出し動き出しそうな物語たち。
Posted by ブクログ
奇妙な10の短篇集。穏やかに暮らしている人が何かに巻き込まれた途端に現れる奇妙な一面がさらりと描かれています。白黒の挿絵もこの作品にとても合っていて、このテイスト大好きです。
どの作品も個人的には好み(珍しく外れなし)ですが特に好きなのは、少年少女が主人公の少しダークで不可思議なお話の「蝶の修理屋」と「骨集めの娘」です。
「ピアース姉妹」
浜辺の家で穏やかに暮らしていた姉妹が繰り広げるホラー。
「地下をゆく舟」
途中までコメディかと思いきや、「いやいやこれヤバくない?」と主人公と一緒に濁流に流されながらラストへ。悲しみや寂しさを感じる終わり方。
「蝶の修理屋」
こんなに綺麗な画を思い浮かべられる作品は久しぶり。彼に修理された蝶を見てみたい。死にたくはないですが(笑)
「隠者求む」
サキっぽいですね。もちろん好きです。
「宇宙人にさらわれた」
子供たちの暴走。絵本っぽくてかわいい。
「骨集めの娘」
少女は丘の上で集めた骨でネックレスを作る。でもその骨は何の骨?
「もはや跡形もなく」
母親が少年を捨てたのか、少年が母親を捨てたのか。
「川を渡る」
ご遺体がひどい目に合うのにクスクス笑いながら読みました。すみません(笑)
「ボタン泥棒」
海外作家さんが書くどうしようもなく性格の悪い動物がとても好きです。(昨今、動物を良き存在としてでしか描けない風潮を感じ、少し堅苦しいなぁと感じています。)
サキやロアルド・ダールの作風が好きな方にお勧め。
#10の奇妙な話 #NetGalleyJP
Posted by ブクログ
邦題は「奇妙」原題は「哀れ」となる。
奇妙なストーリーの中に奇妙なキャラクター達が登場する。
奇妙なキャラクター達が哀れなのでは無く、奇妙なキャラクター達によって哀れな被害を受ける人達が存在している。
「ピアース姉妹」だと明確に指摘されてる哀れな男だし
「地下をゆく舟」なら、その街に暮らす人々だろう
「もはや形跡もなく」なら、スーツケースに詰め込まれた靴下達だと思う。
しかし「地下をゆく舟」や「蝶の修理屋」では、神秘的な情景が目に浮かぶ時もあり
何とも奇妙なミック・ジャクソンワールドが体験できる素敵な短編集でした。
Posted by ブクログ
コンテのようなショートストーリーが10篇おさめられているのですが、奇妙奇天烈な物語で映像が浮かんでくると不気味だたり、滑稽だったり、美しかったりと読後はモヤモヤが残るんですが心地よかったりです。
正気と狂気、日常と非日常の境界線で揺れるファンタジーにSF、サイコホラーな感触がおどろ可笑しく影絵をみてるようなナイトメアーでした。
ティムバートンのイラストを彷彿させるタッチでアダムスファミリーかって表紙絵がそれぞれの話の主人公たちなんです。
映像的には「蝶の修理屋」なんですが1000匹の蝶が飛び交うシーンは幻想的なんだけど集合体恐怖症の私は想像しただけで鳥肌たってしまいました。
「宇宙人にさわらわれた」では集団心理で動かされる子供たちの群れが怖かったり、UFOがエンジン音と共にギアチェンジして角を曲がって去っていくシーンなんか滑稽に映りました。
Posted by ブクログ
狂気と正気の境界線、越えてしまったり、戻ってきたり。
寒々として冷んやりしていて灰色な、雨降りの冬のイギリス様な世にも奇妙な物語。
挿絵がいい!