ミステリーでもないのにこんなに続きが気になってしまったのは初めてかもしれない。本当にどのストーリーも面白かった。
「何も傷つけないように、おやすみ」
同じ施設で育った暴力癖のある鉱一と智己。ずっと同じ道を辿ってきた2人が、これから歩む別々の道。家族が出来た智己と、1人になってしまった紘一。2人とも家族というものを知らないで育ってしまったけど、きっと誰かの温もりを感じることで人間としての大切な感情や、大切にしたいと思う感情を培っていくのだと思う。2人ならきっと大丈夫。
「明日世界は終わらない」
このお話はすごい深くて、ずっと頭から離れない。
綺子のことが好きな竜朗、周のことが好きな綺子、竜朗のことが好きな周。なんだこの三角関係は。この誰も幸せになれない関係はいつか終わるだろう。でも今この瞬間がずっと続けばいいのにと思うくらい幸せそうで、楽しそうで読みながら本当に眩しかった。それは夜の明かりでもあるし、3人の関係性でもある気がする。
「不自由な大人たち」
中学の頃からの親友の志津と櫻子。結婚して子供もいる櫻子と、何故か既婚者ばかりに好かれてしまい、最終的に後腐れのない不倫に落ち着いてしまっている志津。志津や、相手のダニエル、是枝さん、桂木さんのような生き方をしてる人が本当にいるのだろうかと不思議で全く知らない世界だった。でもただの友達のために自分の生き方を簡単に辞めてしまう志津にはもっとびっくりした。正直何が正解か分からないし、志津のような生き方は自分には想像もできないけど、このよく分からないという感情を知れて良かった。
「家族の事情」
これがまた面白かった。二卵性双子の亜門と杏子。全く正反対の2人が寄り添いながら生きる姿。そして何も考えてないようで、いつも迷惑ばかりかけている杏子が、亜門よりも亜門のことを分かっているところが感動的だった。そして上司の藤本さんが私にもキラキラ輝いて見えたし、2人の家族になってくれたらどんなに幸せかと思った。
「砂が落ちきる」
後輩に彼氏と別れるのを手伝わされた真野。そこで出会った相手の男成田光洪。その男に半年後いきなり処女を捨てるという自分のバケットリストを叶えるために依頼する。読んでいても成田光洪はかなり女慣れしているし、優しいけど自分の話はしない所、生活感が感じられない所、真顔から笑顔になる瞬間、きっと大半の女性が好きになる相手だなと思った。真野とは住む世界が違うような存在だけども、2人に共通するのは人に執着していない事。きっと45歳になった時、2人は食事になんて行かないきがする。でも今だけはこの約束とも言えない約束がお互いの人間らしさを保つお守りになるような気がする。