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Posted by ブクログ
『ふたりの窓の外』がとても良かったし、ミユキさんからのご紹介もあって。
5作品からなる短編集。
●空と窒息
短めの文章が淡々とした印象だったが、むんとした真夏の空気が息苦しさを感じさせる。
けれど、息苦しいのは夏のせいだけじゃない。
「音はないのに夏だとわかる。…(略)…強引な光のせい。」
「なつのくらやみ。」
「…(略)…そういうのをいきなり過去に放り投げ、元には戻らないことを無言のうちに同意した。」
●昆虫標本
大きな館に住むハーフの同級生、藍莉。
切手の収集がきっかけで、千夏は藍莉の家にお呼ばれする。
美しい藍莉は同性でありながら不思議な魅力を放っている。
美しい者ってそれだけで優位的だ。
千夏はいつもよりちょっぴりドキドキ度高めの夏休みを過ごす。
「生きていくことはグロテスクだ。」
●宵闇の山
ミナミ、トキヤ、ヤマト、サツキ、シュウ。
男の子5人組。
夏祭りの夜。
少年時代の思い出と現在とを、ストーリーは行ったり来たりしながら進む。
でもミナミは…。
「一年に一度の、夏休みの一日くらい、夢とか幻とか、みてもいいだろ。」
●生き残り
高校生活最後の夏。
梨奈は付き合うのに「ちょうどいい人」を探している。
見た目がそこそこよくて、私より背が高くて、受験にそこまで熱心じゃなくて、馬鹿でもなくて、東京の大学に行かない人。
東京の大学に進学したら都会の人と付き合いたいから、付き合うのはそれまででいい。
そして見つけたターゲットは、篠くん。
この話がダントツで一番好きだった。
どんでん返しで超切ないやつ!
『ふたりの窓の外』でも感じたけど、この、ギリギリで切ない感じが、深沢さんてとても上手い。
●夏の直線
失踪した父は小説家だった。
父の別荘である海辺のアパートで、夏の一週間を過ごすことにした羽白(はしろ)。
そして夜の海辺で、父を知るアオと出会う。
「すでに静寂が鳴っている。」
「美しい星空には、いつも後ろめたさを覚える。」
「あとがき」にある、「夏休みという短い永遠に生きる彼らと、少しだけいっしょに時間を過ごしていただければと思います。」の文章が印象的だった。
本作は青春小説なのだけど、よくある爽やかなものとは全く違う読み心地。
全て読み終えてから改めてタイトル『この夏のこともどうせ忘れる』を思い返すと、なんとも言えない気持ちに襲われる。
タイトルが秀逸だ。
タイトルを読むと全ての短編がキラキラと愛おしく、一番好きだった「生き残り」に再びギュッと胸を掴まれる思いだった。
Posted by ブクログ
日常と非日常のまじわるこの絶妙なかんじ…すごく好みだった。
読者にゆだねる終わり方も◎
自分好みでない結末よりは妄想する方がいいし…
何回も読みたくなるし、読む返すと伏線もたくさん見つけられて感動した。
この春自分も高三になるからか、同じ高三の女の子が主人公の「生き残り」が一番印象に残った。彼女のような恋への積極性は皆無だけど、似たような考え方に共感してしまったり、篠くんのような性格の子いるなぁ、そういう子が好きだった、と思ったり、最後は号泣してしまった。
「空と窒息」蒸し暑い空気感が伝わってきたのと、秘密を共有したことで変わっていく香乃との関係がとてもよかった。
「昆虫標本」兄にゲームで負けた、という藍莉のセリフでまさか?!となった。
とにかくこの時期に読めてよかった。
高三の夏を過ぎてからだともっと高校生活謳歌しておけばよかったって後悔しそうだし。
今同級生に全力でおすすめしたい一冊。
毎日を人生最後の日のように全力で生きよ、という発想は、わたしにはちょっとマッチョすぎるけど、毎日を高校生活最後の日のように全力で恋せよ、というのはいいな、と思った。きらきらしていて。「生き残り」
Posted by ブクログ
タイトルの「どうせ」は、開き直りではなく〈あきらめ〉〈投げやり〉でしょうか? 独立した書き下ろし 5篇で、各章題にタイトル作はありません。それぞれ味わいの異なる夏の一コマが描かれています。
夏休みの高校生が主軸で、毎日の暑さが鬱陶しい今の季節にピッタリではあります…。が、青春ものとは言え、どの作品も爽やか系ではなくほの暗い系で、夏休みと主人公、光と影の対比が鮮やかです。
病んでいる話、次第にホラー色へ傾く話、幽霊と友人の幻想的ノスタルジー、背伸びしてつくった彼氏の秘めた謎、失踪した父の海辺の別荘での不思議な出来事‥‥。眩しい夏の裏に潜む高校生の鬱屈した想いが、少し不気味な湿気を帯び、特有の危なっかしい感情とともに映し出されます。
大人から観れば、高校生はもちろん眩しく羨ましい限りです。そして人生経験を重ねれば、大概のことは笑って済ませたりスルーすることもできます。ある意味、良くも悪くもそれらを忘れてしまうからでしょうか…。
〈爽やか〉に代表される青春時代は、キラキラよりむしろこっちが現実的なのかもしれません。高校時代の特別な時間の流れを、濃い影としてさりげなく示し、結末や核心をあえてぼかした表現が、返って哀切さを呼び余韻を残している気がします。大人にも遠い昔の甘酸っぱい記憶を呼び起こさせてくれる短編集でした。
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