あらすじ
自分を裏切った恋人ともうすぐ旅行に出かけるはずだった女、その恋人の代わりに旅に同行することを申し出た男。なぜか承諾してしまった女は、それまで見ず知らずだった男と春の宿で一夜を過ごすことになる――。春の宿、夏の墓参、秋のドライブ、そして冬の宿。火葬場での出会い以来、それぞれの季節に一度ずつしか会うことのなかったふたりの一年を四章仕立てで描いた、絵画のような恋愛小説。『眠れない夜にみる夢は』の著者の新境地的傑作。/【目次】1 花を摘まない/2 流れる浮雲/3 雨は道連れ/4 最初に触れる雪
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Posted by ブクログ
二人の少しずつ距離が近づいていく、探り探りで焦ったいけどそれがまたよい。
4つの季節の描写も素敵だった。
これから二人はどんな季節を過ごしていくのだろうか、想像するだけで幸せな気持ちになりながら本を閉じた。
Posted by ブクログ
なんだかとても良かった。
そんな出会い方ないよとは思うけど、この出会い方だからこそのお話。
鳴宮さんいいなぁ。
この二人は結果離れてしまうんだろうなと思っていたのに、ラストはにんまり。
Posted by ブクログ
なんて素敵な大人の恋愛小説。いくつかの恋を経てひとりでいる大人には刺さる小説のはずだ。あるいは、恋人なんてもういいかなぁというときが一度でもあったことがある大人に刺さるはずだ。
父親を亡くした俳優の男と、婚約者を亡くした女は、火葬場の喫煙所で出会う。男は反りが合わない家族のいる待機部屋に居づらい。女は亡くなった婚約者の浮気相手の存在に葬儀で気付き内心ズタボロだ。現実から浮遊したような状況で出会った2人は、行きずりの相手に身の上をこぼす。
その時の会話がきっかけで、女が婚約者と行くはずだった旅行に、婚約者のフリをして男が同行することに。不思議な旅だ。特に何があるわけでもなく、同じ部屋で寝泊まりをして帰宅する。春。
季節は移り夏。男は祖母と行く墓参りの同行者として久しぶりに女を呼び出す。大汗を描きながら山を登り、祖母を挟んで少し打ち解ける2人。そして秋。紅葉のドライブ旅へ。4回しか会っていないのに、お互いの人となりをお互いに理解してきている。やがて季節は冬になり女はある決心を胸に、雪の旅に臨む。
いや非常に羨ましい。家族でも恋人でも友達ですらもなく、またそんな関係になる予定や予感すらない異性の知り合いと、一泊二日の旅行という非日常に出かける。どん底で出会っているので、いまさら自分を取り繕う必要もない。それってものすごく心が安らぐ旅な気がする。
そして、1年かけて、季節の移ろいに合わせて会うというゆったりした頻度も、大人のペースだ。じっくり時間をかけて知り合い、気づけば心が惹かれていく。恋に恋する季節が過ぎた大人の恋の落ち方として、理想的すぎる。
そして最後の旅のラスト。急に来る、胸キュン展開。そう、大人はこんなふうに、急に間合いを詰めることもできる。終始ゆっくり静かに進んできたこれまでとの緩急がまた、いい。人生の時の長さをすでに知っており、そして人間関係の儚さも知っている。そんな大人が向き合う恋やら愛やらは、冬の夜明けの空気のように静かでまばゆい。
男「じゃあ、僕があなたのそばにいさえすれば、これは一生続くんですね。
一泊二日をあと百回くらい繰り返したら、それはもう生活の一部でしょう。気長にいきます。」
女(一生これが続く夢を、私は一瞬だけみる。)
素敵な読後感のある小説だ。
Posted by ブクログ
mihiroさんの紹介文で知った作家さんと作品。
そして、作家さんが女性だということも。
火葬場で知り合った男女が、その後、1年間にたった4回だけ会う。
春から冬までに少しずつお互いのことを知る機会があり、それでも知らないことも一杯あって。
お互い非日常のふれ合いを求め、そのため深く付き合うことはない。
大人の純愛小説なのかな。
結末がどうなるのか気になり、ドキドキしながら読み進めた。
Posted by ブクログ
すごくよかった。
真っ直ぐ純粋で危うい紗奈の言動に対する鳴海さんの対応が素敵すぎる。
温かく受け止めて、ゆっくり待ってくれる姿勢も素敵だし、何よりおもしろがってくれる受け取り方がいい。
二人のやりとりは心地よくてほっこり笑えて、終わるのが寂しいくらい楽しい読者時間だった。
紗奈が新しい世界を知ってわくわくしたり、抱えてきた辛い思いを爆発させて泣いてしまう場面などは、心理描写が丁寧でわかりやすく臨場感があった。
旅行という非日常を共有することは特別な楽しさがある一方、いつ疎遠になるかわからない関係性は不安で切ない。
どう決着するのかわからず、秋の旅行は大雨のダムの場面でドキドキしたし、冬の旅行は紗奈が決意を匂わしていてドキドキした。
Posted by ブクログ
気まずい思いをして抜け出した火葬場の喫煙所で出会った女と男
見ず知らずの2人は、急遽、春の宿で1泊することになる。
季節に1度しか会わない二人。
顔を合わせる遠出で、少しずつ2人の間にあった距離が近づいていく。
互いが互いにとって非日常であり、大切な存在なのだろうか?と答えが出ないまま、それでも、相手との繋がりが切れてしまうことを恐れ、連絡が切れないことを願う。
とても上質な恋愛小説
Posted by ブクログ
極上のラブストーリーでした。
淡々と描かれているのに、少しずつ熱を持っていく2人の様子がリアルに感じられました。
男性と女性の視点の入れ替わりが効果的で、二人の外見の描写がほとんどないことも、想像を掻き立てられました。
同じものを読んでいても、読者によって頭の中で広がるイメージは、かなり違っているのかもしれません。
Posted by ブクログ
aoi-soraさんの
『身がよじれそうなほどの恋を経験してしまった感覚』
このレビューにノックアウトされ購入しました(*´꒳`*)
凄く素敵な感想(*´꒳`*)
あおいさんのレビューにお星様10個です♪
ブクトモの多くの皆様も読まれており、レビューを読む度、読んでみたいなぁと思っておりました。
みんみんさんのプラトニック保証付きでしたので、安心して読み進めることが出来ました(*´꒳`*)
あー(*´꒳`*)
いいですね。とってもいいです。
静かに優しく流れる時間。
ギリギリ恋愛ではない、友達のような関係も何だかとっても素敵で、こういうのいいなぁと思いました(*´꒳`*)
先日読んだ二人の嘘もとっても良かったですが、こちらの本も私は大好きでした(*´꒳`*)
恋愛小説、あまり読みませんが、たまに読むといいですね(*^^*)
20歳くらい心が若返ります♪
以下ちょっとネタバレするので、読んでいない方は読まないで下さいm(_ _)m
春、夏、秋と付かず離れずの距離感に少々もどかしくも、こういうゆっくりな恋愛、とっても素敵だなぁとトロトロのお湯に浸るような気持ちで読んでおりましたが、、、最後、冬ですよ!冬!?
何でそーなるの!?
ならんやろー!!!!
そーはならんやろーーー!!!
って突っ込んだのは私だけですかね??
みんみんさーん、プラトニックって言ったじゃーん(笑)
これってプラトニックなのですか!?( ̄▽ ̄)
。。。
Posted by ブクログ
出会いとなり行きは突然
まだ何も知らない二人の春の旅
そこから始まる不思議な夏秋冬の季節事の旅行
羨ましい(〃ω〃)
こんな距離感が好き
サプライズや激しい恋愛は苦手だ
こんな相手が欲しくなったわ笑
Posted by ブクログ
火葬場の喫煙所で出会った鳴宮と紗奈。
鳴宮は不仲だった父親の、紗奈は自分を裏切った恋人の、火葬だった。
鳴宮の、
「悲しくはなかったが、喪失感はあった。どちらも負けたまま、ただ片方が死んだのだ。」
との語りが本当に虚しくて、その喪失感がこちらにも直に伝わる思いがした。
一方、紗奈はといえば、婚約者の葬儀で男の浮気相手と対面した直後だった。
非日常的な空間のせいか、互いに思いがけず自分の事を話してしまう。
父親の事。
婚約者の事。
これは二人が共に過ごした春夏秋冬の物語。
とは言っても、それぞれの季節に1度ずつしか会っていないのだけれど。
それは二人にとって丁度いい距離のつめかたで、だからこそ余計にかけがえの無い時間となったのだろうな。
各季節に1度きりの、途絶えてしまいそうなほどにか細い連絡の糸。
ある意味静謐である紗奈と、そんな彼女の様子を楽しんでもいそうな鳴宮。
好意を抱いているのは分かるけれど、軽々しく深まったりしない二人の関係性。
二人にとってのお互いは、どういう存在なのだろう。
けれど、そんな二人の様子が読んでいて心地よく、静かで美しいと感じた。
どの季節も良かったけれど、やっぱり冬が良かったかな。
雪の寒さ冷たさとは対照的に、熱っぽくストーリーが進むからだ。
鳴宮の雪の話も印象的だった。
(表紙は、足跡をつけてみてる紗奈なのかな)
紗奈が不器用な人だということは分かっていたけれど、
なぜ最後まで、
「一生これが続く夢を、私は一瞬だけみる。」
なの?
一瞬だけじゃなく続けたらいいじゃないの、とつい思ってしまった。
二人はどこに着地するんだろう。
やっぱり鳴宮を応援しちゃうなぁ。
二人のこれまでの非日常が、日常へと変わりますように。
Posted by ブクログ
恋愛小説、普段はあまり読みません
お勧めされて、ずっと読んでみたくて
絵画のような恋愛小説ってどういうことかと思っていたけれど、その場の美しい景色が見えるようでした
春夏秋冬、どれが好き?
いや、悩む!凄く悩む!!
でも、夏と冬かな?一つには絞れないです
非日常だからこそできることとか話せることってあると思うし、それが日常に近づいていくことが幸せなことならば日常になってほしい
でも、それは非日常だからできることだから物凄く怖いことでもある
この人の生きている世界に自分がいる、という確証が欲しい
とか
自由な人だからなにも変わってほしくなかった、一緒にいる間の一晩くらいなら
とか
ちょっと感情移入しちゃって大変でした
久しぶりの恋愛小説は、幸せな気持ちになれました
Posted by ブクログ
火葬場で出会った二人、鳴宮庄吾と藤間紗奈。
紗奈を裏切った亡くなった恋人が用意した旅行に同行を申し出た庄吾。相手のことをよく知らないまま一泊することになった二人の緊張の春の旅。
紗奈視点の、夏の庄吾の祖母を連れた祖父の墓参り。
そして、秋、冬と季節の度に出掛けた二人は ―― 。
二人に流れる時間がゆったりと静かで、夏のじりじりとした暑さや、篠突く雨のダムや、足跡を残したくなるような真っ白い雪の風景が浮かんで、自然の音が聞こえてくるような描写でした。
二人の交互の視点というのも良かったです。夏の墓参りの話が特に好きです。
そして二人が選んだ結末も良かったです。
しっとりとしていて、さらりとした素敵な恋愛小説でした。お薦めです。
Posted by ブクログ
1Q84O1さんの本棚から
嘘じゃ(ΦωΦ)
aoi-soraさんの本棚から
主人公が『イギリス人の患者』を読んでいました
読みたいリストのわりと上位の方にある本だったので、ちょっとびっくりしました
そうかきっと今が読むときなんだな
『くそったれ少年時代』『TheBFG』『イギリス人の患者』『夜間飛行』
主人公の”男”が作中で読んでいる本
ちょっとセンス良すぎないか?
しかし、なんとなく見えてくるような気もしてくる
不思議だね
適当に並べたわけがないので、なんとなく見えてくるものは、たぶん間違ってない気がする
なんか物語の進行をなぞってる気がするんよな〜
『くそったれ少年時代』はロサンゼルスを舞台に父親から殴られながら育つ少年の話
『TheBFG』は孤独な少女が心優しい巨人と出会い友情を育む話
『イギリス人の患者』は記憶も名前も失った男が従軍看護婦に看病される中で徐々に記憶を取り戻し自分の秘密を語っていく話
『夜間飛行』暗闇の中で進むという危険と向き合いながらも勇気を持って、諦めることなく進み続ける男の話
そして、思い込みかもしれないけど、これらの本を読む人ってなんとなく誠実そうな気がしました
Posted by ブクログ
プロローグ
やっと巡り会えた
もう決して君を離さない
思わず君を抱きしめた
想像してたより、色白で細身だ!
そして、そっとキスをした
彼女は、ただただ優しい目でこちらを見つめていた!
本章
雑踏のいや、川っぺりの土手沿いに咲く小花たち
無数に咲き乱れる小花の中に2つの花だけが、ゆっくりと風に揺られ、揺られる度にお互いの花びら同士がそっと触れ合う
そんな秘めやかな恋がしたくなる作品
『ふたりの窓の外』★と愛いっぱいの5
aoi-soraさんの本棚から
「身がよじれそうなほどの恋を経験してしまった感覚」から始まるレビューでKO❢
プラトニックな恋愛小説の極み!
2人の距離が1ミリずつ縮まって行くのが切なくて清々しい
正確には、2ミリ縮まって、1ミリ離れるような
だから1ミリ
それだけで泣けてきちゃう(TдT)
ラストも最高だ(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
恋愛小説なんて、いつ以来だろう〰️
あ~『冷静と情熱のあいだ』以来か〰️
誠に素晴らしい作品であった!!!
エピローグ
とある書店の女性店長 談
ちっ!
なにあの客!
『ふたりの窓の外』を探せって言うから、持って行ったら
奪うようにひったくり、本を取るやいなや、あたかも女性でも観るような目つきと手つきで触り、挙句の果てに、本を抱きしめて、キスしやがった!
お会計もしてないのに!!!
ホント、きしょいんだから٩(๑`^´๑)۶
メルったく!
『店長の客がキモすぎて』★−5、、、、、
あとがき
本人談
まぁ、あの店長さんは、あ~仰られておりますけど、こっちは、この本と巡り合うために10軒以上本屋さんを探しましたから!
そういう行動になるのは、至って自然な行動なんじゃないんですかね〰٩(๑òωó๑)۶
メルったく!
あっ、因みに色白で細身っていうのは、装丁が白くて綺麗で頁数が思ったより少なかったってことね^^;
『店長の客が正当すぎて』★鬼5、、、、、
んなわけあるかい~(;・∀・)
袋綴じ特典
いつもの一人掛け用の安楽椅子(登場3回目)で本書を読み終えた
何日もかけて巡り逢えたのに、お別れはあっという間だ
メルったく(TдT)
溜息ともつかない、息を吐き出すが、
君は相変わらず優しい目で見つめてくれている
最後にもう一度彼女を引き寄せた
完
Posted by ブクログ
火葬場で出会った鳴宮と紗奈。
運命としかいいようのない出会いから、季節ごとに2人で予定をたてない旅をします。
「いつもいる場所を離れたらもう旅」
音が排除されたかのような非日常な空間です。
春の ほのかに甘い香りが漂うネモフィラの花畑
夏の 霊園の階段を登る時の首すじから流れる汗
秋の ファストフードの匂いが充満した車内
冬の 何かを祝福するようなふわふわと空を舞う
大粒の雪
とにかく状況描写と心理描写が秀逸で、鳴宮と紗奈の心の動きを感じるたびに、キュンとして…何度も泣きそうになりました。
最終章では、どんな結末でも受け止めようと、私は息をとめて二人を見守っていました。
今までに読んだことのない、心が揺さぶられる恋愛小説でした。余韻で暫くふわふわしそうです。
Posted by ブクログ
始まりは非現実的だけど…
そこから始まるふたりの関係は、確実な約束もなく、いつ終わるかも分からない、名前のない関係。
少しずつ惹かれ合う様子は女性の視点で描かれているところでより共感でき、最終章での彼女の覚悟にドキドキしたし、お互いの本音がぶつかるところではヒリヒリもした。
「この人の生きている世界に自分もいる、という確証が欲しい」という気持ちが痛いほど分かった。
極上の恋愛物語。
大好きな1冊になった。
Posted by ブクログ
aoi-soraさんの本棚からです
えーっと、aoiさん、、、
私はあなたに怒っています!
まったく!
とんでもない本を紹介してくれましたね!
これ、私がレビューを書くのが苦手なタイプの本じゃないですか!( ゚д゚ )クワッ!!
なぜかって、、、?
それはね、めっちゃ良過ぎるから!
これはテキトーにふざけてレビューを書いたらダメなやつ!
なので、書きません!
いや、書けません!
とにかく良い!
(人´∀`).☆.。.:*・゚
だけど一言だけ書くとしたら、
ふたりの関係がいい
必要以上に会話をしなくても安心できる関係
この空気のような関係性がものすごくいい
(*˘︶˘*).。.:*♡
うらやましい、、、
(ぼそっと)
Posted by ブクログ
身がよじれそうなほどの恋を経験してしまった感覚
こんなふうになるのは久しぶり
藤間紗奈と鳴宮庄吾は火葬場で出会った。
藤間は恋人を亡くし、鳴宮は父親を亡くした。
火葬場という特殊な場所で出会ったせいか、初対面の二人はそれぞれ心の内側をさらけ出す。
普段の姿は知らないのに、飾らない内面を分かり合う二人。
春夏秋冬の四章で構成される物語は優しくて美しい
春【花を摘まない】
藤間が恋人と行くはずだった旅行に、恋人の代わりとして鳴宮が同行する
夏【流れる浮雲】
鳴宮の祖母の墓参りに藤間が同行
秋【雨は道連れ】
ドライブ旅行
冬【最初に触れる雪】
雪の積もる温泉宿へ
それぞれの季節と二人の心の動きがとても細やかに描かれており、静かなのになぜか心が揺さぶられる。
私が一番好きなのは、夏の墓参りの章。
乙女なキヨノおばあちゃんが何とも可愛らしい。
私がこの物語にのめり込んだのは、小さな偶然があったからかもしれない。
春の章で二人は東京駅から新幹線に乗り高崎駅で下車するのだが、その場面を読んでいるとき偶然にも私も高崎駅を通過していた。
私は長野の実家から上りの新幹線に乗っており、季節も同じ四月だった…
とても心に残る一冊
出会えて良かった
Posted by ブクログ
この男女の物語の印象は、「誠実」と「静謐」に尽きます。偶然の出会いに始まり、季節ごとに旅する関係性は、不自然さや違和感を超え、美しくさえあります。移りゆく四季に合わせ、4章立ての交互視点で描かれる物語は、非日常世界を覗くようです。
こんな設定はあり得ない、これは恋愛と言えるのか? などと邪推しながら読み始めましたが、徐々に物語に引き込まれ、説得力をもってリアリティを感じるから不思議です。筆力の為せる技でしょう。
売れない役者の鳴宮も事務員として働く藤間も、ともに立派な大人同士です。鳴宮は世間的には多々問題はあるものの、優しく誠実でした。どちらかと言うと、藤間の方に危うさがある気がしました。
それでも、余計なことを言わない・聞かない、全部残したいので一部を切り取るような写真は撮らない、細かな予定・計画を立てない等、成熟した大人の発想が散見されました。
風景として街の喧騒や熱もなく、人として打算や傲慢さもなく、ほのかな温かさが心地よく感じられます。おそらく、ふたりでいても(よい意味で)孤独を確保できる関係性があるからなのでしょう。
ふたりの距離感がよく、繊細な心情を情感豊かに描かれる物語の帰着点はどこ?とページを捲る手が止まりませんでした。
いろいろと抱えている女性ほど、きっと大絶賛する一冊となり得るのではないでしょうか。こんな恋をしてみたいと…
Posted by ブクログ
「次は秋だね__」
恋人でも友達でもない関係の2人が交わす不思議な約束。出会いの春から夏秋冬と季節が変わる度に変化するお互いの気持ち。
距離の縮め方が割れそうなガラスを扱うみたいに慎重で、繊細だった。美しい大人の恋愛小説。
Posted by ブクログ
ふたりの四季を描く四章仕立て。
恋人の葬儀に参列していた女性と、不仲だった父親の葬儀に向かっていた男性。ふたりの出会いは、火葬場での偶然から始まる。
季節ごとにふたりは旅を重ねる。大人でありながら、不器用なふたり。旅をするごとに、距離や関係が少しずつ変化していく。
沈黙までも描き取るような静かな文脈に、夏目漱石『それから』『門』の人物同士の距離感を思い出した。感情を直接語るのではなく、表情や仕草から心の動きを読み取らせる文体。
前作『眠れない夜に見る夢は』における「砂をかむ」ような感覚を、女性の変化を軸に描いたバージョンのようにも感じた。
あらすじを端的にまとめるのは難しい作品
ただ、表現のあり方そのものが好みに合う作品でした
Posted by ブクログ
たくさんのブク友さんが大絶賛されているので、これは読まなくては!と手に取った本。
本当の恋愛は、こんな風にふいに始まることが多いのかもしれない。
火葬場で出会った二人が季節ごとに一度会うという、不思議な関係性。ずっと静かに物語は進んでいくけど、密やかに熱を帯びていく様子が美しく描かれているなと思った。
☆を一つ減らしたのは、共感して物語に完全に入り込むことが出来なかったから。
主人公が自分とタイプが違いすぎるのと、美しすぎるからかなぁ。☆5を付けられなかった私は、心が醜いような気分になっているけど。
恋愛小説でいうと「汝、星のごとく」みたいな、不完全でままならない感じのものが好きなんだと思う。
Posted by ブクログ
婚約者と行くはずだった旅行の予定を、火葬場で会ったばかりのよく知らない男と行くことにした女と、そんな提案をした男。
季節ごとに旅をする2人の、微妙な関係の変化がとても好きで。ゆっくりと温まっていく距離感が良い。
普段恋愛小説はあまり積極的に読まないのだけど、読書好きな方の勧めで読み始めたら、本当に素敵で、いい読書時間を過ごせたな、と感じた。この2人を見ている時間が終わるのがもったいなくて、ゆっくり読んでしまった。
こんなふたりの物語を覗き見ることができて、良かった。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
互いが、互いにとって‶非日常″。
そんなふたりの距離は近づくか?
春の宿、夏の墓参、秋のドライブ、
そして――冬の宿。
それぞれの季節に一度ずつしか
会うことのなかったふたりの一年を描いた、
絵画のような恋愛小説。
自分を裏切った恋人ともうすぐ旅行に出かけるはずだった女、その恋人の代わりに旅に同行することを申し出た男。なぜか承諾してしまった女は、それまで見ず知らずだった男と春の宿で一夜を過ごすことになる――。
春の宿、夏の墓参、秋のドライブ、そして冬の宿。火葬場での出会い以来、それぞれの季節に一度ずつしか会うことのなかったふたりの一年を四章仕立てで描いた、絵画のような恋愛小説。
【個人的な感想】
お互いの気持ちがわからなくてもどかしい、そんな感覚を思い出した。
おばあちゃんとお墓参りの話が好きだった。
鳴宮さんが終始かっこよくてきゅんきゅんした!
Posted by ブクログ
ふたりの描写が繊細で、自分の中に溶け込んでいきました。四季で表現されていく感じも素敵でした。(一気に陳腐な感想になってしまい悔しい。)
きっとすごく自由なはずなのに、安定して安寧な生活を望むがゆえに変化を恐れてしまって、でもそんな自分が嫌で、、だからこそ惹かれるんだろうな〜〜〜〜最後まで2人はどうなっちゃうの〜〜てどきどきでした。
最近ひとり旅をするようになったから、「いつもいる場所を離れたらもう旅なんだから、あとはなにもしなくてもいいんですよ。」って言葉に、胸がきゅぅっとなったな、無理しなくていいんだよ〜て言われているみたいで。
Posted by ブクログ
2025/08/28予約
火葬場で初めて出会った沙奈と役者の鳴宮。春に沙奈がキャンセルしなかった旅行に一緒に行き、夏は鳴宮の祖母と三人で墓参り、秋はドライブ、冬に旅行と知ってるような知らないような相手とふたりで四季を過ごす。最近読んだことのないくらいロマンチックな話で私まで心が浮き立つ。フィクションだから、とは言っても素敵だな…
Posted by ブクログ
非日常的な空間で次に会う約束も交わさなかった2人が、なんだかんだと季節ごとに会うようになる。
それでも、次の約束や綿密な予定は立てず、あくまでお互いのやりたいことを適度な距離感でしながら、ある意味逃避行的な旅行に2人で出かけていく。
友達よりよく知らない人の方が、しがらみがない分自分の悩みを話しやすいとよく言われる。
二人の関係はそれに加えて、お互いの空間をリスペクトしているところが良いと思ったが、最後の最後にそれが乱れる場面があり、その後どうなるかは不明。
現実にはこのような関係性を築ける人を見つけるのは相当難しいと思うが、心地よい関係性は友達や家族、恋人という枠にとどまるわけではないということを改めて感じさせてくれる話。