昭和27年、岩手のとある山の上にある鉱山の地下牢から、23年間閉じ込められていた男が脱走し、鉱山の社長を惨殺した!?事件の真相を解くべく、横浜のしがない弁護士が現場に向かうが、そこには2人の自称名探偵が現れる。次の殺人を防ぐことはできるのか?
いきなり本を開いたところで、作者が「荒唐無稽と怒られる
...続きを読むかもしれません」などと言い訳をしていて、そこで☆マイナス1。すんなり読ませてくれよう。
全体に、横溝正史などの昔の探偵小説や冒険小説といった類のストーリーであるため、あまり背景などを頑張って読み込もうとしないほうが楽しめる作品だ。キザで行動派の探偵荒木(明智小五郎のオマージュ)と、地味だが突拍子もなく走り出す頭脳はタイプの真野原(ホームズ?金田一耕助?)という、2人が絡むでもなく絡み、主人公は翻弄される。
鉱山の周りの人間関係がキーになってくるのだが、作者の思い入れの違いか、描写できている人とできていない人のコントラストが強く、重要人物もスルッと流してしまいがちなのは、今ひとつ。まあ、人を多く出しすぎたと言える。
残り1/3程残して、事件はほぼ解決してしまい、あらまこれからどうするの?というテンションで結末を読まなければいけないのもちょっとどうかというところではある。
基本的に冒険小説の要素が強いので、あまり犯人や謎解きというところには力を入れて読まないほうが良いだろう。また、洞窟の描写が全体に今一つなんだよなあ。
それでも、全体にわくわくする感じが漂っていて、そこそこの長さの割に楽しめる作品である。